スレンダー角っ娘はデカ尻ドスケベ雌山羊~クーデレ敬語ヒロインとイチャイチャする~ 作:灰鉄蝸@機甲猟兵エルフリーデ発売中
星々が砕け散るように、人間が生まれ落ちるように。
自己の存在を、無数の機械的制御系と生体組織で構築された人の似姿を正しく認識する。
肉身へ刻まれた使命は、何もわからない少年のかたちの中でひっそりと眠り続けている。
いずれ蘇らねばならない、"それ"へ託された切なる願いとして。
初めて彼女を見たとき、"それ"はこう思った。
──角が生えている。
おそらく、肉体人としてはまだ幼体と言っていいだろう。その造形が整っていることぐらいは、無知の極みであるそれにも理解できた。人為的に操作された芝が絨毯のように敷き詰められた、広い庭。その一角に、小柄な人影があった。
頭部から鉱物のような角を生やした、黒い髪の少女である。さらさらの長髪から覗く角は、まだ小さく、一〇センチにも満たない突起が、後頭部へ突き出ている。その存在に、ちくり、と胸の奥がざわついた。記憶もなく常識もない"それ"が、おのれの来歴を忘れてなお覚えていたもの。
熱く激しい感情は、決して好意ではなかった。何かを連想しかけた"それ"の思考を中断させたのは、少女の涼やかな笑み。
「はじめまして、ですね──あなたのことはエルギダから聞いてます」
差し出された手の意味さえ、"それ"は知らなかった。小首を傾げるというジェスチャー、身振り手振りという動作さえ知らなかったから、馬鹿正直に疑問を口にした。
あなたの行為の意味がわからない、と。
今にして思えば、そのときの彼女の反応は見物だった。自らの想定外の反応にどう対処すればいいかわからず、電脳を介したコミュニケーションガイドの検索を始める始末だ。どうにか威厳を取り戻し、角の生えた娘は、生真面目そうな顔つきに使命感をいっぱいに表現している。
「なら、わたしが教えてあげます」
人を好きになるのは、きっと、難しいことではない。
悪を憎むのと同じぐらいに。
◆
汗ばんだ肌のにおいとは思えない、甘い体臭。それとわかるほど濃密な性フェロモンを含んだ体液が、汗腺から染み出している。
一枚一枚、衣服を床に脱ぎ捨てていく間、ハジメの視線はずっとヤシェロの動作に向けられていた。その目線が気持ちよかった。恥ずかしいと感じる度、途方もないよろこびが湧いてくる。
ゆっくりと、ワイシャツの前を止めるボタンを外していく。地球時代の二〇世紀風の衣装だが、製造工程の簡略化で縫い目がないレプリカだ。数万年前の文化を模したシャツを脱いでしまえば、その下にはヤシェロの柔肌しかない。普段、男物のワイシャツを下着代わりに使っているせいだ。最後のボタンが外れると、ささやかな乳房を包むブラジャーが外気に晒された。飾り気のない白は、ヤシェロの感性らしい選択だった。同時に、それまで中にこもっていた熱気があふれ出す。
少女の柔肌の深奥に、その元凶は潜んでいた。
身体改変構造体レベル7<大淫婦の印>。
抜けるように白く、きめ細やかな肌で踊る光──雪のような白を穢す、毒々しい赤。細い腰から
──大きくなってる。
辛うじて下腹部に収まっていたはずの蛇のタトゥーは今や、へその上、太股の付け根あたりにまでその末端が達している。どくん、どくんと胸が高鳴る。それに呼応するように、ブラジャーの下にも赤い蛇の群れが浮かび上がった。こちらは炎のように乳房の丘陵を彩り、心臓を象ったかのような形状である。その意味を考えようにも、頭がぼうっとして思考がまとまらない。
それも当然だ。
──ハジメが、見てる。見られちゃってます……♥
凝視されている。羞恥心で体が火照った。ほんの二日前には、一晩中交わっていたというのに、半裸を見られるのがこんなにも恥ずかしい。それが嬉しかった。
──恥ずかしくて、気持ちいい。
少女を現実に引き戻したのは、愛しい少年の一声だった。
「ヤシェロ、このお腹の模様の効能は?」
先ほどの熱っぽい視線から一転、ひどく無機質な問いかけだった。顔に浮かんでいるのは、欲情というよりも懊悩に近い何か。その様子に面食らいながら、ヤシェロは口を開いた。
