※この作品はR-18です。

【艦これ二次創作】辺境鎮守府   作:スイっぴ

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謝罪

だいぶ落ち着きを取り戻し、涙も止まった。彼はふわふわした笑顔を私に向けた。

「じゃあ、お風呂に入りましょうか。」

「うん。」

脱衣所までの道が妙に長く、いつまでも辿り着きそうにないほど時間が経過していると錯覚する。彼は穏やかな顔で私の手を握り、ゆっくりと私の歩幅に合わせている。

服を脱ぎながら思う。彼は私を愛しているし、私も彼を愛している。けれど、その愛情がもし暴走してしまったらどうなるのだろう。私はきっと彼を殺してしまうかもしれない。彼を殺して仕舞えば、ずっとずっと彼に会うことは叶わなくなる。そしたらきっと私は自分から沈みに海に出るだろう。人は死んだら天国に行けるが、艦娘はわからない。所詮は人間の見た目をした兵器にすぎない。心臓の鼓動も、体温も、思考も、涙も、結局はヒトの真似事。ヒトに似ているからと言って、全てがヒトと同じように済むわけがない。怪我をすれば人間は暫く安静に治療しなければならない。私たち艦娘は怪我をしても入渠したり高速修復材を使えばすぐに直る。食事だって、確かに食べてはいるが、最悪なくたって動くことはできる。燃料と弾薬さえあればなんとでもなるのだ。こんな身体でも、彼は私のことをヒトのように愛し、守ろうと動く。一方私は護衛艦として司令官に選ばれたのにその責務を果たすことなく彼のことを守れなかった。悔しかった。苦しかった。彼の心に溜まっていく錘を私は感知できなかった。自分の不甲斐なさに嫌気がさす。

「霞。何か考え事ですか?」

司令官は私のことをなんでも察知して、こんなふうに私を気遣う。彼の方が苦しんでいるのに、私のことを気遣う余裕なんてないはずなのに。いつもこうだ。私の方が彼を頼っている。

「別になにもないわよ。先入ってるから。」

こういう時ばかりは素直になれない。弱みも何もかも知られているのになぜ言えないのか。全くわからない。意地を張っているのかもしれない。でも、なにに対しての意地なんだろう。そう言えば、彼と風呂に入る時は私が少しだけ早く入る。いつも彼が入るまでに私の身体を洗って、彼のサポートをできるように準備する。この時間が、一番最初に会った時から不安だった。私の見ていないところで彼がどこかに行ったりしてしまうんじゃないかと怖かった。でも、最初はこの感情のことを知らなかった。なんだかモヤモヤする程度に思っていた。けれど、彼とケッコンカッコカリをしてからこの感情がとにかく強くなった。シャワーから放たれるお湯が私の身体を打ちつける。私の心の弱さにまるで銃撃を浴びせるかのような痛みを感じる。また、涙が出そうになる。もうすっかり枯れたと思っていた涙は再び溜まる。

「待たせましたね霞。今日もお願いします。」

涙をお湯で流し、彼の方に顔を向ける。腰にタオルを巻いて彼の股間が隠されている。そこはすでに私がみたことのある場所だ。けれど、隠す。私も自分の身体を浴場で曝け出すことはなんだか恥ずかしくてタオルを身体に巻いている。司令官が私の隣に腰掛ける。ふうと一息ついて、シャワーからお湯を出し、それを浴びている。髪から垂れるお湯が地面に流れるのを見る。

「じゃあ髪洗うから。」

いつもよりそっけない自分の声色に自分で驚く。シャンプーを手に乗せ、彼の髪を洗う。もこもこと泡立つのを見ながら、彼は少し前屈みの姿勢で洗いやすいような体勢になる。彼の長い髪は絡まらずに私の手の中を抜けていく。

「はい。終わったからお湯だして。」

キュッと音を立てて蛇口をひねる。彼の泡を全て洗い流す。

「スッキリしますね〜。」

彼の声が響く。どこへ消えたかもわからぬうちにその声の振動は私の耳から遠ざかる。

「ねえ司令官。もうあんなこと二度としないでよ。」

「あんなこと、とはあのことですか?」

「それ以外ないでしょ。すごく不安だったんだから。」

ボディソープを泡立てながら彼は困ったように笑った。もっともその顔は鏡に反射したもので、本当の彼の顔ではない。

「私もいつの間にかやってしまったものですから。流石にもうないと思いますよ。」

「思うじゃなくて、やらないで!」

私の叫び声が彼の身体を硬直させた。

「あ…ごめ…」

彼がくるりと私の方を見て頭を下げた。

「すみませんでした。誓って、もうしません。」

彼のことをまた傷つけてしまった。顔は笑っているけれど、私に対しての本当の気持ちなんてわからない。また悲しくなってくる。

「わかったなら…いいから…」

もう一度私に背を向けた。今度はお互いになにも喋らず身体を洗っている。彼の背中の大きさが私に対する壁のように感じて、苦しい。シャワーで石鹸を流し、湯船に向かっていく。少し離れた場所に座って、お湯が私たちを包む。

「霞。少しこっちに。」

「…」

なんだか彼の近くに行くのが申し訳なくて、動きにくい。ゆっくり身体を動かして、波を立てないように近づく。ぴとりと湿った肩を触れ合わせる。

「霞。別に気負わなくてもいいんですよ?」

「いきなりなによ。」

「少し気になっただけです。」

彼の頭が私の顔に向けられる。整った顔を水が流れ落ち、髪の先に水滴が溜まる。彼の腕が私に伸びる。頬を優しく撫でられる。顔が熱を持ち、堪えられなくなる。

「ずっと私のそばにいてくださいね。」

「離れるわけないでしょ。あなたの方こそ、私から離れないでよ。」

「当然ですよ。」

彼は無言で私の顎を手で引き、唇に柔らかい感触を与えてきた。

「…もう。」

身体が熱いのはきっとこのお湯のせいだ。

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