※この作品はR-18です。

スレンダー角っ娘はデカ尻ドスケベ雌山羊~クーデレ敬語ヒロインとイチャイチャする~   作:灰鉄蝸@機甲猟兵エルフリーデ発売中

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10話「たとえばこんな勘違い」前編

 

 

 

 前回のあらすじ──気づいたら好きな男の子のちんちんをしゃぶっていた。

 

 

 

 

 いい感じの雰囲気のデートの最中であろうと、身体改変構造体は容赦がない。

 〈大淫婦の印〉という名前に恥じない効能と言えよう。

 絶賛、現実逃避気味のヤシェロは電脳と生体部品で構築された改造人種であり、記憶力抜群の知性体だった。

 

 つまり好意の最中に頭の中がピンク色に染まっていようと、後から思考ログを閲覧すればはっきりと自分の言動を認識できる。

 何も覚えていない、というような都合のいい事態は起こりえない。

 

 改変体が発現したばかりのときはいざ知らず、肉体に馴染みつつある今、そのような逃げ道はなかった。

 いっそ四六時中、性行為に耽る淫乱になりきれたらヤシェロも楽なのだろうが、そうは問屋が卸さない(地球時代における慣用表現)。

 

「……わたしは自分が嫌になってきました……」

 

 がっくりとうなだれているヤシェロは、午前の執務(船内は地球時代に則って二四時間を基本単位とするカレンダーを独自に作っている)を終えたばかりだった。

 最近、独自に船体機材に関する学習をはじめたハジメとは朝食に顔を合わせたきりである。

 

 避けているわけではない。

 しかし、流石にラブホテル連れ込みからの口淫(フェラチオ)という経験は二人にとって刺激が強すぎた。

 

「ヤシェロは可愛かったよ、うん」

 

 一見、平静に見えるハジメもやや目が泳いでるあたり、内心ではヤシェロと似たり寄ったりかもしれない。

 そもそも初体験が常人離れして絶倫を示し合うようなものだったのだから、今さら過ぎる反応だとはわかっている。

 

 しかし相互の性欲解消の手段としてのセックスに比べて、純粋な性的奉仕である口淫は、年若い少年少女にとって意味合いが異なるものだった。

 言葉に出来ないはしたなさがある。

 

 食後のお茶を運んできたエルギダが、楽しそうに口の端をつり上げている。

 身長一八〇センチ超の長身はいるだけで存在感があるのに、その足運びは優雅さを感じさせるほど自然で、気配を消すことになれていた。

 

「ハジメ様、おひいさまは"抵抗してみたけどチ〇ポには勝てなかったよ……"という古典的物語構造(テンプレート)に基づいたセックスを提案して──」

 

「──ませんからね!?」

 

 油断も隙もあったものではない。

 このままでは自分は生涯、ずっとエルギダに頭が上がらないままだろう。

 物理身体の寿命はいざ知らず、角人の電脳知性体としての耐用年数は長い。筐体(ハードウェア)の破損さえなければ軽く一万年以上は存在できる。

 

 この先、数千年もの間、エルギダに玩具にされるのは進歩がなさ過ぎてつらくなる。

 ヤシェロとて自尊心はある──自覚の有無はともかく重度の被虐性癖者(マゾヒスト)だからだ──誇りや尊厳を持たないものは、根本的に惨めさで興奮できたりしない。

 

 何よりこの船の全権限を司るシップマスターとして、威厳ある存在になりたいと思うから、現状の自分の情けなさがたまらなくなる。

 エルギダの煎れたお茶をすすりながら、ああでもない、こうでもないと目をぐるぐるさせている少女は、思考のどん詰まりという概念を体現していた。

 

「わたしだって、少しは格好つけたいんです。なのに、あんな色情狂みたいな」

 

 ううー、と唸るヤシェロは実年齢より幼く見えた。端的に言って可愛らしいのだが、当人はそれどころではない。

 エルギダの無言の目配せ──恋人ならフォローしろという感じの視線が少年に注がれる。

 

 室内センサーと連動しているヤシェロは、顔を伏せていても細やかな仕草を正確に認識していた。

 つまり、ちょっぴりハジメの慰めに期待している。

 だが、彼の口から飛び出たのは割りとひどい台詞だった。

 

「あー……ちんちんは勝ったり負けたりするものじゃなくて、上手くつきあっていかなきゃいけないものだと思う」

 

「ハジメ、熱ありませんか? 悩みがあるのなら言ってください」

 

 本気で心配になってきた。デートのとき繋いだ経路を通じて、体調診断ソフトの適用を申請してみる。

 ハジメの電脳から返ってきた結果は良好。健康体そのものだった。

 どういうことだろう。

 わからない、男の子の気持ちってわからない。

 

「おひいさま。本日は午後のお茶会にお友達がいらっしゃいます。心身を切り替えるのがよろしいかと」

 

 やや気まずい空気を霧散させるように、エルギダが笑みを浮かべた。

 一言多いのが彼女の持ち味だった。

 

 

