※この作品はR-18です。

凡人の在り方-Alternative-   作:空薬莢

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第1話。
キャラ崩壊も標準装備です。



面倒事の予兆-前編-

 

 

 

翌日の放課後ーー

 

「さて、始めよう」

「始めましょう!」

私とコトリは、作業台に向き直る。

そこには、大量の整備待ち銃火器。

何れもが、酷く損傷している。

修理しがいがありそうだ。

工具と依頼品を手に取り、作業を始めると、

「……ところでハユハさん」

コトリが話しかけてきた。

「何?」

「……最近、整備依頼が多くありませんか?」

確かに多い……かな。今日は300挺ぐらいだけど。

「……小競り合いが多いのかな。ミレニアムは比較的平和だったと思うけど……」

一般認識に近い返答を返し、作業再開。

「その……筈なんですけどね……」

一方のコトリは溜め息。

「ミレニアムで起こるのは、主に詐欺を含むサイバー犯罪の方。……技術の進歩が犯罪を悪質化させる事もある」

「嘆かわしいですね……。あ、損傷程度ごとの選別が終わりましたよ」

会話をしつつも、お互いの手は止まっていない。

技術者の集まりたるミレニアムに於いて、“エンジニア”部を名乗るだけに、半端な技能を持っている訳ではないから。

手近な突撃銃、短機関銃、狙撃銃、軽機関銃を一瞥。

破損箇所はハンドガード、パッドストック、ダットサイト等。

何れもがプラスチック製部品。

接着剤やパテでの補修で済む程度ではない。

丸ごと交換する方が早い。

部品在庫は……一部足りない。

「コトリ、足りない部品を3Dプリンターで成形。銃身の予備は何本ある?」

「えーと……今日の種別だと、100挺分ですね。多分、足ります」

「…………そうだね。今日の作業分は足りる。在庫は切れるだろうから…………余裕があれば、銃身の鍛造成形もする。材料(インゴット)の在庫も確認しておいて。その間に部品交換で済む依頼品を処理する」

「分かりました」

段取り終了。

本格的に作業を開始する。

六角(ヘキサゴン)レンチを手に取り、ボルトを緩める。

破損した部品を外し、別の物に交換。

ボルトも締め直し、修理完了。

破損部品は回収箱へ。後で高炉行きだ。

プラスチックの原料とする為に。

ミレニアムの銃火器はプラスチック製が多く、金属は銃身や薬室を含む機関部ぐらいの場合が多い。

プラスチックは軽量化、コスト削減を理由に採用されているが、金属より熱に弱い、という弱点がある。

無論、耐熱性等を向上させた“工業用プラスチック”と呼ばれる種類が使われているのだが、砂漠や火山地帯等では、パーツの“遊び”が出来て、命中精度が落ちてしまうし、最悪の場合は銃火器としての形を保てなくなる。

事実、ある軍に納入された自動小銃が砂漠での運用に於いて、猛暑に起因するプラスチックの変形で不具合をきたし、メーカーとの訴訟沙汰が起きた事例だってあるぐらい。

手早く、プラスチック部品交換で済む依頼は処理完了。

次は銃身磨耗品。

どれも内部磨耗が激しく、相当使い込んだか、強装弾や硬芯徹甲弾を撃ったか。

数割は表面にも、加熱による状態変化の形跡がある。こちらは確実に酷使した物だ。

そうでなければ、機関銃以外で赤熱や白熱まで行く事は無い筈。

そのぐらい、面制圧用の火器は銃身の耐用時間が短くなりがち。

「ハユハさん!狙撃銃用、重機関銃用部品の成形が終わりましたよ」

「こっちも突撃銃と短機関銃が処理完了。次は軽機関銃部品の成形。型はーーミレニアム制式銃の……Type-B。在庫品だから急がなくてもいい」

「はい!」

打ち合わせが終わる頃には、銃身交換品も処理完了。

後は…………部品が完成待ち品。

一部は今上がった部品で処理可能。

続けて、そちらに手を付ける。

が、

(規格が混じってる……面倒だね)