「それは……生殖器にかかわる、角人の特性の増幅です」
「それじゃ、わからないよ。俺にわかるように教えてくれ」
意地悪な質問だった。直接、口に出したくない答えだから婉曲表現にしたというのに。内心、ハジメの無思慮を詰りつつ、目を宙へ泳がせた。逃げ道を探したのが、よくなかったのだろうか。不意に少年の手がヤシェロの後頭部へと伸びた。突き出した二本の山羊角、エメラルドグリーンに明滅する増設感覚器へと。
気付いたときには、角の表面を撫でられていた。つるり、と指が角の溝をなぞるたび、触覚に変換されたセンシング情報が神経を駆け巡った。敏感すぎる角が災いして、ヤシェロの喉から艶めかしい声があふれる。
「ひゃぁん!」
「教えてほしいな。君の口から」
「んっ、んぅう♥」
こんなの、恋人同士だって軽々しくしないのに。まるで、つがいだった。鋭利な角の先端を、両指の腹が扱くように撫で上げる。それだけでヤシェロは腰砕けになり、立っていられなくなった。角から手を離された瞬間、ぺたん、と床に座り込む。べとり、と太股に生ぬるいスラックスの生地が張り付いた。染み出した愛液で、ショーツの外まで濡れ始めていた。
「……あぁぁ」
思わず、溜息がもれた。ヤシェロは細身の少女である。肩幅は小さく、腰はきゅっとくびれている。太股こそ筋肉質だが、足全体はすらりと長い。ある種の造形美を感じるほど、しなやかな体つきだった。そんな少女の肢体の中で、唯一、男好きのする豊満な部位。広い骨盤に支えられた大きなお尻を、ハジメにたっぷり可愛がられた尻肉を思い出す。
この人になら、どんな恥ずかしいことを言っても今さらだった。
視線を上げる。ハジメは平然と彼女を見下ろしていた。どうしてだろう、彼は何故こんなに怖い顔をしているのだろう。肉欲に昂ぶった心身では、答えなど見つけられそうになかった。
「ハジメの、その……性器に合わせて、体ごと作り変わっているところ、です」
消え入りそうな声で、どうしようもなく淫蕩な自分をさらけだした。身体改変構造体のもたらす作用は、角人の肉体人としての存在意義──性行為のための改造人種──に合致するものだ。ヤシェロの肉体は、彼女自身と癒着しつつある改変体と連動し、"経験した"パートナーとの性行為に肉体を最適化されている。ハジメとの性交において、最も多く触れあった部位──ペニスと接触した膣壁は、重点的に再構築が行われている。それどころか、生殖器としての役割を今のヤシェロが期待していない部分、つまり子宮も最適化の対象だった。いずれは膣と同じく、男性器に奉仕するための器官として生まれ変わることだろう。性玩具としての肉体を持つ、角人ならではの"変態"だった。
その変容への恐怖を忘れようと、ヤシェロは接吻をねだる。
「ハジメ……キス、してください♥」
どうにか、力を込めて立ち上がる。もう、ここが〈図書館〉──貴重な情報を収めたデータベースの内部だということも忘れていた。ぼんやりと残った理性が、汚れること、汚すことを前提に、清掃用自動機械を呼び出す方法を思案するだけだ。
スラックスを脱ぎ捨てた。体液でぬれた衣服は気持ちが悪かった。
ショーツを脱いだ。てらてらと愛液でぬめり、糸を引く布きれから足首を抜く。これも気持ちが悪いから──男性器を挿入するとき邪魔になるから──で、いやらしい理由などない。
その様子を見て、どう思ったのか。ハジメは何も言わず、ブラジャー以外ほぼ全裸のヤシェロを抱き寄せた。布地越しに彼の体温が伝わってくる──ハジメの着衣も、ヤシェロに準じて二〇世紀風の男物だ。ラフな姿なのが如何にも彼らしい。思わず、唾を飲み込む。彼の体臭を嗅ぐだけで、唾液がだらだらとあふれてしまう。
「こういうの、好きかい?」
穏やかな声で問われたものの意味がわからなかった。ハジメの首筋に顔をよせ、頬ずりする。ハジメのことは大好きだった。それは疑うべくもない恋情であり愛情だった。愛の言葉を返そうとした瞬間、へその下に硬いものが押し当てられていた。ヤシェロの柳腰を、彼の腕が強く抱きしめている。
