※この作品はR-18です。

【艦これ二次創作】辺境鎮守府   作:スイっぴ

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暁の水平線

 この鎮守府に配属されて早2年。仲間と酒盛りする機会があった。そこで彼らとある賭けを行った。この場にいる誰が一番武功をあげられるのか。

 皆一様に俺が俺がと向上心の塊だった。私はこの中では戦果が一際少なく、あの時は動きを見せなかったものの、誰よりも熱くなっていたはずである。

 そんな折、一番声のでかい男のいる鎮守府が深海棲艦の群れによって襲撃されたという知らせを受けた。あの男のいる鎮守府は艦娘の練度が桁違いで、最初はくだらない冗談としか受け取れなかった。

 そのわずか1週間後、再び似たような報告を受けた。流石に同じような報告を受けた私は人一倍臆病ゆえその時点で、あるいは1週間前のあの報告から鎮守府近辺に常に艦娘を一艦隊分の配備を命じていた。

 文句を言われこそすれ、皆命令に背くようなこともなかったためにわたしの鎮守府は深海棲艦からの襲撃を受けなかったのだろうと強く思った。

 ある日、一番最初に襲撃された男からの手紙を受け取った。

『例の賭け、覚えてるか?お前だけ他より気張っていたものな。俺はもうこの仕事を続けることができない体になった。そんな俺から、最後の頼みをしたい。俺の艦娘を、お前の鎮守府へ迎え入れてはもらえないだろうか。皆いい子だ。もちろん気に食わないのならそう返してもらっていい。』と。

 私は彼に了承と引き継ぎのための書類を送った。彼から返事が返ってくることなどなかったが、1日と経たずに彼のところにいた艦娘がどっと流れ込んできた。

 彼女らはすでに全ての事情を知っており、引き継ぎ業務もすぐに済んだ。かといってすぐに彼のことを忘れるほど薄情でもない彼女らは作戦をさせるにあたり、迷いを生むことにもなった。

 結局彼女らは一部の精鋭以外は皆鎮守府近辺の警戒を命じた。訳を話すと、血の気が引いたような顔をされ、一部の駆逐艦はえづいてしまうものもいた。それほどまでに彼が慕われていたということの裏付けになる。

「電…これで良かったと思うか?」

「電から言えることではないのです。でも、提督さんが決めたことなら、きっと大丈夫なのです!」

 彼女は秘書艦かつ初期艦の電。第一線からは身を引いたものの、私を支えてくれる艦娘である。底抜けに明るく、いつもわたしを一番に考える。

 そんな折、一つの電報が届いた。深海棲艦の動きが強まっている、とのこと。いつも言われていることが今日この日だけは理解できなかった。

 第一艦隊が帰投した。全員が大破しており、入渠ドックはすぐに満員になった。暫く出撃はないと放送で知らせ、近海の警戒にあたるよう促した。

 今回向かわせた海域は第一艦隊ならば苦戦もなくすぐに終わらせられるはずだった。

「報告します。深海棲艦の群れと衝突しました。奴らの群れは本来ならば駆逐艦やよくて軽巡程度の群れでした。しかし、今回はその中に深海棲鬼などが多数、本来出現するはずのないものばかりでした。」

「なるほど…。しかし、よく帰ってきた。暫く休暇をだす。ゆっくり体を休めなさい。」

 表向きは気丈に振る舞ったつもりだったが、隣に立つ電にはきっとそれすら見透かされている。初めてのことに困惑しつつも現状をどうにかせねばという焦りも感じる。

「提督さん。しっかりするのです!電の提督さんは、強い人なのです!」

 電からの激励を受け取り、本格的に作戦に移る。作戦といっても、それは非常に単純なものだった。

 「昨今、深海棲艦の勢力が伸びる一方となっている。この現状を打破するため、一度、この鎮守府に所属している艦娘全員で海に出て、深海棲艦の撃滅を命じる。拒否権はない。以上だ。」

 護衛として電を残したのは、彼女を特別扱いしていると言われても仕方ないと思った。それと同時に、艦娘たちの気合をひしひしと肌で感じた。作戦開始直後、再び件の深海棲艦の群れを発見した。急遽艦娘全員で対処を命じる。

 「大破のものはすぐに帰投し、入渠したのち補給と高速修復材を使用し戦闘を継続せよ。轟沈など認められない。」

との連絡を送った。皆は奮闘し、その激闘は数時間続いた。

 遂に深海棲艦側が全滅したことを確認し、念のため潜水艦に探索をさせ、完全に退けたことを確認する。誰もかけることなく、無事生き抜くことができた。その日は皆を食堂に集め、飲んで騒いでの大宴会を行った。

 事務作業と後始末、資源の大幅減少をどうするものかと思案していたわたしの目にふと登りゆく朝日を見た。

 暁の水平線に勝利を刻め。それが達成された瞬間である。

 

 その後、いくら探索しても深海棲艦は影も形もなく、暫く探索のみが行われ、再度艦娘全員で海域の調査を行った時は深海棲艦の姿を発見することはなかった。

 大本営へ報告すると、電とともに半ば無理やり大本営へ向かわされ、そのままあの鎮守府の提督を降ろされ、昇格という名目で大本営へ止まらせることとなった。

 たくさんの艦娘たちは全国の鎮守府に配属され、一際優秀だと判断されたものは大本営への配属となった。

 

 

 

 

「というわけだな。」

「…なるほど。軍曹殿は輝かしい功績を残され、そのかわりに得たものがここの指揮、ですか。名をあげるのも考えものですね。」

「そうだろう。だが、私は現状に甘んじているというのも事実。」

「ああ、少し大事な話がある。君は少し席を外してもらってもいいかな?」

「はっはい!」

そう言われると霞はドアを開けすぐに出ていった。

「元気のいい子だな。あの子は霞だろう。」

「ええ。可愛いでしょ?私の霞は誰にも譲りません。」

「ケッコンもしてないのによくもまあそんなことが…まあいいか。今回呼んだのはそのことについてだ。君に指輪と、ケッコンカッコカリに必要な書類を渡しておく。前の鎮守府で君は誰ともしていなかったな。その理由を教えてもらってもいいかな?」

「その質問はお答えできかねます。ただ、強いて言うならそんなことする暇があれば仕事をしろと皆から言われたので。」

「面白いな君は。彼女を大切にしなさい。それと、ケッコンカッコカリの条件は知っているな?」

「もちろんです。それまでは自制しますよ。」

「あと、電報なんですが、緊急時を除き送ることはないと思ってください。毎日同じことを送られてもそちらも嫌でしょう?あまりにも平和すぎるんです。」

その言葉を聞いた軍曹はそれまであった迫力が消え、かわりにくしゃっと顔を綻ばせた。

「さて霞。帰りましょう。用は済みましたよ。」

霞の手を引いて進み、大本営に別れを告げる。

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