足早に交番を後にする。まるであの少女から逃げるように。あの子のことはもう考えないように、とにかく早く曙と合流しに行く。しかし、どこにいるかは見当もつかない。周りに人間はたくさんいるのに自分だけが隔絶されたように感じる。孤独感が押し寄せ、潰されるような圧が体にのしかかる。息苦しくなって、顔が熱くなる。艤装を展開しているのだからすぐにわかる。曙も、私のことはすぐに見つけてくれる。そう信じていないと、壊れてしまう。
「あ!霞!あの子は?」
聞き慣れた声に、先ほどまで揺れていた視界が焦点を取り戻す。
「曙。ちょっと難しそうだったから警察に任せちゃった。」
「なんだ。そうだったの。なら安心ね。ところで、さっきまでうずくまってたけど、何かあった?」
「別に…大したことないから…。」
少しムッとした表情になって、
「この仕事は融通きくんでしょ?じゃあもう帰っちゃいましょうよ!大丈夫、変な奴もいなかったし、あの子も交番に届けた。それに、警備する私たちが弱ってたら本末転倒でしょ?」
確かにそれらしい理由を連ねられる。今の私には余裕がない。確かに、もう十分仕事はしたはずだし、司令官からも具体的な時間は聞いていない。
「…じゃあ帰ろうかしら。」
「うん!それがいいわよ!」
ニコニコと笑って私の手を取る。周りから見れば兵器が並んでいる絵面だ。しかし、それを感じさせないような曙の笑顔が全てを忘れさせる。
鎮守府に着く。まだ数時間しか離れていないのに数十日離れていたのではないかと錯覚するほど疲れている。
「ほら、早くクソ提督に報告してきて頂戴?」
「うん…わかった。」
いつもの廊下を歩いていく。すると、遠くからドアを勢いよく開いたと思われる音が響いた。それに呼応するように、地鳴りと共にズダダダと足音が近づいてくる。
「霞ー!」
目に涙を浮かべた彼が突進してくる。そのまま受け止め、惰性で頭を撫でる。
「一体全体どうしたっていうのよ。」
「少し寂しくてですね…あなたたちさえ良ければこの任務を蹴ろうかと…」
重症かもしれない。流石に彼の個人的な意見で任務を放棄、突っぱねることは軍人として許されないものだと思う。
「一回落ち着きなさいよ。別にその任務は私と曙がいかなきゃいけないものでもないでしょ?明日の分は無理言って曙に任せるとか色々あるんじゃない?」
「最近曙に甘えすぎな気がするのでそれはダメです。」
突然冷静に意見を述べる。彼の情緒は変化しすぎである。
「それなら明日も同じように出撃しちゃうけど…いいの?」
「よくはないですけど…ダメとは言えないです…。」
目を俯かせる彼の弱々しい姿は無防備だ。
「明日も早めに帰ってくるから。ね?安心して待ってなさいな。」
諭すように話す。私もあまり余裕はないが、流石に分別をつけないといけない。
「わかりました…。わかりましたが、少し我儘を言ってもいいですか?」
「?いいけど…。」
「なら、私の膝の上に座ってもらってもいいですか?」
司令室の椅子に私たち2人が重なって座っている。なぜかはよくわからない。膝の上にとりあえず座る。彼の脚は細く、少しでも力を込めればすぐにぽきんと折れてしまいそうだ。私の体に腕を回し、頭に頬を擦り寄せる。