敏感な改変体のタトゥーに、硬いものが触れた。
「ひゃん!」
「俺の"ここ"が好きなの?」
気付いた。たった今、彼女の下腹部をなぞっているのは──ズボンの上からでもわかるほど、硬く立ち上がった男性器。
──ハジメのおちんちん、こんなに♥♥
きゅう、っとお腹が疼く。淫らな蛇の刻印が、逞しい雄との交尾をせがんでいる。あの肉棒にまた抉られたいと性交のための臓器が熱を帯びた。
一拍遅れて、たった今、自分の思考に割り込んだものの正体に愕然とする。ヤシェロは今、目の前のハジメを、人間ではなくセックスの道具としてみていた。セックスパートナーと呼ぶことすらおこがましい、ただ肉欲をぶつけるための視点。改変体が浮かぶ前の彼女なら、決して考えない類の発想だった。
ちがう、と理性が拒む。そうではないのだ、と──否、そうはなりたくないという願望に過ぎない何かが表出する。かつてヤシェロが、ハジメには淫乱と思われたくないと、そう願ってしまった夢の名残。少女の肉体の現実に反する、甘ったるいロマンチズムの産物。
だが、改変体によってセックスに最適化された肉体は、容易く少女の望みを裏切る。娼婦のような振る舞いを無意識にするほど、ヤシェロは変容し始めている。
「ひぅっ♥」
腹のタトゥーへぐりぐりとハジメの男根が押しつけられる。布地を押し上げる性器の感触に、思わず、呻きとも喘ぎともつかない声がもれた。
まるで、初めてのときの再現だった。発情していたヤシェロは、理性の揺れ戻しと疼き続ける体の間で煩悶している。けれど、それを見ている少年の目線は明らかにあのときとは違っていた。少女の身を案じるわけでも、肉欲のたぎりをぶつけるわけでもない、どこか作為的な態度。
「やあ♥ ハジメの♥ お腹焼けちゃ♥♥ んふぅ♥」
「ん、そっか」
口を塞ぐような、深い接吻であった。唇と唇が触れ合い、ちろちろと唇を割って入り込んだ男の舌が、情熱的に誘ってくる。うっとりと眼を細め、ヤシェロは赤い舌を絡めてそれに応えた。互いの唾液を舐め取るようなキス。
破瓜のときよりずっと、ハジメの唾液が美味に感じられた。他者の舌が口腔を這い回り、歯茎や舌裏の柔らかく敏感な粘膜を撫で回す法悦に、頭の奥が痺れてしまいそうだった。蕩けるような性感の中、それでもなお、どこか冴えた理性が現状を分析していた。全身へ浸透しつつある身体改変構造体の作用が、ついに味覚や口腔の粘膜にまで到達したのだ。ヤシェロの肉体が、ハジメを求めて、なおも淫らに変貌している証左。
その事実に怖気が走った。変わってしまうことへの恐怖は、まだヤシェロの中に根付いている。少女の潔癖さと理性が、じわじわと躰を蝕む改変体への嫌悪を隠せない。なのに、それだけではなかった。彼女の中のとびきり倒錯した性癖が、よろこびを感じてしまう。つまるところ、少女はどうしようもなく角人であり、一族の誰よりもセックスに適した肉体を持っているのだ。自身が、はしたない
もぞもぞと太股を擦り合わせた拍子に、下腹部がかっと熱を帯びた。ズボン越しに感じるだけの陰茎を見たくて、嗅ぎたくて、触りたくてたまらない。この欲求すら、改変体によって埋め込まれたものだとわかっていても止まれなかった。
「んふぅ……んっ♥ ちゅっ、はぁあ……んぁ♥♥」
かちゃり、と硬い音。ズボンの留め金が床へ落ちたのだと、音を聞いただけでわかった。嬉しくて瞳から涙がこぼれた。ヤシェロの白磁のような肌は上気しきっていた──秘唇は柔らかくほぐれ、あふれ出した愛液は太股の内側を伝い落ちるほど。色づいたピンク色の粘膜が、セックスをねだっている。
ひくひくと雌のにおいを充満させた秘所のすぐ前に、ペニスがあった。少し腰を動かしてしまえば、くわえ込んでしまえる距離だ。彼の亀頭が太股の内側を撫で上げた。びくん、とヤシェロの腰が震えたのを合図に、ゆっくりとハジメの舌が引き抜かれた。名残惜しそうに伸びる唾液の糸が、ぷつりと途切れる。
