「なかなか練度が上がらなくなってきたのよね…」
「もう十分じゃない?」
「むしろそれ以上あげてどうする気ですか?」
「だって私が強くないと司令官を守れないし…。」
「別にそんなことしなくても大丈夫じゃない?」
「今のままでも充分強いと思いますよ?」
「ダメなの。もっともっと強くならないと…」
「こりゃ重症ね。諦めましょ。」
「そんなこと言って…」
「いつになく霞の気迫が凄まじいですネ…。」
「金剛さん。」
「ん?なんです?吹雪。」
「いえ、あの、向こうの加賀さんって少し変わってないですか?」
「んー、そう?」
「なんて言うんでしょうかね…曙さんにべったりって言うか…ほら。今もくっついてますし。」
「おー。確かにそうデスネ!きっとskinshipが大好きなんデスヨ!ほら、補給を済ませたらもう一回デース!」
「ええ!まだやるんですか!?」
「もちろんデス!」
空が茜色に染まる頃にようやく演習が終わりを迎えた。
「毎度のことながらよくやりますよねこんなに。お疲れ様でした。」
「練度があんまり上がらないんだけど。」
「そりゃそうですよ。霞は今通常よりももっと高い水準まで成長できる様になっています。その代わりにそれまで以上に経験値が必要になるのは当然です。」
「あたしは83とかそんくらいかしら?まあ上々よね。」
「私は30です。」
「お二人もしっかり上がってますね。結構結構。」
「お前らはどうだった?」
そこには息を切らし、必死で呼吸する後輩司令官の艦娘たちがいた。
「なんなんですあの人たち…まだキラキラしてる…こんなに続けてたら死んじゃいますよ…。」
「Oh…死屍累々ってヤツデース。」
「お前たちには早かったか…。明日はゆっくり休むといい。」
「助かります司令官…。」
少しゆっくりしてから後輩司令官たちは帰っていった。
「じゃあ私たちも帰りましょう。」
「そうね。」
「間宮さんのところに行きましょう曙。」
「まずは汗拭いてからでしょ。」
夕日によって影が4人分伸びる。さあっと心地よい風が肌を撫でた。
「…なんでここに?」
「ねえ司令官。この子だれ?」
「北方棲姫です。簡単に言えば、深海棲艦ですね。」
「全滅させたんじゃないの?」
「これはまずいですね。今すぐ大本営に電報を送って来ます。」
北方棲姫がいたのは司令室の前だ。どうやって入ったのか。どこから来たのか。さっぱりわからない。取り敢えず刺激しないようにそっとしておく。まず間違いなく戦闘になれば勝てないだろうと悟る。
『北方棲姫アリ 至急援護ヲ願フ』
「淡白ですが、その方がより緊急制が際立つと思いませんか?」
「何のんきなこと言ってるのよ!結構やばいでしょ!」
「やばくなったらその時は全力で逃げましょう。元々ここは私の鎮守府ではありませんから。」
「結構バッサリ切り捨てるのね…。」
「そもそも私は安全と言われてここに来たんですよ?深海棲艦がいるなんて聞かされていないので。」
「ン…?」
「「あ。」」
北方棲姫が上半身をむくりと起こし、キョロキョロと辺りを見回している。
「ココハ…?」
「ええと…鎮守府です。」
「ちょ!何口走ってんのよ!」
「チンジュフ…?ネエ。アナタタチハダレ?」
非常にまずいことになった。ここで真実を伝えれば、きっと即座に攻撃を仕掛けられるだろう。
「えっと…」
「悪い人たちではないことは確かです。」
「…。」
「ヒグ…ウウ…」
「「!?」」
なんなんだ?突然現れたと思ったら泣き出してしまった。
「えっと…落ち着いてください。」
遠くからドドドドと大きな地鳴らしが聞こえてくる。
「こんのクソ提督ー!霞泣かせんじゃないわよ!」
綺麗なドロップキックが私の横腹に突き刺さる。
「グハッ!」
「司令官!」
「ピャアッ!」
「あれ?霞?大丈夫なの?じゃあ誰が泣いて…」
「曙!はぁはぁ、走らないでください!」
「…あなただれ?」
「ウ…ヒグ…。」
「はぁ…はぁ…曙…。待ってくださ…い…。」
「クソ提督に酷いことされたのね〜。もう大丈夫よ〜。よしよし。」
「うぐぐ…あ!曙!それは…」
「あ?」
「ヒェ…」
「曙?その子はいったい…」
「知らないわよ。でも泣いてたから…。」
暫く曙に抱かれ、落ち着いたらしい。加賀はとてつもない威圧をかまし、北方棲姫にありったけの呪詛を吐いている。
「で、あなた。名前は?」
「ホッポ…。」
「ほっぽね。なんでここにいるの?」
「ワカラナイ…。オキタラココニイタノ…。」
「突然知らないところにいたらびっくりするわよね〜。大丈夫だからね〜。」
「うーん。あまりこう言う場で言わない方がいいと思いますが、深海棲艦にしては非常に可愛らしい見た目ですよね。絵として映えていますよこれは。カメラありましたっけ。」
「もう撮ってますよ。」
「後で現像した写真をください。」
「高くつきますよ?」
「あんたらうるさいわよ。この子が怖がっちゃうでしょ。」
「あー。曙。今更ですけどその子は深海棲艦です。」
「関係ないわよ。あたしたちは深海棲艦と戦う気なんてないし。そりゃ侵攻されるのは嫌だけどこの子からは敵意なんて感じないし。そもそもこんな小さな子に攻撃するなんてどうなのよ。」
「お艦…。」
「そう言えば大本営に電報送っちゃったけど…どうするの?多分今頃血相変えてると思うわよ。きっと向こうも精鋭を集めてると思うし。」
「あ…」
「?」