スレンダー角っ娘はデカ尻ドスケベ雌山羊~クーデレ敬語ヒロインとイチャイチャする~ 作:灰鉄蝸@機甲猟兵エルフリーデ発売中
さて、歴史をおさらいしよう。
かつて史上最大の宇宙国家として成立した銀河帝国は、その版図を拡大し続け、銀河文明と呼ばれるほどの一大経済圏を作り上げた。
二万五〇〇〇年以上の間、情報生命体〈航海者〉を頂点とする支配体制が続き──あるとき、その体制に反旗を翻す流れが生まれた。
汎人類再生同盟と呼ばれるその勢力は、〈航海者〉の統治の下で押し殺されていたあらゆる思想・宗教・人種・階層の受け皿として機能し、瞬く間に銀河文明に拡がっていった。
彼らの目指すものはシンプルだ。
惑星を作り替え、超光速航法に手を伸ばし、時空間そのものを支配する科学技術をもって、あるべき人の姿を取り戻すこと。
肉体なき電脳人によって人類が支配される現状を脱し、宇宙の支配者に相応しい究極の超人としての肉体人へ至る。
要するにそれは、究極のデータ化人格として君臨する〈航海者〉たちへの反感であり、憎悪であり、人間存在への無邪気な信頼であった。
その流れは、〈航海者〉率いる帝国との戦いを呼び込むものであり──銀河大戦とも呼ばれる、地獄の絶滅戦争を呼び込んでしまった。
多くの星系が消し飛び、文明の灯は途絶えて。
銀河帝国も汎人類再生同盟も崩壊し、戦いは終わった。
その後の混乱期を生き延びた数少ない銀河文明全盛期の遺産こそ、この移民船〈天啓号〉なのである。
無論、この船とて万全の状態ではない。
〈天啓号〉は元々、複数の角人──肉体に依存するパ-ソナリティを獲得した〈航海者〉の末裔──によって運営されていた人工天体である。
しかし一〇〇〇年前、強大な星間戦争の遺物──自律無人艦隊に襲われた際、この船は一度、沈みかけたのだという。
このとき、船の運営を司っていた角人たちの大半が離散してしまった。
平たくいえば、自前の宇宙船に乗って逃げ出したらしい。
数少ない例外が、ヤシェロの
奮戦の末、無人艦隊を撃退した彼らは、真っ先に船体の復元と機能の復旧に取りかかった。
シップマスターである角人の一族は、最後までこの船のため身命を賭して戦った存在であり、戦後はその復旧に全力を注いできた。
この一〇〇〇年の間に〈天啓号〉を運営するための管制システムを再構築し、今に至る船内生活の基礎を築き上げたのである。
銀河文明崩壊から一万年もの月日が経とうというのに、こうして衣食住に事欠かない暮らしが出来ているのもヤシェロの一族のおかげなのだ。
そういう経緯もあってか、この船の中では角人──ヤシェロの一族は権威の象徴として扱われている。
ちょうど地球時代の王侯貴族が、神話や伝承と結びついて、豊作や繁栄を約束するものとして敬われたように。
移民船の中の暮らしの基盤となる空気、水、食料、電力などのあらゆる資源を司る祭祀として扱われているらしい。
居住ブロックに住まう大半の人々にとっての権力者は、おのれの住まう居住ブロックの支配者層だ。
直接、自分たちに不利益をもたらさず、さながら惑星の天候のごとく生きるためのあらゆる要素を無償で授けてくれるモノが角人だった。
「……だから問題なんだよな」
自室で、ハジメは独りごちた。
歴史に関する資料を表示させていた電子ペーパーから視線を外す。
この一〇〇〇年間、〈天啓号〉は機能復旧にすべてのリソースを割いてきた。つい最近まで〈図書館〉──銀河文明全盛期のライブラリ──の完全復旧が出来ていなかったぐらいだ。
ゆえにこの船は、最低限の自衛用の戦力しか持っていない。
それでも、並みの宇宙艦隊であればまともに戦う前に壊滅するほどの火力と防御力ではあるが、この船の価値を考えれば心許ないものだった。
膨大な電力を元手に物質を自由自在に作り替える元素転換装置や、この巨大船の動力部たる
いずれも現存する人類生存領域においてはロストテクノロジーであり、お伽噺の産物でしかない。
そしてこの〈天啓号〉は、それらの設計図と再生産するための設備すべてを持ち合わせているのだ。
〈天啓号〉はヒト種の播種船であり、テクノロジーの保管庫であり、巨大造船所であり、銀河で最も優れた兵器工場でもある。
ヤシェロたちが人類の復興のため復旧させた船の機能は、使い道を誤れば、厄災を吐き出すパンドラの箱になり果てるだろう。
──この船に足りないのは、悪意ある外敵から身を守るための軍事力だ。
