今回は戦闘回です。まぁ、(今回は)死人は出ないのでご安心を。
キヴォトス外ならば、普通に死んでるけど。
まぁ、何にしても、戦闘シーンは筆が進むってものです。
週末ーー
電車に揺られ、アビドス自治区に降り立つ。
噂通り、懐かしい町並み(ミレニアム基準)と砂漠が混在する風景が私と先生を出迎える。
「ハユハちゃんはアビドスに来るのは初めてだったかな?」
「……いえ、過去に何度か。随分と様変わりしたみたいですね」
前に来た時は、もっとマシだったのに。
自然は怖いものだ。
と、過去を思い出したのも束の間。
視界の端に、灰色の何かが見えた。
それは、灰色の髪……と、イヌ科の耳。後、蒼いヘイロー。
つまりは、キヴォトスの住人。
向こうも私達に気付いたらしく、近付いてくる。
「今日は間違えなかったんだね、先生」
感情の薄い、しかしよく透る声が“先生”に向けられた。
「う"っ……二桁ぐらいにもなると、流石に学習するよ、シロコ」
二桁?
……状況から察するに、最低10回はアビドス自治区で道に迷ったという事か。
ヘイローを持たない“外人”は非常に脆いのに。
「で、そっちの女の子は?」
話が纏まったのか、シロコと呼ばれた灰髪の少女が私を見る。
何処か、殺意に似た雰囲気を漂わせながら。
「ミレニアムの1年生。名前は輪廻 ハユハ。今日の用事に関わる子だよ」
「どうも」
軽く会釈。
「……そう。アビドスにようこそ、輪廻さん。私はアビドス廃校対策委員会所属の砂狼 シロコ。よろしく」
差し出された右手。
「よろしく」
握手を交わす。
同時に、
「……貴女、荒んだ眼をしてる。何かあったの?」
冷めた声で聞かれる。
「……」
砂狼先輩は、出来る人なのだろう。
私も鈍ったみたいだ。
「色々と。知らない方が幸せです」
そう、知らない方が良い事はある。
けれども、こういう表現は悪手だろう。
否定の程度が弱いのだから。
(まぁ、詮索を止めないのであれば……程度が知れる)
主に、思慮の浅いかどうかの。
さて、砂狼先輩はどちらかーー
「……そう。道案内するよ。……じゃないと、また先生が遭難するから」
意図を察したらしく、殺気が無くなる。
なるほど。やはり出来る人だ。
ゲヘナの有象無象の不良達とは違う。
……アビドスは警戒する必要がありそうだ。
「助かるけど、ストレートに言わなくてもいいんじゃないかな?」
後に、私と砂狼先輩間の会話は特に無く、アビドス高等学校へと向かう。
アビドスの惨状は、情報としては知っていた。
けれども、伝聞と現実が乖離している事はよくある。
有り体に言えば、アビドス高等学校のインフラは想像以上に劣化が進んでいたのだ。
「……全面改修の方が早い」
故に、確認した私の判断は……改修。作り直しだ。
アナログ方式の制御系が主であり、旧世代型の構造……しかも、重厚長大工業時代の産物まで混じっている。
同時代の機械は、無駄に頑丈かつ大型。反面、整備性が悪い傾向があるのだ。
今後を考えるならば、全て入れ換えた方が良い。保守整備要員を準備できないならば尚更。
「やっぱり、そうですよね……」
私の話を聞いた、黒髪の少女が苦笑する。
奥空 アヤネという名の彼女が、手探りでアビドスのインフラ維持をしていたらしい。
素人が整備しているのであれば、耐用年数は当然下がる。物作りに限らず、全般的な事象に言える事だが。
「……それにしても、一瞥しただけで分かるなんて……。流石はミレニアムの生徒、と言うべきでしょうか?」
「……いや、ミレニアムの生徒でも……座学でしか知らないレベルの設備達。実際に触れるのは、レッドウィンターかトリニティの物好きくらいだと思う」
最先端を学ぶミレニアムでは逆に不利となる。
部長が匙を投げるわけだ。
「……故に、エンジニア部の技術習熟には丁度良いと思う。私達は勉強に、アビドス対策委員会は資金をかけずにインフラの刷新が可能。……お互いの利点は明確」
商談の基本は互いに利益があるか。
その上で、自己の利益を最大化出来るか。
今回の場合は、シャーレを通しての仕事である為、重視すべきは相手側の利益。
こちらの利益は“先生”の財布から徴収するまで。
汚いって?大人の世界って、そういうもんでしょ……。
