※この作品はR-18です。

【艦これ二次創作】辺境鎮守府   作:スイっぴ

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それぞれの休日・霞編③

やはり眠ってしまっていた。今はもう先ほどまでのおかしかった自分はもういない。あれは、きっと気がふれていたんだろう。一度眠っただけで治ってしまったんだもの。大したことない。もう、大丈夫…なはず…。ふと時計を確認しようと布団の中から体を抜き出す。視界が暗くて、自分の手元以外何も見えやしない。壁伝いに部屋の外へ出ると、もう日が沈みかけている。きっともうすぐ帰ってくるはず。急いで正面玄関へ走る。不安だったからではない。心細かったからではない。寂しかったわけではない。先ほどまでの自分を否定するように高揚感を抱えている。ちょうど、ついたと同時に玄関の扉がギイィと開かれる。

「霞。お出迎えどうも。ただいま帰りました。」

「ただいま!」

司令官の穏やかな笑顔と、曙の屈託のない笑顔が見えなくなった太陽のおかげか非常にまぶしい。

「おかえりなさい。」

3人で間宮さんのもとへ歩いていく。足並みをそろえて、会話がなくともホッとする空間。今の状況が非常に安心する。独りではない。誰かが隣にいてくれる。孤独というものがいかにつらく苦しいのかを痛いほどに実感する今日は終わりを告げる。今日のお昼に食べたパフェのおかげであまりお腹はすいていないと思っていたが、大量に涙を流していたからなのか定かではないものの、キュウとお腹が鳴ってしまった。恥ずかしくて顔を伏せていると、司令官からの視線が感じられた。長いこと受けていなかったそれは、いかなる理由であろうとも心地の良いものに感じた。間宮さんは不思議とご飯を大量に作っていて、それでもみんな食べきってしまった。今日だけでどれだけ食べたのだろう。昼間とはまた違った恐怖感を味わった。

「司令官。お風呂行きましょ?」

「ええ。お願いします。」

曙からなにやら視線を感じた。彼女にも思うところがあるのかもしれない。けれど、彼女はもう彼を存分に堪能したはずである。それに、昨日の夜は2人で一緒に寝ていた。これくらいなら、別に構わないでしょう?

「霞。なんだか今日は雰囲気が違いますね。なにかありました?」

詳しく言及されることはないと思う。けれど、些細な違いにも気づいてくれた。

「別に…なにもないわよ。」

万が一にも今日の昼のことがばれないように自分を取り繕う。何もないわけない。むしろありすぎた。だからこそ、隠し通す。

「そうですか。まあ、これ以上何も聞きませんよ。あなたに嫌われたくない。」

「はあ!?とっ突然何よ!」

自分でもびっくりするほどに動揺している。今何を言われたのか処理が追いつかない。

「いったでしょう?私、あなたがいないとすぐ死んでしまいます。だから、嫌われたくないんです。好かれるほどまで行かずとも、あなたがそばにいても構わない人間でありたいんです。」

恥ずかしいことをさも当然のように、顔色一つかえずにさらっと言ってのける。これは、司令官から発せられた言葉。妄想でもないし、幻覚でもない。顔がどんどんと紅潮していく。

「よくそんなこと平気で言えるわね…」

顔を沈め、顔より温度が低く感じる湯船にさらにつかる。彼はからからと笑う。人がどんな思いをしているかもわかっていないのだろう。

 

風呂から上がり、彼の髪を乾かす。

「ねえ。司令官。」

「なんです?」

「曙から、義手もらったじゃない?なんでそれで髪を結ばないの?」

口から勝手に出ていた。今更言い訳しようにももう遅い。

「それですか。簡単なことです。霞にやってもらいたいんです。でないと、こんなにも長い髪を持っていられるわけないです。確かに今日、曙に髪を結ってもらいました。しかし、それはあくまで私が髪を結うことができないからです。当たり前ですよね。この前、2人が私に服を着せ替えて遊んでいたときにも、あなたが結ってくれました。それも、楽しそうに。それだけで、うれしかったんです。病院で髪を切られた時も、嫌悪感はありませんでした。曙が切っても、間宮さんが切っても、あんなに安心するとは考えられません。あなただから、任せられるんです。髪は女性の命。そんな言葉がありますよね。今の私にとっての髪はまさにそれなんです。命も同然。それをあなたになら任せられるんです。こんなにも長い髪を大切にしてくれる。それだけでね。視察に行った時も、霞が結ってくれたおかげで安心できたんです。」

司令官からの言葉を聞いているうちに、また涙があふれてくる。彼には気付かれないようにそれをそっとぬぐう。

「私は、あなたになら命を預けられます。後輩の彼にも、曙にも、ほかの誰にも任せられないんです。あなただからこそ、任せられるんです。あなたが笑っていられるのなら、私はなんだってするんです。なんだってできるんです。あなたが笑顔になってくれるだけで私はそれでいいんです。だから、泣かないでください。私が好きなあなたの顔はそれではありません。」

いつの間にか大粒の涙が出ていたらしい。今は2人しか見ていない。ほかの誰にも見られていない。司令官に体を預けて、気の済むまで泣いた。声がかれてしまいそうなほど泣いた。そんな私を司令官は優しく抱擁してくれた。

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