船の運営にリソースを割いているヤシェロや、その補佐として防衛システムの管理を行うエルギダに、これ以上の負担を求めるのは酷だ。
艦隊のハコを用意できても、それを動かすための制御リソースが足りない。
そこにハジメは、自分が役立てる余地を見つけた。
ハジメの神経組織と一体化した超光速マンマシンインターフェース〈ハル・メギド〉は、適切な補助演算装置の支援さえあれば、一人のオペレーターで万軍を手足のように操れる究極の電子戦ツールだ。
その用途が、数千年間続いたという破滅的な宇宙戦争の兵器であろうことは想像に難くない。
たとえこの肉体が、角人やその先祖である〈航海者〉を滅ぼすため作られたものだとしても。
おのれに与えられた力を、ハジメはヤシェロのために使いたいと思う。
ヤシェロとエルギダには、あとで艦載機の量産に関して相談しなければいけないだろう。
稼働年数から逆算して、一〇〇〇年前の戦いの経験もあるであろうエルギダには尋ねたいこともある。
着々と今後の展望と必要なタスクをまとめていくハジメの耳朶を、控えめなノックの音が叩いた。
「どうぞ」
◆
「ああ、ヤシェロ。友達とのお茶会は終わったんだ?」
入室してきたのはハジメの恋人であった。
いつも通りの男装、背広姿のヤシェロだが、もう以前と同じ目で見ることはできない。
それというのも幾度となく重ねた肌のぬくもりを覚えているからで──少年にとっての彼女は思慕の対象だけではなくなっている。
くびれた腰つきに腕を回すときの、肌の弾力を知っている。
可憐な秘唇が男根をくわえ込むときの、溶け合うような熱さを知っている。
慎ましくもふくらんだ乳房の、心地よいやわらかさを知っている。
豊かに実った尻肉を叩いたときの、よがり声のはしたなさを聞いている。
凛々しい少女の瞳がうるみ、頬を染める表情を見ている。
そう、あられもない姿で絡み合い、舌を絡め、性器を結合させる快楽を知ってしまった。
この四年間、ハジメとヤシェロが積み重ねてきた関係──友達以上恋人未満──からしてみると、急な変化と言ってもいい。
それをもたらしたのが、身体改変構造体という劇薬なのはいただけないが。
けれど、そう、本音を言えば──生真面目で純情な少女が見せる、淫らな姿のギャップに魅せられていた。
ありていに言えば興奮する。
最近はそう、前向きに受け取ることにしていた。
「……ヤシェロ?」
彼女の様子が、少々おかしいことに気づく。
目を伏せているヤシェロは、緊張しているように見受けられた。
一瞬、いつもの改変体の発作──発情状態かと思ったが、すぐに違うとわかった。
身体改変構造体は、ヤシェロの肉体に定着した疑似神経の一種だ。
少女の肉体を短期間で性玩具として開花させ、淫らな振る舞いへ誘った元凶であり、角人という種族につきまとう宿痾である。
その影響なら、ヤシェロはもっとわかりやすく蕩けている。
エメラルドグリーンの山羊角に浮かぶ発光信号も、これといって異常を示してはいない。
たった今、示された信号の意味は──『表明』『羞恥』。
少女が顔を上げた。
何かを恥じらうように、少しだけ上気した頬が艶めかしい。
「ハジメ、わたしを見てください」
落ち着いた声だった。
ひどく透き通った、あるがままの彼女の言葉。
「穏やかじゃないな。まさか浮気の心配とか?」
軽口を叩いたのがよくなかった。
我ながら今のはひどいなと思った。
もちろんヤシェロの反応はわかりやすく、たいそう厳しい。
「そうやって茶化すの、面白くないですからね? したんですか、浮気」
じっとりとすわった半眼で睨まれた。
こそばゆい空気は霧散したが、代わりに気まずさが生じた。
ハジメは降参するように両手を挙げて、肩をすくめてみる。
「俺、そんなに気が多いやつに見えるかな」
「エルギダの胸、いっつも見てましたよね」
「──なんですと?」
おかしい、エルギダはこの件に関しては黙っていてくれるはず。
デートのときの一幕以外もバレたのか。
気づくとおっぱいに視線に目が引き寄せられているのは、断じて、ヤシェロという恋人がありながら愛人が欲しいからとかではない。
自分でも制御できない不可解な力が働いているのだ。
万有引力のごとき不可避の法則があった。
「ヤシェロ、待ってくれ。その情報には誤りがあると思う」
「わたし、センサーあるところのログはいつでも閲覧できますし、解析もできますから」
