銃声と砲声の
鉄と血と肉を撒き散らし赤く、紅く、穢す殺戮の
拭い切れぬ死臭と生き血が染み付いた私に唯一許された結末を見る為に。
それが厄害を以て奏でられる
私の
MPU展開。
複数の部品が宙を舞う。
全てを組み上げ、出来上がるのは巨大な重火器。
ーー”XGWS-15/EMC”。
因縁ある火砲。
『オイオイソノデカブツハナンダ?」
呆れたようなサブAIの発言を尻目に、朽ちた廃屋を駆け上がり、身を投げ出す。
伏射姿勢を取り、担いでいた“XGWS-15/EMC”を構える。
「シャリー、迫撃弾の準備」
『何時でもいいわよ』
「エイルは観測データを伝えて」
『了解ダ。弾道予測ハ必要カ?』
「可能なら」
言いつつ、照準器のカバーを跳ね上げる。
(やはり……奴の姿は見えないか……)
集結しているのは白と濃紺基調のBDUを纏う少女達。
要所に確認出来るマークはトリニティ自治区アリウス分校の校章。
所謂、アリウス派ーー或いはアリウス生徒ーーというべき連中である。
既に母校は廃校となり、編入を拒んだ以上は不良少年でしかないが。
(まぁ……“殺せる対象”なのは有り難い)
法令上はアリウス生徒も“非実在住人”扱いに出来る筈。
つまり、殺人罪が問われる対象ではない。元より殺人罪を気にしてはいないのだが。
(まずは輸送手段から潰そう)
最優先は核兵器の輸送阻止。次点で
周囲を見回しーー十数両のトラックを確認。
“ベイビー・クリケット”は一般的な軍用トラックに積載可能なサイズだ。
無論、キヴォトスの住人なら保持して移動も出来るだろうが……良い的にしかならない以上、まず行わないだろう。
故に、トラックを潰せば……輸送そのものは遅延させられる。
(……よし)
標的の選定は終わった。
息を吸う。
肺一杯に酸素を入れ、呼吸を止める。
発砲。
激烈な反動が肩を殴り、青白い閃光が数台の輸送トラックに風穴を穿つ。
跳ね起き、宙へ身を躍らせる。
次はーーあそこかな。
第2ポイント選定。
「1番から12番、投射」
『了解!迫撃弾投射!』
遠くで砲声が木霊する。
予め、設置していた数多の迫撃弾の一部が投射されたのだ。
着地。
今度はニーリング。
構える。
アリウス生徒達は周囲を警戒している。
だが、私の位置までは特定出来ていないらしい。
刹那、彼女達の頭上から12発の砲弾が降り注ぐ。
弾種はクラスター。
空中で炸裂し、多数の弾頭に飛散。
爆炎と爆轟が響き、混乱が助長される。
今の内だ。
『観測データ送信』
照準修正。
発砲。
反動で数歩後退。
勢いそのまま、後方へ跳ぶ。
『第3ポイントヘノルートヲ出スゾ』
「13番から18番」
次の狙撃地点へのルート情報を確認しつつ、シャリーに追加の砲撃指示。
『了解よ』
着地。
アスファルト片を蹴り砕いて疾駆。
「エイル、残存トラック数は?」
『残リ5輌ダ』
次でそっちはケリが付くか。
抱える“XGWS-15/EMC”の砲身を一瞥。
既に焦げ臭い臭いがする。
(弾倉分は保たないか)
生きて帰れたら、改良しよう。
見え透いた死亡フラグを立てつつ、第3ポイントに到着。
構えーー
『
飛び退く。
一筋の閃光が迸り、把持していた“XGWS-15/EMC”の砲身が砕け散る。
流石にバレたか!