「…………そうですね。私達アビドスとしても魅力的な条件です。……裏が無いか、不安はありますが」
……まぁ、そう思われるか。
猜疑心を持つのは良い事だ。持ち過ぎては破滅するが。
「飽くまでも慈善事業としての活動に近い。……それでも不安ならば、監視役でも付ければいい」
仕事は全うする。
信用が仕事に必要な最低限の要素の1つだから。
現状で言えるのは、言葉による説明だけ。
果たして結果はーー
「……条件に異論はありません。よろしくお願いします、輪廻さん」
微笑みを浮かべ、差し出された右手。
「……こちらこそ」
こちらも右手を差し出し、握手を交わす。
契約成立だ。
「ところで輪廻さん」
「何ですか?」
「先生はどちらに?」
確かに、先生がいない。
念の為、先生に仕込んでいた発信器(ヴェリタス謹製。制作者は某盗聴魔先輩)の信号を確認。
「…………体育倉庫付近。近くに、小鳥遊先輩の反応がある」
「…………」
奥空さんの目から光が消えた。
これは、キレたね。
「……ありがとうございます」
張り付けただけのような、仮初めの笑顔。
やっぱりキレてる。
「手伝う?」
死人、とまではいかなくとも……惨事が起こるのは自明の理。
ストッパーが必要だ。
というか……数年前の気迫は何処に行った、小鳥遊副委員長。
「いえ。これはアビドス側の問題です。手出し無用です」
「…………最悪の事態には備えますよ」
怒りを隠す気の無い、奥空さんの後を追う。
いざという時は、気絶させてでも止めないと。
梯子を登り、校庭に出る。
直後、耳に届いたのは掠れた笛のような音。
嫌と言うほどに聞き慣れた“飛翔音”。
(迫撃砲弾!)
上空を見上げる。
数は少ない。砲弾ははっきりと識別できる。
弾道的に被弾は……しない。
弾着。
立ち昇る砂煙。
着弾規模から、60㎜程度の中隊迫撃砲と仮定。
ならば、周囲数㎞圏内に敵対勢力がいる。
弾着間隔の長さから、正規軍やPMCとは考えづらい。
と、なる敵は…………不良を含むグレた奴ら。
「奥空さん、対策委員会に恨みを持つ不良集団に心当たりは?」
コンテナ、レッグホルスター、ヒップポーチの装備を確認しつつ、問う。
「不良……《ヘルメット団》ですかね……」
…………あぁ、三下共か。
どの派閥かは、知らないが。
「地元の不良集団といった所か。……現在、戦える人員は?」
「セリカちゃんはバイトでいませんし……出れるのはシロコ先輩、ノノミ先輩とホシノ先輩の三名ですね」
3人か。
武装のバランスは問題無い。強いて言えば、制圧火力が不足している。
「……なら、私も出る」
「大丈夫ですか?見たところ、武器が無いようですけど……」
「問題無い。ここにある」
背負っていたコンテナを指差す。
中身は、複数のグレネードランチャーと、迫撃砲。
コンテナ外では、投げナイフを数本とハンドガン数挺持ってきている。
「……そうですか。すみませんが、お願いします!」
「了解。奥空さんは対策委員会の召集を」
踵を返す。
「その間は、私が対応する」
言い切り、校門へと疾走。
不良達の集団はよく見える。
ヘルメットしか特徴の無い連中が。
(まずは挨拶から)
コンテナから単発式グレネードランチャー“ASLL-36”を取り出す。
装弾は煙幕弾。
集団の手前目掛け、発射。
スイングアウト。
空薬莢が宙を舞う。
同時に、予備の弾薬をコンテナを引き抜き、装填。本体を格納。
着弾。
白煙が吹き出し、ヘルメット団の視界を奪う。
同時に、交戦域に到達。
踏み込みの勢いそのまま、手近な不良の顔面に広げた掌を打ち付ける。
「がはっ!?」
怯む。
そのまま掴みーーアスファルトへタッチダウン。
「ーーぐぅ……っぁあ"あ"あ"あ"っ!?」
加えて、握り潰すつもりで指先に力を込める。俗に言う、“アイアンクロー”っていうヤツ。
件の不良は痛みに絶叫を上げ、気絶。
空いた手で脚のホルスターから9㎜自動式拳銃“ISAP-09”を抜き、手近な数名に発砲。
着弾。
眼球に、あるいは額にめり込んだのだろう。
今度は絶叫すら無く、数人が崩れ落ちた。
幸運な奴ら。
今回は普通のフルメタル・ジャケットだから、痛みは一瞬。
本当ならば、グレイタロンやチューブダム、セフティバック等をブチ込むのに。
