※この作品はR-18です。

スレンダー角っ娘はデカ尻ドスケベ雌山羊~クーデレ敬語ヒロインとイチャイチャする~   作:灰鉄蝸@機甲猟兵エルフリーデ発売中

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17話「カウントダウン」

 

 

 

「おひいさまとの逢瀬、お楽しみでしたね?」

 

 

「……普通にデートしましたよ」

 

 〈天啓号〉第一管区──丘の上の洋館にて。

 エルギダはめちゃくちゃいい笑顔で煽ってきた。

 バカンスから帰ってきてすぐに、ヤシェロは船の方針を決める定例会議に出かけている。そしてあのバカンスの段取りを整えた協力者であるところのエルギダは、どういうわけか二人の繰り広げた退廃的交わりをしっかり把握していた。

 

「野外での性行為や排泄行為が普通とは……浅学のわたくしめには想像もつかない深慮でございました。お許しください」

 

 監視の目をどこに用意してたんだ、この人。

 ハジメは戦慄した。

 

「エルギダさん、慇懃無礼って知ってます?」

 

「諫めるのも仕えるものの務めです」

 

「諫言? 今のが……?」

 

 この従者、いくらなんでも自由すぎる。

 リゾート地で一通りの変態アナルセックスを経験してきたハジメとヤシェロも大概なのだが、最近の彼は涼しい顔をしてその辺をスルーしている。割とエルギダといい勝負である。

 

「退廃貴族の代名詞のような行いは、露見しにくい行為に限るべきかと。お二人程度ならまだ可愛いものですが」

 

「比較対象あるんですか」

 

「この一〇〇〇年間、おひいさまのご先祖の中にはいわゆる乱交に耽るご婦人もいらっしゃいましたので」

 

「えっ」

 

 一〇〇〇年と書くと長く感じるが、シップマスターの代替わりはそう多く起きていないので、ヤシェロから見ればかなり近い身内である。おそらく、ひいおばあちゃんとかひいひいおばあちゃんとかそのぐらいの範囲だ。

 

 エルギダ曰く、そのご先祖様はかなり度の過ぎた淫乱で、口が硬く信用できる相手を用意するため、電脳で遠隔操作する性交用義体(セクサロイド)──まあ要するに人型の張り型なのだが──を製造し野外露出乱交を行ったとか。聞いているだけで悲しみが湧いてくる逸話だ。

 

 長い角人の歴史の中でもヤシェロの発現した身体改変構造体は第七段階、最高位のものだが、性的嗜好のこじらせ具合においては上がいくらでもいるらしい。シップマスターの背負う重責とストレスを考えると、変な方向に弾ける角人がいるのも必然かもしれなかった。

 何でもいいがこの従者、本当に敬う気が感じられない言動である。

 

(ヤシェロのマゾッ気もそういうことなのかな)

 

 いくら何でも家族の思い出がある土地で尻穴から精液噴き出すのはやりすぎではないか、という思いはハジメにもあった。あったが、あの場において一番それを望んでいたのが彼女であったこと、少女の色白のデカ尻にめちゃくちゃ興奮したことなどにより実行に移してしまった。

 

 今思い出しても怖気が走るほど、あのときのヤシェロは蠱惑的で煽情的だった。

 まあ仕方ないことである。不可抗力と言えよう。

 

「それとハジメ様、そろそろ覚悟なさるべきかと」

 

「……そうなりますね」

 

 後戻りできる関係ではないでしょう、とエルギダの目は物語っていた。

 

 

 

 

 ◆

 

 

 

 

 全長三〇〇〇キロメートルの人工天体である〈天啓号〉は、移民船でありながら、幾重にも重なった外殻で守られた要塞でもある。白亜の船体はさながら卵の殻であり、大事な中身を有形無形の防御システムで囲んでいる。

 

