※この作品はR-18です。

【艦これ二次創作】辺境鎮守府   作:スイっぴ

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ヲ

姉さんの言い分では、11時の方向に敵艦がいたらしいが、今の私の視界には、少なくともそれらしきものは見えない。波を駆ける音と、向かい風を受けるだけ。

「なんにもいないじゃん。」

「どういうことなのよ…。」

次第に腹が立って来て、胸から下げている探照灯の灯りを強くして、前方を強く照らす。敵に見つかる可能性もあるが、さっさと見つけてしまいたいからやむを得ない。

「…一旦戻る?」

「私はまだ探すわ。あなたは戻って。」

「りょーかい。死なないでね。」

 

川内と別れてから二、三分は直進しているはずだけど、未だに発見できない。まさか、姉さんの電探が誤作動を起こしたとでもいうのだろうか。そろそろ戻ろう。そう思った瞬間に、水面から勢いよく何かが飛び出した。

「ヲ…」

「っ!」

探照灯によってはっきり見えるソレは、嫌に白い肌と頭に大きな帽子のようなものを被り、杖を持った敵。空母ヲ級。随伴艦はおらず、艦載機も発艦しない。そもそも夜中にただの空母がなぜ…?

「スコシ…マッテ…」

「生憎だけど、そんな余裕ないわ。沈みなさい!」

「ヲ!?」

あんな奴らの言葉なんて聞き入れる必要はない。沈めて、残党の対策を打たなければ。そのためにも正規空母が来てくれたのは助かった。大まかな戦力も多少測れるし、脅威の排除も楽になる。

「霞!待って!」

「曙?どういうことよ。」

「そいつらの話、聞いた方がいいかもしれないのよ!」

「そんなわけ…」

「現に今も、あいつはあんたに敵対してないでしょ?」

そりゃあ、空母が夜戦で戦おうとすることは違和感があるけれど、だとしてもそれは難しい。

「いいから、早く来て!クソ提督を説得して、対話の機会を作ってほしいの!」

「ちょっと!わけがわからないわよ!」

「いいから!あんたも来て!」

「ハ、ハイ!」

 

「オオ、ブジデヨカッタ。」

「ヲー…」

「ほら、あいつら敵対をしてないの。そんで、誰かと逸れたなんて言ってたから、霞とぶつかってんじゃないかって思ったの。」

「…なんでもいいけど、私にこの状況をどう説明しろっていうわけ?」

「いいから!早くして!」

「わかったわよ…」

司令官と通信を繋げている間、私と曙以外の四人の方を見たら、深海棲艦と楽しそうに会話していた。脳が理解を拒むような映像に少し眩暈がした。

『こちら鎮守府。何かありましたか?』

「何かも何も、ありすぎよ。深海側なんだけど、確かにいたわ。」

『やはり…それで、何がいたのですか?』

「敵対していない深海棲艦。」

『…敵対していない、とは?』

「文字通り。殺気もないし、攻撃する意思もない。向こうの意見は、あなたとの対話を求めてる。」

『ますます意味がわかりませんが…しかし、構いません。罠であろうとなかろうと、向こうの内情を少しでも理解できるに越したことはありません。』

「本気なの?」

『ええ。そちらがどのような奇襲を仕掛けても、こちらには大和や武蔵が待機しています。最悪の事態にも対応できるようにはしているつもりですよ。』

「…わかったわ。連れて行くから、少し待ってて。」

ガ、と音の後に通話が切れた。

「あんたら、とりあえずついて来なさい。」

「リョウカイシタ。」

「くれぐれも、頭のおかしいことなんてしないでよ。」

「モチロンダトモ。」

「ヲ!」

ヲ級に合わせて出せる限界の速度で帰る。この深海棲艦たちは、どこかが違う。誰かを傷つけようなどという思考は存在していない。ただあるのは、少々の恐れと純粋な心。それがかえって不気味に思える。

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