第4話。
戦闘回。
透き通る世界観?
そんなものは無い。
あるのは血と硝煙と少女の尊厳が垂れ流される現実だけ。
と、いうわけで今回は想像できる人にはそれなりにはグロ描写有り。
尚、本作は属性相性を現実準拠にしています。
耐性の場合は当然無効化。
等倍、弱点でも性能次第で無効化となります。
要するに、主力戦車の装甲を散弾銃用のフレシェット弾で抜けない、とかそういう事です。※この説明で分かる人は分かります。
『緊急事態だ』
地上階に出た直後、耳に差していたイヤホンから白石部長の声が響く。
嫌な予感は的中……いや、キヴォトスの日常を嫌な予感……とは言えないか。
応答しよう。
「どうしました?」
驚きもせず、淡々と返す。
『ヘルメット団が襲来した。現在、アビドス廃校対策委員会総出で迎撃中だが……流石に数が多い。応援を頼めるかい?』
そりゃそうだ。
対処はどうするか、考えるまでも無いだろう。
制圧、無力化。それだけだ。
問題は物量と物資。
既に交戦中かつ、部長の発言からアビドス側の残弾が僅かなのだろう。
ナイフ一本でも戦えない事は無いが、それを一般学生に強いるのは酷である。というか、まず無理だ。
可能なのはお嬢様学校の一部変人か。……それとて、キヴォトス人としても異常な耐久力によるゴリ押しだが。
急いで向かうべきだね。
『問題無いですよ、白石部長』
纏まりかけた思案を制したのは、無線に交じる少女の声。
ーーヴェリタス所属、小鈎 ハレ。
今回の業務にあたって、ソフトウェア面で協力している生徒だ。
一緒に作業をする以上、必要な物として無線の貸与していたからだ。
『汎用警護ドローンのテストに丁度良い』
『ほぅ……名前は確かに……』
『“葬式ちゃん”』
「……」
元ネタはあのアニメか。
という事は……。
(勝てるわけ無い……)
元ネタに忠実ならば、スタンガン程度しか搭載していないはず……。
不安を覚えつつも、事の成り行きを静観。
念の為、コンテナ内の武装を確認。
(迫撃砲、狙撃銃、短機関銃、手榴弾……擲弾銃…………弾薬も問題無し)
所持品全ての確認を終えた頃ーー
『ブチ壊していい?ブチ壊していいよねぇ!?』
『ふふ……はは……っ……アハハハハハハ!!』
狂った戦争屋のような合成音声が響く。
いや、戦争屋にしては……随分と可愛らしい……しかし、無機質な少女の声だ。非常に聞き覚えがある。
『……小鈎さん。何が起こったんだ?葬式ちゃんが暴走しているが?』
困惑する白石部長。
『プログラムミス……かな?ソースコードの洗出しが必要だね』
対する小鈎さんも若干引きつつ、返答。
想定外の事態が起きているらしい。
『プログラムミスだって?』
つまり、このふざけた挙動はバグだと?
どう間違えたら、こんな化物が出来上がるんだろう。
搭載人格的に、何処ぞの“ドアノッカー”ではなかろうか?
