スレンダー角っ娘はデカ尻ドスケベ雌山羊~クーデレ敬語ヒロインとイチャイチャする~ 作:灰鉄蝸@機甲猟兵エルフリーデ発売中
〈天啓号〉シップマスターにとって、先の事件は船の運命を大きく変える転換点であった。
比較的開発の進んでいた有人惑星を含むテナウス星系が丸ごと破砕され、その直後、〈収穫者〉を含めた大艦隊と根拠地であるいくつもの星系が消し飛んだ。
文字に起こしてしまえば、それだけの出来事である。
問題なのはあの邪悪意識体が支配下に置いていた星々は、いずれも豊かな文明世界であり、〈クルクス〉による攻撃の余波による死者が二〇〇億人にもなることだ。
これは〈収穫者〉の電脳をクラッキングし、そのデータベースを丸ごと奪い取ったハジメの言なので確実である。
結論から言えば、事の起こりはどうあれ〈クルクス〉の力を利用して事態を切り抜けた時点で〈天啓号〉は一連の大惨事の当事者であり、否応なくこの犠牲者の責任を背負うことになっていた。
敵による自作自演だったテナウス星系壊滅すら、〈収穫者〉と隷属していた星々が滅んだ今では証明のしようがない。
客観的に見れば〈天啓号〉がその保有する武力で見せしめを行ったと解釈されても仕方がない状況である。
少なくともシップマスターが外部の政治指導者だったなら、〈天啓号〉のことをロストテクノロジーによる武力行使をためらわない過激な勢力と見なして対応に当たるだろう。
報復兵器群が〈天啓号〉の護衛艦隊となったのは、シップマスターによる命がけの賭けが成功したからに過ぎず、あの虐殺が実行された時点では一切の影響力を持たなかったとしても──結果だけを見るなら最初から〈天啓号〉が仕組んでいたと考える方が自然だ。
よもや少年少女の淡い恋が決め手となって銀河の命運が決まったなどと、本気で信じる知性体はいまい。
そしてこの大惨事を主導した存在と見なされる立場で、これまで通りの方針はかえって危険だった。
過ぎた力を放棄すればすべてが丸く収まり平和が訪れるのは、かくあれと祈りこいねがった物語の中だけだ。
〈天啓号〉はこれから先、銀河に君臨する列強の一つとして振る舞わねばならない。そうでなければ先の戦いがそうだったように、いずれロストテクノロジーの宝庫として何者かに奪われ利用されるだろう。
そう、シップマスター・ヤシェロは決めたのだ。
人類の叡智を秘めた船を悪用させず、この船で暮らす民を守り、〈クルクス〉という銀河最強の暴力装置を正しく使いこなすと。
それが文明の建造者となることであり、新たな帝国を築くに等しいことを知りながら、彼女は新世界を始める。
ヤシェロは生まれながらの支配者であり、電脳貴族たちの末裔であり、多くの人々を生かし増やすための
かくあれと設計され産み落とされ、そのように生きてきた。
すべてを司る移民船の制御メインフレームにとっても誤算だったのは、少女が抱えていた倒錯的な性欲があまりにも歪で変態的だったことだろう。
自室に籠もって扉越しにハジメと会話したのは、感情的な理由などではなかった。
平たく言えば今のヤシェロは、到底、真剣な話をしに来たハジメと対面して話せる状態ではなかったのだ。
扉越しなら電脳を介して通信装置を操作し、平静を装って会話することができる。
──ハジメは気づいているでしょうか。
ヤシェロの抱く政治的な思惑には気づいているだろう。その上で彼はただのハジメとして彼女に接しているし、求められれば〈クルクス〉電脳としての思考と立場で意見を述べもする。
今や少年は〈天啓号〉にとって生命線に等しい同盟者だった。
保有する武力の非対称性を思えば、対等な関係とは到底言えない。相手がハジメだからこそ〈天啓号〉はその面子を保って交渉ができているのだ。
それを個人的な好意だけで縛り付けておけると思うほど、ヤシェロは傲慢ではなかったしうぬぼれてもいなかった。
だからこそ少女は夢の話をした。
宇宙全体への播種というプロジェクトは、彼女個人を飛び越えて〈天啓号〉という共同体そのものを守る理由になってくれるだろうか。
ハジメが内心でどう思っているかはわからないけれど、同じ夢を見てもらいたいと心の底からヤシェロは思う。
それが精一杯、彼に対してヤシェロが示せる誠意だった。
