目を覚まして周りを見ると、もうすでに真っ暗で、机の上の簡易照明が唯一の灯りとなっていた。
「司令官。起きて。」
彼の頬をぺちぺちと叩く。
「ん、ああ。霞。よく眠れましたか?」
「ええ。お陰様でね。ほら、食堂行きましょうよ。」
そのまま2人で司令室を後にする。先に食事をしていた曙は、こちらを見るなり、とてつもない速さで完食し、さっさと出ていってしまった。心なしか楽しそうに去っていく彼女の背を見ているだけだった。
「今日の曙は少し様子が変ですね。まあ悪いことは起こらないとは思いますが。」
「そうね。」
そのまま間宮さんに晩御飯をお願いすると、何か含みのある笑いを浮かべられた。そのまま食事を待っていると、白米が置かれているはずのところにはお赤飯が、そして、主菜の位置にはうなぎの蒲焼がいくつか置かれていた。わけがわからず司令官の方を見ると、間宮さんの方へ親指を立て、それに呼応するように間宮さんも親指を立て返していた。やはり、いつも通りに美味しい。少し雰囲気は違ったけど、それでもこの食事がないといけない気がする。
「「ご馳走様でした。」」
「は〜い。いい食べっぷりでした〜。」
(提督さん。頑張ってくださいね〜♪)
(ありがとうございます間宮さん。)
2人が小声で話すのをじとっと見つめる。なんだかその光景が気に入らなくて、司令官の腕を引いてしまう。
「あらあら〜♪」
「申し訳ありません。では、間宮さん。また明日。」
「ええ。また明日。」
司令官の腕に抱きつきながら、一緒に風呂場へ向かう。2人の寝巻きを抱えて脱衣所へ入る。いつも通りの彼とのお風呂が、少しだけ変わった雰囲気に包まれる。なんだか、ちょっとだけ恥ずかしい…かも?さっさと身体を洗い、清潔にする。湯船に身体を浮かべると、2人の髪が水面を流れる。ここまでで会話はない。しかし、意識してみると、彼の女性的な整った顔立ち。細い体の中にある、確かについた筋肉。全てが魅力的で、ドキドキする。
「霞。そろそろ上がりましょうか。のぼせると危ないので。」
「あ?ああ!そ、そうね!」
焦って勢いよく湯船から身体を上げる。すると、身体を覆っていたタオルがはらりと落ちる。司令官は、全て落ちてしまう前に、具体的には、臀部が露出される前に抑えてくれた。
「あ…うあ?」
彼に裸を見られてしまったかもしれない。そう思うと、体が硬直して動けなくなる。
「霞…。早くタオルで隠してください。私の身が持ちません…。」
ハッと正気に戻って、タオルを受け取ってパタパタと脱衣所へ向かう。ものすごく恥ずかしかった。でも、嫌じゃなかった。悶々とこのような思考を巡らせ、寝巻きに着替える。今日のは昨日よりもさらに可愛らしいものを選んだ。ヒラヒラとしたフリルの施されている服。昨日よりも丈が短くなったショートパンツ。ちょっと攻めすぎたかもしれないと髪を乾かしながら考えている。司令官が、遅れて出てきた。衝立で仕切っているため、こちらに司令官の身体は見えない。しかし、身体を拭く音。服を着る時に布と肌が擦れる音。髪を乾かし終えた自分には全て聴こえる。耳を澄ませ、彼が出てくるのを静かに待つ。彼は、髪をタオルで抑え、体のラインが隠れるような少しダボッとした服を身につけている。そして、その服は、以前、私たちが服を買ったところで見つけたものだった。つまり、女性用のもの。ふっくらとした服のラインが、先ほど確認した彼の身体の形を錯覚させる。
「霞。髪を乾かしてもらえますか?」
「わかった。」
彼の長く美しい髪を乾かす。彼が私だけに任せてくれる髪。こんなにも愛おしいなんて、全く思わなかった。鏡に映る彼は、目を閉じ、髪をいじられるがままにしている。それだけ信頼してもらえていると思うと、嬉しくてたまらない。
「はい。乾かし終わったわよ。」
ふわりと髪が広がる。癖っ毛なのか髪の先が少しくるんと回っている。
「ありがとうございます。やっぱり霞に任せて正解でしたね。」
「もう!」
軽く談笑しながら、彼の自室へ向かう。