 船体全域を覆い尽くす斥力障壁(フォースシールド)は生半可な運動エネルギー兵器を弾き、質量の低い粒子ビームを拡散させ無力化する。障壁を貫通するレーザー兵器は船体表面の対レーザー処理装甲で受け止められ、有効打たりえない。

 

 斥力障壁を突破した艦艇による核融合ミサイルや反物質弾頭での爆撃は数少ない脅威だが、消し飛んだ装甲は、血液のように船体外殻の下を循環する流体金属層によって再生される。

 これらすべてを統括する電脳の神経網、同時運用を可能とする反応炉の出力、消耗した先から修理と補充が為される兵站。

 

 このすべてを備えた〈天啓号〉は、在りし日において護衛艦隊を従えた巨大船団の中核であった。

 護衛艦隊を喪失した今でも、この船の防御システムは健在である。船体各所に備えられた火砲は、単純なデブリスイーパー(比較的小型のレーザー砲群)のみならず、大口径レールガンや粒子ビーム砲などの対艦兵器を数えきれぬほど設置している。

 並みの星間国家であれば一方的に蹂躙できるだけの火力を、今の〈天啓号〉は取り戻していた。

 

 万全の状態ではないにせよ、往年の力を取り戻しているのは本来よろこぶべきことである。

 しかしそうも言っていられないのが、統治者──シップマスターの立場だった。余裕が出てくれば、欲をかくのが人間の常だった。

 

 洋館内に設けられた会議室は、執務のために様々な設備がそろっている。会議室風にあつらえられた一室だったが、この部屋にヤシェロ以外の生身の人間はいない。

 

 

『──以上が船員会からシップマスター・ヤシェロ様への要望です』

 

 

 第八管区マンハッタン・トーキョーから選出された代表の立体映像──この腰が低い紳士は、強いリーダーシップではなく、派閥間の調整役として選出された類の政治家だ。

 そして今、彼が陳情してきたのは、各コロニー船──〈天啓号〉内部に居住区として接続されている──の代表からなる船員会全体の意向であった。

 

 ヤシェロ自身は二〇年も生きていない少女だが、改造人種・角人であり、船の主電脳──メインフレームと接続された彼女は絶対権力者であった。

 長命種による専制政治になるという最大の問題点──銀河文明を築き上げた帝国は〈航海者〉たちによる圧政と反乱の末に崩壊した──を除けば、知性体としての耐用年数や情報処理能力の面で優れた改造人種が指導者を務めるのは理にかなっている。

 

 まして良くも悪くも技術革新や社会構造の急激な変化に晒されない、きちんとインフラが維持されている移民船内部の統治であれば、世代交代による指導者層の刷新よりも安定した運営が求められるのは自明の理であった。

 

 もっともこれは、移民船を統括できるだけの人材が不足し、トップの首をすげ替えたくてもできない長年の環境が生み出した制度でもあった。

 居住区はほぼ完全な自治区として機能しているため、内政を司るのは各居住区の代表たちである。この代表たちの集まりが船員会であり、これは一〇〇〇年前の〈天啓号〉半壊と指導者層の離散・喪失に伴い、新たに組織されたものであった。

 

 危機を前に「逃げ出した旧体制」と異なり、高潔で誇り高いシップマスターの一族とそれに協力した勇気ある一般船員たちの代表。

 それこそが今に至る〈天啓号〉の支配体制の根幹、建国神話と言うべき物語である。

 

 護衛艦隊を喪失、移民船そのものも大損害を受け、上級船員たちが逃げ出した混乱状態。暴動からの内戦でそのまま滅んでもおかしくなった〈天啓号〉を立て直し、旧体制に取って代わる神話を作り上げたシップマスターと船員会はある種の共犯関係と言えよう。

 

 その末裔であるヤシェロと、一般居住者から選ばれた船員会のパワーバランスは微妙だ。居住区の中であれば手出し無用だが、生産プラント群や船の針路の決定はヤシェロの領分である。

 ゆえに船員会は今回、一丸となって要望を突きつけた。

 

