未来に転生!? 人類のためにセックスします!━スワンプマンは過去の性交に思いを馳せるか?━ 作:紫 和春
すぐにベッドを綺麗にするため、ナースが数人部屋にやってきた。愛液と精液で濡れたシーツが取り替えられ、一緒に病衣も届けられる。門原が病衣を着ている間にベッドは整えられ、ナースたちは部屋を後にしていた。
「あの人たちは普通の看護師なんだろうなぁ……」
そんなことを、門原は呆然と考えるのだった。
それからというものの、門原はリハビリを中心とした生活を送っていた。初めて目を覚ました━━つまりスワンプマンとして転生あるいは生成された日から二週間ほど経過すると、リハビリの効果もあってか負荷の高い運動もできるようになってくる。
食事も流動食から、固形物を含めた健康的なメニューへと変化していた。ただ、サプリメントのようなものは変わらずそこにあったが。
「この調子なら、あと数日でここから出られそうね」
馬場がタブレットで門原のこれまでの健康状態を見つつ、そのような見解を示す。
「良かったわね。半分自由の身になれるわよ」
「半分って……。俺は実験に使われる動物ですか?」
「そうよ」
門原の発言にキッパリと答える馬場。
「どこまでも首輪は繋がったままか……」
「そう悲観することじゃないわよ」
「と……言いますと?」
門原は尋ねる。
「知っての通り、現代である36世紀は人類存亡の危機に陥っているわ。その切り札は、過去人であるあなた。そのための研究費用は大統領の権限で潤沢にあるわ。それこそ、あなたが今後の人生を自堕落に過ごしても有り余るほどにね」
「へぇ……。ん?」
今の発言に、門原は違和感を覚える。
「今、大統領って言いました?」
「えぇ。……そうだったわ、その辺りの説明をしていなかったわね」
とぼけたように言う馬場。タブレットから目を離し、一つ咳を入れて説明する。
「確か21世紀は、天皇の存在を前提とした立憲君主制の日本国という国家だったわね。今、あなたがいるこの国は、3015年に成立した大日本共和国という国家よ」
「大日本……共和国……!?」
ここ最近で一番の衝撃であった。まさか国家体制すら変化していたとは思いもよらなかったからだ。
「俺が知っている世界は、もう影も形もないんだな……」
「あら、あなたすごい愛国者だったりするの?」
「愛国者っていうか……、ごく普通の一般人のつもりだけど……」
「まぁ、そこは本質ではないわね。とにかく、あなたの知っている国ではないことを強く言っておくわ」
馬場は再びタブレットに目を落とす。
「これからのあなたのことについて伝えておくわ。あなたの戸籍は、厚労省経由で法務大臣の超法規的措置によって新規作成されたわ。これであなたは日本人として人権を手に入れることができたわけね」
「そうですか……」
「ただし条件付きよ。あなたの身柄は、私たち厚労省外局の人類維持局が保有した上で、人類の再興を成し遂げるまで協力すること。これが最低限の条件ね」
「やっぱり俺のこと人として見てないですよね?」
「否定はしません。なので、その体で精一杯精子を生産し、コンスタントにセックスと精子提供をしてもらうわ。これは研究事業として議会と大統領に承認をもらっているの。失敗は許されないわ」
「はぁ……」
門原は曖昧な返事をする。
「そのためにも、あなたには週に二、三回程度の定期的なセックスをしてもらうわ。場所やセックス相手はこちらで用意します。言い方を変えれば、官公庁に首輪をつけられたヒモ男生活を送れるわ」
「言い方にも程がありません?」
「21世紀では理想的な生活だと思うのだけど?」
「いうて適性が試される試練とも捉えられますよ」
門原のツッコミを無視して、馬場は話を続ける。
「まずは36世紀の生活に慣れてもらうために、セックス会場であり居住地である一軒家でしばらく生活してもらうわ。身の回りのことについても、秘書兼メイドとして女性一人をつけるわ」
「いや、一人暮らししてるんでメイドとかいらないんですけど……」
「いえ、この秘書は護衛も兼ねているわ。実のところ、あなたの存在はバレてはいけないの。過去からやってきた人間と知られれば、何をされるのか分かったものではないわ」
「え、この国そんなに治安悪いんですか?」
「21世紀に比べれば、相対的に悪くなっているわよ」
「マジかよ……」
「これも研究のためよ。我慢してちょうだい」
そんな風に言われてしまったら、言い返すことも出来ない。
「はぁ……、分かりました」
「理解してくれて助かるわ。早速転居の手続きをします。あと数日ほど待っていてちょうだい」
馬場はそういって、部屋から出ていこうとする。
その時、門原は前々から思っていたことを聞く。
「馬場さん、俺を召喚してセックスさせるこの研究事業って、名前とかあるんですか?」
「もちろんあるわ」
部屋の扉を開けながら、馬場は答える。
「『人類存続のための播種候補を過去から召喚することを主目的とした男性増産のための計画及び研究事業』、通称『播種の箱舟計画』よ」
その仰々しい名前から、この研究事業の本気度と狂気さが伺える。
門原は背筋が震える感覚を覚えた。