それにこの弾速……相手も得物はレールガンらしい。
多分、1年前に窃盗された時に情報を抜かれたか。
厄介だな。
朽ちた壁の裏に隠れつつ、“XGWS-15/EMC”の機関部をMPUに格納。
「予定変更、狙撃手排除と共に突入する。シャリー、残弾全部を撃ち尽くせ!!」
自分自身を奮い立たせるが如く咆哮。
遮蔽から飛び出すと共に、数瞬前まで隠れていた壁が砕け散る。
対物ライフル弾でもブチ抜けるような遮蔽物だ、レールガンを使うなら紙切れも同然。
つまり、周辺のコンクリートジャングルに遮蔽物としての価値は無い。
動き回るしか無いのだ。
跳んだ先の壁を蹴り砕き、跳躍。
視界の端で十数発の砲弾が弧を描いて飛んでいく。
『迫撃弾、残数無し!全基爆破処理するわよ!』
『狙撃手確認。位置ヲ知ラセルゾ!』
AI達の報告を聴きつつ、MPUを開放。
中に収めた.55口径対物ライフル“AWSS-.55Cal”を取り出す。
(そこか!)
こちらに大型の重火器を向けるアリウス生徒を確認。
照準。
向こうの銃口も私に向いている。
身体を捻りつつ発砲。
「ぐ…ぅっ!」
左腕に激痛が奔る。
流石に射撃姿勢が悪い上に、片腕での射撃。
代償は腱が数本断裂。
そこそこ程度で済んだか。
(でも……この程度は掠り傷。相手はどうなった?)
確認。
胸部に孔が開き、ドス黒い朱の池に倒れている。
殺れたか。
MPU開放。
”AWSS-.55Cal”を格納。
着地。
左腕確認。……動かせる。腱も治癒。
無問題。
方位修正。
跳躍。
暫しの滞空。
眼下に目を向ける。
朽ちかけ、穴だらけとなったガルバリウム鋼板の屋根。
得物を構えるアリウス生徒達を確認。
MPU開放。
“IMP-45”を取り出し、MPUを眼前に引き出す。
飛来する弾雨を弾き、落下。
位置修整。
紅い華を咲かせつつ着地。
まずは一人。
潰れたアリウス生徒“だったもの”を蹴飛ばし、前方へ。
前方に次の標的。
身体を捻り、足払い。
宙に投げ出されるアリウス生徒。
“IMP-45”を発砲。
至近距離で.45AMB弾をマトモに受け、鮮血と共に倒れ伏す。
弾倉排出。
予備に交換。
振り向きつつ、ハンドガード下部に装着した40㎜
軽い音が響き、40㎜口径の擲弾が弾き出される。
弾着。
爆轟。
焼け焦げた数名の肢体が打ち上げられ、墜落。
チャンバー開放。
空薬莢、排出。
40㎜擲弾装填。
チャンバー閉鎖。
前方に別のアリウス生徒。
急制動。
勢いを乗せた後ろ蹴りを胸部へ。
口から血反吐が噴き出し、苦悶の表情が浮かぶ。
心臓を潰したか。
空中で身体を捻り、片脚が地に着く。
そのままMPUを振るう。
遠心力の乗った
次だ。
再び急制動。
旋回。
方位修正、疾駆。
MPU展開。
数本の柄付手榴弾を腕に巻き付け、投擲。
炸裂。
焼け焦げた死体が宙を舞う。
何人か殺ったか。
だが、まだまだ敵はいる。
(残弾保つかな?いや、多分足りない)
ならーー
「クソッ何だコイーーごふっ!?」
手近なアリウス生徒にスライディングを仕掛け、相手の体勢を崩す。
そのまま両手首を掴み、捻って武装解除。
地面に叩き付けて怯ませ、取り落とした9㎜口径短機関銃“Sting-Rev”を取得。
心臓と眉間に2発ずつ発砲。
排除。
MPUを前方に引き出し、遮蔽としつつ死体の接近。
予備弾倉取得。
MPUを構えたまま突貫。
跳躍。
身体を捻る。
縦回転を加えてMPUを振り下ろし、眼下のアリウス生徒を殴打。
地面にMPU毎めり込み、頭部破砕。
引き抜き様にMPUで銃弾を弾く。
腕を振り、薙ぎ払うように”Sting-Rev”を速射。