「テナウス星系への航路変更と現地文明との接触。それがシップマスターに対する船員会の要望ですか」

 

『ヤシェロ様。我々は一〇〇〇年ぶりに巡り会う同胞と交流を持ちたいのです』

 

 よく言う。

 居住区の民主主義コミュニティで選ばれる代表たちは、市民に対してわかりやすい功績が欲しいのだ。船の運営方針にもの申せる船員会への所属は、自治区となっている居住区コロニー船での権力にも繋がる。そして船員会に所属し続けるには、自身の属するコミュニティで投票により選ばれ続ける必要があった。

 

 不正選挙をしていないだけ健全なことだ。

 とはいえこの移民船の外部への窓口の少なさは、ヤシェロも気にかけていたことである。艦の機能復旧が終わった以上、一般市民に開かれた役職を増やしていくべきだし、それは船員会とは独立したものであるべきだ。

 

 内政面での不干渉を原則とするシップマスターにとって、その権威と権力の源はインフラ維持に務め、生産プラント群を統括し滞りなく物資を供給することにあった。

 居住区の一般市民にとってのヤシェロは、古代地球における天空神や豊穣の女神よろしく、平穏や安寧を祈り、日々の暮らしを感謝することこそあれ実在の指導者としての存在感はないのだ。

 

 居住区における代表候補たち──政治家たちが良くも悪くも実在の存在とすれば、シップマスターというのはたまに託宣をよこすありがたい神様みたいなものである。そういう感覚やアクセス権限すべてを返上して一般居住区に移った角人たちの存在もあり、ヤシェロがその辺の街中を歩いていてもシップマスターとは思われない環境ができあがっているわけだが。

 

 そもそも実に貴族的な制度の産物でありながら、ヤシェロとその先祖たちは限りなく貴族的価値観からかけ離れた人々である。根っからの学者肌であり、実務家なのである。

 あるいはそういう変わり者だからこそ、唯一、管理者側に残ったのかもしれなかった。

 

 その思考の上位に〈天啓号〉の超越人工知能(メインフレーム)が君臨しており、その合理性の影響を受けていたのも原因だろう。

 角人は宇宙船と繋がれた分身なのだ。

 

 ヤシェロの数少ない友人であるユミコも会員の令嬢である。いくつものブロック──それぞれが独立したコロニー船として機能する──に区切られた居住区内にも、地元の名士のような有力者家系は存在する。自由主義と民主主義を掲げる居住区は、超越人工知能(メインフレーム)の管理から外れているために、この一〇〇〇年間で富や権力の集中が起きつつあった。

 

 古代地球時代から数万年が経過してなお、肉体人が作るコミュニティは格差を自ら作り上げるのだ。

 陰鬱な思考を頭の片隅に追いやり、少女はテナウス星系の座標を読み込む。

 

『ヤシェロ様が復旧された〈図書館〉の星間ネットワークの情報あればこそ、こうして我々も同胞と巡り会う機会を得られたのです』

 

「ええ、そのようですね。こんなに早く役立つとは思いませんでしたが」

 

 テナウス星系は帝国末期の時代に植民された文明圏である。おそらく〈天啓号〉以外、この銀河に存在座標を知る船はあるまい。

 戦禍を逃れた万能工場にして大図書館──それがこの〈天啓号〉のもう一つの存在意義なのだから。

 

 今から一万五〇〇〇年前、あの忌まわしき大崩壊の時代、銀河文明はあらゆるインフラとテクノロジーを喪失した。人類居住惑星の座標が失われ、帝国が管理していた星間ネットワークの要である大規模跳躍装置(スターゲート)はことごとく破壊された。帝国自らの手で、焦土作戦の一環として支配地域のあらゆる情報が破棄されたのである。

 