 

 

 ◆

 

 

 

 

 遠く、星の光が瞬くばかりの深宇宙を、楕円形の人工物が移動している。

 白亜の外殻と相まって、まるで鶏卵のようなそれ──重力波推進システムを積み、斥力場シールドで宇宙塵を弾きながら航行する銀河文明の叡智の結晶。

 

 全長三〇〇〇キロメートル──最早、人工天体と呼んで差し支えない方舟。

 移民船〈天啓号〉はその巨体ゆえに当然のことながら、艦内のあらゆる機能が無人化されている。

 

 小天体ほどの体積と質量を持った船だから、居住区を行き来するだけでも一手間かかるせいだ。

 ゆえにどうしても人間──物理的身体を持つ肉体人が必要な艦内居住区は、その用途ごとにいくつかのブロックに別れている。

 

 たとえば第八管区が一〇〇万人もの人口を抱える都市型コロニー船であり、それ単体での資源循環を達成しているように。

 その役割は移民船としての趣旨、人口維持であり肉体人──地球出身の霊長ホモ・サピエンスを起源とするヒト種の文化の保存だ。

 

 このような居住ブロックの中には、船体運営に関わるブロックも存在する。

 本来、〈天啓号〉には巨大すぎる船内システムの制御を司る改造人種がおり、彼らが船の支配者として君臨していたのだという。

 

 少女はため息をついた。

 車窓から見える無人の街並みが、かつてそこに存在した種族の痕跡を伝えている。

 ここ第一管区は、かつて角人の居住区として栄えた都市であり、今ではわずか三名しか住むものがいない廃墟のコロニーだった。

 

 塵一つ落ちていない澄んだ空気は、大気浄化のため作られた微小機械群の働きなのだというが──主が消え失せてなお、都市機能だけを維持されている様子はひどく寒々しい。

 けれど彼女は知っている。

 この〈天啓号〉を円滑に運営している角人は、誰よりも愛すべき、尊敬すべき人なのだということを。

 

 目的地が見えてきた。

 ひっそりと無人の街並みを見下ろすように郊外に建てられた洋館──館の主の人柄を表すように控えめで、機能的な佇まいの邸宅。

 

 その正門が音もなく開き、少女の乗る車両を通した。

 胸が高鳴る。

 ここ最近、顔を合わせられなかった大切な人に会えるのだから。

 ゆっくりと自動車が停止する。

 

 小型犬を思わせる可愛らしさの少女だった。

 いまだ幼さを残す容貌の娘──ユミコは年頃の少女らしく艶やかな茶色のロングヘアを揺らし、送迎用の自動運転車両から降車した。

 屋敷の前には、長身の女性が立っていた。

 

 肉感的な体つきの女人だった。張り出した大きな乳房が胸元を盛り上げているのに、受ける印象はむしろ怜悧ですらある。

 使用人然としたメイドの佇まい──されど黄金の頭髪の間には透き通った赤い二本角。

 この船に存在する数少ない角人であり、ユミコが敬愛する少女に仕える従者だ。

 

「本日はようこそおいでくださいました、ユミコ様」

 

「お久しぶりです、エルギダさん。お菓子を持参したので、皆さんで召し上がってください」

 

 ユミコは人口一〇〇万人のコロニー船・第八管区の有力者の実子である。ありていに言えば令嬢ということになる。

 第八管区・市議会議長の一人娘と言えば聞こえはいい。

 しかし実の娘である彼女が考えるに、市民へ分配される資源が潤沢だから許されているだけで、世が世なら市民革命の一つも起こされて縛り首が関の山だろう。

 父やその係累が取り立てて愚かだったり強欲だったりするとは思わないが、それはそれ。

 案内に従って、お屋敷の中を歩いて。

 いた。

 

 

「お待ちしていました、ユミコ」

 

 

 落ち着いた調度品に囲まれた部屋に、黒い背広姿が一つ。

 いつも通り、男装の麗人がそこにいた。

 

 

 ──シップマスター・ヤシェロ。

 

 

 ──この〈天啓号〉のあらゆる運営を司る電脳知性体。

 

 

 さらさらとした黒髪は肩口で切りそろえられ、ほっそりした頬は雪のように白くやわらかだった。

 切れ長の目と長いまつげの奥には、深い知性を感じさせる黄金の瞳。赤い唇は薔薇の花びらのように可憐で、すっと通った鼻梁と相まって素晴らしい美貌を形作っている。

 

 おそらくユミコと肉体年齢に違いはないはずなのに、その座っているだけで絵になる美人のたたずまい。

 三日月型の二本角は翡翠のように半透明で、光を透かす様子はそれだけで少女の美しさを引き立てていた。

 思わず見惚れてしまうぐらい、格好いい人。

 それが初対面のときから続く、ヤシェロの印象である。

 

「はい、お久しぶりです──ヤシェロお姉様!」

 

「お姉様はやめてください」

 

「本当に嫌なら、やめますけど」

 

「……相変わらずですね、あなたは」

 