残り……“ミソっ子”と“クロ”は何処だ。……って、この場合、ガワは“ミソっ子”が近いか。
『そう、プログラムミス。間違いは誰だってするよ』
ならば、事前にテストをしておけと……。
「小鈎さんは間違っていないよ……」
声をあげたのは、今まで沈黙していた猫塚さん。
「パンチが足りないから、少し……改良した」
『そうなんだ。具体的には?』
「25㎜レールガン一門、40㎜多連装スマートグレネードランチャー2基と……25㎜ロータリーガン2基」
カイザー製オートマタよりも重武装。
現物を見ていない以上、何とも言えないが……仮に原作準拠の大きさならば、明らかに積み過ぎである。
『うわぁ…。よく積み込めたね』
小鈎さんの反応を見るに、予想は当たっているのだろう。
あんな[[rb:剽軽 > ひょうきん]]な物体の何処に詰め込んだのか。猫塚驚異のメカニズム。
『確かに……積み過ぎですよぉっ!?』
あ、コトリは先に着いたのか。
まぁ、駐車場は前線に近いからね。
「何時まで抑え切れるか不安はありますね」
ダンプポーチを下ろす。
「部長、火力支援に向かいます。到着次第、再度通信を入れますので座標指示をお願いします」
『了解した。急いでくれ』
コンテナを担ぎ、外へ。
「ヒビキさんは作業の続きを」
「全員で対処した方が良いんじゃないの?」
「いえーー」
ヒビキさんを手で制止し、私は言う。
「(後は)私がいれば充分ですよ……」
業務への悪影響は、少ない方が良い。
数分後 アビドス高等学校 校庭ーー
(情報通りか……)
双眼鏡を用いて、戦況を一瞥。
戦況は
ヘルメット団は派閥を問わず、所詮は不良被れである。
一部の“名有り”を除けば、個々の戦闘能力は対策委員会に遠く及ばない。
だが、物量を生かした消耗戦では違う。
弾薬には限りが有り、集中力についても同様だ。
故に、短期決戦に引き摺り込まなければ……負けるだろう。
気持ちを切り替え、無線起動。
「ーー戦闘区域に到着。砲撃座標の指示を」
『早いなハユハ。…………ポイントD-227だ』
すぐに返ってきた部長の言葉に、
「了解」
一言返答。
頭の中で予め暗記していた地図を思い出しーー
(不良とはいえ、精神は未成年の女学生。ならーー対処は簡単)
ーー迫撃砲を展開。
装弾は催涙弾と焼夷弾を等分。
(距離……4500)
何とか届く距離。まぁ、まずは牽制になればいい。
照準調整。
砲撃開始。
時間差を付けつつ、連続投射。
弾着確認。
……有効。
とはいえ、有効弾は半分と言った所。牽制には弱いか。
『弾着確認。有効だ。次はーー』
「ーーポイントD-225ですね。退避した連中を炙り出します」
敵集団やや後方。下がった者達を前方へ押し戻す。
『ーーそうだな。話が早いのは助かる事だ』
そうと決まれば、弾種も決まる。
次弾を装填。
今度は
無論、マスタードガスや催涙ガス等の
主成分がカプサイシン等の催涙ガスはともかく、基本的には“
つまり、仲間を大事にする連中には効果的だが、負傷者を回収しようとしない……或いは薄情な連中には効果が薄い。
別の言い方をすると、慢性毒性が主体の毒物はキヴォトスに於いて、囚人への懲罰用にしかならない。
尤も、糜爛剤は皮膚の障害が主たる効果として想定されているので、醜く侵される外観は女学生にとってはそこそこの精神的重傷ではあろう。
少なくとも、一般学生が手を出せるレベルの医療では治せない損傷は与えられる。
故に、ゲヘナ名物(?)
