※この作品はR-18です。

【艦これ二次創作】辺境鎮守府   作:スイっぴ

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夢

ぐっすりと眠る彼は先ほどまでの小さく見えたものとは全くの別人のように安心しきった顔で私の膝に頭を置いている。最初のうちは愛おしかったものの、少し経つと足の痺れが目立ってきた。幸いソファに座っていて、かつクッションが隣に置いてあったので、彼の頭に身代わりとして設置する。全く起きる気配はない。暫く伸ばして足を休める。すると、彼は起きていないはずなのに目にじんわりと涙が浮かんできた。わかるのだろうか?私が近くにいないということが。そっと頰に手をあてがうと、再び静かに眠った。足の痺れも取れた頃に彼を担いで布団へ導く。思ったよりも軽く、拍子抜けしてしまった。艦娘の力によって普通の人間よりも身体能力は高いが、それにしても軽い。本当は中が空洞になっているんじゃないか?布団に寝かせ、その隣に私も入る。こっそりと大きめの布団に変えたので、わざわざ抱き合わなくてもしっかり包まれる程に大きい。彼の眠る顔をまじまじと見つめていると、

「か…すみ…。」

一言だけ呟いた。夢の中ですら私が出てくるほどに私を愛している彼は、私に半ば狂気的なまでに依存している。しかし、今の私も彼に負けず劣らず依存している。共依存とは恐ろしいもので、片方がいなければもう一方が無事でももう片方の事を思うがあまり自分の方が疲弊する。彼はそのいい例である。今は大人しく眠っているが、先ほどの酒や、彼から睡眠に誘ってくるというのは普通ではあり得なかった。いつもの調子での会話ができなかった。そして、極め付けは彼が声は抑えつつも涙を流したという事だ。普段ならあり得ない。いつも飄々としていて、私たちを揶揄っているはずの彼があんなにも弱々しくなる程なのだ。彼の中で何が起こったのだろうか。どんなに想像してもきっと彼にもわからないようなことが原因なはずだ。そういえば両親のことが嫌いと言っていた。私には親という存在がいない。無論曙にも後輩司令官の金剛にもいない。艦娘には理解できないようなトラブルでもあったのか…はたまたただ嫌っているだけなのか。こんな事を考えてもしょうがない。しかし、わかっていながらもやめられないのはそれほどまでに私が彼を好きだから。共依存で、お互いがお互いを想いあって離れたがらないから。今朝も私は司令官から好きにしなさいと言われて街に行ったけれど、第一には司令官の姿があった。彼と一緒に居たかった。街に出ても、私自身はあまり動いていない。主導権は曙にあった。楽しくなかったからではない。もちろん楽しかった。けれど、ずっと、頭の片隅のどこかには

『司令官がいれば…』

と考えていた。脳が焼かれあっている。私は、彼になら殺されたっていい。そう断言できる。もちろん彼は私のことを殺すことは永久にないだろう。彼もまた私に殺されてもいいと思っているはずだ。これは、一種の信頼であり、殺意に似た愛情だ。私は今日、彼を誰の目にもつかないところに追いやって、私だけを見て欲しいと思った。自分でも歪んでいると思う。もちろん彼がこんな事を望むはずもない。彼は私の嫌がる事をしたくないと言った。私だって、彼が傷つくような行為は絶対にしたくない。でも、たまに私の中から私にも制御できないような感情がどどっと押し寄せる。とても怖い。この本性を彼が知ってしまわないかが。これを知られて失望されたくないから。離れられたくないから。だから、必死に取り繕って、あくまでも彼が近くにいる"だけ"で幸せであると錯覚してもらわなければいけない。こうしていないといけない気がする。別に誰に責められるわけでもないけれど。

「すう…すう…」

人形のような美貌を持つ彼が私の目の前にいる。今日はあんなに激しいことはもうしない。けど、これくらいなら、別にいいだろう。彼の額にキスする。そして、彼の身体に手を回し、彼の温もりと物足りなかった気分を満たした。

 

目を開けると、真っ白な空間にただ私を見つめながら立つ霞が見える。微動だにせず立ち続ける霞に近づく。しかし、私が近づくたびに彼女が離れる。どれだけ頑張って走っても、彼女が離れていく。左腕が袖からずるりと落ちる。そこから溢れる血をボタボタと垂らしながら離れていく彼女の背を追う。視界が突然地面を向く。両足がひしゃげ、そこかしこから血が吹き出し、傷みが襲う。残った右腕で体を運ぶ。突如上から私に向かって釘が刺さる。腹部が貫かれ、さらに増した痛みによって息をすることすらままならない。豆粒ほどに小さくなった彼女へ追いつこうともがく。ぶちぶちと肉が裂け、さらに血が溢れ、上半身のみになる。下半身を捧げて自由の身となった私の頭上に一つの陰が覗き込んでくる。無理矢理体を表に向けられ、その正体を表す。霞が虚な目でこちらを見つめる。痛みは消え失せ、希望が生まれる。そっと彼女が、私の首を優しく包み込んだ。徐々に力を込め、次第に骨の軋む音が響いていく。自分でもよくわかる。今から彼女に骨を歪められ、折られ、絶命する。ああ、こんなにも幸せな最期があるだろうか。天寿を全うするより、華々しい戦死より、何よりも彼女の手で葬られるこの死こそが私にとっての最上の死である。ゆっくりと、意識がぼやける。こんなにも素晴らしい光景すら、全てを見終わることなく果てる自分に嫌気がさす。首の骨が折れ、同時に私の意識が遂に消え去った。

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