※この作品はR-18です。

ファイアーエムブレム ReturnerS   作:コメくい主

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乙女心が、わからんです。
 許して。


蹂躙の2

 (死ぬ死ぬ死ぬ死ぬぅ!空飛びながら射程攻撃してくるんじゃあないよ!殴り返せないじゃないの!)

 

 俺なりに格好いい口上を吐いてカミラとの決闘に臨んだものの、この有様。カミラは上空10メートル程度の位置で竜を滞空させながら、ひたすら火球を俺の近くに落としてくる。それだけで俺は死にそうだ。

 

 (攻撃の精度は、距離が離れている分石の人形以下だ!ただ、数が違う!一度の攻撃で最低5発は飛んでくる!しかも、火球は地面に着弾すると爆ぜて火の粉を撒き散らす!ちょっと被っても致命傷にはならんが、塵も積もればなんとやらだ!傷を負えば動きは鈍る!完全回避以外に勝ちの目は残せん!)

 

 動きに緩急を付け、ある程度火球を誘導しながら回避していく。今の所後々響きそうなダメージは受けていない。まだ余裕がある内に火球攻撃を解析していく。

 

 (⋯⋯火球攻撃は、5発同時でも10発同時でも必ず最初の1発が先行して、他の球が遅れて追従し最初の球の着弾点の周りに落ちるように撃たれているな。あと、一度に沢山の球を出せば出すほど溜めの時間が長い。攻撃が大人しくなったら、大量の火球が降ってくる前兆と見て立ち回ろう。)

 

 (追従球は先行球の周りに落とす、以外に特に細かい設定はされていないな。上手くバラけたり、2,3発近い場所に落ちたりとまちまちだ。よく見て回避するしかない。)

 

 (あえてすべての球の着弾点を細かく設定しない事で、敵の思考を読んで回避しようとする相手は逆に除けにくくなる。理詰めを重視する相手に刺さるが、無駄球の打てない相手、例えば反撃でカミラを撃墜できる強力な射程攻撃持ちには寧ろ仇となる割り切った球撃ちだろう。)

 

 (⋯⋯こちらにはかなり刺さる球撃ちだな。俺はどちらかといえば理詰め派だ。相手の特長を解析し、どうしようも無い詰みは割り切って耐えしのぎ、相手がやらかした瞬間に弱点を突いて倒す。それが今の俺のスタイルだ。そんな俺にとっては相性の悪い攻撃と言えよう。)

 

 (だが、それがどうした。いつかは相性の悪い敵と当たることは必然だ!そんな場合どうするかを今、ここで答えを出す!)

 

 (⋯⋯今回に限っては『これ以上は無駄だと思わせる作戦』かな。)

 

 (今の所、カミラは俺を一切寄せつけず圧倒しているが、有効打は与えていない。今のままでは埒が明かないと思って戦い方を変えるかもしれない。)

 

 (⋯⋯いや、今の状況が続けば確実に変わるな。)

 

 (ぶっちゃけ空から遠距離攻撃され続ければ、俺は負ける。空にいる限りこちらの攻撃は届かないし、攻撃を躱す為の体力と精神力、注意力は有限だ。勝つだけならそれでいい。)

 

 (だがこの戦いは見世物(ショービズ)だ。)

 

 (いくらカミラが華のある美女で、圧倒的に強く、しかも滅多に出てこないレアキャラであっても)

 

 (空からひたすら相手が死ぬまで遠距離攻撃し続けるだけ、なんて塩(・)試(・)合(・)、観衆は絶対に許さない。)

 

 (カミラはそこそこ観衆ウケは気にしそう。尊い血で、偉い立場で、この領域?で4番目に強いらしいからただ勝てばいい立場じゃ無さそう。)

 

 (必ず、カミラは観衆に面白いと思わせる戦い方に変えてくる。それまで、どうにかこの詰み盤面を耐えしのぐ!)

 

 「これは手厳しいお嬢さんだ。随分と難しいターンやステップをお求めになる!やや曲は単調だが、貴女ほどの美姫と踊れるなんて、俺のような下男には過ぎた贅沢だ!願わくば、その美しい顔をもっと近くで魅せて欲しい!」

 

 「気取った口説き文句は聞き慣れているのよ、道化の剣士さん。踊りはまだ始まったばかりよ?泣き言には早すぎるわね。私の手を取ったからには、リード出来ずとも最後まで私の踊りに付き合うのが紳士として最低限の義務でなくって?」

 

 「こんな下男を紳士とは、随分な酔狂をおっしゃる!⋯だが承知仕ったよ、我が女王!他の誰もが眠りにつこうとも、俺だけは最期の最期まで踊りの相手をさせて頂きましょう、お嬢さん!」

 

 実際、最初はカミラの圧倒的美貌とド迫力爆撃に観衆達は興奮していたが、あまりにも絵面が変わらない為にややダレ始めていた。

 中にはカミラの爆撃がうっかり自分の元に落ちるのでは、と客席前列から後ろの方へ逃げ出す客もちらほらいる。

 最早カミラの顔だけが見所になっているような状況。戦いを魅せると観衆に宣言していたカミラは、ここで戦い方の変更を余儀なくされた。

 

 「ちょろちょろ逃げ回ってくれるわね、道化の剣士さん。⋯⋯これならどうかしら?」

 

 (⋯⋯!?先行球2つ!?どこを狙って⋯⋯?)