部品規格がバラバラだった。

当然と言えば当然だけど、各自治体ごと、国家圏毎に、部品の規格は違う。

ミレニアム内で言うと、一部生徒の拘りにより、メートル規格とヤード・ポンド規格の二つが混在している。

一般的にはメートル規格がキヴォトス内での標準規格とされる。……外の世界も同様らしいけど。

理由としては、メートル規格の方が明瞭かつ扱いやすい基準である為。ヤード・ポンド規格は様々な独自規格を雑に纏めたようなものであり、非常に扱いづらい。

現在でも主に用いているのは、トリニティ製とミレニアム製の一部ぐらいだ。

レンチを別途用意。“トルクス”と呼ばれる特殊形状を。

そして、分解作業をしていると、作業場の扉が開かれた。

「エンジニア部の人はいるかなー!」

入ってきたのは、学校に不釣り合いなメイド服を纏った亜麻色の髪色の少女。

「何の用ですか、一之瀬先輩」

ーー明らかに存在が浮いている少女の名は、一之瀬 アスナ。

個人的には関わりたくない部活である、Clear&Clearingーー通称、C&C又はメイド部所属の3年生。

どうせ厄介事だ、と思いつつも話しかけたのだがーー

「武器が壊れちゃった。直して、今すぐ」

ーー案の定、厄介事。

差し出された銃器は、辛うじて原型を保っている、という惨状。

「ほぼ廃棄確定じゃないですかっ!?一体何が?」

状況を見たコトリも驚愕。

それ程に、酷い損傷だ。

「いやー、敵が戦車を湯水のように投入してきてさぁ……後は分かるよね?」

……戦車砲の直撃、ないし爆発による損壊……といった所か。

形が残っているだけで奇跡だ。

「……作り直した方が早いですね。製造データは残っていた筈なので……」

部品在庫リストを一瞥。

一之瀬先輩の銃……“サプライズパーティー”の原型は、ミレニアム標準型Type-D………の旧型。

在庫は数挺ある。

兵装ロッカーから取り出し、部品を取り換え。

銃身以外はほぼ標準型のままだから、製造は楽だ。…問題が有るとすれば、それは旧式のモデルがベースという事くらいか。

ブルパップ式(薬室や撃発機構を含む機関部がトリガーより後方、主にパッドストック内に内蔵するレイアウトの事)の自動小銃なら、もっと精錬された物が沢山ある。

「間に合わせに近い仕上がりですので、微調整はご自身でお願いします」

組み上げた自動小銃を一之瀬先輩に渡す。

「うん、分かった。何かあったらまた来るねー」

受け取るや否や、作業場を去る先輩。

本当に急いでいたようだ。

「……」

「……」

足音が聴こえなくなるまで、私とコトリは開きっぱなしの扉を眺め、

「……作業を再開しよう」

「そうですね」

扉を閉めて、今までの作業に戻る事にした。

 

 

