シャワーから浴びるお湯の温度もわからないほどに緊張している。あたしの背中の向こうでは加賀が身体を洗っている。チラリと見えた、加賀の玉のような身体。頭の中はそのことでいっぱいだ。水を弾く音が響いて、加賀の身体を流れる雫のことすら浮かんでくる。さっさと身体についた汚れを流し、湯船に身を沈める。少し遅れて、髪の毛を大雑把にまとめた加賀がちゃぷんと湯船に浸かる。少し目を向けるとそこには目を細くして、暖かさを感じる加賀の顔があった。たわわに実った二つの果実が、表面だけ浮かんでいて、初めて見る大きさのそれから目が離せなくなる。片や私の胸部は、わずかな膨らみすらない。この格差に理不尽半分興奮半分でいる。
「曙…。」
「なっ、なにかしら?」
突然の呼びかけにひどく動揺した声で応える。まさかばれてしまったのだろうか?出会ったその日にこんな視線を送っているのがわかってしまったのか?
「これ…すっごく気持ちがいいのね…。」
「で、でしょ?」
ばれてはいなさそうだった。それがわかるだけでもだいぶ安心する。モヤモヤと湯気が立ち上り、それによって曖昧になる加賀の身体は妖艶な雰囲気を纏い、あたしの理性をガンガンと刺激する。
「そろそろ出ようかしら…。」
必死に平静を装って、この場から退散しようとする。しかし、それを許してくれないのが加賀である。
「待って…。あともう少し…。」
惚けた顔で、身体を赤くしながら初めての湯船に浸かる彼女は見た目との大きなギャップを感じさせ、同時にもどかしい感情を湧き立たせる。
「いや、のぼせちゃうといけないから…」
実際のところはもっと入っていてもいいくらいだが、逃げるための言い訳として普段の自分のルーティンとは違う行動を選択する。
「なら…私も出ます…。」
薄々予想はしていたが、まさか的中するだなんて。先ほどの食事前の様子からもわかっていたけれど、この加賀という艦娘は寂しがりや。それもとびっきりのやつだ。しかも、あたしがいないといけないらしい。このままではこちらの身が持たない。しかし、身体を湯船から持ち上げる加賀には、あたしの思考を麻痺させるに十分足りうる魅力があった。結局、2人で一緒になって脱衣所へ出る。彼女の身体を滑り落ちる水滴が、床にぽたりと落ち、あたしの身体に浮かんでいる水滴もまたぽつりと落ちる。タオルでさっさと身体を拭き、寝巻きに着替える。
「曙…。手伝ってもらってもいいですか?」
「えっ!?」
予想外の一言が耳に入ってくる。ブラの付け方がわからないらしい。あたしには刺激が強かったものの、なんとか堪えて実践しながら教える。
「ああ。なるほど。理解したわ。」
そう言ってテキパキと服を着ていく。パタンパタンと浴衣の裾を折り、すぐに移動し始めようとする。
「待ちなさいよ。髪乾かしてないでしょ?」
無理矢理座らせ、ドライヤーで強制的に髪を乾かす。気持ちいいのか、うつらうつらと首を動かしている。動くたびに襟元からチラリと加賀のぷっくりとふくらんだ突起が見え隠れする。
「はい…終わったわよ…。」
なんだかどっと疲れた。自分の髪をささっと乾かし、簡単に結んで廊下に出ようとする。加賀がついてこない。
「あれ?加賀?」
加賀の座っていた方を見ると、目を半分ほど閉じて、首がかくんかくんと前後していた。ものすごく眠そうにしている。
「もう!そんなとこで寝たら風邪ひいちゃうわよ!ほら、立って!」
「ん…はい…。」
ふらふらと立ち上がり、あたしの方まで歩いてくる。きゅっとあたしの服の裾を掴み、ほのかに口元を綻ばせた。
「もう!それやめてって言ったじゃない!ほら!手ぇ繋いであげるから!」
少し乱暴に言ってしまったかなと後悔していると、不意に啜り泣く声が上の方で聞こえた。まさかと思ってみると、目から涙を溢す加賀がいた。
「すみませ…うぐ…。」
「あぁ…ごめ…。怒ってないから…。」
突然泣き出されて驚いたものの、手を握ると、途端に緊張が解けたのか、涙は落ちなくなり、代わりに顔がより柔らかなものに変わった。ドキドキと高鳴る心臓と一緒に自室へ向かう。自室の扉を開けた先は、いつの間にか和風に様変わりしており、敷布団が2枚敷かれていた。きっとあの妖精さんの仕業だろう。勝手に決めつけたが、それ以外考えられない。まあ、寝れるならなんでもいい。それほどこだわりもなかったし。
「ほら、あんたはこっち。あたしはこっちに寝るから。」
素直に布団に身体を潜り込ませ、私もそれを見届け、室内灯を切ってから布団に潜る。窓からは、少しかけた月がこの部屋の窓に光を差し込ませ、加賀の顔をぼんやりと写した。綺麗な寝顔。私の初建造艦。あたしにすごく懐いて、離れようとしない。図体の割に寂しがりで泣き虫。けれど、そのどれもが魅力的で、私を夢中にさせようと企んでくる。そっと彼女の頬を撫で、目を閉じた。