「そっかー……」
ハジメは少女から目を逸らした。
殺人事件を犯した犯人がついに心が折れる瞬間――地球時代の中世を描いたドラマは人気がある――みたいな仕草だった。
罪状は他の女にいやらしい目を向けていたこと。
情緒酌量の余地はない。
「…………お、大きいおっぱいに目が行くんです……やましいおもいはなかった……しんじて……」
震えるような声だった。
今日ほど、本能に忠実な自分の眼球を恨めしく思ったことはない。
どうして人類は地球から離脱して五万年も経つのに、おっぱいに目を引き寄せられる原始的習性を超克できないのだろう。
いや、然るべき処置をすれば除去できるのだろうけれど、ハジメの肉体はそういう風に設計されていなかった。
宇宙戦争のための電子戦デバイスと一体化した神経組織や、宇宙線に耐性を持つ体組織を持つ割りに、女の子の色香にくらくらきて勃起してしまう男根。
挙げ句の果てに、大きな乳房に吸い寄せられる視線と来ている。
これが汎人類再生同盟の求めた人間らしさだというのなら「最初からそんなものは間違っていたんだよ昔のえらい人」と遠い目にもなろう。
怒られても仕方ない、と思った。
「…………ひょっとして」
しばらく沈黙していたヤシェロは、しばらく視線を宙に泳がした後、ぽつりと呟いた。
切れ長の目が悩ましげに細められて、美しく整ったまつげがゆれる。
「ハジメ、胸が大きい女の子の方が好きなんですか?」
「んっ?」
考えてもいなかった方向からの問いだった。
思わず聞き返してしまうぐらい、想定外だったと言ってもいい。
が、相手の立場になって考えてみれば、すぐにわかることだ。
もしヤシェロが、事あるごとに身長二メートル近い筋肉モリモリのタフガイに熱っぽい視線を送っていたら、と想像してみる。
これはもう「足りないんだ、筋肉と身長が……!」と思い詰めるしかない。
もしくは死にたくなる。
そしてエルギダがなんかいい笑顔で用意した人体改造マシンに詰め込まれ、ハジメは別人としか思えないハンサムガイになってしまうだろう。
どうでもいいが、あの従者は本当にそういうことをしそうである。
困惑するハジメを横目に、ヤシェロは今にも爆発しそうなぐらい顔を赤くしていた。
角に灯る発光信号は『嫉妬』『羞恥』。
「──改変体で、わたしの胸も、おっ、大きくできますよ!」
上ずった声でものすごい爆弾発言が転げ出た。
なんだその競争心とか、改変体って何でもありだなとか、嫉妬するヤシェロもめちゃくちゃ可愛いなとか──そういう雑感はさておき。
ハジメは無言で立ち上がると、そっと恋人の肩に両手を置いた。
びっくりしたように顔を上げたヤシェロと目を合わせる。大きく見開かれた瞳は、きらきらと輝く黄金色。
一途で不器用な、最愛の人の色だった。
「ヤシェロは今の姿がすごく綺麗だしその必要はないよ──むしろ今の君でいるべきだ。〈ハル・メギド〉に誓ってもいい」
即答だった。
自分でも不思議なくらい、すらすら言葉が思い浮かんだ。
きょとんとしていたヤシェロは、彼の発した台詞を噛み締めるようにまばたきしている。
「ほんと、ですか」
「ああ、俺は今のしなやかな君が大好きだから」
「……エルギダの胸に目を奪われるのに?」
すねたように口を尖らせた少女の視線が痛い。
ごめんなさい、と謝った。
こればかりはハジメが悪いのだ。
「もう、いいです。ハジメのこと、ゆるしてあげます」
そう言って、ヤシェロは微笑んだ。
花のような笑みだった。
そして照れたようにうつむいて。
「キス、してください」
そっとささやくように、少年へおねだりした。
薔薇色の唇がふるふると震えていた。
両肩に置いた手を支えにして、ゆっくりと顔を近づける。
とうとう、照れくさくなったのか、ヤシェロが目を閉じた。
白磁のように透き通った肌が、淡い色に染まっている。
互いの息づかいがわかる。
熱い呼気が鼻にかかる。
自分のものとは違う、甘い体臭が鼻孔を撫でる。
心地よい湿り気と、やわらかな感触。
「んっ……」
そっと触れるような接吻だった。
ずっと激しい行為を経てきたから、唇を重ねるだけのキスに、愛情を確かめるような錯覚を覚えた。
ついばむようなそれを、少年と少女は、満足するまでし続けた。
◆
ハジメとのキスを惜しむように、ヤシェロは体を離す。
思いがけず彼に甘えてしまったのは、衝動的で何の理由もない行動だ。
それが心地よかった。