──でも、きっと、ハジメは絶対ドン引きしますよね。
ヤシェロは生粋の支配者であり、同時に倒錯的な
生真面目さと潔癖性から来る性嫌悪で押さえ込んでいた、少女の内面の深いところに巣くうそれは、改変体の発露によって解き放たれてしまった。
愛しい少年と男女の関係となって性行為の快楽を知ってしまったこともあり、自発的に肉体をどんどん淫らに改造していったのもその一部である。
ドアがゆっくりと開いていく。
カメラ越しに把握していたけれど、本当にハジメは格好良くなったと思う。彼の体格に合わせてあつらえられた汎人類再生同盟の礼服は、〈クルクス〉の分子鍛造機に用意されていた衣装なのだという。
よく似合っていた。
何よりも変わったのは目つきだ。これまでのハジメは、優しいけれどどこか浮世離れした目の持ち主だった。ヤシェロと出会ってからの四年間しか記憶がなく、よって立つ過去を持たないことがそうさせたのだろう。
けれど今の彼は違う。
報復兵器〈クルクス〉の電脳としての自己を確立し、副電脳に分離されていた人格が主電脳の戦略AIと統合された形──かつて銀河文明を滅ぼした最終兵器として目覚めたハジメの瞳は、鋭さと冷徹さを備えた支配者のそれだ。
それでいて以前のように、あどけない少年の柔和な雰囲気も残しているからたまらなかった。
ヤシェロの雌はそれだけで
「……ヤシェロ?」
薄暗い室内をいぶかしんで、ハジメが室内を見渡す──すぐ、鼻孔をつく甘ったるい雌の体臭に顔を歪めた。
完全に肉体を破壊された後、〈クルクス〉内部で再生産された彼の肉体は、たくましい少年の姿をしていても生まれたてだった。
無垢な赤子のように穢れを知らない肉体にとって、ヤシェロの汗腺から分泌された性フェロモンの甘ったるいにおいは毒なのだろう。
改変体による肉体改造が完了したヤシェロとは正反対だった。角人の中でも希有な淫乱として覚醒した少女の肢体は、乙女のように清らかな見た目のまま、どこまでも淫らで粘ついた欲望に染まっている。
彼の嗅覚を自身の雌臭で満たすよろこびに、少女の口元が微笑みを浮かべる。
それが恋人にマーキングする歓喜なのか、俗世の穢れを知らぬ天人を汚す背徳なのか、もう彼女には判別できなかった。
する必要さえ感じなかった。
遮光性の薄いカーテンの向こうでベッドに腰掛けていたヤシェロが、ゆっくりと立ち上がる。
薄布でできた衣装がさらり、とこすれあう音。
それまで静寂に満ちていた部屋は、そんなわずかな物音さえ目立ってしまう。
──ハジメがその気になったら、わたしはいつでも殺されちゃうんですね♥♥
背筋を駆け上る冷たい戦慄と同時に、ぞくぞくとたまらない背徳感を味わった。
自分の命のみならず、この船に住まうすべての住人と先祖たちが積み上げてきた歴史が無に還る。その取り返しの効かない結果について想像するだけで、ヤシェロの中には三つの情動が生まれていた。
生真面目で責任感の強い女の子のヤシェロはそんなことは許されないと叫び、シップマスターのヤシェロはそれだけは回避しなければならないと断言し、倒錯マゾの変態はその「もしも」に興奮している。
生来のまともな倫理・道徳の規範が、ヤシェロ自身の異常性を糾弾し、死にたくなるような自己嫌悪が湧き上がって──
──とっても気持ちいい♥
自身がとうとう倫理と道徳すら快楽の火種にできる変態に成り果てたことを実感しながら。
捧げ物であるおのれを披露するため、ヤシェロはカーテンを開けてその身をハジメの視線にさらした。
「その格好は……」
あっけにとられたような彼の声、困惑の表情。
色白の肌をほんのりと桃色に染め、ヤシェロはくすりと笑った。
「──花嫁衣装ですよ♥♥♥」
ヤシェロの細くしなやかな肢体を彩るのは、純白の薄布で織られた花嫁衣装だ。
古代地球時代、とある民族の婚礼装束──白無垢を思わせる豊かな布地は、少女の腕から垂れ下がるようにして大きな袖口を見せている。
少女の下半身をすっぽりと覆って足下に広がる裾も、伝統衣装の「着物」を思わせる意匠。
だが、それは断じて婚礼に赴く花嫁が身にまとう神聖な装いではない。
隠すべき場所を隠していないそれは、街頭に立って客を待つ娼婦とて着るのをためらうであろう痴女の装いだ。
胴体の部分はそれが
