「さあ霞。演習を遂に行えるようになりました。先方はあなたの気の済むまで付き合ってもらえるようです。ありったけ演習し、思う存分闘い、負けてきてください。あちらの艦隊はあなたのために練度の高い艦娘たちをつれてくるそうです。練度が最低のあなたでは勝てません。自分の全てをぶつけてくださいね。」
「わかってるわよ。今回の演習は大切にさせてもらうわ。」
「ならよろしい。積もる話もありますから、我々は少しお話をさせていただきます。目の届く範囲を演習の場にするので安心してください。」
「お待たせしました。こちらが、今日演習を行う艦隊となります。」
「ありがとうございます。こちら、私の大切な初期艦かつ、秘書艦の霞です。わざわざお越しくださり感謝しますよ。」
遂に行われる演習。この催しは私のおせっかい、もとい霞の艦娘としての矜持を守るためのものである。
「旗艦を務めさせていただきマス。金剛ともうしマース!ヨロシクネ!霞!」
「こちらこそよろしくお願いするわ。」
「Oh…こちらの霞はえらく素直ですネー。」
「では、我々はここらではけましょうか。あとは彼女らの時間です。霞!しっかりやりなさい。」
「金剛!手加減はするなよ?では先輩、行きましょうか。」
「「もちろん(デース!)」」
そこからは後輩との話に花を咲かせた。
「しかし、最近は深海棲艦が活発になってきたんですよねぇ。数が多いだけなのでなんとか回せているのですが…。」
「なるほど…。私の管理する海域は深海棲艦は出てきませんからそう言った話はあまり分かりませんね。ただ、言えることとしては自らの艦隊と指揮に迷いを見せず、信念を曲げてはならない、と言うことですかね。」
「学生時代からずっと言われていることですね。もちろん、片時も忘れたことなどありません。ここまで来れたのも、先輩のその言葉があるからです。」
「それは違いますよ。あくまで私は私の心の内を話しただけです。あなたが提督として確かな実績を積めたのは、あなたの頑張りがあるからこそです。」
「しかし、本当に良かったのですか?今回の演習の補給用の資源をそちらで持ってくれると言うのは。」
「はい。ここの鎮守府は、お世辞にも資源が多いとは言えません。ならば、こちらが負担するのもおかしくないでしょう?何より、先輩からの頼みですからね。」
「私は本当に周りに恵まれていますね。可愛い後輩に世話焼きな秘書艦。あとは大本営だけです。」
「そう言えば、先輩のところの霞はうちにいる娘と比べて棘がないと言うか、優しいと言うか、少し違いますよね。」
「あなたもそう思います?建造して最初に会った時は正直いい思いはしませんでしたよ。ただ、個体差、とでも言いましょうか。私の霞はいわゆるデレが多めなんでしょう。その証拠に、初日から私を気にかけてくれる様子が多くみられましたよ。罵られることもほぼありませんから。」
「はー。なるほどです。」
「それに、私腕がこんなでしょう?風呂に入るのも一苦労なんですよ。それを汲み取ったのか、霞が自ら背中を流すと言ってくれたのですよ。その時は内心苦しかったんでしょうね。気が楽になっていた気がしますよ。あ、これはできれば公表しないでいただけると助かります。問題行動として扱われると霞に申し訳ないので。」
「そんなことしませんよ。せっかく先輩が心の拠り所を掴むことができたんです。それを壊すなんてできたもんじゃないですよ。」
「ただし!」
「?」
「このようにお話しする機会が僕以外にあったとしても、絶対他言無用でお願いします。艦娘は少女、そして提督は基本的に男性が多いです。みなさん隠しているだけで必死に自制心を働かせているのです。そんな人たちにこんな話をすれば、わかりますよね?」
「ああ、嫉妬のあまり何をされるかわからないと言うことですね。」
「はい。」
ドォーン!
ババババッ!
「始まりましたね。さあ、霞はどう立ち回るのでしょう。」
「気になりますか、やはり。」
「そりゃあもう。先ほども紹介した通り、私の大切な娘です。」
会話を中断し、演習風景に集中する。霞は単艦ゆえ被弾が小さく手数が少ない。後輩の金剛を旗艦とする戦隊は数が多い分様々な戦略を得意とする。さらに、霞の低い練度では逃げ回るのも難しい。あっという間に決着がつく。一発もらうだけでも大破状態になる。
「ふむ。やはり勝てませんね。しかし、あなたの艦隊は非常に素晴らしい。全員が互いの弱点を補い合うように戦っている。これも、提督の質が良いから成せるものですね。」
「バケツに資源に、今日は枯渇するまで演習させてもらいます。」
「望むところですよ。今日1日で先輩の霞の練度を大幅に上昇させて見せます。」
他愛もない話を取り留めもなく続ける。定期的に霞の様子を確認していると、たまに敵艦隊に中波程度の痛手を合わせることもできるようになったのがわかる。駆逐艦としてみればかなり強くなっているように見える。
時刻はヒトナナイチゴー。遂に霞が終了の宣言をした。迎えに行くと、霞の顔には疲れが見てとれる。
「お疲れ様でした霞。よくがんばりましたね。」
「当然でしょ!誰の艦だと思ってるの?」
「本当にお二人は仲が良いですね。」
「では、本日はありがとうございました。迷惑をかけましたね。」
「いえ、こんなことでよければ、また呼んでください。」
「霞ー!またやりましょうネー!」
霞は微笑みながらひらひらと手を振る。
「さあ、今日はご馳走にしてもらいましょう。それで、練度はどれくらいまで上がりましたか?」
「ああ、それは…」
フラフラと霞が倒れ込む。
「おっと、危ないですね。今日は、もうこのまま寝てしまいましょうか。」
連戦による疲れが爆発したのだろう。腕の中でそのまま眠ってしまった。