※この作品はR-18です。

【艦これ二次創作】辺境鎮守府   作:スイっぴ

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時刻を書くのにこれからは数字を使います


安心

再び目を開けたところは昨日の夜に最後に見た景色に光がぼんやりと差し込んでいる。私たちの自室だった。時計は4時7分を指している。隣には司令官が穏やかな寝顔でそこにいた。まだ夢とも現実とも定かではなかった。もしや…そう思って彼の頬をそっと撫でた。ほのかに暖かく、血色が良い。胸に手を当てると少しゆっくりな拍動を刻み、これが現実であることを証明する。持ち上げた身体がだるく、重い。汗が身体中から噴き出している。彼の姿とは対照的に疲労と精神的なダメージだけが身体に残る。なぜあんな悪夢を見てしまったのだろうか。あの夢は、きっと私が駆逐艦霞として動いていた時のものだろう。二度と見たくない。時雨が、大和が、私の知らない艦娘が沈んでいく。彼が私の目の前で死んでいく。私のせいで死んでいく。そんなのは、見たくない。考えたくもない。バクバクと高鳴る拍動はゆっくりと落ち着きを取り戻し、冷静な思考をしようと空気を取り込み始める。まだ寒い早朝の空気が肺に流れて、少し苦しくなる。

「う…ん」

司令官がゴロンと寝返りを打った。この姿が私のすり減った精神をじんわりと癒し、同時に寂しさを湧き立たせる。もう一度布団に潜り込み、彼に抱きつく。彼の大きな身体が、私の腕でも抱えられる細い身体が私の肌に触れた。暖かい体温のおかげで安心する。また、じわじわと眠気がやってくる。寝るのはもう怖い。けれど、少しでも今の苦しみから逃れられるならと私の脳は私の意思とは逆行して眠ろうとする。

 

日差しが瞑っていた瞼に差し込んでくる。その眩しさに無理矢理脳を起こされる。

「はぁ…。朝ですか。ほら、霞。起きてください。」

私のことをギュッと握って可愛らしい寝息を立てる霞の肩をゆさゆさと揺らす。

「う…あれ?」

ばっと身体を起こし、私の身体にまた抱きついてくる。

「どうしました?怖い夢でも見ましたか?」

「司令官…司令官…。」

涙を流しながらずっと呼んでくる。その姿が私の心の中を刺激する。

「大丈夫ですよ〜。私はどこにも行きませんよ〜。」

頭を撫でると、それが終わらない様にと霞も頭をぐりぐりと押し付けてくる。時間なんて今はいらない。霞が私を求める限り、私は霞の近くに居続ける。霞の左手にはまる指輪がキラキラと光を反射し、幸せな輝きが私の角膜に入ってくる。

 

暫く泣いたら落ち着いた様で、今は私の手を繋いでいる。少しづつ涙は溢れる様で、残った腕で目を擦っている。

「あんまり擦ると赤くなっちゃいますよ。」

「別にいいもん。」

今この時ばかりは自分の腕が一つしかないことを恨んだ。私の身体だけで霞を包容することができない。こちらに寄せることはできても、霞が離れない様に包むことができない。

「あのね…」

霞がやっと口を開いた。

「司令官が…夢の中で私の前でいっぱい死んじゃったの…。それで…怖くて…でもどうにもできなくて…」

嗚咽混じりの独白が私に響く。霞が、これほどまでに私のことを思ってくれている事実が嬉しい。それと同時に私の存在が霞を傷つけている事実が悲しい。

「大丈夫です。私はまだまだ死ねません。霞を堪能し切ってからでないと死ねませんから。」

ボンっと霞の顔が赤くなり、恥ずかしそうに顔を俯かせた。

「そういうところです。私が霞を大切にしたいと思うのは。」

「わかったから…。もういいから…。」

耳まで赤くなった顔をこちらに向けて必死に止めようとしている。その姿に笑顔が溢れそうになる。何はともあれ、だ。ある程度収まってくれた様で何よりである。

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