所詮は牽制射撃。
相手を遮蔽裏に追い込み、射撃の手を緩めさせるに留まる。
弾倉排出。
再装填。
残弾倉数、4。
ボルト解放。
ステップ。
鉄山靠。
ノックバック。
喉元に銃口を突き付け、発砲。
気道と脳幹を破壊。
絶命。
リロード。
残弾倉数、3。
次。
落ちていた40㎜グレネードランチャー“RGW-06”を蹴り上げ、把持。
シリンダー開放。
(装弾は
撫でるようにシリンダーを回し、弾倉のバネを巻く。
照準。
3発発砲。
遮蔽裏に弾着。
炸裂。
察して遮蔽から飛び出すアリウス生に向けて、“Sting-Rev”を速射。
致命部位には当たらなかったが、腕か脚は破壊できている。
行動は大幅に制限。
“RGW-06”の残弾を撃ち尽くし、投棄。
弾着、炸裂。
逃げ遅れた数名が挽肉と化し、絶命。
“Sting-Rev”、リロード。
残弾倉数、2。
(流石にキリが無いな……)
事前砲撃で分隊程度は殺れたと思っていたが……。
中隊規模の人員はいるらしい。
リロードを終えた“Sting−Rev”を構え直しつつ、遮蔽へと突貫。
勿論、牽制射撃は忘れない。
ボルト後退、停止。
リロード。
予備弾倉数、無し。
掩体を飛び越え、身体を捻りつつ射撃。
数名射殺。
撃ち切った“Sting−Rev”を手近なアリウス生に向けて投擲。
頭部に当たり、蹌踉めく。
姿勢修正。
一息に距離を詰め、掌底を腹部へ。
内臓の幾つかが潰す。
この少女も長くは無いだろうが、まだ死にはしない。
顔面を掴み、持ち上げる。
ならば肉盾にしよう。
迫りくる銃弾を受け止めつつ、MPU開放。
取り出すのは数個の破片手榴弾。
「っぐ!?あ"あ"っ!!!?」
腹部と胸部に手榴弾を抉り込み、安全ピンを抜く。
苦悶の絶叫を無視して、“お仲間”の所へ
落着。
刹那、炸裂。
鉄と肉片と鮮血混じりの爆発。
喧しかった銃声と悲鳴が鳴り止む。
(これで全部……かな?)
次は奴の捜索ーーっと、思った所で第六感が警告する。
咄嗟にサイドステップ。
足元を銃弾の奔流が過ぎ去った。
射撃方向を確認すれば、異形の装軌式戦闘車両がこちらを向いている。
(……犬小屋か)
ーーミフレシュ・ドッグハウス。
中々厄介なヤツが出てきたな。
分類上は
手持ちに対戦車兵装はーーある。
MPU開放。
手元に滑り出すのは、棍棒にも似た金属塊。
パンツァーファウスト・ルクスだ。
カバーを跳ね上げ、トリガーを握り込むと共に走り出す。
正面装甲には分が悪い。
MPU開放。
柄付手榴弾と弾頭数個を結束。
投擲。
車体下にで起爆。
履帯を破壊。
側面に回り込みつつ、“パンツァーファウスト・ルクス”を発射。
空になった装薬筒をリリース。
着弾。
だが、撃破には至らない。
当然だ。
治安維持用途で運用されていた事から、主要な仮想敵は武装ゲリラや民兵となる。
一般に輸送車の天敵とされる、
車体底面の装甲強化等が前提となるIEDと対戦車地雷はともかく、HEAT弾は対処がしやすい。
犬小屋は
一般的に増加装甲は成形炸薬弾対策を重視した物だ。
そして、現在私が保有する携行兵装にタンデム対戦車榴弾は無い。
MPU開放。
予備のパンツァーファウスト・ルクスを取り出す。
成形炸薬弾の世代としては極初期のロートル。
なら、複数発撃ち込むしか無いのだ。
発砲。
装弾筒、リリース。
着弾。
しかし貫徹してはいない。
追加装甲を破壊しただけ。
まだ足りない。
MPU開放、予備を把持。
発砲。
着弾。
銃塔に破孔が見える。
だが、銃撃は止まっていない。
(ならーー)
再び柄付手榴弾を取り出す。
