「あなた今日1人で寝れる?」
「無理ですね。」
なんとなしに聞いてみただけだったものの、その問いかけには瞬時に答えが返ってきた。
「そう。じゃあ一緒に寝てあげる。」
毛量の多い彼の長い髪は乾かすのにも一苦労だが、それが逆に嬉しい。
「今日はああ言うのはなしだから。」
「わかってます。あなたが求めてくれた時だけですよ。あれは。」
「ならいいわよ。」
髪を纏め、脱衣所の扉を開く。
「あ。」
「ああ。2人とも先に入ってたの。」
「ええ。お先に失礼。」
「調子はもういいの?」
「ええ。心配かけましたね。」
「別に?珍しいもの見れたからいいわよ。」
キイとなる扉の中に曙は入って行った。
「じゃあ行きましょうか。」
「うん。」
火照った身体をまだ冷える夜の空気が爽やかに奪っていく。
「あ、ちょっと待ってて。」
彼女の自室へ入っていく。1人残された廊下は私1人では広すぎる。蛍光灯の光が外の景色を見せず、月は雲に隠れる。薄雲であればじんわりと輪郭が見えるものの、どうやら相当厚いようで、完全に隠れる。
「ごめんなさいね。今終わったから。」
「お帰りなさい。」
「あら。何してたか聞かないの?」
「ええ。むしろ、聞く必要はありますか?」
「別にないわ。でも…まあいいや。」
少し様子のおかしい彼女と再び歩き始める。
「霞。一杯飲んでもいいですか?」
「何を?」
「そりゃ、お酒ですよ。呑まないと今日は寝れません。」
「それなら私も一緒に呑ませてもらうけどいいかしら?」
「まあいいですけど…。」
「じゃ、間宮さんのとこいく?」
「いえ。私の部屋で呑みましょう。もう一度行っても迷惑でしょうから。」
自然に彼の自室で呑むこととなった。まあどっちにしろ彼の部屋に行くわけだが。
「どう言うのが呑みたいですか?私ビール呑まないのでそれはありませんけど…」
「適当に見繕って頂戴?」
「そう言われると難しいですね。まあこれでもどうぞ。」
ゴトリと置かれた缶はカラフルな色と果物が印刷されたものだった。
「度数も高くないですし、お酒というよりはジュースみたいな感じです。呑みやすいと思いますよ?」
彼も似たような缶を取り出してプルタブを倒した。カシュッと小気味良い音が鳴る。私も真似して開ける。
「では…乾杯。」
「乾杯。」
カチンと突き合わせ、一口呑んでみた。するとおいしくて止まらない。
「ふむぅ…久しぶりに呑みましたが…」
顔がほんのりと赤くなっている様子を見るに、きっと強くはない、どころか弱い方なのだろう。
「大丈夫?」
「うふふ。だいじょーぶです!」
すっかり出来上がっている。髪を揺らし、笑顔を浮かべている。こんなに弱いのになんであんなにお酒を買ったのだろうか。ちびちびと呑みながら見つめる。
「ん?」
見つめる私を確認した彼が少し笑う。
「どこみてるんですか〜?」
わざと服をはだけさせてこちらに素肌を見せてくる。お酒で身体が赤くなっているのに加え、髪がその中にするりと入っているその姿は理性をガンガンと刺激してくる。
「やめなさいったら。」
どんどん彼の服が無防備になっていく。よりによってなぜ前で止めるタイプの寝巻きなのか。おそらく一缶分呑み切ったようで、机にカツンと置いた。
「えへへ。かしゅみ〜。」
手を広げて彼が近づいてくる。
「ちょっと!」
「かわいいですね〜♪」
彼と私の唇が重なる。
「っ!んむ〜!」
にっこりと微笑む彼の顔は真っ赤で、お酒と羞恥心が一緒にきたのだろう。顔を隠している。酔っているからか隠しきれていない。その姿に思わず顔に手を当ててしまった。
「かしゅみ〜。うふふ。」
私の膝に頭を乗せたままスヤスヤと眠ってしまった。
「もう。しょうがないわね…。」
彼の頭を撫でると、くすぐったそうに身を捩らせる。