「あの面倒なのに邪魔されなければ今頃…。だー!腹が立ちます!」
【まあまあ落ち着きなって。あんまり時間も使っていないし。】
「気分の問題なんですよこれは。」
妖精さんとの会話で気を紛らわせて入るものの、だからと言ってアレに対する怒りが冷めているわけではない。
【ところで、霞は今どのあたりに居るとかの目星はついてるのかい?】
「え?えーと……あ。」
「ごめん長引いちゃって。って柳田提督じゃないの。こんなとこで何してるの?」
「ああ、曙。べつに、ただの気分転換さ。今日は休日にしてあるからね。」
「というかあなた、赤城は?」
「誘ったんだけどね?『すみません。加賀さんとの予定があるので』ってさ。流石に先約を押しのけてまで一緒にいるつもりはなかったし。そしたら暇そうな金剛がいたから。」
「じゃああんたあまりものってことじゃないの。それでもいいの?」
「No problemでーす!理由はどうあれ愛しのテートクといられますから!」
「「たくましいわね…。」」
そのままぶらぶらと歩いていた。少し歩けば全く違う店が出てくるというのは新鮮な反面目が回る。そこら中に店があるのに、そのどれもが全然違う店なのだ。中には撤去作業を進めるところもある。流行りというものはすぐに変わっていくのだろうか?案外そんなこともない気もする。道行く若い人は皆キラキラと輝いて見えるが、その輝きの中に陰りを見せる人もいたりする。完全に感覚の話ではあるが。古そうなものや思い入れの深そうなものを持つ人ほど輝いているし、逆に新しいものを持っていたり、化粧の濃さそうな女性からはなんだかきな臭いというか、余裕がなさそうというか、なんとなく焦っているようなオーラが見える。金剛はフワフワしてて、後輩司令官は眩しい。曙は…なんだ?複雑というか、でも、その中にはしっかりしたものがある。じゃあ、司令官は?あの人からは、どんなものが見えるんだろう。私はどんな感じなんだろう。
「あ、あのお店よさそうだな。」
「んー?どれのコトデス?」
「ほら。あそこだよ。」
彼の指が示す場所は、意外にも本屋だった。
「なに?あなた本読むの?」
「もちろん。最近は推理小説にハマってるんだ。なんだかんだで予想しながら読み進めるのが楽しくて。」
金剛も知らなかった様で、目を丸くしている。もちろん私たちも似た様な顔をしている。
「なんだ?3人とも来ないのか?」
はっと我に帰って彼に着いていく。本というものはあまり読んでいないから興味もある。
【で、なんでこんなところにいるんだい?】
「いえ、私本がかなり好きなんですよ。ほら、活字って読んでいると想像力というか、脳が刺激されている気がするんです。なかなか面白いですよ。あなたたちのおかげでしっかり読めますからね。」
見たことのない小説を取り敢えず手に取っていく。
【霞たちはいいのかい?どんどん離れて行ってる気がするよ。彼女らはこんなとこに来るの?】
「そう思いますか?まあなんとでも言っていてください。彼女は必ずここに来ます。私がいるところこそ、霞が来る場所。そして、霞の向かう場所こそ私の居場所です。」
【拗らせてるなぁ。】
【ん?ねえ。あれって…】
「ああ。来ましたね。まさか彼も一緒だとは思いませんでしたが。」
妖精さんがこちらに軽蔑の眼差しを向ける。視線が痛い。
「なんですか。言ったでしょうさっきも。私の…」
【それはもういいよ。認める。だから、早く会いに行ってあげなよ。】
「なぜ?」
【彼女、少し浮かない顔をしている。きっと寂しいんだね。】
「ふむ。こっそり観察するだけに止めようかと思っていましたが…まあサプライズってことで。」
小説を会計に通しながら霞たちを見つめる。