「大和ちゃんはどこかしら。広くて迷子になっちゃいそう。」
瑞鶴ちゃんの案内をある程度受けたから地理としては理解したつもりだったけれど、まだ完璧ではなかったみたい。けれど、扉には表札があって、そこにお名前が書かれているから、わかりやすい。今右手の扉にあるのは、多分曙ちゃんと加賀ちゃんのお部屋。
「あ、鳳翔さん。どうですか?ここは。」
「あら、大和ちゃん。探したんですよ?」
「う…すみません。補給をしてました。それと"ちゃん"は…」
「あら、どうして?私にとって、大和ちゃんは大和ちゃんよ?」
「その…武蔵もいますから…」
「大和。勝手にどこかへ行くんじゃない。さっきは心配しただろうが。」
奥の方から真っ黒い服を着て、肌も黒く焼けた眼鏡をかけた子。きっと武蔵ちゃんね。
「む、誰だ?」
「鳳翔と申します。大和ちゃんにはお世話になりました。」
「鳳翔さん!ちゃんはやめてください!」
「いや、こちらこそ姉が世話になったようだ。礼を言う。」
「いえいえ。とっても元気でしたから。それに、恥ずかしがり屋さんでしたし。」
「鳳翔さん…もうやめてください…」
「ここも随分賑やかになりましたね。ここに来た頃に比べても、随分増えました。」
「そうよね。だって…私以外の艦娘は来ないと思ってたもの。」
「あの頃はそういう考え方だったんですよ。曙が来たあたりから少しずつ変わりましたね。」
お姉ちゃんがこの部屋を後にしてからは、なんとなくで昔のことを振り返っていた。と言っても断片的で、具体性はない。ただ一つだけ自信を持って挙げられることは、明るい雰囲気になったということ。
「ケッコン前はあなたのこと、あんまり意識してなかった。」
「私はずっと好きでしたけどね。」
「…だって恋するなんて初めてでこの気持ちがよく分からなかったんだもの。仕方ないじゃない。」
「ですねぇ。さて、少しお仕事をしますかね。増えた艦娘についての報告書類を…電報は本格的に使わないですね。」
「書面にした方が伝わりやすいから仕方ないわね。」
名残惜しいけれど司令官の膝の上から降りて、書類を取り出す。コピーして複製した艦娘用の書類の束を人数分…今回増えたのは七人だから、七枚。この書類は項目が多く、それ故に時間がかかりやすい。そして、今回新たに所属した艦娘は、全員建造ではなく、深海棲艦との戦闘によるドロップ。けれどここは本来深海棲艦のいない海という認識なので、報告書にそのようなことは実際書きづらい。事実司令官も筆が止まって、考え込んでいる。
「…経緯だけ電報で伝えるっていうのはどう?」
「そうしますか…怒られたらその時ということで。」
「やっぱり電報は必要みたいね。」
「加賀。ただいま。」
「ただいま戻りました。」
「ええ。お帰りなさい。待っていたわ。それにしても、随分長かったですね。何かあったの?」
「特にないけど…これ。」
「麻雀…ですか。」
「そ。今から一局打たない?」
「望むところです。あなたから借りた漫画はしっかり読んで勉強しました。北…?が強いんですよね。」
「…取り敢えずやりましょ。」