外の世界だと
糜爛剤の作用も当然ある。諸々の戦時国際法に抵触する。……いや、人権相手にフ〇ックサインと首切りサムズダウンを同時やるようなものか。
キヴォトス人でも慣れない者なら、“臨死”くらいはするだろう。
実際、試験運用で私も走馬灯が見えた。……おそらく、走馬灯の筈……という物が。
当然ながら、“先生”がいるならば使用できない物だ。キヴォトス人で臨死するなら、外の存在は普通に死ぬ。
それこそ、
(……まぁ、問題無いか)
レッドウィンター辺りにいそうな、偉い人も言っていたし。
『テロリストは追い詰めて肥溜めにブチ込んでやる。肥溜めに逃げ込んだ奴も見つけ出して息の根を止めてやる』ってね。
今回はテロリストではなく、不良だが……外界基準では立派なテロリストである。
テロリストに人権は無い。
雑な扱いでも簡単には死亡しないなら、徹底的な矯正が出来る。
無駄な思考を中断。
無線機のレシーバーを取り、口を開く。
「前線に展開中の味方に通達。ポイントD-225に砲撃を行う。弾種はガス弾とHEI。巻き込まれないように注意して」
言い切り、砲撃開始。
やや間を於いて、狙い通りの地点に着弾。
ヘルメット団の密集地帯……のやや後方。
目視できる敵対勢力は発酵ガスを吸って卒倒。運良くガスから逃れた者は、焼夷榴弾の火焔で炎上。路上をのた打ち回っている。
増粘剤等を含む、焼夷剤絡みの消火としては正しい対処法だが、劇物混合の今回は悪手だ。
ガス弾の3割程度だが、焼夷弾の増粘剤にも特製の劇物を混合済み。
それ故に、のた打ち回る事で砂利等起因の切創を作ると共に、有害成分が皮膚から吸収される。
よって、ヘルメット団の奴らは全身の
そして、路上で弱々しく痙攣しながら、孔という孔から、あらゆる体液を垂れ流す。
キヴォトス生まれにとっては…………死んだ方がマシな地獄の苦痛である事に変わりはないだろう。
それらは、少女達の
考えても見てほしい。
出所不明の爆撃が正確に自分達を襲う様を。
目の前で仲間が火達磨になって、炭と化す様を。
化学兵器に全身を侵され、爛れた顔を苦悶で歪めながら、脂汗と血を垂れ流し、尿便両方の失禁をする様を。
彼女達は武装していようと、グレていようと所詮は“恵まれた”女子供でしかない。
この程度は
しかし、恵まれた“普通”の存在は、紛争地帯よりも遥かにマシな現状でも正気は維持できるだろうか?
答えは否だ。
事実、ヘルメット団は戦闘不能となった連中を見捨て、退却を始めるが……無駄な事。
進路上は(迫撃砲弾の)雨模様。
逃げる事が出来ず、全員がガスか火焔に呑まれ、倒れ伏しては地面を汚す。
ある種のありふれた光景。
そんな中、戦車に搭乗した奴らは残っているが……
(あの程度なら、無力化できる)
問題無さそうだ。
前線の状況を確認し、そう結論付ける。
何故なら、ヘルメット団の用いた車両が“T-27”だったから。
所詮は“カーデン・ロイド”から続く“豆戦車”の系譜。
本来は輸出用の簡易戦車ーー正確には装軌式機銃運搬車ーーの派生品にNBC防御など望めない。
ましてや、扱う者が碌な知識も無いならば、尚更。
(……尤も、“パンちゃん”の毒成分は一般的なNBC防御手段を普通に素通りするけれどね……)
故に、ガス弾をマトモに受けて、沈黙。
『砲撃中止。敵対勢力は全滅』
「了解」
部長の指示を受け、迫撃砲を収納。
残弾確認。
(……ガス弾が切れた)
撃ち過ぎたみたいだ。材料の調達、しないと……。
まぁ、その前にもう一仕事。
(きっと、それなりの数はいるよね……)
全てを収めたコンテナを背負い、無線開通。
合わせるのはーー
「ーー奥空さん、聴こえますか?」
ーー奥空さんの周波数。
『はい。聴こえていますよ、輪廻さん』
「これから別行動に移ります。対策委員会には補給を急がせて下さい」