そして、鋳鉄製のスリーブを被せ、投擲。
破孔から内部に投入。
炸裂。
銃撃が止む。
内部で弾殻が四散し、乗員を殺傷せしめたらしい。
(これで終わりーーいや、違う)
再度殺気を感じ、横に跳ぶ。
砲弾が頬を掠める。
出血。
振り返り、確認出来た砲撃の主は“チャリオットMk.IV”だった。
(確かーーこれを所有していたのはユスティナ派だった筈……流れを汲むシスターフッドから横流しされた可能性も否定は出来ないけれど……)
いくら秘密主義の修道女連中でもそこまで過激では無いと思いたい。何処ぞの神父じゃあるまいし。
現用主力戦車を相手に出来る程の兵装はほぼ残っていない。
加えて、チャリオットは現行世代では防御力に秀でる事で有名だ。
MPU開放。
残るパンツァーファウスト・ルクスは一本のみ。
正面装甲は抜けない。
側面も厳しい。
可能性があるのは上面か、後部乗降ハッチのみ。
(……厳しいな)
運動性では可能だが、目の前の”チャリオット”はよりにもよってMk,IV。
“傘システム“を搭載した最初の型だ。
本来は
友軍への被害を鑑みて、拡散範囲自体は控えめな筈ではあるが。
(対人用途にも効果的に機能する)
ならーー
「エイル、弾道予測は出来る?」
『無理ダナ』
『当たり前でしょ女郎。仮に出来ても人の反射神経じゃ避けられないわよ』
軽口のようにした質問はメイン、サブ双方のAIから否定される。
「……それはそう。ダメ元で聞いてみただけ」
最悪、“アレ”にも頼らないと駄目という事が確定しただけ。
覚悟なんかとっくに決まっている。
“パンツァーファウスト・ルクス”を握り締め、中身を使い切ったMPUを掴む。
飛び出す。
直後に砲撃で砕け散る遮蔽物。
MPUを正面へ。
咆哮を挙げる主砲同軸の7.62㎜機銃。
MPU外装が受け止め、跳弾。
サイドステップ。
一息に側面へ。
“チャリオットMk.IV”の“傘システム”が作動。
MPUを構え直し、飛来する散弾を防御。
出来れば、履帯を切っておきたいが……手榴弾も残数が無く、40㎜擲弾では火力が足りない。
何とか、後部に回り込み……“パンツァーファウスト・ルクス”を発射。
後部乗降ハッチに着弾。
しかし、撃破には至らない。破孔すら開いていない。
(流石に相手が悪過ぎたか)
装弾筒リリース。
砲塔がこちらを向く。
発砲炎と轟音。
胸部に迸る衝撃。
内蔵が潰れ、肋骨が砕け、血が噴き出す。
意識暗転。
数瞬後に覚醒。
宙に浮いた私の肉体。
人が120㎜砲弾の運動エネルギーを受け止められる筈が無い。
直後、胸からコンクリートと鉄筋が突き出す。
倒壊した柱の芯材だろう。
肉片と骨片が飛び散り、盛大に吐血。
意識暗転。
覚醒。
胸部に激痛。
地面を蹴り、跳ぶ。
突き刺さっていた破片が抜ける。
血が噴き出し、赤い雨が降り注ぐ。
再び視界と意識が暗転。
静寂が数瞬全てを支配し、再び覚醒。
眼前に鎮座するチャリオットは動かない。
とはいえ、それも僅かな時間だけ。
砲身が動き、私を捉える。
砲撃。
至近距離から撃ち出された砲弾を避ける程の余裕は無い。
直撃し、4度目の意識消失。
でも……死ねない。
すぐに意識が戻り、血肉の池より立ち上がる。
身体は五体満足のまま。
けれども、足元に散らばる肉片と少女の両腕を鑑みるに、腰から上が吹き飛んだのだろう。
そして完全に沈黙したチャリオット。
(……乗員が全員逝ったか)
直近で私が死亡した回数とチャリオットの乗員数は同数だった筈。
何とかなった。
取り落としたMPUを拾う。
(残存武装は短機関銃、突撃銃、対物ライフル、リボルバー、そして機関部のみXGWS-15)