彼の隣に腰を下ろして、唇を指でなぞってみる。
「なんだか、魔法みたいですね。すごく、しあわせな気持ちになれます」
昂ぶりを覚えるようなキスではなかった。
改変体のもたらす暴発的な発情にも繋がらない、他愛のない行為──そこに途方もない安堵と充実感を見出している。
だがそれは、ヤシェロの意思や肉体が改変体に打ち勝ったわけではない。
無意識に働いていた身体改変構造体が、ハジメとのキスでそういう効果を得られるように少女の肉体に条件付けした成果なのだ。
それが角人のさが──テクノロジーによって制御された愛情のかたちだった。
大なり小なり、人間であれば誰でもしている心の働きを先鋭化させ、より効果的にした機能。
こんな些細なしあわせさえも、科学技術の産物で作り替えてしまえる心身。それがヤシェロの先祖たちが選んだ改造人種としてのありようだ。
「あんなに色々してるのに、キス一つで照れるのって少しおかしいですね」
ハジメはあえて何も応えず、彼女の脱いだ背広を受け取った。
ヤシェロを安心させるように優しく微笑む少年。
その表情が好きだった。
「俺はどっちのヤシェロも好きだよ」
「ハジメ、いやらしいことするときは意地悪ですけど」
「いやだった?」
頬を赤くして、首を横に振った。
本人の自覚以上の
その秘められた変態性欲は、これまでの情交で十分に開花している。
そのときのことを思いだしてしまったせいか、胸が熱い。
ほう、と息を吐きながらネクタイをほどき、シャツの首元のボタンを外していく。
やわらかな少女の胸骨と、慎ましい乳房の膨らみにハジメが息を呑んだ。
「……ところでどうして、どんどん薄着になってるんだ」
「気づくの遅いですね」
「わざとか……!」
どうでしょう、と小首を傾げて。
そのまま立ち上がり、彼の右手を手に取った。
ごつごつした男の子の手だった。
「ハジメに、わたしの体のことをもっと知ってもらいたくて、きたんです」
熱い呼気を、そっとハジメの手に吹きかけた。
向き合う二人の距離はとても近くて。
先ほどキスしたときとは、その意味が大きく違ってしまっていた。
「迷惑はもう、かけてますよね」
「改変体のことか」
優しい彼のことだから、それはヤシェロの責任ではないと言うだろう。
きっかけが何であれ、二人は自らの意思で契りを結び、倒錯的な性交に耽った。
淫乱としか言いようのないヤシェロの発情とて、ハジメがそれを楽しんで享受している以上、少しばかり変わった恋人たちのふるまいにすぎない。
少年はそう考えている。
けれどヤシェロにとってはそうではない──如何におのれの変態性欲を認めたところで、ヤシェロという人格の根底は変わりようがない。
変わっていくモノを知っている。
「わたしの体は今も、身体改変構造体の影響下で変容しています」
どくどくと早鐘のように打つ心臓の鼓動を聞きながら。
ヤシェロは蕩けるように微笑んだ。
「きっと未来のわたしは今よりもずっと、いやらしい体になってしまうから……ハジメにはぜんぶ、見届けて欲しいんです……」
いつの間にか、ヤシェロの思考も表情も、普段のそれとは異なる気配を帯びていた。
男装の麗人としての涼やかさとも、少女としての可愛らしさとも違う顔──色香を放ち雄を誘う雌の
たまらず伸ばされたハジメの手を、押しとどめる。
ここでされるがままになれば、いつものようにハジメに抱かれて気持ちよくなれるだろう。
だが、ヤシェロにとって重要なのは、彼に見てもらうことだった。
自分の肉体のすべてを。
「もう、ダメですよ? 今日のハジメは、わたしの体を見て、触るだけです」
仕方のない子供をたしなめるような声音──これまで少年が聞いたことのないような蠱惑的響き。
ヤシェロ自身、おのれにこんな声が出せたことが信じられなかった。
男の子を弄ぶような声と表情を出す自分。
そのことにドキドキした。
たとえ彼女が経験していないことでも、先祖たちの積み重ねたありとあらゆる恋愛や性交のデータを参照すれば、こんな振る舞いもできてしまう。
初めてくわえた恋人の男根を、熟練の娼婦のように舐め回せる初心な少女という矛盾が成立するのが角人である。
「恋人なのにそれ、ひどくないか」
お預けを喰らって憮然とした表情のハジメ。
その右手を離して、スラックスを固定していたベルトを外す。
「もう……いつもわたしの体、好きにしてるくせに」
責めるような口ぶりと裏腹に、ヤシェロの口元はゆるんでいる。