布地は胸元から乳房にかけてを覆い隠している──控えめな乳房の盛り上がりがはっきり浮き出ていた──が、背中側はえげつないほどの切れ込みが入っていてほぼ剥き出しだった。
さらに肩口から先は袖のないノースリーブの構造で完全に露出しており、少女の小さな肩も腋の下も丸見えになっている──腕を覆う袖の部分は、このノースリーブの上から羽織るアウターだった。
被覆面積で言えばチューブトップに近い露出過多の上着である。
本来、彼女の下腹部や秘所を隠すべき着物には、前開きの切れ込みが股上のあたりにまで入っており、歩くたびに脚の付け根はおろかへその穴まで見える有様だった。
当然のことながら少女の下腹部に浮かび上がった淫紋──性行為を楽しむためだけに自己改造する変態被虐嗜好の象徴、七つの蛇の頭を持った改変体もちらちらと見えてしまっている。
あらわになっているのは股間に張り付いたローライズのパンティも例外ではなく、ぷっくりした恥丘の盛り上がりを隠す気もない。
白無垢を思わせるシルエットはむしろ、穢れのない清純な新婦のイメージの対極──雄を誘う淫欲に塗れた雌を強調するための要素だった。
肩まで伸びたミディアムロングの黒髪を覆うのは、新婦の顔を隠す貞淑さの象徴──綿帽子ではなく、ウエディングドレスのベールを思わせる構造のかぶり物だ。
極薄のレース生地で作られた白のベールは、まったく少女の顔を隠しておらず、むしろその艶やかな微笑みを淫猥に彩っている。
切れ長の目の奥で輝く黄金の瞳も、桃色の薄い唇も、まったく隠せていない。
「…………大胆過ぎる」
うめくように呟いたハジメは目のやりどころに困っているようだった。しかしその表情に興奮が混じっているのを、少女は見逃さなかった。
ヤシェロの肌は抜けるように白く、血管が透き通って見えるほどに淡い色をしている。
その淡雪のような肌に対して、純白の煽情的な衣装はいかにも過激であり、男装の麗人である彼女のイメージからかけ離れていた。
これまでヤシェロは淫らな姿を見せてきたが、服装に関しては保守的な方だった。市街地へのデートのときのショートパンツ姿や、リゾート地への旅行での白のワンピースがかなり頑張った方である。
日頃は男物のスーツ姿で執務に当たっているから、この印象のギャップは大きい。
その証拠にハジメの股間が屹立しはじめている。
「ふふっ♥ 興奮してくれてるんですね、ハジメ♥♥♥ あなたの好きにしていいんですよ……♥」
抱きしめられれば折れてしまいそうなほど細い腰に反して、その臀部から太ももにかけての下半身はむっちりと肉感的だった。
豊かな骨盤に支えられた巨尻はたわわと実った桃の果実のように張りがあり、指で押せば弾力を持って押し返してくるほどに瑞々しい。
以前から大きかったヤシェロの尻は交尾のよろこびに目覚めてからさらに大きくなり、そこにあるだけで雌の色香をまき散らすセックスアピールの塊になっていた。
その尻肉の豊満さに負けていないのが、むちむちした太ももである。
卑猥に育ったデカ尻を支えるため発達した筋肉とそれを覆う脂肪の層が悩ましい曲線を描く、明らかに雄に媚びるための肉付き──しかし贅肉ではなく、少女の健康的な身体能力を誇示するように引き締まっている──は、男が腰を打ち付ければそれを受け止めるクッションの役割を果たすだろう。
これまでよりも、はるかに肉付きがよくなった太ももは、ヤシェロ自身の芸術的な細腰と相まって蠱惑的だ。
ごくり、とつばを飲み込む音。
以前のハジメなら、ここでヤシェロの色香に引きずり込まれていただろう。
だが良くも悪くも二人の関係は変わった。変わらざるを得ない事情を、互いに知ってしまった以上はそうなってしまう。
「ヤシェロ、俺は君の──」
少年の問いかけは予想通りだった。
「はい……ハジメはわたしのお父様とお母様を殺して、一万五〇〇〇年前には角人の先祖の〈航海者〉をいっぱい殺して、何兆もの人間を虐殺した悪い人です。普通に考えたらそんな相手に結婚申し込むなんてありえないって、ハジメはそう思ったんですよね」
優しいんですね、とヤシェロの顔がとろりと蕩ける。
おのれの倒錯して狂いきった被虐嗜好の異常性を理解しているからこそ、彼の純粋さが眩しかった。ハジメの背負う罪業の重さを知ってなお、少女にとって彼は清らかな感性の持ち主だった。