事実上、対人用兵装しか残っていない。
とはいえ、オートマタと奴くらいなら問題無いだろう。
『……女郎……どうして生きてるのよ……?』
「
MPUから“IMP-45”を取り出しつつ答える。
短時間で4回死亡し、4回蘇生したのだ。当然の反応と言える。
死生観は人其々。
だが、一度の死で“個”が失われる、と考えるならとうの昔に“輪廻 ハユハ”という個人は死んでいる。
だが……記憶の連続性があるのだから、私は私。
魂の有無でも無く、肉体の連続性でもない。
哲学的な問いはどうでもいいだろう。
『ソノ口振リハ間違イ無クマスターダナ。取リ敢エズ“スワンプマン理論”ハ後ニシナイカ?』
一方で
「……無駄話はここまで。第二波が来た」
壁の方を見据える。
だからこそ、気持ちを切り換えよう。
休む暇なんて無いのだから。
見据えた壁が吹き飛び、多数の白いオートマタが雪崩込む。
『腕は落ちていないようだな』
同時に響くのは、機器越しでも忘れないあのクソビッチの声。
『……最初から貴様を殺せるとは思っていなかったが、腕の一本でも潰せただろうに……』
この口調。
まさしくあのクソビッチーー花輪 イリヤだ。
『これだから口先だけの
周囲はオートマタに包囲され、短機関銃の銃口が私に向いている。
何時でも射殺できる、と言わんばかりに。
とても根腐れお嬢様の対処法を議論する状況じゃない。
「それについては同意する」
軽口一つ。
今死ねば、死ねるかもしれない。
だが……イリヤをこの手で殺すまでは絶対に死ぬ訳にはいかない。
MPU開放。
“GWS-003/BR”を抜く。
照準。
発砲しつつ、走り出す。
手近なオートマタの頭部に弾着。
センサー部を貫きーー赤い液体が飛び散る。
(“血”か?)
僅かばかり残っていた柱の影に隠れ、思案。
そうなると、コイツらはオートマタではなくパワードスーツ……にしては、人が装着する事を想定した造形ではない。
導き出される結論はーー生体部品の使用。
原材料にはーー多分、トリニティとミレニアム生の肉体が含まれているだろう。
(何処かの拗らせシスコン科学者がやりそうな事だ)
一般論で言えば悪趣味だが、合理的。
でも、元ゲヘナ/M.S.S.生たる私には何の戦術的揺さぶりにもならない。
天使が、令嬢が、科学者が死のうがどうでもいいのだ。
形式的な哀悼の意を示すぐらいしかないのだから。
不誠実だと言われれば、その通り。
だがーーそれがどうした?
柱の影から飛び出す。
照準。
発砲。
“破壊”。
次の標的へ照準。
速射。
破壊。
マガジンリリース。
リロード。
ただ淡々と続ける照準と射撃。
撃ち出した銃弾の数に比例して、摘み取る命が増える。
単純な結末。故に絶対的な事実。
けれども、数の暴力は変わらない。
目測だが、2個分隊……或いは1個小隊相当は[[rb:破壊>ころ]]した筈。
でも私に向けられる火線の勢いは変わらない。
(幾らトリニティとM.S.S. がマンモス校だとしても、失踪した生徒数と数が合わない)
“チャリオットMk.IV”の影に隠れる。
残りの弾倉数を確認。……2本。
確実に弾薬が足りない。
(つまり、オートマタの原材料は生徒以外も混じっている事に……そういう事か)
数が多い理由に検討が付く。
培養体ーー平たく言えば、クローンーーを利用したのだろう。
流石は命の価値が軽いレッドウィンターの出身者らしい思想だ。
加えて、他校への嫌がらせも鑑みれば、誘拐した他校生の培養個体とする線が濃厚。
(だが、レッドウィンターにそんな技術力があったか?)