用件は最低限の警告。
杞憂であれば、それでいい。
『別行動?何故ですか?』
当然のように疑問が返ってくる。
「推測だけど、後詰めがいる。……それを潰しに行く」
返答は待たず、無線封鎖。
時間が惜しい。
そして私は駐車場に停めた愛車に乗り、走り出した。
数十分後ーーアビドス自治区郊外
(ーーやっぱり)
遮蔽物も無い砂漠。
黒色の戦列を確認する。
あの塗装、遠目からでも分かる。
カイザーPMC。
無知な“子供”を捨駒に、アビドス自治区戦力を消耗させ、オートマタで擂り潰すつもりだったのだろう。
ごく普通の“大人”が考えそうな手法。
ごく普通だからこそ、対処法も簡単。
(オートマタと……戦車14輌)
機械歩兵中隊と、戦車中隊か。……中途半端な物量だ。
(対装甲用はあまり無いか……)
手持ちの大半は榴弾と通常弾。
前者は
対戦車用として古典的な部類であり、初期の
次に小銃、拳銃弾だが…………こちらは広く出回っている
つまりはーー
(ゲリラ戦か、狙撃しかない)
結論はそうなる。
コンテナ展開。
中から取り出すのは、“AWSS-55Cal”。
大口径の弾薬を用いる対物狙撃銃。
砂塵に伏せ、スコープを覗く。
13.9x99㎜APでは、正面装甲は抜けない。
当然だ。
元々“対戦車ライフル”と呼ばれていた種別が、貫徹力不足を理由に名称、用途変更した物が、“対物ライフル”だった……筈だから。
狙う部位は脆弱な箇所。
照準修正。
発砲。
着弾。
車載機銃座に着いていたオートマタのセンサーを破壊。
隊列停止。
周辺索敵体制に移行。
“AWSS-55”をコンテナに格納。
定点狙撃は自殺志願者に過ぎない。
狙撃手の排除方法は、範囲攻撃で区画ごと焼き払うのが定石だからね。
先程まで伏せていた地点に、152㎜砲弾の雨が降る。
着弾時の状態からして、
何はともあれ、走りつつコンテナ展開。
取り出すのは、棍棒のような物。
柄付手榴弾“St-240”と、その弾頭部数個。
一纏めにし、投擲。
即席の対戦車榴弾ーー尤も、遥か昔の戦車用だがーーとしての形式だがーー今回は破壊は目的としていない。
その証拠に、立ち昇るのは爆炎ではない黒煙。
要するに、煙幕である。
複数種類混合で使う為に、収束させただけだ。
センサーが何を基準に探知するか不明な以上、こうなる。
一気に距離を詰めーー
手近なオートマタの頭部を蹴り飛ばす。
装甲が砕け、配線も千切れて、電装系の不具合で機能不全を起こす。
その隙に、武装と予備弾薬を強奪。
“ギュスターヴMk.2 84㎜無反動砲”か。
カイザーPMCにしては旧式な無反動砲だ。
まぁ、オートマタ程度なら破壊には充分。
頚椎部に“St-240”を咬ませ、退避。
数秒後の爆発により、件のオートマタは頭部と胴体が断裂。
露出した内部構造も弾片で損傷。完全破壊とはいかずとも、中破ぐらいにはなったか。
(制御機構は胴体側か)
まぁ、そうだろうね。
頭部よりも装甲を確保しやすいし。
ならーーやろう。
手にした“ギュスターヴ”を発砲。
弾着し、手近なオートマタの胴体に風穴を開ける。
再装填。
走りつつ、次の目標を選定。
発砲。
破壊。
再装填。
もはや流れ作業だ。
センサーを失っただけで、行動アルゴリズムが狂っている。
随分と旧式な型を寄越したものだ。
逆に言えば、消耗させてしまえば、アビドス廃校対策委員会など旧式で充分と判断したのだろう。
(それが大人の余裕かな……)
楽に済むに越したことは無いが。
事実として、大半のオートマタは破壊済みとなっている。
残りは戦車だけーーだが。
(これも旧式だ……)
152㎜なんて、西側兵装としては変な口径の時点で予感はしていた。
(“MBT-70”か……)
冷戦中期の試作戦車が何故キヴォトスに?
というか、そんなに作られていたか?