「俺に恋をして、君は後悔してないのか」
後悔はあった。
どうしてこんな残酷な運命を初恋にしてしまったのかと悔いなかったはずがない。
だが、それ以上の興奮が──脳を焼く法悦があった。
「……後悔なんていっぱいしましたよ。でも、もうそれはいいんです、ハジメ」
何度も自己に問いかけてきた。
自分はハジメに依存しているのではないか、と。
だが、全長三〇〇〇キロメートルの人工天体に等しい移民船〈天啓号〉のシップマスター、万単位の人間の生命活動を管理する存在としてのヤシェロはハジメを必要としていない。
今でこそ安全保障上の観点からハジメの武力を必要としているが、支配者・管理者としてのヤシェロは彼がいなくても成立するのだ。
自身の精神も記憶も自在に編集し改変できる電脳を持つ角人にとって、本当の意味で必要な他者などいない。
幼き日のヤシェロが父母の死を嘆き悲しみながらも、自己の人格を無意識に次代のシップマスターへと最適化していったように。
シップマスターとしてのヤシェロはそういう風に設計された存在だ。これから先も理想の偶像を演じながら、冷徹な打算と共に〈天啓号〉を運営していくだろう。
〈クルクス〉の攻撃によって生じた二〇〇億人の死者を許容したように。あるいは父母の死を引き起こしたのが〈クルクス〉であり、その後のすべてにエルギダの企みがあったことを必要なコストだったと認めたように。
そうすべきだから感情と関係なくそうする──それは義務であり責任であり、文明の再建という夢を見た理想家が支払う代償だった。
そんなヤシェロが自由になれる瞬間こそ、倒錯的
自身の価値を、責任を知っているからこそ、それを放棄するのは気持ちいい。
本当の意味で自己の生殺与奪の権利を他者に明け渡すことなどない、生まれついての支配者であり指導者──そこからの解放として育った破滅的な性欲。
ヤシェロは決して一匹の雌山羊に堕ちきることはない。
抑圧からの解放は最高の快楽だが、永遠に戻れなくなってしまっては味気ない一度きりの快楽で終わりだ。
かつて銀河文明を支配した〈航海者〉は上位宇宙への探求のために下位宇宙の資源管理を行い、それが数万年におよぶ搾取に繋がった。
その末裔であるヤシェロが行き着いたのは貪欲で深すぎる快楽の深淵、甘い蜜で獲物を誘い込み養分とする食虫植物のごとき生態──被捕食者ではなく捕食者の論理。
否、それは快楽をむさぼるための生態系そのものだ。
「あなたが大好きでたまらなくて、いっしょに幸せになりたくて……でもそんなの許せないって感じるわたしもいて……気づいたんです」
告げる自身の答えが、どれほど罪深いかわかっているから。
そのおぞましさにヤシェロは高揚する。
「──わたしはきっと、
それは言葉の暴力だった。
驚いたように目を見開き、顔を強ばらせるハジメ──そのすべてが愛おしかった。
先ほど自らの罪を咎められようと、罰を受ける気はないと言い切ったにもかかわらず、彼は動揺していた。矛盾しているようだが、これは彼の複雑な内面が影響している。
〈クルクス〉として目覚めた自我はこれまでの絶滅戦争の大罪を認識しながらも、自己否定や自己嫌悪にそれを繋げることはない。生粋の破壊者であり絶対者である主電脳の意向が影響していると言えよう。
だが四年前、目覚めた直後にエルギダによって教育され、まだ幼かったヤシェロと出会ったハジメの人格は違う。
あまり外部との交流を持たなかったこともあり、少年にとって家族同然の三人の暮らしは特別なものだった。
副電脳であるハジメの人格が主電脳と統合され、こうして肉体と電脳が再生されても、彼にとってヤシェロが特別な一人であることに変わりはない。
それは銀河系の人類すべてを平等に殺戮してきた戦争機械にはありえない不平等にして不公平──誰かを愛するという機能の弊害だった。
だからこそハジメは、恋人の口から告げられる刃のような言葉に傷ついている。
「わたしたちが出会ったのは罪で、恋をしたのは罰だったんです。それがすごく幸せだったから、そうだとわからなかっただけで──たぶん最初から、この恋はどこか歪んでいて。綺麗なままではいられなくて。堕ちていく以外の道なんてなかった」