私の記憶通りならレッドウィンターにクローン製作が出来る程の技術力は無い。勿論、ゲヘナ学園にも。
……考えるのは止めよう。
遮蔽から飛び出し、射撃再開。
瞬く間に撃ち尽くし、最後の予備弾倉に交換。
残存オートマタを再確認。
2個中隊程度。
やはり“GWS-003/BR”の弾薬は足りないが……やりようはある。
先程殺したアリウス連中の装備品だ。
5.56㎜突撃銃“ベリルAR/MG“、9㎜短機関銃“Sting−Rev”、40㎜擲弾銃“RGW-06”。
“Sting-Rev”以外は効果があるだろう。
MPU開放。
“GWS-003/BR”を格納。
手近な“ベリルAR/MG”と“RGW-06”、及び予備弾薬を取得。
地面を蹴る。
弾雨が元いた場所を薙ぎ払う。
再び“チャリオットMk.IV“の裏に戻り、“ベリルAR/MG”のボルトを引き、状態確認。
初弾装填済み。
問題無し。
銃弾とは違う風切り音が聴こえる。
反射的に地面を蹴り、“チャリオットMk.IV”の影から抜け出す。
直後、爆轟。
やはり対戦車兵器だったか。
オートマタの大群を見据える。
(PAT!?)
撃ち出された兵器の正体はすぐに判明した。
トリニティの旧制式採用品。
何処から入手した?
そもそもアリウス連中の広く用いるのは”SPG-7”の方だろう。山海経のライセンス品である“Type-690/対戦車火擶”の方かもしれないが。
(そう言えばオートマタの装備も旧トリニティ制式採用品だな……)
手にしている短機関銃も“コラプトSMG”。
確かに、安価かつ性能も悪くないモデルだが、トリニティ生徒の評判は悪かった筈。
お嬢様方は“品の無い下民の道具”と扱き下ろし、一般生徒は“可愛くない”と使用拒否。
ここまで徹底して旧式兵器ばかりを使わせる理由は?
……思い当たる節は1つだけ。
良いご身分の令嬢をバラしてオートマタにし、その上で毛嫌いした品の無い装備を使わせる。
完全に尊厳破壊でしかない。
で、そんな惨めな淑女の相手は蛇蝎の如く嫌う
最高の見世物だとでも言いたいのか?
女王気取りも大概にしろ。
(……まぁいいか)
敵は敵だ。
邪魔するなら“殺す”だけ。
“ベリルAR/MG”を右手に、“RGW-06”を左手に把持。
走り出す。
発砲炎。
MPUを眼前へ。
跳弾。
拳銃弾程度では抜けない。
ならば対処は
PATの弾頭が飛来。
(そっちか)
スライディング。
頭上を過ぎ去る弾頭を尻目に、 “ベリルAR/MG”を構え、発砲。
弾着。
赤黒い血が宙を染め上げ、歪な命がまた一つ消える。
制動。
迫る2発目の弾頭。
MPUを振るい、真横から殴打。
軌道偏向。
反動利用しつつ起き上がり、身体を捻って“RGW-06”を発砲。
弾種はHE。
弾着。
炸裂。
数体が吹き飛ぶ。
体勢を立て直し、“ベリルAR/MG”での射撃を再開。
撃ち尽くし、弾倉排除。
再装填。
コッキングレバーを弾き、初弾装填。
照準。
『建物外ニ動態反応!気ヲ付ケロ!!』
直後、
MPUを引き出し、身を隠す。
オートマタの後方から飛来する弾雨。
周囲一体を耕しーー
「っぐぅ…っ!」
MPUごと私の左腕が千切れ飛ぶ。
『左腕欠損!女郎、早く止血するべ!!』
「分かってる」
どうせ……死ねないけど。
だが、死ぬまで猶予は延ばす必要はある。
腰のポーチから注射器を4本抜き、投与。
中身はモルヒネと人造アドレナリン。
どちらも
『心拍数、血管収縮率上昇。保って数分よ!早く止血を!!』
シャリーの声が遠い。
視界が一瞬だけ歪む。
痛覚が消え、体感速度が加速。
これで一先ずは戦える。
(防ぎ切れなかった?……という事は対空砲弾クラスを受けた?)
MPUの外装は精々対物ライフル弾クラスまでしか想定していない。
真正面から受けて、腕ごと持っていかれたという事は、順等に考えて20㎜以上は確実。
野砲等を別として、周囲一帯を耕せるという事は……航空機関砲か対空砲、CIWS辺りだろう。
一部の珍兵器を除けば、CIWSは艦船用。対空砲の可能性が高いがーー
ーー疑問の答えはすぐに確定する。
『腕一本だけか。悪運の強い女だ』
崩落した壁の奥から蛙にも似た
(外観的特徴から鑑みると……“イヴァン”?)