ともかくーー
第二世代型主力戦車相手なら、旧型の“ギュスターヴ”でどうにか出来るだろう。
オートマタの残骸から、予備弾薬を取る。
装填。
同時に、走り出す。
既に煙幕は晴れ、砲口はこちらを捉えていた。
爆炎。
撃ち出されたのは、砲弾ではない。
GM-Mk.51“クラブ”対戦車ミサイル。
“MBT-70”の主砲はガンランチャー。即ち、砲弾とミサイルの双方を撃ち出せる。
同車輌が現役の頃は、まだ有線誘導式も多かったが……これはセミアクティブホーミング式。
指令伝達に
つまりーー
(選択を間違えてる)
対人使用は間違いだ。
発砲。
着弾。
命中箇所は車体後部。
一般的に装甲が薄いとされる箇所。
加えて、防御力を軽視しがちな第二世代型。“MBT-70”は確か、
HEAT相手には効果的な装甲ではあるが…………所詮は旧式の装甲。
それを見越してタンデム弾頭型を撃ち込んでいる。
結果はーー1両沈黙。
誘導手を失ったミサイルが、別の“MBT-70”の側面装甲に着弾。
爆発。
行動停止。
残りは10両ほど。
ランチャー後部を開け、次弾装填。
同時に、コンテナ展開。
“St-240”と弾頭数個。
締結。
端部キャップを捻り、点火紐を引きーー後方へ投擲。
水切りの要領で砂地を跳ねた“St-240”は1両の“MBT-70”の底部へ滑り込む。
ーーと、同時に時限信管の作動時間。
炸裂。
沈黙。
……狙い通りだ。
ーー“ポプキンソン効果”。
ごく至近距離で炸裂した爆発は内部で反響し続け、やがて物体に表面又は背面の剥離現象を起こす。
この原理を利用した物が粘着榴弾。
つまり、底部装甲の裏側……搭乗者の下から割れた装甲板が襲い掛かった……というわけだ。
人間相手なら、ミンチである。今回は中身もオートマタだろうから、紛れ当たりと言った所か。
残り9両。
横っ飛び。
元いた位置を砲弾が駆け抜ける。
地面を転がりつつ、射線から位置を特定。
発砲。
反動相殺の為に放出されたガスが砂塵を巻き上げる中、砂を蹴り、宙へと跳ねる。
戦車砲の仰角は真上までは無い。
再装填を終えた“ギュスターヴ”を真下の“MBT-70”へ発砲。
残り8両。
背中で着地。横転しーーやや於いて、立ち上がりつつ走り出す。
瞬間、砂塵が追ってくる。
対人/対空用の20㎜機銃座の射撃だ。
漸くか。
遅いと思いつつも、オートマタの残骸から弾薬を取得。
再装填。
発砲。
着弾。残り7両。
再装填。
襲い来る7.62㎜機銃、20㎜機銃の銃撃。
が、前者は砲塔の旋回速度と主砲同軸という事から来る射角問題、後者は未成熟な遠隔操作故に、どちらも回避は余裕だ。
走りつつ発砲。
着弾。残り6両。
すぐさま再装填。
別の“MBT-70”へと、すれ違い様に横っ腹へ発砲。
着弾。残り5両。
包囲射撃を敢行される前に終わらせないと。
再度、オートマタから84㎜HEAT弾とーー手榴弾を取得。
手榴弾はすぐにワイヤーで締結して、集束。
手近な“MBT-70”の車輌底部目掛け、投擲。
炸裂。残り4両。
“ギュスターヴ”の再装填終了。
発砲。
着弾。 残り3両。
再装填。
そろそろ、ランチャー自体の限界が近い。
替えを拾う事も考慮しないとーー
オートマタの残骸を一瞥。
替えの“ギュスターヴ”ランチャー本体の位置を確認。
ーー確認完了。
発砲。
着弾。残り2両。
再装填。
発砲。
着弾。残り1両。
同時に、ランチャー自体に亀裂が発生。
(あと一発……持つかな?)