しゅるりと脱げたズボンから脚を抜き、前開きのシャツを解放した。
色気のないシンプルな下着と、あらわになったヤシェロの肌を前にして、彼がごくりと息を呑むのがわかった。
遠慮なく、ショーツもブラジャーも外してしまう。
改変体の思考誘導がないから、顔から火が出るぐらい恥ずかしかった。
それでも自分の体に、好きな人が見とれているのは悪い気はしなかった。
凛とした顔立ちに違わぬ美しい肢体だった。
小さな肩によく似合った、慎ましい二つの丘の先の桃色の乳首。
すらりと伸びた手足に、きゅっとくびれた柳腰──続く
それを支える太ももは、ほどよく乗った脂肪を筋肉が支えている。
ほっそりした少女の美と豊満な色香の同居する、女性らしい曲線美。
それがヤシェロの体だった。
「ここを、触ってください」
ヤシェロの右手がVサインを形作り、とんとんとおへその下を叩く。
そこで赤く発光しているのは、七つの蛇に象られた生殖器のタトゥーだ。膣・子宮・卵巣と一体化した改変体の証だった。
下腹部から鼠蹊部にかけてを占領し、今では末端がへその上と脚の付け根にまで到達した淫らな紋章は、しなやかな少女の肢体が肉欲に屈服したことを示すように扇情的だ。
ハジメとの交わりで薄れてきたとはいえ、元々、性嫌悪の節があった彼女にとって屈辱的というほかない変質の契機。
その象徴とも言える赤い光の線を、ヤシェロは愛おしげに撫でつけた。
「……お腹を?」
言われるがまま伸ばされた指が、まず、ヤシェロのへその上に触れた。
しっとりときめ細やかな肌が、吸い付くように指に応える。
張りのいい肌の下で、よく鍛えられた腹筋がハジメの指の圧力を押し返していた。
上から下に向けて、筆でなぞるように腹筋を撫で上げられる──ヤシェロの背筋を、ぞわぞわと快感を昇っていく。
「ん……♥ ハジメ、わたしのお腹好きなんですか」
「好きだよ。ヤシェロのお腹、綺麗だから」
淡雪のように白い皮膚の下の輪郭──男を欲情させるためだけにあるようなくびれた腰だ。
臓器の存在を感じさせず、脂肪と筋肉と背骨だけでできているのではないかと錯覚するほど細い柳腰。
かつては嫌悪していたセックスアピールの強い腰つきすら誇らしかった。
何度も、何度も。
腹筋を撫でられるだけで、お腹の奥に熱が灯ってたまらなくなった。
へその上を行ったり来たりしていた指が、すっと下がって下腹部に達する──子作りのための臓器が収められた大切な場所。
角人たるヤシェロにとっては、それすらも気持ちのいいセックスのためのお膳立てに過ぎなくて。
「ハジメ──わたしたち角人のお腹の臓器の中で、一番、改造の余地があるのはどこだと思いますか?」
ハジメの人差し指が、つぅっとヤシェロの下腹部を撫で上げた。
彼の指が触る紋章──子宮と卵巣、膣を象った七つ頭の蛇のタトゥーは、地球時代の伝統宗教における悪、大淫婦バビロンの名を冠した改変体だ。
熱を孕んだ臓器の気配が、指先から彼に伝わっていく。
ごくり、と息を呑む音。
「……生殖器?」
「そう、です」
恥じらうようなか細い声で、ヤシェロは首肯する。
角人の臓器は、無改造のホモ・サピエンスに比べてはるかに効率的だ。
微小機械によって複雑かつ故障しやすい内臓機能は洗練され、より高機能な臓器群によって配置も見直されている。
そうして生じた人体の余剰スペースを、角人は生殖器の改造・拡張・増設のために使える。
それはヤシェロとて例外ではなかった。
身体改変構造体の中でも最高位のレベル7を発現した彼女は、この短期間で急速に自らを作りかえていた。
「ハジメのおちんちん専用に、わたしの……その……」
言葉が出てこない。
ハジメに見てもらうためにこんな、はしたないことをしているのに──恥ずかしい単語だと思うと言葉が出ない。
以前、改変体の煽った情欲のままに交わったときは違った。
あのときも躊躇ったけれど──今は自分が何を言おうとしているか、意識してしまって。
言う前から恥ずかしい。
「ヤシェロ、今いやらしいこと言おうとしてる?」
その様子から察したのか、ハジメが口を開いた。
少し意地の悪い口調だった。
その方が被虐性癖のヤシェロがよろこぶから、自然とそうなっている。
デート中の口淫を経験して以降、彼はヤシェロとの性行為に積極的だ。
おそらくエルギダが懸念事項──色情狂のようになっていくヤシェロの振る舞い──について口添えしたのだろう。
