今日も今日とて街にいる。ただし、艦娘用の艤装を展開した状態でだ。不審者を見つけるための警備活動のはずがむしろこちらの方が危険に見える。
「そういえばどんくらいやればいいの?」
「好きにやって貰えばいいとは言われたけど詳細な時間までは…」
「結構いい加減ねぇ。」
艦娘がこんなことをしていれば不審者なんて出るはずないだろうと思いながらふらふら歩く。司令官は猫が無理なためもうあの道を通る気はないそうで、今回は鎮守府に待機だ。
「クソ提督の猫嫌いにも困ったものよね。なんであんなに避けるのかしら。」
「なんか色々あったみたいよ?歩けば威嚇されたり逃げられたり引っ掻かれたり…」
「壮絶ね…。」
他愛のない話ばかりが出てくる。街並みはやはり発展していて、これと言って目立つような人間はいない。
「というかあれにのってた大男って柳田提督よね?あいつはなんでこれに行かせようと思ったのかしら。別にほっといてもいいのに。」
「全然気づいてなかったわよ。」
「そんなことある?」
「それがあるのよ。私に任務内容を伝える間もずっと真剣な顔してたもの。」
「それは重症ねえ。」
今日は仕事ということで店の中には入らない。しかし、常に目を光らせていないと見失ってしまうことがあるというもの。
「大通りばかりじゃなくて裏路地とかも見とかないと。」
「確かにそうね。」
人気のない、妙な寒気のする路地だ。お世辞にも治安が良いとはいえなさそうな雰囲気。シャッターは閉じられ、そこにはスプレー缶によるラクガキがされている。壁の塗装は剥げて、いかにも輩が溜まっていそうな感じだ。けれど、その雰囲気に反して人の気配は全くない。
「なんか不気味ねぇ。霞、大丈夫?」
「ええ。」
本当はあまり大丈夫ではない。しかし、怯えているだけでは終わらないので、自分を無理矢理動かす。すると、どうしたことか小さな子供がうずくまっている。ぱっと見は小学生くらいの女の子。何故こんな場所にいるのかは気になるが、まあこれも治安維持のため必要な行為としておく。
「あなた、ねえ。大丈夫?」
屈んでその女の子と視線が合うようにして話しかける。
「え?お姉ちゃんたち誰?」
「私たちは艦娘よ。知ってる?」
するとみるみるうちに顔がぱっと明るくなり、不安な表情は消え失せた。
「艦娘って、あの艦娘!?」
「どのことかわかんないけどきっとその艦娘よ。」
やったやったと喜びを全身で表現する彼女は本当に楽しそうで、じっと見つめてしまう。
「ところで、なんで泣いていたの?」
「えっとね、お母さんとはぐれちゃったの。」
「こんな路地で?」
女の子の顔が少し曇る。
「いつのまにかここにいたの。」
子供ゆえの無邪気さで起こってしまったようだ。
「じゃあ一緒に探しに行く?」
「!うん!」
「曙は別の場所を見てきて?私はこの子と行動するから。」
「了解。」