……まだ、亀裂は小さい。
なんとか、いける。
再装填。
発射準備を整え、横っ飛び。
砲弾が足先を掠めーー
私は“ギュスターヴ”の引鉄を引く。
爆音と共に84㎜ロケット弾が射出。
大きな亀裂がランチャー全体に走る。
この“ギュスターヴ”はもう使えない。
が、問題無い。
砂地を転がる私の目には、黒煙を上げて沈黙する“MBT-70”が映っている。
残り……0両。
立ち上がり、周囲を確認。
敵対勢力…………確認できず。
殲滅完了。
酷使の影響で使い物にならなくなった“ギュスターヴ”のランチャーを投げ捨て、踵を返す。
(馬鹿な大人達だったなぁ……)
さぁ、アビドスに戻ろう。
仕事はまだまだ残っているーー
1時間後ーー
砂だらけの駐車場で“ケッテン・クラート”を停める。
「やっと戻って来たか、ハユハ」
待っていたのは白石部長と奥空さん。
「独断専行はいただけないな。理由を説明してくれるかな?」
質問する部長の顔には、怒りが見て取れる。
当然だ。
「……偵察の結果、後詰めと思われるカイザーPMC所属部隊を確認。これを排除したまでです」
「カイザーPMCだって?ならば、尚更一人で行くべきじゃなかっただろう」
「普通であれば、ですね。ですが、他勢力のアビドス侵略を考慮すれば、割ける人員は私ぐらいでした」
砂とコンクリートだらけのアビドスに価値があるかは甚だ疑問だが、奇襲の可能性を考えた場合は、誰かが対処する必要がある。
と、するとーー
まず、基本的に後方支援を主とするエンジニア部やヴェリタスでは、体力や装備傾向からゲリラ戦術は不可能に近い。
次に、対策委員会。
……こちらはヘルメット団との戦闘で弾薬を浪費している為、継戦能力に問題がある事から、補給が先。
そうなれば、残りは私ぐらいだ。
無論、本質的には私も単独行動には向かないのだが、経験則的には最適解だったと思う。
(……ここまで考えている人もいなさそうだけどね……)
銃火器の所持こそしているが、本質的に私達は子供である。
伴う責任の重さを理解できない。理解したくないーーそんな、子供特有の甘過ぎる考えが抜けきらない存在に考える能力は、一部の例外を除いて無い……と、思う。
その一部は、往々にして政治屋みたいな者ばかりだったし……。
ならば、それを補うのが大人の役割とも言えるが、事今回に限れば“先生”は役不足。
指揮能力には定評あるらしい“先生”も所詮は一般人だと思われるからだ。
理由としては軍人、警官上がりならば、徒手空拳であろうともキヴォトスの一般学生程度は無力化可能だから。
「故に行動した……と」
「そうです。群れの中に於いてはどれだけ貴重であろうとも、個は個に過ぎません。仮に私が死亡しても、それは致し方無い犠牲ですね」
……言い切った私は内心、自己嫌悪。
(古巣でやらかした身が何を言うか……ってヤツか)
部長を含むエンジニア部は、私がゲヘナからの転校生、という事しか知らない。
というより、本当の私の経歴を知るミレニアム生はセミナーを除けば、特異現象捜査部、(セミナー経由で)C&Cといった、ミレニアム上層部だけだろう。
少なくとも、明星先輩と各務先輩は知っている筈。
古巣絡みの事案は関わらない方が良い。アレは面倒だ。
「ハユハ。君の考えは些か、学生のそれではないな。私達は政治家じゃないぞ?」
ーー政治家じゃない、か。
そりゃそうだ。私達は技術者。
だが、技術者でしかない私は……自身の愚行を政争の具にされた。……もしかしたら今も……だけど。
「理解しています。ですが、そういう存在は必要です。トリニティのように、上層部全てが政治屋モドキになれ、とは言えませんが」
「……そうか」
何を言っても無駄、と思ったらしい部長が頭を振る。
「今日はもう遅い。残りは翌日に持ち越そう」
時計確認。…………16:44。
確かに、定時退勤を考えるならば……仕事の継続はしない方が良い。
社会人はともかく、学生に就労規則は無いに等しいが。
「はい」
返答し、荷物を纏める。
明日は何処までやれるのやら……。
第4話。
何時もの
暫くはPixiv版と差異はありませんよ。
では、今回はこの辺で。
拝読ありがとうございましたーー