スライドが止まり、弾倉を撃ち切った事実を伝える。
弾倉交換。
乱入者に気付いたのか、相手側が射撃開始。
掴んだ不良を盾に。
外の世界なら、肉壁にすらならないが、基本的に銃弾で死ぬ事の無いキヴォトス住民ならば、盾代わりになる。
その証拠に、人体なぞ容易く貫通する小銃弾が貫通してこない。
「イテッ!?痛ぇ!撃つな!撃つなってっ!?」
気絶から覚めたのか。
煩いな。
周囲数mに不良数人。
好都合。
“肉盾”の顔面を掴み直す。
跳躍。
肉盾を振りかぶりーー
一番近くにいた不良の頭上へと、叩き付ける。
アスファルトにヒビが入り、動かなくなる。
気絶したか。
続いて、足元を刈るように薙ぎ払う。
「こいつーーぐあっ!?」
2人目が転倒。
顔面目掛けて数回発砲。
ダウン。
“肉盾”は……もう駄目だね。
痣だらけで、腕や脚も複雑骨折。
3人目に向けて、投げ飛ばす。
直撃。
“ISAP-09”を“ASLL-36”に持ち替え、発砲。
弾種は
炸裂し、吹き飛ぶ不良。
その身体は、赤々と燃えている。
骨まで焼く黄燐の燃焼にのたうち回り、絶叫。
だが、数秒足らずで沈黙。
……気絶したか。焼死した方が幸せだろうに。
「……さて、後は10人ぐらいか」
アスファルトにめり込んだ不良を引く抜く。
新たな鈍器兼肉盾を確保。
(煙幕も晴れてきた。……本格的な撃ち合いになる……前にっ!)
手にした“ASLL-36”をコンテナへ。
代わりに出すのは、
本来は装甲車や陣地に据え付けて扱う、面制圧用の重火器……を、手持ち式に改造した物。
まず、片手で撃てるものでは無いがーー
種族特性か、神の御業か……難なく出来る。
肉盾を構え、銃爪を引く。
轟音と共に、数多の砲弾が吐き出されーー
着弾。
遮蔽物諸共、不良を焼き尽くす。
暫しの絶叫。
やがて沈黙。
爆炎が晴れる。
残るは、黒く焼け焦げた不良だったモノ達。
一部は痙攣し、大半は動く事の無い焼死体同然の状態。
(……ゲヘナに運んだら、喜ぶ人はいそうだ)
死体以外に興味が無い、とか嘯いている先輩もいたな……。
まぁ、生きてるけどね。辛うじて。だから、喜ばないか。
寧ろ、仕事を増やしたと、怒られるかな。
……自治区内のいざこざで手一杯だろうから。
「……弱小不良集団なんて、こんなものか」
肉盾を路上に投げ捨て、右手左足の骨を踏み砕いておく。
不良に慈悲なんて要らないけど、処理は面倒だ。
それ故に、手足の片方は残した。這って移動出来るから。
「……ふぅ」
“GLM-40”をコンテナへ。
もし私が成人男性なら、ここで煙草を吹かせるのだろうか。
漫画やアニメでなら、よくあるシーンだ。
(ま、煙草は害しかないけれど)
未成年は法律上、禁止だ。馬鹿達は吸ってるけど。
かわりに、近くの自販機から飲み物を買う。
ーー商品は、ラント・レーゲン。……大地の雨。
今は懐かしい、微炭酸飲料。
プルタブを引き、一気に喉へと流し込む。
爽やかな柑橘味の液体が胃へと流し込まれる。
周囲を見回し、後処理用の足を探すと…………付近にトラックがあった。
(軽トラか……)
飲み終えたアルミ缶をゴミ箱に投げ捨てる。
焼け焦げた不良を抱え、トラックの荷台に投げ込んでいく。
ごく一般的な軽トラックの積載限界は350kg前後。
女学生の体重を考えれば、120㎜APFSDS二発分位だから……うん、過積載確定だ。
……とはいえ、ナンバープレートが無い所を見るに盗品だろう。
ディーラーや持ち主には悪いが、使い潰させてもらおう。私には、持ち主を知る術が無い。
全ての不良を荷台に積載した頃、耳に届く足音。
来たか……。
遅い増援ーーいや、対策委員会の人達が来たのだろう。
「終わりましたよ」
振り返り、言葉を返す。
「終わった……?」
突撃銃を携えた砂狼先輩。
「えぇ。後はトラックごと捨てるだけです」
「随分と殺伐とした言い方」
その瞳は敵意を含んでいる。
(……当然か)
無力化するだけなら、頭か胴に数発の銃弾を叩き込むだけで、事足りる。
私のように、炭同然にする必要は無いから。
……昔の、悪い癖。
「うへぇ……真っ黒焦げだ……。やり過ぎだよ……」
続いて、やってきたのは、ピンク髪の小柄な少女。手には白色メインの散弾銃。