 苦笑するヤシェロの顔に険はない──よかった、某かの悩みは片付いたのだろう。

 彼女とユミコは数年来の付き合いの友人同士である。

 ユミコの方が年下であるものの、年齢が近く、船の運営に携わるものとして立場も近い二人はすぐに仲良くなった。

 

 第八管区の有力者である父としては、シップマスターの一族との親交が欲しくて娘を送り込んだのだろうが。

 ともあれヤシェロはここ最近、何か悩み事を抱えているようだった。

 船の運営に関することではない。

 

 もしそういうことであれば、責任感が強く実務能力に優れる彼女は、すぐにでも問題発生とその対策について情報開示していただろう。

 つまりプライベートな領域の悩みを、この優れた知性と美貌を持つ角人は持っていたことになる。

 

「お姉様が元気になって安心しました。なんだか少し前は、すっごくお悩みのようでしたから」

 

「そんなにちがって、見えますか?」

 

「はい──かなり、すごく、とっても」

 

 この洋館には三人の住人がいる。

 ユミコの敬愛するヤシェロと、その従者であるエルギダ、そしてもう一人。

 四年前に引き取られてきた少年が同居している。

 どうやらエルギダが気を遣ってくれているおかげらしいのだが、三人目とユミコは顔を合わせたことがない。

 

 ヤシェロの側から第八管区に出向いてユミコと会うことも多かったから、まず顔合わせする機会はないと言ってもいい。

 雑談で聞き出してみた限りでは、記憶喪失で身寄りのない漂流者を住まわせているだけのようだが──なんとなく彼女の悩みがこの少年にまつわるものなのは察せられた。

 

「そうですか……たしかに、あなたの言うような悩みは一応、決着しました。ですから心配はいりませんよ、ユミコ」

 

「でも、また何か悩みができたときは言ってくださいね。微力ながら……相談に乗るぐらいは、できますから」

 

「相談ですか」

 

 少し眉根を寄せるようにして、ヤシェロが黙り込んだ。

 心当たりがあるらしい。

 

「その、たとえばですよ? わたしに好きな人がいたとして──」

 

「──なるほどぉ」

 

 そういうことか、と得心がいった。

 あのお姉様が悩むことが色恋沙汰というのは、意外なようで納得がいった。

 日頃からこの方舟の運営に携わる生真面目な人である。

 恋の駆け引きには疎いはずだ。

 それなら長きにわたって苦悩もするだろう。

 

「ユミコ?」

 

「ああ、いえ、お姉様。どうぞそのまま」

 

「……好きな人がいたとして。その人の前で話したりしていると、時々、自分の意に沿わない行動を取ってしまうようなとき……どうすればいいんでしょう」

 

 ありがちな話だ。

 つい意識してしまうばっかりに、気になる男の子に辛く当たってしまうとか、必要以上に避けてしまうとか。

 ユミコが第八管区で通っている学校施設でも、そういうのはよく話題に昇る。

 

 思春期の少年少女と恋は切っても切れない関係にあるといっていい。

 きっとヤシェロお姉様もそういう感じで、好きな人──この話し方を見る限り第三の少年のことだろう──と話すときは理路整然と喋られないのだ。

 

 手を繋ぐほどもってのほか、目を合わせることもできないに違いない。

 キスなんて考えることも出来ず、愛する人と肌を重ねるなんて想像もつかない──そんな純情な彼女を想像してみた。

 

 

 ──ものすごく可愛いヤシェロお姉様ですね!

 

 

 ユミコは何かに目覚めかけた。

 こう、青少年の何かによくない影響を受けてしまう。

 将来的には顔と性格と家柄がいい感じの男の子とガッツリ幸せな家庭を築くのが目標の異性愛者ユミコだが、それはそうと憧れの麗人の初心(ウブ)な姿は美味しい。

 

 言葉にならないときめきを覚えた。

 稀に耳にする俗説では、角人は淫乱だなんて差別的な物言いもあるけれど──淫魔(サキュバス)もかくやという逸話が真実であるはずがない。

 なぜならば、そう、お姉様はこんなに可愛いのだから。

 

「そうですね……お姉様。そういう変な行動しちゃう理由に心当たり、ありますよね」

「え、ええ。あまり人に言えることでは、ないですが」

 

 頬を染めて目を伏せるヤシェロは、恥じらう乙女そのものだった。

 間違いない、これは肉体関係など欠片もない純愛(ピュア・ラヴ)に生きるものの仕草!

 そう解釈したユミコの助言は、当然のことながら明後日の方向へ羽ばたいている。

 

 

 

「お姉様がそういう行動を取っちゃう原因を、その好きな人に教えてあげたらいいと思います──手取り足取り、こう、目と耳でわかる感じで!」

 

 

 

 かくして喜劇の種はまかれた。

 

 

 

 

 

 

 茶器を運んできたエルギダは、そんな二人の会話を極上の笑みで見つめていた。

 腹が立ちそうなぐらい、いい笑顔だった。

 

 

 

 

 

 

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