数時間後ーー

「今日はここまでかな」

「何とか終わりましたね……」

作業台の上に、整然と並ぶ整備済み銃器。

現状の依頼分は完了。

「ところで、ハユハさんはいつも手作業ですよね?」

「……昔からやってるから」

そう、昔から。

「昔から?」

コトリは私の頭を見て、言う。

視線の先は額。

そこには羊のような角が生えている。犬耳や尻尾が生えているような生徒はミレニアムにもいるが、こんな角が生えているのは主に、ゲヘナ学園生や百鬼夜行連合生だけだろう。

確かに、私は元ゲヘナ学園生徒で……まぁ、や(・)ら(・)か(・)し(・)て(・)ミレニアムに転校した身。

容姿を整形する気は無いから、否が応でも、そこに目が行くのは当然だ。

「そう、昔。……と、言っても数ヶ月ぐらい前まで……。要するに、ゲヘナ学園生だった頃の名残」

周知の事実だが、小競り合いの多いゲヘナ。銃器は元より、施設、設備の破損、倒壊は日常茶飯事。

機械を使った方が早く済むけど、そうもいかない。

すぐに流れ弾で大破するか、強奪されてブラックマーケット行きが普通。

「商売道具は手工具が主じゃないと、ゲヘナではやっていけない」

「あー……ゲヘナらしいですね……」

コトリの顔が引き攣る。

「加えて、のんびりと作業も出来ない。違法サークル間抗争の流れ弾を食らうだけだから」

「もういいですよっ!?ゲヘナの日常は聞かなくても分かりますからっ!」

そりゃそうだ。風評被害込みで、良い印象は無い。

工具を片付け、依頼品を整頓。

後は引き渡し待ち。

が、依頼人が来る気配は無い。

手持ち無沙汰だ。

時計を一瞥。下校時間までは後、1時間。

「後は受け取り待ちですよね。休憩しましょうか」

「そうだね」

適当な鋼材を椅子がわりに座り、各々が持参していたペットボトル入り飲料を取り出す。

喉を清涼飲料で潤し、雑談が始まる。

「……ところで、部長やヒビキさんは何処に行ってるんでしょうか?」

始まった雑談は、今はいない部長と同期生の事。

「“シャーレ”に行ったらしい」

昨晩、今日の予定と一緒に伝えられていた情報を伝える。

「またですか……」

呆れ気味に、呟くコトリ。

シャーレ。

キヴォトス連邦捜査部の事だが、現在は便利屋に近い何か扱いらしい。

数ヶ月前にアビドスで一悶着あった筈だし、最近はゲーム開発部でシャーレの顧問を見たとの情報がある。

私個人としては接点が無い為、どうでもいい存在。

だから、百科事典にでも載っている程度の情報しか知らないし、知ろうとも思わない。

「部長達は優秀だから。……あまりエンジニア部から離れるのもどうかと思うけど……」

遠くを見るような気持ちで、学生として……部員として真っ当な言葉を呟く。

「ハユハさん、随分他人行儀ですね。シャーレに行った事無いからですか?」

「私なんかを呼んでも、意味が無い」

本当の意味でのミレニアム生徒でもなく、エンジニア部の割には技術力も然程無い私が行く意味は。

「いや、わりと先生……っと、シャーレの顧問の事ですけど……はズボラですから、行く意味はあるかと!主に設備の保守整備的な意味で!」

「………大丈夫なの、連邦生徒会」

多忙だとは聞いているけれど……。

「噂をすれば何とやら、ですかね?」

「誰かが近付いてくる」

複数の足音が耳に届く。

明らかに、この作業場に近付いている。

やがて扉が開き、

「おっと、休憩中だったか」

足音の主は部長だった。

「作業は終わったのかい?」

「えぇ、なんとか」

いつもように、状況報告。

そこからは、次の打ち合わせか雑談……の筈だが、

「なら、良かった。……さて」

部長の雰囲気からして違うようだ。

「ハユハを借りてもいいかな、コトリ」

「構いませんよ。依頼品の引き渡しなら、私一人でも出来ますから」

……予定が狂う。

確かに、引き渡しに二人もいらない。

が、コトリ暴走を止める相方がいた方がいい筈。……いや、引き渡し程度で暴走するとは思えないけどさ。

「……だ、そうだ。ハユハに会わせたい人がいるんだ」

何故か、部長から言い様の無い圧力を感じる。

同時に、面倒事の予感も。

(……どうあれ、私に逃げ場は無さそう)

立ち上がり、ペットボトルをロッカーに入れる。

「で、会わせたい人は……あの人ですか?」

視線を作業場入り口へ向ける。

痩身の男性がこちらに向かって歩いている。

見るからに教師然とした風貌。

あれが噂のシャーレ顧問ーー俗に言う“先生”という存在。

「話はついたの?」

「いや、今からかな。……まぁ、その前に自己紹介が先だね」

“先生”は部長と言葉を交わした後、私を見る。

「ハユハ。この人が、キヴォトス連邦捜査部顧問の先生だ」

「初めまして。ミレニアムサイエンススクール1年、エンジニア部所属の輪廻 ハユハです」

形式的な挨拶を言い、“先生”の顔を見る。

本題は?というように。

すると、私の意図を察したらしい先生が、早速本題に入る。

「少し君の力が必要な事が出来たんだ。手伝ってくれないかな?」

「それはシャーレとしての強制ですか?」

超法規的な権力を持つ筈のシャーレが、態々お願いなんてしないだろう。

必要なら、有無を言わさず引き抜けばいい。

権力、権能を腐らせる意味は無いのだから。

「いや、飽くまで私個人からのお願いだよ。拒否権はある」

……本当かな?

胡散臭さが拭いきれない。

が、下手に歯向かうと、内申点等に響くか。

セミナーに目をつけられるのは、出来る限り避けたいし……。

「……内容次第ですね。態々、私を選ぶ理由が分かりませんから」

施設のセキュリティ問題等なら、部長やヴェリタスにお願いした方が確実。

得手不得手の判別くらいは出来るだろうに。

「一種のインフラ整備……といった所かな?場所はアビドス高等学校。同校の電気と水道の設備修繕作業をお願いしたいんだ」

「設備管理業務、という事ですか」

「そういう事。ウタハに聞いたら、君が適任だと言われてね」

「恥ずかしながら、古い形式の設備はハユハの方に分がありそうなんだ」

部長が苦笑。

廃校寸前とも言えるアビドスと、ミレニアムでは形式が違うのは当たり前。

下手をすれば、原始的とも言える物すらあるかも知れない。

先端技術に慣れ過ぎる、というのも問題だという事か?

まぁ、昔の作業を思い出すにも丁度良いけれど。

「……いいですよ。ただ、準備すべき物が分からない以上、一度視察したいですね」

引き受けよう。

「まぁ、そうなるだろうね。日取りは今週末の休日かな?」

「……順当に考えると、そうですね」

程無く、詳しい打ち合わせが始まる。

さぁ、面倒事だ。

……ゲヘナ基準では“普通”の、ね。

 

 

 






以上、第1話でした。
既にPixiv版を拝読済みの方はこんなんだったな、という感じですね。
まだ大人しかった頃のハユハはこんな感じです。
尚、先生の登場は次回で最後です。
要望があれば絆ストーリー(風)のヤツを書きますよ。
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