だからハジメは、ヤシェロが一番よろこぶことを言う──言ってくれる。
「ヤシェロが言い方を知らなくても、君の電脳は言い方を知ってるだろ──そのために、君のご先祖様の恥ずかしい記憶をいつでも参考にできるんだから」
「それ、は……そうですけど」
なんで知ってるんですか、と言外に目で問う。
娼婦のような腰使いや口淫を披露しておいて、知っているも何もなかったけれど。
改変体に心と体を操られているときの自分と、そうでないときのヤシェロの間には大きな意識の隔たりがあった。
知られていて当然のことでも、知っていて欲しくないと思う乙女心はあった。
矛盾だらけのヤシェロの理性と肉欲のせめぎ合いは、いつだってハジメに屈服して終わる。
今回もそうだった。
「勉強したからね」
そう言って笑いかけるハジメだが、目は笑っていなかった。
ぎらついた雄の征服欲が渦巻く瞳。
決して綺麗なものではない視線に、とくとくと心臓が早鐘を打った。
ああ、わかる。
わかってしまう。
自分の価値観は気づかない間に、こんなにも淫らになっていたのだ。
「これは命令だ──ちゃんと、どこがどうなっているのか、いやらしく俺に教えてくれ」
指で強く淫らな紋章を押しながら、ハジメはそう命じた。
命じてくれた。
つくづく自分が変態──こんなにも身を案じてくれる優しい恋人に、こんな言葉を言わせてしまう──なのだと実感する。
惨めさと申し訳なさが、たまらない快感になっていく。
熱を帯びた子宮のうずきを感じながら、ヤシェロは浅く息を吐いた。
ほんのりと漂いはじめた甘い体臭は、少女の汗腺から染み出した性フェロモンの香り。
「……前にも、言いましたけど……ハジメと初めてセックスして♥ わたしの体、おかしくなってしまって……♥」
電脳がデータベースにアクセスを開始。
かつて角人たちが繰り広げた痴態の一部始終を索引から探し、最適な言葉遣いを拾い上げていく。
特に角ある少女の肉体の中で重点的に作り変わっているのは、男根を受け入れて性感に目覚めた秘所だった。
元々、微小機械の集合体である生殖器は、より多くの快楽を受け取り、また与えるために変質している。
──膣壁がゼリー状の分泌物で埋まり、老廃物を浄化しながらハジメ専用の搾精器官として最適化されていく。
少女の身に起きている変化は、言葉にすればするほど、おぞましく淫猥なのに──ヤシェロはその事実に胸がときめいてしまっている。
理性が警鐘を鳴らす中で、恋情と溶け合った官能が強まっていく感覚。
とろん、と泳いだ瞳で、恋い焦がれるように頬を染めて。
「──わたしのおまんこも、子宮も、卵巣も♥ どろどろに溶けて、作り変わって♥♥ ハジメのおちんちん専用になっちゃいました♥♥♥」
とうとう卑語を言ってしまったという、奇妙な高揚感があった。
常のヤシェロならば、絶対に口にしないであろう単語を、最愛の少年の前で述べるという倒錯──ぞくぞくと背筋を駆け上る筆舌しがたい快感。
いっそグロテスクなほど変貌していく臓器のことを、少年へ教えていく。
「お腹の模様は……わたしの子宮が、おちんちんを気持ちよくするためだけに改築中の証拠なんです♥♥ ほんとは赤ちゃん作る場所なのに……ハジメのせいで、みっともないおちんぽしごき穴です♥♥♥」
自らの女性器を貶めるような、いかがわしい言葉を選び、口にする得も言われぬ快感。
それだけで体の奥に淫らな熱が宿ってしまう。
下腹部をなぞるハジメの指を、そっと股間にまで導いていく。
「わたしの、おまんこもそうですよ……♥ 今は敏感な女の子の穴、ゼリーみたいな分泌液で埋まってるから、セックスはまだできませんけど♥」
「俺のせいっていうか、ヤシェロがいやらしいだけじゃないか」
そう言いながら、彼の指が遠慮なく盛り上がった大陰唇を撫で上げる。元々、無毛だった恥丘はぷっくりと膨らみ、男をもてなす肉厚の土手になっていた。
ごつごつとこすれような硬い肉穴から、やわらかく陰茎をもてなす雌肉への変化。
乙女の花園のように色素が薄く、固く閉じた小陰唇の内側でも同じことが起きていた。
膣壁で男根をしごくためだけに発達した無数の筋肉、普通の肉体人にはあり得ない人体構造。
一見、貞淑そうな入り口の奥では、ピンク色の粘膜には数え切れない凹凸ができあがり、快楽を感じるための疑似神経がびっしりと張り巡らされている。
すべてハジメの男性器をもてなすための変化であった。