「……俺が罪深いのは知ってる。だけど、君に罪なんてあるものか!」
彼女が花嫁衣装を着てここで待っていたことの意味に、気づいていないわけではあるまい。
それでも彼はヤシェロの言葉を否定しようとする。
目の前の少女に悪などないのだと。
「いいえ、ハジメ。わたしは途中からお父様とお母様の死の真相を予測していました。にもかかわらず、無意識に記憶と認識を覆い隠して、見なかったことにしたんです。気づいてしまえば憎むのが正しくなるから……あなたへの裁きを望むのが、わたしの知る倫理や道徳の示す正しい道でした」
愛しているからすべてを許すなど、ヤシェロにとっては耐えがたい
彼女の考える復興した文明世界が秩序を是とするなら、公平で公正な正義を実行すべきだ──〈クルクス〉という虐殺の主、今この瞬間さえ何の安全装置もなしに数多の星々を滅ぼせる兵器を許容してはならない。
政治家であり現実主義者としての彼女は、あらゆる意味でそれが不可能だと知っている。
まず手段が用意できず実行不可能な上に船の存続の上ではデメリットしかない。
だが、決して果たされない因果応報を求める潔癖さもまた、ヤシェロに深く根付く価値観だった。
「わたしの恋は不道徳で、この愛は不正義です。たった一人を特別扱いするために不都合に目をつむり、あなたに手を伸ばし続けました。あのとき〈クルクス〉の戦闘行動が停止したのは結果論に過ぎません。わたしにとっては、銀河に生きるすべての生命よりも──」
──
だからこそ自分の色に染めたくなってしまう。
このどろどろと煮詰まった執着は、きっと欲望から生まれている。
ヤシェロがハジメに向ける純粋な愛情と結びついて、醜悪な淫欲のつぼみが禍々しく花開こうとしていた。
「ハジメ……♥ 生きているだけで、こんなにも堕落できるのが人間なんですよ♥ あなたが自身の存在意義を、すべての生命への報復という至上命題を放棄したみたいに……愛おしいと思うだけで優先順位を狂わせて♥ 粘膜接触と神経回路の生み出す感覚を尊いものだと錯覚して……♥ この電脳に収まった意識は、地球時代の人々が乗り越えたいと願った獣の性の塊です♥♥♥」
それが角人という種の
社会的規範や性差、あるいは生物学的な身体構造に根付いた疾病など、人類にべっとりと
ままならぬ人の苦痛を、性玩具の機能の一つにまで
それこそが角人という種族の本質であり、堕落することで死の恐怖から逃れた電脳貴族たちの行き着いた進化/退化のかたち。
「俺は報復兵器だ。大勢の人を殺したし、これからも殺すだろう。それでも俺と……そういう関係で居続けたいと?」
「だからいいんです♥ お父様とお母様を殺して♥♥♥ たくさんの人たちを殺して♥ 〈航海者〉を滅ぼして♥ わたしが角人として生まれてくる原因を作ったひどい人……♥♥ わたしの何もかもあなたが作ったんですから♥♥♥」
くちゅり、と。
自身の股間を濡らす水音を聞きながら、ヤシェロは艶やかに微笑む。
火照った身体が一分一秒でも早く抱かれたいとうずいている。
「ハジメ♥ もっとわたしに
ゆっくりと歩み寄ってきたハジメは、そっとヤシェロの細腰に腕を回すと──ぐいっと力強く引き寄せた。
「きゃっ♥ ハジメ♥」
「……俺も変態みたいだ。今、すごく興奮してる」
この上なく残酷に、二人の心は通じ合っていた。
自身の人生はおろか、存在そのものをめちゃくちゃにした絶対者に雌としてかしずくことに無上のよろこびを覚える──それが父母の仇であり、大量虐殺の実行者であり、忌むべき種族の起源だからこそ
ヤシェロの倒錯した変態性が、この欲深すぎる少女の愛情表現だと理解できてしまうのがハジメだった。
それが愛情と憎悪の板挟みにあって錯乱した気の迷いではなく、ヤシェロの中で矛盾なく調和している快楽原則だとわかってしまう。
力強く少女の身体を抱きしめ、その小さな肩に顔を寄せながらハジメが呟いた。
「とんでもない変態になったね、ヤシェロ」
「はい♥ わたし、こんな終わってる変態になっちゃいましたから♥♥ ぜーったいに責任♥ とってもらいますからね♥」
甘えた声を出して顔を蕩けさせるヤシェロは、心の底から嬉しそうに、すりすりと自身の雌臭をハジメにこすりつける。
ハジメという等身大の少年の感覚にも実感できる罪は、目の前の少女のありようを決定的に歪めてしまったことだった。