トラックの荷台を一瞥して、顔を顰めた。
「……お久し振りですね、小鳥遊ホシノ……副会長」
雰囲気はまるで違うが、間違いようが無い。
あの頃から、殆ど変わってない。髪は伸びたけれど。
「もうその肩書きは無いけどね~」
気怠そうな雰囲気での返答。
本当に雰囲気と性格は、変わったようだ。
「……それにしても、ホントに輪廻ちゃんだったとはねぇ~。相変わらず、やることグロいよ?」
一瞬の真顔。
……根っこは変わってないのかな。
「痛みを与えなければ、理解しない人はいます。……まぁ、死んでも理解しない馬鹿もごまんといますが」
言葉が理解できない者には、身体に刻み込む方法しか無い。
所詮、知性ある生命体とは言えぬ存在と考える方が良いのだ。
「輪廻ちゃんらしい考えだよ、それ」
「……ホシノ先輩、輪廻さんについて何か知ってるの?」
怪訝そうな目は変わらず、砂狼先輩の注意は小鳥遊先輩の方に向いた。
「この子……輪廻 ハユハちゃんは、ゲヘナ学園風紀委員。……トリニティ学園の戦略兵器並みのえげつなさを持った存在なんだよ……。まぁ、それは目の前の惨状を見ればわかるよね?」
トラックの荷台を指差し、呆れ顔。
この人は、過去を知っていて当然だ。
とはいえ、最後に会ったのは、中等部の頃だったか。
だから、今を知らないのか。
「今はミレニアムのエンジニア部所属です」
「ミレニアム?……なんで転校しちゃったのかなぁ?」
「“アレ”のせいです」
そう、ゲヘナの……アイツ……あの阿呆のせいだ。
「……なるほどねぇ~。そりゃ大変だ。で、今はどう?」
「まぁまぁですね」
程々に忙しく、充実していると言えば、している。
青春を謳歌しているか、と言われると否だけど。
「そっか。なら良かった」
「……ゴミを片付けますね」
そう言って、私は起きる事の無い不良達を積んだトラックに乗り込んだ。
「埋めるのはやめなよ~」
気怠げな声を背にして、エンジンを吹かす。
数時間後ーー
アビドスからミレニアムに戻り、駅から学園へ。
空は黄昏。
人混み多数。
週末のありふれた光景。
雑踏に交じり、歩き出す。
(少し、忙しくなる)
部材の発注は完了。
来るのは数日後。
人員は……エンジニア部と……設備全般だから、ヴェリタスの支援も必要だろう。
一応、エンジニア部中でソフトウェアに弱い私でも、一般的な物は開発可能。
だが、所詮は付け焼き刃。餅は餅屋である。
相談相手は……
「貴女が来るのは久し振りね」
セミナーの事務室を訪ねると、目的の人物とはすぐに会えた。
「えぇ。ご無沙汰でした。各務先輩」
各務 チヒロ。ヴェリタス副部長。
色々あって、それなりに関わりがある人だ。
「用件は何?」
「ヴェリタスに協力していただきたい事柄が少々」
「“先生”から概要は聞いている。……でも、私達が必要な事象?」
「アビドスの治安が良くない事は理解していますよね?」
「勿論。それでも
それだけならば、必要無いと言いたげだ。
「アビドス対策委員会の人員は5名。その少人数で防衛できる範囲は高が知れています。……彼女達の実力を私は知りませんが、
やる気と結果は正比例しない。
実力と結果も正比例しない。
数と結果も正比例しない。
それら全てが伴わなければならないのだ。
「……同レベルの改修ならば、エンジニア部だけで充分ですが、省力化を考える以上は自立作動を採用した方が良いかと」
「だから、ヴェリタスの部員を借りたい、と……」
察してくれたようだ。
「はい。……丁度数日前に、どこぞの誰かがセミナーに迷惑をかけたようですし。奉仕活動ということで」
ヴェリタス所属の某迷惑アーティストが。
被害者はセミナー会計。
まぁ、あの程度は些事なのだけど。……
……体重を気にするなんて、馬鹿々々しい。
普段の自分を省みれば、虚偽だと気付けるだろうに。
技術も使う人次第か。
「……そうね。存分に強いてあげて」
「すぐにヘバリそうな人達ですけどね」
特に、小鈎さんとか。
「なら、根性を叩き直して上げて。特にハレを」
……分かってらっしゃる。
いや、流石にあの貧弱ぶりは有名か。
「何秒持ちます?」
「流石に10分は持つ。秒単位で駄目なら、そもそも生きれないでしょ……」
いや、秒単位ですら心配なのですが?