「んぅ♥ 違いますぅ……ハジメを好きになって、ハジメとえっちなことして♥ もっと気持ちよくなってもらうためですから……こんな恥ずかしいの、好きな人のためじゃなければありえません♥♥」
目尻の下がった、だらしのない表情で反論するヤシェロの言葉に説得力はない。
だがハジメはあえてそれを指摘することはなく、無言で恋人の頭を撫でた──えらいえらいと子供を褒めるように。
さらさらした絹糸のような黒髪が、ハジメの指に梳かれた。
心地よさそうに眼を細める少女は、まるで飼い主に褒められた愛玩動物のようだった。
頭を撫でていたハジメの手が、不意にヤシェロの胸に降りた。
そして無造作に、小振りな乳房を鷲づかみにする。
均整の取れた肢体の中でなお、控えめながら可愛らしい膨らみが歪む。
乱暴な仕草だった。
当然、痛みを感じたヤシェロは──
「ひゃうんっ♥♥」
甲高い嬌声を上げた。
痛くて、気持ちいい。体に染みついた条件反射、甘ったるい声で鳴いてしまう雌山羊の本能。
もっと痛くされるのかと思えば、ハジメの左手は急に優しい手つきで胸を揉みしだき、ぴんと立った桃色の乳首をつまんで転がす。
「んぁあ……それ、駄目ぇ♥」
ヤシェロは痛いのも好きだが、優しくされるのも好きだった。
どっちも気持ちよくて、しあわせになってしまう。
前穴が塞がっている分、愛蜜が股間を濡らすことはないが、体温に合わせてわき出す汗はそういうわけにもいかない。
そのときだった。
しっとりと汗ばんできた乳房を彩るように、毒々しい蛇の模様が浮かび上がった。
新雪のような白を穢す、赤い光。
さながらトライバルタトゥーの炎のように双丘を囲み、胸の中央に浮かび上がる改変体。
その形状は心臓のようにも見えた。
「ヤシェロ、この模様の意味は?」
「んっ……♥」
一呼吸おいて。
「わたしのおっぱいが、もっと敏感になれるように♥ 改造してくれてるところ、です……乳首もおっぱいも、おまんこみたいな性感帯になります♥」
「やっぱりヤシェロはやらしいなあ」
「だってぇ……♥」
言い訳無用とばかりに、ハジメはヤシェロの体から両手を離した。
いつのまにか、彼の股間はズボン越しにもわかるぐらい盛り上がっていて──時間が惜しいとばかりに、下着ごとズボンが脱ぎ捨てられた。
ぶるん、と勢いよく飛び出た男性器は屹立して、亀頭は痛々しいほど膨らんでいた。
むわっ、と広がる雄臭い汗のにおい。
知っている。
ヤシェロはこの堅くて絶倫の陰茎に、男性器に、おちんちんに散々ダメにされてきたから。
形がいい。
熱さがいい。
大きさがいい。
見ているだけでお腹が熱くなって、唾液が染み出てくる。
思わず、ぺろりと唇を舐めてしまったことにヤシェロは気づいていない。
「今日はセックスできないし、見て、触るだけだっけ?」
「は、はい♥」
ぞくっ、と鳥肌が立った。
ハジメが何を言わんとしているのか、薄々、勘づいているのに。
胸がドキドキして止まらない。
いかないことなのに、心も体も征服されたくなってしまう。
「じゃあ、こいつで触るよ」
ハジメの腕が、ヤシェロの細腰に回される。
そのまま少女の肢体をぐいっと抱き寄せるハジメ──勃起したペニスが、下腹部のタトゥーに触れた。
熱い。
まるで焼きごてのようだった。
海綿体に集まった血流が、敏感になった雌の柔肌を蹂躙していく。
ほんのりと色づいた白い肌に、雄の象徴のような男根が押し当てられる。
ずりずりとへその下で暴れ回る肉竿──先走り汁が潤滑油になってお腹を撫で上げていく。
亀頭が、抉り込むように子宮の真上にめり込んだ。
刹那、電流が走った。
皮膚の下で熱を孕んでいたマゾメス臓器がおちんぽに媚びを売って。
ヤシェロの背筋を駆け上った快楽信号が弾ける。
「きゃふぅううん♥♥♥」
絶頂。
腰が跳ね上がって、股間を突き出すような姿勢で達した。
多感なヤシェロは性的絶頂を迎えるとき、いつも潮を噴いていたが噴き出す体液はない。
膣穴と子宮を塞ぐゼリー状の微小機械が、愛蜜を吹き出すような無様を許してくれなかった。
雄に媚びるのは、きちんと奉仕できる雌になってからにしろと言わんばかりに。
恋人の甘い声に、ハジメが笑った。
「こういうとき、いやらしく言うと?」
「いっ……イキまひたぁ♥♥ おなか、おちんぽで小突かれて、せっくすとかんちがいして……♥」
一生懸命、インストールした卑語の語彙で表現する。