いや、それを歪みと呼んでいいのかはわからない。
ヤシェロ自身の言葉通り、彼女は生来、そういう生き物──あらゆる苦痛と絶望を快楽として消費する支配者だったのだろう。
〈天啓号〉という船の置かれた特殊な環境と、それに適応した指導者を設計したロストテクノロジーの為せる人造の神の御業がそうさせた。
だが、それでも──眠っていた素質を呼び起こし、そうなる引き金を引いたのがハジメだった事実に変わりはない。
奇妙なほどに後悔はなかった。
それどころか、たまらない歓喜の感情がわき上がってくる。
その欲が征服欲や独占欲と呼ばれるものだと、今のハジメは知っていた──愛情と結びついて聞こえるのは堕落の足音。
目の前の雌をむさぼり尽くしたいという、何の意味もない獣の性。
今すぐにでもヤシェロを押し倒して犯したい欲求をぐっとこらえ、ハジメは問うた。
「ところで花嫁衣装ってことは、それ……俺のお嫁さんってことでいいんだよね」
「……ずっと一緒に居るって、普通そういうことじゃないですか」
ムードを壊されてヤシェロはご立腹だった。
「ン。俺としては騎士として女王に使えるって路線も好きだけど」
「わたしの従者で騎士はエルギダで間に合ってますから」
そう言うと、これまでの淫猥な雰囲気がなりを潜めて。
ヤシェロはぽつりと孤独への不安をこぼした。
「あなたはこの宇宙で唯一の絶対者で、わたしは何万年も生きられる角人で──だから怖いんです。いつか、狂ってしまうときが。たくさんの人を踏みにじって、壊してしまう怪物になるときが」
たぶんそれは指導者でも被虐嗜好者でもない、等身大の少女のヤシェロが抱える不安だった。
だがそれは、ハジメにとっては既知のものだった。
他ならぬ自分自身、永劫に思えた孤独から彼女に救われたのだから。
「じゃあ、ヤシェロが狂わないように俺が見張ってあげるよ。一万年でも一〇万年でも付きあえるさ」
だから、と少年は呟いて。
密着していた身体を離して、ヤシェロと正面から向き合った。
「これがその証だ」
少年が両手で差し出したのは、小さなアクセサリーだった。黄金色の十字架を象ったそれは、見ようによっては〈クルクス〉を連想させる意匠。
おそらく〈クルクス〉内部の微小機械工場で製造されたと思しきそれは、軟質素材でできた黒いバンドのようなものがついていて。
ちょうど首輪のように見えた。
「ヤシェロのために用意してきたチョーカー……婚約首輪かな、君好みの表現だとね」
指輪よりも首輪でよろこぶ変態が、と暗に蔑むような言葉──ハジメの表情自体は困ったように微笑んでいるだけだったが、あの優しい少年にそんな感情を抱かせたこと自体に興奮した。
頬を染めてうっとりとそれを見つめるヤシェロの姿に、贈り物が受け入れられたと判断したのか。
「つけるよ」
ハジメはそう言ってこともなげに、
〈クルクス〉の機械部品と同じ微小機械によって構築されたバンドがにゅるりと触手のように伸びて、ヤシェロの首の後ろ側で連結する。
圧迫感を与えない程度に締め付け、ぴったりと皮膚の一部のように馴染むそれ──〈天啓号〉シップマスターが、報復兵器の愛玩動物になったことを示す証。
なのに彼は、はにかむように笑って。
「ヤシェロ、俺の
それが当たり前みたいに、おぞましく甘美な求愛をしてくれた。
頭の奥で何かが壊れる音。
最後の最後まで残っていた理性とか良心とか常識とか、そういうものが粉々に砕け散っていく。
どうしようもなく浅ましい雌であるヤシェロは、その解放感だけで絶頂した。
「────────────────────────────♥♥♥♥♥♥♥♥♥♥♥♥♥♥♥♥♥♥」
かくかくと腰を突き出し、背を弓なりに反らせて快楽の極みに導かれる身体。腰が熱病にかかったように震え、ぴしゃぴしゃと潮を吹くせいで股間はびしょ濡れだった。
せっかくの透けるほど薄い白のショーツも、潮吹きと膣口からとろとろとあふれ出す白濁本気汁で薄汚れた布きれになっている。
控えめな乳房は衣服越しにもわかるほどぴんと乳首を勃起させ、この雌は発情していますと熱烈にアピール。
ヤシェロの黄金色の瞳は蕩けるような快楽に染まって、ぽろぽろと喜悦の涙をこぼしていた。