 この尋常ならざる判断の元凶こそ、滅ぼされた叛徒──汎人類再生同盟の報復兵器〈クルクス〉だ。

 凄まじき災厄、滅びの翼として記憶される自律兵器群の軍勢は、桁外れの出力を誇るワープ機関を備えており、銀河のあらゆる場所に空間跳躍し虐殺を繰り広げた。

 

 そう、戦争と呼べるものすら起こらなかった。 

 広大な版図を持つ覇権国家にとっての生命線は、経済と軍事を支える交通網・通信網であり、領土に関する情報である。これは古代地球時代から数万年を経た銀河文明でも通じる真理だ。

 

 その帝国を帝国たらしめるものを放棄してでも〈クルクス〉の脅威から逃れ、生き残ることが優先された。

 報復兵器は銀河のあらゆる場所に現れ、文明の火を消していった。最終的に銀河全域で総人口の九割が殺戮されたと〈天啓号〉のアーカイヴにはあるが、実際にはそれ以上の死者が出ているはずだ。

 

 ──この要望が望ましい結果を招くとは到底思えませんが。

 

 定例のいつも通りのやりとり──この船の全機能を掌握しているヤシェロにとっては今さらの、形式ばかりの報告だ──を聞いた後、集まりは終わった。立体映像が切れてオフラインになったのを確認後、ヤシェロはため息をつく。

 

 銀河文明の到達した管理システムは、無人化と自動化の末に、官僚機構すら不要とする帝国──究極の独裁を可能とするテクノロジー群へ到達してしまった。年若いヤシェロと従者エルギダ以外に管理者が残っていないにもかかわらず、全部で人口一〇〇〇万の居住区も、それを支えるインフラ群も維持できているのはそういう時代の遺産ゆえである。

 科学技術に限って言えば、紛れもなく人類史において絶頂期と言えた遺産をその身に蓄えた〈天啓号〉は、外部から見れば宝の山だ。

 

 接近してみるまで、テナウス星系にだだ文明が現存しているかはわからない。報復兵器による虐殺を免れた星域なのは間違いないが、一万年以上の時間があれば、星間ネットワークから切り離された文明が自滅するには十分すぎる。

 まずは無人探査機を送って様子見だろう。

 そのあとは。

 

「気が進みませんね」

 

 ヤシェロは目を伏せた。

 

 

 

 

 ◆

 

 

 

 

 昼食の後、ヤシェロから話があると連絡を受けたハジメは執務室に来ていた。電脳を通じてあらゆる差配を済ませられる以上、この屋敷同様、趣味の産物らしい。

 彼の恋人であり屋敷の主人でもある少女は、浮かない顔をしている。

 デスクに座ってぼーっとしていたヤシェロは、ハジメを目にするとしばらく黙り、やがて意を決したように口を開いた。

 

「ハジメ。あなたにお願いしたいことがあります」

 

 ライブラリに記録があった星系への偵察が行われること。

 〈天啓号〉本体をいきなり向かわせるにはリスクが大きすぎること。

 現地に星間文明が現存していた場合、柔軟に対応できる先遣隊が必要であること。

 一隻は有人の指揮艦が含まれる艦隊が望ましいこと。

 それだけでおおむね、ハジメは事情を飲み込めた。

 

「そこで俺の出番か」

 

「……今は、他に人がいません。近いうちに護衛艦隊の再建は急務となるでしょう。しかし肝心の艦隊を運用するための人材が育っていませんし、無人艦隊を建造しても遠隔操作は計算資源(リソース)を使いすぎます。エルギダは防衛システムの統括者ですし、今からさらに艦隊指揮を任せるのは非効率的です」

 

 縁故人事と言いたいところだが、能力的に宇宙戦争に適応できてヤシェロが信頼できる人間となると必然的にハジメが該当者となる。そもそも船内居住区の出身ではないため、船員会の息がかかっていないのもありがたいところだろう。

 

 今までハジメが遠ざけられていた政治のにおいがした。良くも悪くも、ヤシェロは彼のあつかいを変えることにしたらしい。

 そう考えるに至った彼女の心を思うと、ここは流すべきだろうと思った。

 