するとハジメは、興奮した様子でヤシェロのお腹──先走り汁でぬるぬるの腹筋──を見つめた。
「ヤシェロのここ、本当に俺のを覚えてるんだな」
「はい♥ 恋人のおちんちんを覚えるのは女の子の嗜みですから……♥」
望んで言っているのか、ハジメをよろこばすために喋っているのか、自分でも区別できなくなっていた。
改変体が体に定着していく中で、ヤシェロの心身はどんどんそれに馴染んでいく。
よりシームレスに、平常時と発情時の境界が曖昧になって、溶け合い、まったく新たな姿形に再構築される。
これがそうなのかもしれないと思った。
五感や思考が切り替わる『スイッチ』の瞬間はなかったのに──自然とハジメに媚びてしまっている。
彼が性的に興奮したから、それに合わせてヤシェロもそういう風になったのだ。
男に都合がよくて、はしたなくて。
──最低です♥♥♥
勃起したままの男根を見ていると、愛しさがこみ上げて止まらない。
ちゃんと我慢できた、えらいおちんちん。
「ハジメはちゃんと、私の躰を見て、触るだけの……我慢ができましたから♥ ごほうび必要ですよね♥」
高揚した気分のままハジメに背を向けて──身をかがめてお尻を突き出した。
大きな骨盤と筋肉に支えられた豊満な尻肉を、どうぞ召し上がれとばかりに差し出す。
自分の巨尻が雄の性欲の対象だと理解した、淫乱な雌の仕草だった。
「さっきのはいいんだ?」
「あれは、その……わたしがマゾで、我慢できない雌だからぁ……♥ ハジメのおちんちんは我慢ができて、えらいんです♥♥」
艶めかしい桃尻が、ゆさゆさと揺れる。
へこへこと腰を振って尻を揺する動作は、まるっきり交尾をねだる卑しい動物だった。
「わたしたち角人は、お尻の穴もすぐセックスに使えますけど──今日は使っちゃダメですからね♥」
角人の肛門は排泄物をひり出すための穴ではない。
微小機械によって効率的に食物を分解し、腸管などの老廃物をゼリー状の分泌液で固めて排出するため、常に清潔な状態にある。
括約筋など退化しても問題がない機能だが、あえて残されているのは──膣穴に負けずとも劣らぬ、肛門性交の快楽のためだ。
まだヤシェロの穴は搾精器官としては未開発だが、雄のペニスを受け入れればいずれ変化していくことだろう。
だが、それは今ではない。
ひくひくとうごめく菊の穴を見せびらかしながら、ヤシェロは甘い声を出す。
雄を誘うように。
「ハジメの大好きな、わたしのお尻で♥ おっきくなったおちんぽ、しゃせーしていいですよ♥♥ ゴミ箱にせーえき捨てるみたいに♥♥♥」
悪戯っぽく微笑むヤシェロの尻に、亀頭がめり込んだ。
ぐいっと腰を掴まれて、堅いものを押しつけられる感触。
ともすれば獣のような後背位セックスにも見えるそれ──実際には一方的な自慰風景でしかないもの。
雌に提供された尻肉に、欲望のたぎりをぶつける自慰行為は、淫猥な疑似交尾として少年の性欲をかき立てていた。
「あぁ、ひぅ♥ は、ハジメ♥ お尻は逃げませんよ、あひっ♥♥」
ヤシェロのあげる嬌声すら、この倒錯的自慰のスパイスだった。
丸い丘陵を描く巨尻をたわませ、先走り汁の軌跡を描きながら蹂躙していく。
やわらかな媚肉を押し潰し、糸を引く裏筋で尻の体温を感じ、男根のかたちを覚え込ませて。
たわわと実った尻肉は、抜けるように白くやわらかい。
亀頭をぐりぐりと押しつけた瞬間、男根に限界が来た。
「──ッ」
「きゃふっ♥♥」
熱く粘ついた射精だった。
びゅるびゅると勢いよく鈴口から吐き出されてなお、ねっとりと糸を引くような白濁。
若い雄の欲望そのものような精液が、少女の
それはまるで、ヤシェロの巨尻を性欲のはけ口にしたようで──ゴミ箱に精液を染みこませた紙くずを捨てるような射精だった。
「たくさん、でましたね♥」
鈴口に残った精液の残滓を、尻肉になすりつける恋人。
振り返り様、それを嬉しげに見守るヤシェロ──弓型につり上がった口元に宿るのは、男を猛らせる魔性の笑みであった。
「ハジメのこと、もっと、きもちよくしますから……♥♥♥」
甘いささやきが、少年の耳朶に染み渡って。
雄と雌の、熱っぽい呼吸音だけが聞こえていた。
もちろんヤシェロに助言した友人ユミコは、こんな変態的行為をしろとは言っていないのだが──結果オーライであった。
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