未来に転生!? 人類のためにセックスします!━スワンプマンは過去の性交に思いを馳せるか?━ 作:紫 和春
「種馬って……」
「あら、的確な表現だと思ったのだけれど」
困惑する門原に、馬場はとぼけたように言う。
「じゃあ反対に聞くけど、遺伝的多様性が失われ、男性が持つY染色体も消失し、性に対して奔放になった世界で、どうすれば人類を再興できるのかしら?」
「それは……」
門原は必死に考え、一つ思いつく。
「原子レベルで物質を構築できるのなら、それで精子でも作ればいいんじゃないですか?」
「いい答えね。結論から言えば不可能ではないが現実的ではないってところね」
馬場はパンと手を叩き、説明する。
「確かに精子が作れれば、それを量産するなりして解決するはずね。しかし現代の技術では、精子だけを作ることは不可能だったの。人間の体って不思議なもので、臓器一つだけ取り出してしまうと本来の機能を発揮しなくなるの。同様に精子単体の製造も不可能。そうなれば、体そのものを作るしかないというわけ」
「そんな……。ほかに方法はなかったんですか?」
「方法はあったわ。例えば、男性の性機能を付与した女性、つまり『ふたなり』という新しい人類を遺伝子操作で誕生させたり、女性を男性に性転換させるTSを行ったりしたわ。でも結果はうまくいかなかった。人類は想像以上に遺伝子のことを知らなかったわ」
「今シレッととんでもない技術がありませんでした?」
「ふたなり女性と男体化TSのこと?」
「そうですよ。その技術があれば、俺を召喚する必要もなかったんじゃないですか? しかも倫理観無視してるし……」
「うまくいっていれば、の話よ。残念ながらそうならなかったわ」
馬場は少し目を伏せる。そして門原のことを見た。
「さて、ここまでの話を聞いて、あなたが何故未来に召喚されたのか分かったかしら?」
「……大雑把に言えば、人類を存続させるために男性の肉体を過去から未来へと転送した、ってことですよね?」
「その通りよ。そしてやってもらうことはごく単純。精子の提供ね」
「それをするために人間一人を召喚するのもなかなか酷な話ですよ」
「それに関しては申し訳ないと思っているわ。それに、ただ精子を提供してもらうだけしゃないの」
「まだ何かあるんですか?」
「そうよ。これも単純な話で、この時代の女性たちとセックスしてほしいの」
「……ん?」
門原は聞き間違えたのかと思い、聞き返す。
「今の発言、聞き間違えじゃなければ、女性たちとセックスしてほしいって言いました?」
「合っているわ」
「……理由をお聞きしても?」
「今の時代、体外受精で子供を妊娠するのも一般的になってきたのだけれど、自然妊娠と比べると女児である確率が高いという研究結果があるの。つまり、自然妊娠の子供のほうが男児が生まれやすいというのが、ここ200年くらいの傾向なのよ」
「んな眉唾ものの研究結果を出されましても……」
「あなたのいた21世紀では違っていたかもしれないけど、この研究の結論は紛れもなく事実よ。それに……」
「それに?」
「あなたのような過去人が、現代人に対してどれだけの受胎率になるのか検証するのもあるわ」
門原のことを、動物実験かなにかのように扱う馬場。彼女が門原を見る目は、まさにモルモットだろう。
「ふんー……、そうですか……」
一つ深く溜息を吐く門原。そこに馬場が追撃をする。
「それで早速なのだけれど、この後ここの職員とセックスしてもらうわ」
「ぶほぉっ!」
突然の宣言に、門原は思わずむせてしまう。
「えっ、いきなりですか!?」
「そうよ。何を驚いているの? さっきも言ったでしょう、あなたは種馬候補だって」
「えぇ……。それって俺の意思とか人権とかないんですか?」
「現状あなたの戸籍が存在してないので、当然人権は適用されません」
「そんなぁ……」
「そんなに心配しなくて大丈夫よ。戸籍などの行政手続きはこちらで進めておくわ。今は研究の糧になってちょうだい」
そういって馬場は手を叩く。すると部屋の外からナースが数人やってくる。
「今、『糧になって』って言った? 俺最終的に処分される?」
「腹上死はあり得るかもしれないわね」
「うぅぅぅん……」
童貞である門原は、「そんな死に方ならいいかもしれない」と思いながら、ナースたちによって自分の部屋へと戻されるのであった。