 

 今までの球撃ちとは全く違う。先行球が2倍になり、追従球がそれぞれに2つづつ。しかし、先行球2つが明らかに俺に当たらない軌道だ。追従球も、とても俺に当たりそうにない。一歩も動かなくても火の粉一つ被らないだろう。

 

 (慣れない事をやって失敗したのか?⋯⋯いや、違う!竜が動いた!カミラ本体が連動してくる!)

 

 そこで、俺は先の球撃ちの本当の意味を悟った。

 

 (俺の左右に火球をバラ撒いて逃げ場を潰した!残る前後は?⋯⋯そう来るか!)

 

 追従球が着弾したタイミングで、俺の前方から地面スレスレに降りた竜が滑空して突撃してきた!

 

 (カミラの保持している火球は4つ!あれで逃げ場の無い俺に突撃しながら、至近距離で精密爆撃する気だな!)

 

 前後は急降下爆撃の攻撃範囲、左右は炎の壁。逃げ場無しの絶対絶命。

 

 (なら、こうだ―!!)

 

 俺はその場で剣で薙ぎ払いをする構えをとる。

 

 (迎撃するつもり?地上なら自分(剣士)に分があるとでも?⋯⋯竜の突撃に轢かれるか、私のファイアーで焼かれるだけよ。)

 

 その構えを見ても、カミラは攻撃をするらしい。

 ただ、反撃を警戒する為か火球を早めに発射してきた。

 

 (ありがたい!あわよくば、で大袈裟な構えをとったが、本当に火球を早く撃ってきた!やってみるもんだね。こ(・)れ(・)で(・)完(・)全(・)回(・)避(・)出(・)来(・)る(・)!)

 

 そして俺は右(・)手(・)側(・)の(・)炎(・)の(・)壁(・)目(・)が(・)け(・)て(・)全(・)力(・)の(・)薙(・)ぎ(・)払(・)い(・)を(・)放(・)ち(・)、炎(・)の(・)壁(・)を(・)吹(・)き(・)飛(・)ば(・)す(・)!

 

 (火球本体を吹き飛ばす自信は無いが、着弾後なら行ける気がしていた!)

 

 己が失策を悟り悔しがるカミラを尻目に俺は安全地帯へ駆け出し火球と竜の突撃を回避した。

 

 (いや、もう本当ギリッギリ!火球を早めに発射されたから回避はギリギリだったけど、カミラにギリギリまで火球を保持されたら、横の炎を吹き飛ばした所で正面から飛んでくる火球を逃げ切れずに喰らうか、逃げる背中をカミラに撃たれていたもの。)

 

 「⋯⋯やっと、近くで貴女の顔を拝めた!一瞬だったが、何たる光栄!いきなり曲調が変わったのには驚いたが、どうにか持ち直せて無様を晒さずにすみましたよ。これからもっとお近づきになれたらいいですね。」

 

 「これは、二人きりのダンス(決闘)ですもの。互いの顔が近づきあうことは、必然よ。この程度の接近でいちいち取り乱しては貴方、身が保たないわよ?」

 

 「生憎、貴女ほどの美女に接近された事は、我が小さな脳みその記憶領域を葉が出るほどほじくり返しても、これが2回目です。貴女こそ御自身の顔の威力に無頓着であせられる。貴女なら例えどんな表情でも、万人の記憶に焼き付いて消えぬ絵画となり、各々が頭の中の部屋に死ぬまで飾られることでしょう。」

 

 「⋯⋯⋯貴方、やっぱり酷い女たらしよ。間違いないわ。『俺には女の子を口説くなんてそんな難しそうな事、とても出来ません』?いいえ、貴方には女の子を口説いている自覚が無いだけよ。本っ当にタチの悪いオトコ。こんなオトコが、私のかわいい妹たちや臣下達に近づいたら、と考えるだけでゾッとするわ。こんな酷いオトコには、とびっきりキツイお仕置きが必要よ⋯⋯!」

 

 そう言うと、カミラは竜を闘技場の淵をなぞるように何度も大きな円を描く軌道を旋回させ始めた。火球は飛んでこない。弾切れ、のような状態で無いとするなら準備しているのだろう。沢山の火球を放つ準備だけでなく、竜に俺を轢き潰す為の突進力を蓄えさせている。

 

 (全力で叩き潰す気マンマンじゃん。怖ぇーよ!⋯⋯ちょっと挑発しすぎたか。相手の心を乱せれば儲けもの、でやってみたらコレかぁ。⋯⋯心は乱れているっぽいけど、あそこまで怒らせちゃ、逆効果だな。)

 

 「行くわよ⋯⋯!」

 カミラは先程と同じ様に俺の左右を塞ぐように大量の火球を放ちながら突撃して来た。だが、その量と密度と殺意たるや、先程の球撃ちの比では無い。

 

 (単純に数が多いからさっきより分厚く、長い炎の壁になるな。それに、よく見たら先行球の真後ろに追従球を走らせている。先行球が着弾したすぐ後に追従球が着弾する様に撃ったのか。⋯リレー方式で炎の壁を続け、さっき俺がやった吹き飛ばしを何がなんでもやらせない、逃がさない構えだな。恐るべきは、大ざっぱな球撃ちの彼女が、どう数えても百は下らん量の火球を繊細に制御して放ったと言う事象だな。⋯⋯そんなに怒っていたのか?)