「はっ、はひっ♥♥♥ う、うれしイキしちゃいましたぁ……♥♥」
どうしようもない痴態を晒した自覚があるから、ヤシェロはますます興奮してしまう。
全身から強烈な雌臭を放ちながら、ぺたんと床に座り込む。
足腰に力が入らなくなってしまったのだと理解するより先に、尻餅をついた衝撃が内臓に伝わって──また絶頂。
「あひっ♥」
股上まで入ったスリットの隙間、下腹部では明滅する淫紋が毒々しい光を放ち、子宮をさらに熱く刺激する。
ただでさえ改造に時間がかかった生殖器はチンポ日照りで飢えた獣のように浅ましく発情していたし、その股間では陰唇が物欲しげにうごめき、どぷどぷと射精するように愛液を吐き出していた。
敏感になりすぎた雌畜臓器はとっくの昔に準備万端で、早くたくましいおチンポに敗北宣言しろと快楽信号で脳を焼きながらせっついてくる。
達しても達してもキリがない発情した身体に命じられるがまま、ヤシェロは足をそろえて正座。
そして、おねだりするように頭を下げながら、尻を高く掲げる。
三つ指をついて夫を出迎える貞淑な妻のように──あるいは交尾をねだる雌山羊のように。
「わたし……♥ シップマスター・ヤシェロを……♥ ハジメの雌で家畜でお嫁さんにしてください♥♥♥ おチンポいっぱい気持ちよくして♥ 赤ちゃんたくさん産んで♥ ずっとあなたの傍にいますっ♥♥♥」
その後頭部に伸びたエメラルドグリーンの山羊角は『求愛』『交尾』『強い愛情』を発光パターンで表現。
布地ごしにもくっきりと浮き出る巨尻の凹凸をふりふりと左右に揺らし、自身が性玩具としても繁殖装置としても優秀であると主張──品性も尊厳もない口上と裏腹に、伴侶として添い遂げたいという願望も真実である言葉。
こんな卑猥なデカ尻を持った花嫁などいるものかと罵倒されたら、胸が痛んですごく気持ちいい。
お前のような淫売の腹で作った子供などどう育つかわからないと嘲笑されたら、泣きたいぐらい気持ちいい。
ヤシェロの頭脳は想定しうるあらゆる仕打ちを予期して、びくびくと身体を
「ヤシェロ」
優しく声をかけられ、期待とも恐怖ともつかない感情のままに顔を上げた。
「がんばったね」
よしよしと出来の悪い子供のようにあやされる──雌の尊厳も自立も無視した、一見優しいようで一番残酷な対応。
ハジメはどうすればヤシェロが気持ちよくなれるかをよくわかっていた。
頭を撫でられた瞬間、ぷしゃっと愛液を噴いて絶頂。もう下着の用をなさない湿ったショーツを股間に貼り付けて、ヤシェロはだらしのないトロ顔をさらす。
しゃがんでヤシェロと視線を合わせ、ハジメはにっこりと微笑んだ。
「ところで雌で家畜でお嫁さんって希望が多すぎない? なんて呼べばいいの、それ」
「め、雌畜花嫁です♥ わたしの一族で……へ、変態マゾの女は♥♥ そう名乗るのがみんな大好きでした……♥♥♥」
「えっ……」
伝統だった。
心の底からドン引きしたことがわかるうめき声。
流石にちょっとどうかと思うぞという本音がダダ漏れの目──ハジメは理解に苦しむという顔で問いかけてくる。
「君のご先祖って変態しかいないのか?」
「し、仕方ないじゃないですかぁ♥ 角人はみんな気持ちいいことが大好きなんですっ♥ それもこれもあなたのせいですから♥♥」
「俺が〈航海者〉を抹殺したのは事実だけど、こんなド変態のどうしようもない種族になったのは関係ないよね?」
兆単位の人命が無に還った歴史上の大惨事をネタに惚気る、完全に道徳観念がズレて狂った会話──それにやましさを感じる理性が残っているから余計に気持ちよくなれてしまう。
背徳感と呼ぶことすらおこがましい恍惚に、目尻が下がっていくのがわかった。
「……もうっ♥ ハジメは意地悪です♥♥」
「ヤシェロみたいなド変態のマゾ山羊には優しい対応だと思うけど」
「…………♥♥♥♥♥♥♥♥」
否定なんてできなかった。
できるはずがない。ヤシェロ自身がよくわかっている──自分はもう、以前と同じではいられないほど変質してしまった。
ハジメにこんな台詞を言わせる自分の浅ましさを自覚すると、自己嫌悪で胸がいっぱいになる。
すかさずそれが脳を焼くような快楽に変換され、軽めの絶頂につながって。
発情しっぱなしの子宮が、下腹部でうずいて早くチンポをねだれと要求してくる。