あの人、相当ですから。
……取り敢えず、飲料をエナドリを水に変える所からか。
「……詳細は先生から聞いて下さい。派遣する部員は各務先輩の判断に任せます」
話が付き、私はセミナー事務室を後にする。
(後は帰るだけ……だけど、一応……)
部室に行こう。
多分、誰かいるだろう。
部長か、猫塚さんか。
工作室の扉に手を掛け、
開く。
「……輪廻君か。良い所に来たね」
部長がいた。
「同感。狙ってたの?」
猫塚さんもいた。
「いや、素でしょうよ!」
コトリも……って、全員だ。
休日に全員が集まっているという事は……
「……また“暇潰し”ですか?」
きっと、ろくでもない物が出来ている。
全予算注ぎ込んで、レールガンを作成した時は頭を抱えましたよ。
それを普通に運用した某少女にも。
……後、セミナー会計との“お話”でも。
「私達を何だと思っているの……」
侵害だと言わんばかりの猫塚さんの言葉に、
「発想と技術が比例しない人達」
正論を返す。
「それゲーム開発部の方の意見ですよねっ!?大体、自虐になってますよ?」
「自覚してる。しているから、私はこの様」
コトリの意見もご尤も。
現実的な意見を言い過ぎて、エンジニア部の良心扱いされてる。……本当は違うんだけど。
「で、どうせ試作品のテストですよね……」
今度は何を造ったのやら……。
「分かっているじゃないか。さ、これを使ってみてくれ」
部長が指し示す物は……装飾過多な禍々しい棺桶。
……見覚えがあった。
「……搭載兵装は重機関銃、ロケットランチャー、ミサイルランチャー、後は追加で大型自動拳銃を二挺、ですね?名称は“デッド・ボーダー”」
本当に、なんてものを……。
「正解だ。何故分かったんだ?」
「一応、“グレイヴヤード・ガンズ”はプレイ済みなので」
プライステーション2用のアクションゲームだ。
その主人公、ブラド・グレイヴヤードの武器が、この棺桶だ。しかも、一作目の方。
「……どうせ作るならば、続編の方が良いでしょうに……」
搭載兵装が多いし。
「あっちは銃声が大人しいじゃないか。ロマンが足りないんだ」
「……理由、そこですか?」
確かに、弱々しい効果音だったけど。
「まぁ、テストはやりますけど……」
作ってしまった以上、実用性の確認はすべきだ。
棺桶付属の鎖を両腕に巻き付け、射撃場へ。
(意外と重いな……)
とは思いつつ、立ち上がった標的に向けて、重機関銃形態の棺桶を構えるとーー
ーー随分と陽気な音楽ーーというか、作中の必殺演出中のBGMーーが流れ出した。大音量で。
(ふざけ過ぎですよ!)
内心、ツッコミつつも射撃。
射撃反動は殆ど無し。
が、精度はさほど良くない。まぁ、掃討用に精度は必要無いのだろう。
全ての的を吹き飛ばすと共に、棺桶を振り、形態変更。
再出現した的に、ロケット弾を叩き込む。
無駄に大きな弾頭。しかもタンデム。
着弾し、大爆発。
成形炸薬弾(HEAT)じゃなくて榴弾(HE)だったのか。なら、何故タンデムにした?
(まぁ、それはさておき)
ミサイルランチャーはテストが難しいから、拳銃の方か。
棺桶を定位置に、格納された拳銃を抜き、ガンスピン。
速射。
残りの的を撃ち抜いてーー
ーー取り敢えず、銃口を頭上と地面に向ける。
作中の絶妙にダサい決めポーズだ。
やらないと、先輩方に冷やかされそうだから。
結果は……言うまでもないだろう。
後でセミナーに行かないと。
きっと、会計に小突かれる。
以上、第2話でした。
まぁ、何時もの僕のアレですね。
Dirty Worksの方で慣れてる方は『あぁ、始まったよ』でしょうけど。
現状の時系列はメインVol.1の第2章終了後かつメインVol.2の1章途中に当たります。
尚、委員長の夏休みとバニーチェイサーは終了済みです。
状況説明はこの辺で良いでしょう。
では、また次回。
拝読ありがとうございました。