確か……連邦生徒会向けにも納入実績のあるレッドウィンター系企業製の軍用人型装甲兵器。
(レッド……ウィンター……)
“イヴァン”の腕部一体型30㎜口径機関砲の銃口がこちらに向く。
『……今度こそ死んでもらおうか、輪廻 ハユハ』
やはりか。
迫り来る砲弾の奔流。
横に跳ぶ。
地に足が着く。
取り落とした“RGW-6”を拾う。
再度、コンクリートを蹴り砕いて跳ぶ。
「死ぬのは貴様だ、花輪 イリヤァァァッ!!」
咆哮。
所謂コンバットハイ。
閃光が瞬く。
機関砲の掃射。
空中で身体を捻り、紙一重の回避。
「他者の命を軽んじてっ!!貴様はスラムのクソ野郎共と何が違うっ!?」
『赤の他人を気遣う必要があるか?どうなろうが私達には関係無かろう?』
奴の声音はいつも通り。
侮る必要は無くとも、警戒する程度は低いだろう。
当然の状況。
『加えて言えば、ゲヘナもトリニティもお互いが憎くて仕様が無い連中。エデン条約など成立する筈が無い事は馬鹿でも分かる』
着地し、再度疾駆。
「私利私欲の隠れ蓑にして言う事かぁっ!!」
着地。
急制動。
発砲。
弾着。
『貴様とて同類だろう?スラム育ちの殺人鬼風情が何を言う』
しかし装弾はHEのままだった。
当然、掠り傷にすらならない。
シリンダー開放。
HEからHEATに弾種変更。
「貴様も同じだ!貴様のような“上級市民”に何が分かる!!」
スプリング圧縮。
シリンダー閉鎖。
「それにケジメは付けるさっ!!貴様を殺した後でなぁっ!!」
照準。
「だから死ねっ!!今、ここでっ!!」
発砲。
『戯言を……所詮同じ穴の狢だと言うのにな』
三度目の掃射が弾頭を撃ち抜き、“イヴァン”には届かない。
「
咆哮。
発砲。
着弾。
しかしーー射角が悪かった。
跳弾。
避弾経始。
(ならーー)
上部か後部を撃つ。
装甲兵器に於いて、運用上とコスト面の問題から防御力が軽視されがちな部位。
そもそも被弾する時点で運用ミスを疑うべき部位でもある。
機関砲の掃射。
スライディング。
残っていた柱にぶつかりーー蹴り飛ばして跳ぶ。
狙うべきは“イヴァン”の上部。
“RGW-06”を構えーー
直後、視界が歪む。
思考も鈍化。
(クソッ……)
出血限界。
時間切れだ。
機関砲の銃口、ランチャーから覗くロケット弾の弾頭が私を見つめている。
回避は……間に合わない。
閃光。
数多の鉄塊が私の身体を抉り取り、彼方へと消えていく。
右腕が千切れ、脚は爆ぜ、首も飛び、胴は血飛沫となる。
私という意識が再び消えていく。
(この手で殺せなかったか……)
どうせ今回も死ねない。
“呪い”の対象は眼前の
この手で復讐が果たせないのは残念だがーー
暗転。
無音。
静寂と虚無。
ーー数瞬後に覚醒。
血と肉片の池から立ち上がる。
原型を保った肉体が見えない。
数多の30㎜機関砲弾の雨、ロケット弾をその身に受けたのだ。
肉片が残っているだけでも“幸運”。
だから蘇生出来たのかも知れないが……考察は後でしよう
視線を上げ、”イヴァン”を視認。
『何故死なん!?』
驚きを隠せないイリヤの声。
(……何故ヤツが死んでいない?)
“呪い”の法則上、死ぬのはイリヤの筈だ。
だが、奴は生きている。
今までの状況を勘案して行き着く結論は……“イヴァン”の機体か火器管制システムが代わりに逝ったか?
