彼の優しい笑顔を見ると、それまで追い詰められていたと感じていたそれが嘘の様になくなっていった。
「大丈夫ですか?」
「うん。ごめんなさいね。」
彼の手を離し、汗だくの服を脱ぐ。
「何してるの?あなたも着替えちゃいなさいよ。」
「いえ…私は後にします。」
顔を背けて、私から目線を外す。なんでかわからなかったけれど、次第に自分の今の姿を客観的に見れる様になっていった。下着姿で、身体は汗ばんで先ほどまで泣いていたからか頬が赤い。
「あ…」
今の自分を自覚すると、途端に恥ずかしくなって、彼を見ることができない。
「わ、私もう出るから!」
まだ着終わっていない制服を靡かせて部屋を飛び出した。身体の中に熱を持ち始め、心臓の鼓動がうるさくなる。少し動揺しながら胸元のリボンを結び、着替えを完了させる。暫く悶々とし、彼が出てくるまで待っていた。
「すみません…配慮が足らなくて…」
「別に…あなたは悪くないし…見られても…」
「何か言いました?」
「な、なんでもないったら!早くいくわよ!」
間宮さんの待つ食堂へ行く。途中で、曙と加賀に会った。
「おはようございます。」
「おはよう。二人とも何もなかった?」
「はい。何もないですよ。ね?霞。」
「ええ。」
「ふーん?そうなの。」
加賀は曙の後ろで静かに立って、こちらに威圧的なオーラを放っている。
「えっと…何かあるの?」
「いえ…何もありません。」
少し怖い。けれど、加賀の曙を見る目は真っ直ぐで、少しの濁りもない。
「あ!聞いてよ!昨日の加賀ったら…」
「曙!?」
加賀が顔を真っ赤にして曙の口を思い切り押さえた。
「むぐ!」
「おやおや。そちらも色々あった様で…。」
「…頭に来ました。」
賑やかな朝だ。あの夢の様なことは起きていない。みんな暖かい。そのままの調子で食堂へ行く。
「おや、珍しいですね。みなさん一緒なんて。」
「おはようございます。今日も朝ごはんいただきますね。」
「ええもちろん!さ!どうぞ!」
私と司令官と曙はいつも通りの量で、加賀は私のより量が数倍程度には多い。静かに食べ、ゆっくり時間が流れる。みんなが食べ終わる頃には、すっかり眠気も覚めた。清々しい朝というにはいささか物々しい夢ではあったが、今の気分はとても軽い。
「さ。今日も仕事しましょうか。ほら、霞。行きますよ。」
「はいはい。今日は何かあるかしらね?」
「じゃあ、あたしたちも行きましょっか。」
「そうですね。」
今日もそれぞれの日常が始まる。ただ、少しだけ違和感があった。何か嫌な予感がする。