「キ、キス……だけって♥ 言ったじゃないですか……ぁ♥」
「ヤシェロ、嬉しそうだね。そんなにセックスしたかったんだ?」
今日のハジメはとにかく意地悪だった。何ともないとでも言いたげな、いつも通りの調子でヤシェロをなぶる。甘ったるい体臭と性フェロモンをたっぷり含んだ、角人の愛液がすぐ傍にあるのだ。彼の興奮も限界のはずだった。先走りをにじませる亀頭がその証拠。けれど現実には、先に我慢の限界に達したのは少女の方だった。
うなじに黒髪を張り付かせ、涙が伝い落ちた頬を歪ませて。
「ハジ、メ……はやくっ♥ わたしと、せっくす、してください……っ!」
くいくいと腰を前へ突き出すように揺すり、熱い吐息を吹きかける。
恥も外聞もない懇願である。子供のわがままのように無様なおねだりに対して、ハジメの返答はひどく酷であった。
「ヤシェロ。俺は君の躰のことも、改変体のこともそこそこわかったつもりだよ。だから言うよ。──いつでも、どこでも発情するのは君らしくないし、それに付き合うだけっていうのは嫌だな」
その一言で、ヤシェロは目の前が真っ暗になった。どうしてとか、なんでとか、感情的で意味のない言葉が人格を埋め尽くす。本来、こういう情動の乱れを是正する電脳の制御系が、改変体との干渉で十分に働いていないのだと遅れて理解。
今にも泣き出しそうな顔で、ハジメの顔を覗き込む。目と鼻の先に彼がいるのに、その心がわからなかった。それがただの意地悪ではないとわかったのは、続く少年の言葉があったからだ。
「約束してくれないか。二人で合意したときだけ、こういうことを──セックスをするって。でないと、今日は付き合えない」
理解する。
ハジメが恐れているのは、ヤシェロの理性的な部分と同じ懸念なのだ。肉欲に溺れ、人格の根幹から変わってしまうのではないか、という恐怖。最低限の自制心すらない性欲に喘ぐ獣へ落ちて欲しくないという独善的願望。かちり、と頭の奥で歯車がはまったような気がした。この人を好きになってよかったと心の底から思った。それは、ヤシェロとまったく同じ心の働きであり、強い情欲の中、彼女の人間性が求めていた
──わたしは、あなたのことが、大好きです。
声にならない思慕の念を、幾重にも複製し電脳へ仕舞い込む。エメラルドグリーンの角が発光パターンを表現──同意、強い賛同の意思──この思いを魂まで焼き付けたいと切に願った。改変体がどれほど淫蕩さを刻み込んでも、塗り替えられない証を欲した。
つまるところそれは、恋と重なり合う愛だった。黄金色の双眸へ戻った、つかの間の理性の色にハジメの頬が緩む。
「……ハジメ、あなたの気持ちを考えずに、こんな誘い方をして、ごめんなさい……約束します。わたしは、あなたの恋人ですから」
「ありがとう」
互いの目を見て、誓いの言葉を交わす。ゆえに今度こそ、二人の情欲を妨げるものはない。ふうっと吐き出された深い息が合図になった。ヤシェロがそっと、ハジメの腕をほどいて後ろに引いた。壁の方へ身を翻す寸前、先ほどまでが嘘のように相貌が崩れていく。瞳を潤ませ、頬は上気し、唇を唾液で濡らした蕩け顔──疑いようもない雌の顔だった。
「……だから、責任、取ってくださいね」
壁に手を突き、尻を突き出す卑猥な姿勢──筋肉でむっちりした太股と、骨盤に支えられた巨尻が丸見えだった。男を知ってなお乙女のような色と形を保っている秘唇が、愛蜜を垂れ流しているのも。抜けるように白く形のいい尻肉が、ふりふりと左右に揺れて、"飼い主"の躾を今か今かと待ち望んでいるのも。少女の後頭部から伸びた二本の角が、そこを掴んで犯してくださいと言いたげに淡く発光しているのも──何もかも明らかであった。
このとき、ヤシェロは羞恥で死んでしまいそうな気分だった。それでも、精一杯の誘い文句を口にする。改変体に刻まれた卑語に頼らず、愛しい人を誘ってみせよう、と。ぎゅっと目を閉じ、壁の方だけを向いて、ヤシェロは最後の一言を口に出した。
「ハジメとなら……また♥ したい、です♥♥」
静かに、コンドームの封が切られた。