「ようやく俺も役職つきかな。ただ飯ぐらいの食客は結構つらいんだよ」

 

「……あなたはヒモに向いていないようですね」

 

 くすり、と笑うヤシェロ──やはり彼女は笑っている方が可愛いと思えた。

 黒のスーツに身を包んだ男装の少女は、山羊角をつるりと片手で撫でながら、続く言葉を告げる。

 

「この偵察があなたの初陣になるでしょう。その後は──」

 

 エメラルドグリーンの角に浮かぶ発光信号は、『信頼』『慚愧』『親愛』を同時に表現していた。相変わらず気苦労の多い性格の恋人を、微笑ましく思ってしまうのはひいき目だろうか。

 だからヤシェロのお願いは効いた。

 

 

 

「わたしの騎士になってくれますか、ハジメ」

 

 

 

 あまりに時代がかった物言いだが、その意味するところはすぐに伝わった。

 

「……それって、つまり」

「わたしの公私を支えてください」

 

 強烈に照れくさいプロポーズを受けてしまった。不味い。ハジメはこういう直球の状況にまるで耐性がない。混乱して答えあぐねていると、その沈黙をどう受け取ったのか、ヤシェロは人差し指をぴしっと立てて語り始めた。何かを教えるときの彼女の癖は、四年前、初めて会ったときから変わっていなかった。

 

「この〈天啓号〉は一〇〇〇年間、あえて文明活動がない宙域を航行していました。離散(ディアスポラ)した同胞が、軍勢と共にこの船を奪取しにくる恐れがあったからです。あるいは彼らから情報を得た外部の船団の襲撃も……それらを考慮して〈天啓号〉はこの一〇〇〇年の航路を選択してきました」

 

 幸いにも無補給で長期航行しながら船を修理する能力は残されていた──綺麗に自衛能力だけを奪われた〈天啓号〉を守るため、歴代のシップマスターたちは外部からの干渉を一切受けない道を選んできた。

 

 しかしそうして喪失した数々の機能も復旧されてきた以上、これからは外部との接触が増えていくだろう。ヤシェロが欲しているのは、これまでにない環境下で起きるアクシデントに対応できる腹心だった。

 

「わたしはハジメの人柄も能力も信じています。だから、力を貸してください……本当はこういうの、恋人になるより先に言うべきかもしれませんけど」

 

「ん……わかった。ヤシェロの味方なら、きっと間違ってないと思う」

 

「ありがとうございます」

 

 にっこりと嬉しそうに笑って、ヤシェロが抱きついてくる。ふわりといいにおいがして、少女の体温の高さがわかって、たまらなく愛おしさが湧き上がってきた。

 しかしふと、どうでもいい疑念が持ち上がってしまう。

 

「なんかこれって、色仕掛けで騙されてるダメなやつみたいじゃないか」

 

「ハジメって素直になれないにもほどがありませんか?」

 

 ぎゅーっと背中に腕を回して抱きつきながら、ヤシェロは半眼でじっとりと少年をにらむ。

 

「うん。きっと俺、こういうの慣れてないんだ。どうすればいいかな」

 

 本当に仕方がない人ですね、と呟きつつ、ヤシェロは花のような笑顔で微笑んだ。

 

 

 

「じゃあ、ハジメはわたしを幸せにしてください。わたしもあなたを幸せにしてあげます。これって、ご褒美になりませんか?」

 

 

 

 人が人を愛するのは、ひとりきりでは、この世界は寒すぎるからだ。

 恋も愛も、そうして生まれた概念であり発明であり、人間という動物を前へ前へと駆り立てる欲だ。

 それが何ら特別なものではなく、また綺麗なものではないとしても。

 

 

 

「……君には勝てないなあ、俺」

 

 

 

 あらためて少年は、自分が欲しいものがなんなのかを思い知らされた。

 

 

 

 

 

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