何処までも命を軽んじた事実。
尤も……生命への冒涜という点で言えば、私の“呪い”も同じ。
「“呪い”が掛かっているから、かな」
先程までとは違い、私に異常な精神の昂りは無い。
死んだ事で、薬効が抜けたのだ。
落ちていた2挺の“RGW-06”とーー“形見”を拾う。
シリンダー開放。
装弾をHEATへ。
バネを巻き、シリンダー閉鎖。
セフティは……外れてる。
『“呪い”……だと?』
「そう、“呪い”。今回は……運が良かったらしいけど」
手にした”RGW-06”を構える。
「でもーーそれは貴女の寿命が僅かに延びただけ」
だから、意趣返しと行こうか。
「今度こそ、殺す」
走り出す。
普通なら機関砲弾の弾雨に飲まれて、挽肉になる。
けれども、“イヴァン”は全く動かない。
どうやら生体部品を使っていたのは機体制御、火器管制双方だったのか。
……つくづく“運が良い”じゃないか、イリヤ。
悠々と”イヴァン”の上部へ跳び乗る。
上部装甲を蹴り飛ばし、跳躍。
見据えるのは搭乗口のハッチ。
ハッチに向けて、“RGW-06”の残弾を撃ち尽くす。
爆轟。
“RGW-06”を投棄。
代わりに握るのは、友人の形見ーー
着地。
吹き飛んだ搭乗口に銃口を向ける。
そこにいるのは、瀕死の花輪 イリヤ。
全身に破片が突き刺さり、右腕と左脚も吹き飛んでいる。
鮮血で汚された狭い
クソアマには勿体無い墓だ。
「これで……満足か……?」
吐血と共に絞り出された言葉。
最後の最後まで此方をコケにするような口振り。
私の答えは一つしかない。
発砲。
着弾。
イリヤの額に風穴が空く。
けれども、銃爪に掛かる指は止まらない。
1発、2発と
シリンダー開放。
滑り落ちた空薬莢が甲高い音を響かせる。
(漸く殺せたか)
達成感など微塵も感じない。
義務的に処理しただけの虚無感。
とはいえ、元々空っぽだった存在が僅かに抱いた存在定義ではあった。
そして、存在定義を完遂した今、存在する理由は無い。
“イヴァン”の上から跳び降りる。
まだ最後の仕事が残っているのだから。
鮮血に彩られた広場の隅に着く。
私が果たすべき最後の仕事。
作られてしまった“悪意”をこのキヴォトスから消し去る事。
転がる輸送トラックの荷台を確認。
案の定と言うべきか、そこには巨大なマッチ棒にも似た弾薬と大型の無反動砲が積載されていた。
ーー“ベイビー・クリケット”。
分隊規模で運用できる、戦術核無反動砲システム。
ミレニアムに於いて作られこそされたが、一度も使われる事の無かった、愚者の創造物。
抑止力にもなり得ない、ただの暴力装置。
際限の無い絶滅戦争の銃爪。
それが何発もあるのだ。
(……これがエデン条約調印式で使われようものならば、ゲヘナとトリニティの軋轢はどちらかが絶滅するまで続く暴力の連鎖へと変わる)
即ち、キヴォトスの崩壊。
誰がソレを望むというのか。
ーー“科学者”か?
ーー“哲学者”か?
ーー“傭兵”か?
ーー“思想家”か?
ーー“分離主義者”か?
何れにしても、脳味噌に蛆が集る“大人”に過ぎない。
故に私が思う事はただ1つ。
“クソ喰らえ”
弾頭を砲システムに装填。
どうせ“呪われた”存在だ。
歴史に罪人として刻まれようとも、構わない。
寧ろ大出世じゃないか。無名の非実在住人だったのだから。
「
そして手にした“ベイビー・クリケット”を発射したーー
ーー以上、第14話。
Pixiv版の人物解説ではっきり記述していますが、ハユハが蘇生しているのは彼女の“神秘”故です。
作中で描写しなかった分を加味すると、ハユハの死亡回数は3桁を下る事はありません。
まぁ、その大半は強姦とセットですが。
次回はエピローグ。
Pixiv版とは違う結末を迎えます。
拝読ありがとうございましたーー