曙と加賀が2人揃って食堂に入ってきた。2人ともなんだか気まずい雰囲気を醸し出しつつ、手はしっかりと繋いでいる。
「あんたらやっぱり仲良いわね。
「…ありがと。」
「どうも…。」
「ほら、早く食べちゃいなさいな。」
「あれ?そういえばクソ提督は?」
「まだ寝てるわよ。」
「またやったの?でもそんな声聞こえなかったし…。」
「違うわよ!まだ起きてないだけだから!」
変に勘違いされても困ってしまう。ついムキになって、あたかも正解しているような反応をしてしまった。
「まあ隠さなくてもいいけどね。あんたらケッコンしてるんだし。」
「え。」
「あーもう!ばか!」
…怒って出ていってしまった。流石にからかいすぎたかな。
「あの…。」
「ん?何?」
「霞と提督は結婚しているんですか?」
「ええ。カッコカリだけど、まあそのうち本当に結婚しそうな雰囲気ではあるわよ。それがどうかした?」
「いえ別に…ただ意外だなと。」
「そう。まあいいや。早く食べましょ。今日の仕事、加賀もついてきてね。」
短く話を済ませ、間宮さんお手製の朝食を食べる。加賀はまだ朝だと言うのに、昨日のようにどんどん食べていく。
「相変わらずよく食べるわねぇ。どこにそんなに入ってるの?」
うーんと悩む素振りを見せつつも、しっかりと口は食べ物を噛んでいる。そして、数秒後に首を傾げながら、胸を指した。なるほど。喧嘩を売っているらしい。
「何それ嫌味?」
「あ…いえ、その…。私にもわからないので…。気づけばお腹が空いていると言いますか…。」
「別にいいけどね。いっぱい食べてくれるなら間宮さんも嬉しいだろうし。」
会話は途切れ、2人とも静かに食べ物を口に運ぶ。暫くあと、クソ提督が寝ぼけ眼で霞に誘導されながら入ってきた。
「あ、来たのね。」
「ああ。2人ともおはようございます。」
大きな欠伸をつき、先に着く。霞がクソ提督の為に食事を運ぶ。
「ちょっと。だらけすぎじゃないの?霞に甘えてばかりはダメよ。」
「耳が痛い言葉ですね。善処しますよ。」
当の霞本人はにっこりと微笑んで、クソ提督が食べる様子を観察している。
「ふう。ご馳走様でした。」
「あ、食べ終わった?」
「ええ。美味しかったですね。」
「そう言うことは間宮さんに言いなさい。」
「曙ともすっかり打ち解けたようで何よりですね。今日の仕事は3人でいってきてください。加賀は曙と必ず二人行動で頼みます。まあ、必ず別れる必要もないですけれど。」
加賀の顔が明るくなり、あたしの方を見つめた。まっすぐな視線を浴びて、少し恥ずかしくなる。
「今日は2時間くらいこの辺りを巡回、警備して、そこからは加賀の生活用品を買うってことでいいかしら?」
「異論なーし。」
「問題ありません。」
「よし。じゃあ行くわよ。」
少し仰々しく始めたものの、要は昨日とほぼ変わらない。適度に歩いて、適度に帰る。何かあれば、その都度対応。少し雑でも案外なんとかなるのがこの街の治安の良さを物語っている気がする。結局、2時間と言う限られた時間はあっという間に過ぎて、加賀に必要なものを探しに行くことに。
「で、何がいる?」
「え?えっと…。うーん。」
腕を組んで、思考を深く沈めている。
「特に何も…?」
「じゃあ服屋でいい?流石に同じ服ばかりは嫌じゃない?」
「曙が言うなら…。」
加賀の行動理念は基本曙主体で、逆にいえば自分1人ではどうにもできないかもしれないと言うことだ。別に困らないからいいけれど、少し不安になる。
「うーん。やっぱり大きいわね…。」
「すみません…。」
「いや?かなり立派だし、誇っていいわよ?」
「そうですか…。」
頬を赤らめ、曙と並んでいる。すごく微笑ましい。特に欲しい服もない私は遠巻きにそれを観察する程度にとどめる。
「あ!これとか良さそう。」
「これ…ですか。」
2人は加賀の下着を選んでいて、しかもサイズがサイズなだけに、よほど大きいものでないと入らない。ヒップはそれほどでもないのにバストがどんと主張しているから、上下のペアがあまりないのが悩みのタネだったのかも。
「これ、あそこの試着室で試してみて。しっくりきたらそれ買っちゃうから。」
「わかりました。」
肩までのサイドテールを揺らしながら試着室へ消える。
「ねぇ曙。加賀と何かあったの?」
「うぇ?」
「いや、今朝の様子が少しおかしかったから、聞いてみただけ。」
「えっと…。加賀ってさ、大人っぽいじゃない?」
「まあそうね。」
「でもさ、あたしだけには加賀の素を見せてくれるわけ。で、それがあんまりにも無防備だから、昨日の夜からずっとどきどきしっぱなしってこと。」
「そうなの…。というか、加賀のこと見守らなくていいの?ずっと見てたけどあの子相当曙に依存してるわよ?」
「わかってるわよ。今朝も…。いや、やっぱいいや。」
話をそこで切り、加賀に合う服装選びを再開させる。雰囲気は和風というか、お淑やかな感じが似合いそうだと勝手に思う。曙もその考えは同じなようで、早々にこの店の物色をやめた。
「加賀ー?大丈夫ー?」
「あ、曙。あの、えと、こ、これ。欲しい…です。」
そう言って曙に恥ずかしそうに下着を渡す。
「わかったわ。」
受け取る時に、曙が唾を飲み込むのを見逃さなかった。