「ねえ?曙?一緒に試着室って入る必要あったかしら?」
「もちろん。霞、このタイプのブラつけたことないでしょ?」
そう言って、ホックで着用するタイプの少し大人っぽいデザインのブラジャーをつけるのを手伝い始める。
「ちょ!服は自分で脱げるったら!」
後ろに曙がいる状態で、背中はもちろん、姿鏡によって身体の前側も全て見られてしまっている。とても恥ずかしい。
「はい。じゃあそれ脱いで。」
「う、うん…。」
シュルリと今身につけている下着を脱いで、自分の胸をあらわにする。その時、曙が顔を覆った様な気がした。
「曙?」
「うん。大丈夫。大丈夫だから。何も心配しないで?」
そう言って彼女は、背中から腕を回して、私の胸に合う様に被せてくれた。
「うーん。我ながら完璧ね。」
エメラルドグリーン色の柄が装飾されていて、なんだか自分が大人になった様な気がして、変な感じ。
「どう?霞。気に入った?」
「うん。これいいかも。」
「わかった。じゃあこれと同じサイズのやつ何枚か見繕ってくるから。その間に服着といて。」
曙主体ではあるものの、親身に寄り添って、丁寧に取り合ってくれる。服を着終わって試着室から出ると、曙はいつのまにか別の服を見ていた。
「あ、曙?」
「あ、ごめん。ちょっと色々見てたけど私の好みはあんまりなくて。ほら、お会計しといたから、ここでちゃいましょ?」
手を引かれて再び街の中に出る。ここは、周辺海域に深海棲艦の脅威がないからか、人口が多く、辺境という割には意外と発展している。もしかしたら、軍令部としては辺境でも、この国全体で見れば発展が進んでいる方なのかもしれない。
「ねえ!カフェいきましょ!」
先ほどまでの勢いを全く衰えさせることなく、また次の目的地を決めていく曙に振り回され続ける。
霞に結ってもらった髪を解き、新たに三つ編みに直す。少々心が傷んだものの、これからの目的の為我慢する。軍服を全て脱ぎ捨て、以前購入した服を見に纏う。身体のラインが隠れるロングスカートを履く。上には、白地のシャツと、その上に少し厚めの上着を羽織る。最後に薄く化粧をして、街に繰り出す予定だ。全ては、私のいない時の霞を見守る為、基観察する為。それと、不審な輩が近づいた時様に無力化する為でもある。
「ふふ…。曙と2人きりのところ申し訳ないですが、私も同行させてもらいますよ…。」
【やあ。なんだか楽しそうだね。】
「ッ!妖精さん…。いくらあなたでも止めるというなら容赦しません。」
【あはは。そんなことしないよ。僕もついていくことに決めたんだ。】
「え?」
【だって君、追いかけるったって彼女らの居場所なんて知らないじゃないか。】
「何言ってるんです?霞なら今、街の小洒落たカフェにいます。」
【ふうん。なぜわかるんだい?】
「おかしなことを言いますね。今霞は私の目の前にはいませんし、会話もしていません。どんなルートで街を歩くかも聞いていません。しかし、なぜ霞のいる場所がわかるのか。単純です。私は霞の行動を全て予測しています。今の所の的中率は7割5分と言ったところですね。」
【おかしいのは君だよ。】
「ほら、あなたも行くならこのカバンの中に身を隠してください。置いていきますよ?」
【わかったよ。君の予測を信じる。】
「あ。今カフェを出た気がします!急ぎますよ!」