「そういえば俺の身体、外見は前と同じだけど……ヤシェロはここも大きくした方がよかった?」
少年からの素朴な疑問──もはや隠す気もなく少女を淫乱あつかいする台詞だったが、それを気にも留めずヤシェロは笑う。
あまりに可愛らしい勘違いだったからだ。
「くすっ♥ ハジメ、どこでそんな安っぽいポルノみたいな物言い覚えたんですか♥ それに……ハジメのおチンポは大抵の人より立派ですよ♥♥」
言ってしまってから、どう考えても勘違いされる物言いだと気づいた。
ヤシェロが経験した相手はハジメだけだが、この言い方だと他の男と浮気したことがあるようではないか。
そこだけはまともな貞操観念を働かせながら、彼氏からの冷たい目線に反論。
「うわあ……」
「やぁ♥ わたしが見たわけじゃなくて一族のえっちに関するライブラリを参照しただけです♥ あと平均的なおちんちんの大きさのデータとか♥ それはまあ、すごい肉体改造してる人の槍みたいなおちんちんとかもあったみたいですけど……アレはだいぶ特殊な嗜好だと思いますよ? えっ、なんでハジメが興奮してるんですか♥」
「ヤシェロは本当にエロいね」
「は、はい……♥」
数ヶ月前、結ばれる前からは考えられない変貌──潔癖で生真面目で、性に関する話題を避けていたヤシェロが、自ら男性器の品評を始めたという異様さに、ハジメは強い興奮を得ていた。
これがすべて、自身と交わってタガが外れた結果だというのだからたまらない。
永久に失われた清楚な少女の面影と、それに伴う喪失感に比例した征服感──美しいものを汚した錯覚が、ハジメを支配している。
奇しくもそれは、ヤシェロがハジメに抱いている劣情とまったく同質のものであり、二人の心は通じ合っていた。
「ヤシェロの身体って今、すごいことになってるんだよね」
「はい♥ あなた専用に内臓から再設計したんです♥ 体なんて臓器も骨格も筋肉も作りかえればいい♥ 快楽が欲しいなら脳みそを自分で弄っちゃえばいい♥ そんなもののために手術や薬物が必要だったのは、まがい物にすがらなければいけない程度の文明しか持たなかったからです♥♥ 気持ちいいことがしたいって目的と手段を取り違えるような人になっちゃダメですよ、ハジメ♥♥♥」
それはとてつもなく傲慢でありながら冷徹な真実だった。
過去数万年にわたる銀河文明の支配において、ドラッグやセックス──快楽目的の違法薬物や性的搾取目的の人身売買──に需要があり、多額の資金が動く原動力になっていたのは文明レベルが低い未開地域だ。
人を廃人にするような薬物や人間の生命をすりつぶして得られる快楽が必要になるのは、単純にその程度のテクノロジーレベルの暮らししかできないからであり、それは人間存在の普遍的な欲望などではない。
人が宇宙時代にいたって思い知ったのは、自らの愚劣さが如何に普遍的であるかなどではなく。
それが如何に薄っぺらい醜悪さであったのかという事実だった。
飢餓状態で骨と皮だけになった人間の姿が、人の普遍的な姿であるなどと誰に言えるだろう。
人類はただ、その文明の発生から気が遠くなるほどの歳月、自らが罹患していた病の名も知らぬまま、それが自身の本質であると錯覚していたのだ。
欠乏が満たされたとき、人は神のごとき知性体への階梯を昇り──今こうして人の悪を玩弄している。
より自由に、より悪辣に、人という種の
「あなたのお嫁さんはそういうモノをぜーんぶ征服して♥
ヤシェロの心身は、あらゆる意味で人類史の最果てに生まれてしまった
その器は銀河文明の粋を集めたテクノロジーの結晶であり、その誕生は大崩壊による凄惨な虐殺なしに成立しえず、その魂は数奇な運命によって決定的に破壊的被虐嗜好に目覚めた。
そのありようは蜜のように甘く、毒花のように危ういかおりに満ちていて、底が見えないほど深く堕落に満ちている。
「わたしたちは神のごとき科学の
先ほどの雌畜花嫁の求愛の方がまだマシな告白だったが、効果は劇的だった。
ぐいっと腕を掴まれ引っ張られて、無理矢理立たされて。
力強く命令された。
「ベッドに行こうか」
「や、優しくしてください……♥」
それが怖くて、嬉しくて、守られるはずがない懇願をしてしまった。
Q:エロ衣装どんなやつ?
A:殺〇院キ〇ラ