身体に溜まった熱を湯船から持っていく。タオルを巻き直し、脱衣所へ行く。突然彼が後ろから抱きしめてきた。
「…何よ。」
「少しこうしたくて。あともうちょっと、我慢してください。」
「湯冷めしないうちに終わらせてよ。」
身体に回された腕にそっと手を触れ合わせる。
「大体満足です。」
「ならよかった。」
彼が私の身体をそっと抱き上げようと右腕を動かす。
「ありがと。」
私はそれを見て、首に手を回す。ふっと笑って私の足を右腕で支え、背中を左腕の肘だけで支える。心の中にぽぽぽと温かいものが湧いてくる。
「カッコつけさせてくれてありがとうございます。」
「わざわざやらなくても十分なのに?」
「やらなきゃいけないんですよ。」
「ほら、さっさと服着なさい。ご飯食べなきゃ。」
はいはいと彼は寝巻きを纏い始める。私も彼に背を向けて、少しキツくなった胸を布に仕舞い込む。あんまり長居しても曙や加賀に迷惑がかかるので、急いで髪を乾かす。長い髪がバサバサと風にのっている。
「ほら、あなたも早くこっち来なさいよ。」
ゆっくりと向かってくる彼は少し火照った身体と湿った髪を携えている。ポタリと水が床に落ち、じんわりとその跡が広がる。
「ちゃんと拭いてから来た方がいいわよ?」
「あ、すみません。」
彼の肩にかけられていたタオルが彼の髪を拭き上げた。まあそれでも片腕では満足には拭けない。自分の髪をいつも通りサイドで纏め、彼にドライヤーを持って近づく。
「ほら、座って。」
「どうも。」
彼の長い髪から、拭ききれなかった水が吹き飛ばされる。その水がまた床に染みをつけていく。流れる髪が私に触れるのが嬉しい。
「あなたの髪って結構綺麗よね。」
「霞の管理がいいですからね。」
「元々のポテンシャルがいいのよ。」
チラリと見える耳がほんのり赤く色付いているのがわかった。
「もう終わったから。晩御飯もらいに行きましょうよ。」
彼の髪を団子状に纏めて言う。
「そうですね。」
ゆっくりと立ち上がって、彼の髪がはらりと垂れ、彼の大きさと私の小ささが顕著にわかった。
「あ、出たみたいね。次あたしたち入るから。」
「わかりました。すぐ出ますよ。」
湯気が少し昇りながら曙と加賀の隣を抜けていく。
「…お二人は一緒に入るんですか?」
「あたし達だって二人で入るじゃない。それと変わんないわよ。」
「違うと思うのですけど。」
「あ!お待ちしてましたよ〜!」
「どうも間宮さん。」
「晩御飯もらえるかしら?」
「もちろんです!さあどうぞ!」
白米にたっぷりと盛られたカレーが私たちの前に出される。
「おお。何気に久しぶりな気がしますね。」
「うふふ。やっぱり皆さんお好きですから。二人も喜んでくれましたよ!」
鼻腔に香るカレーの匂いが食欲を刺激する。気づいた時にはスプーンでカレーを掬い上げていた。彼は平然と口にそれを運んでいる。私はというと初めて食べるので、緊張してしまう。ゆっくり口に運んでみた。いろんな味がブワッと広がった。美味しいと唾液が分泌されるというのをどこかで聞いた。今まさにそれが私の身体に起きている。視界の端で間宮さんがふふふと笑っているのが映った。自分が夢中になっているのが見られてしまって少し恥ずかしい。