 

 「怒ってなんかいないわよ?」

 

 (⋯⋯⋯⋯まぁ、ここまでやられたら左右への回避は無理だな。で、正面からはさっき以上の速度の竜。左右を完全に塞げば、あとは竜の突撃(体当たり)で確実に仕留められる。そう、判断してかカミラ自身は火球を保持していない。かわりに竜の制御に全神経を使っているようだ。俺が左右どちらに抜け出そうとも、対応させるだろう。)

 

 (⋯⋯タイミング、チョー厳しいなぁ。まぁ、それはいつもの事だ。)

 

 「さぁ、勝負だ⋯⋯!」

 

 俺は突撃が直撃する2歩手前で右側に足を踏み出す。

 

 (やはり、右側だったわね。)

 

 カミラはあらかじめ山勘を張り、彼よりやや早いタイミングで自身の左側に竜を傾けていた。

 

 (やっぱり、そう来るよな!炎の壁を吹っ飛ばしたのは右手で、右側に逃げたから当然そうするよな!)

 

 回避は最早不可能の衝突一歩手前、俺は剣の振りと踏み込みの反動、そして回転するような体捌きを持って移動の勢いは変えず方向(ベクトル)だけを変えて、竜の顎の正面を横切った。

 

 (交差撃(カウンター)⋯⋯!)

 

 カミラは剣の動きを見た瞬間にすべてを悟り、竜を自身の右側に傾けようとしたが哀しいかな、竜の反射神経はカミラの指示に追いつけず、彼(・)女(・)の戦果は目の前の敵に噛み付こうと牙を剥いた際に溢れ出た涎を幾分か吹っかけただけに留まった。だが、彼女の災難はここから。

 

 回避の際に生じたエネルギーを真っ直ぐな踏み込みで更に加速させ、竜の右羽を全力で斬り裂いた!更に、斬り抜けた先で荒れ狂う竜の尻尾をもそのままの勢いで根元からぶった斬る!

 竜が2カ所の部位の切断の痛みに苦しみ、悶えて速度が落ちた瞬間に合わせて交差撃(カウンター)の動作応用で今度は正反対の方向へ力の向き(ベクトル)を変えて跳び、 竜に乗り移った!

 そして、残った勢いと己に残ったすべての力を剣に乗せカミラに剣を振るう!

 

 「貴方ならそう来ると、信じていたわ。」

 

 カミラは影も形も無かったはずの斧を右手一本で握り、その刃身で渾身の斬撃を止めていた。

 

 (は!?慣れない正反対方向変換(ベクトルチェンジ・リバース)で勢いが落ちていたとはいえ、交差撃・連槌(アドヒット・カウンター)を片手で止めるのかよ!?どういう腕力だ!?⋯⋯なら、もう片手は何を!?)

 

 気づくと、俺は空へ地面ごと向かって、いやカミラが片手で竜(地面)に鞭打って上昇させていた。先程よりずっと遅く、竜も悲鳴を上げながらの上昇だ。それでも、俺は――

 

 (まずい!!)

 

 全力で焦り、半身でこちらを向いて斧を構えるカミラを討たんとする。

 

 (上昇されたらヤバイ!落ちたら死ぬ高さに行かれる前に、カミラを倒して上昇を止めさせる!)

 

 そう考えて竜を操縦するカミラの左腕側を集中して狙う。だが―

 

 (嘘だろ、ぜんぜん守りを崩せない⋯⋯!)

 

 片手で戦っているはずの彼女は、両手持ちの剣で責め立てる俺を完璧に対処していた。

 

 「隠していてごめんなさい?私、こういう踊りの方が、得意なの。最期まで、お付き合い願うわ。」

 

 (カミラ本人を倒せずとも、竜の上昇を止められれば――!)

 

 カミラに攻撃を捌かれながら、どさくさに紛れて足元の竜を刺そうとしたが――

 

 「駄目よ。その子をそれ以上いじめちゃダーメ。私だけに集中して欲しいわ。」

 

 ブグオォォッッッ!!

 

 浅はかな行動を咎めるような凄まじい威力の牽制攻撃が振るわれた。風圧だけでやや後ずさってしまう程の威力。なんとか避ける事ができたが、喰らっていたら、或いは剣で受けられたとしても、吹っ飛ばされ地面に落ちて死んでいただろう。

 

 「ここで良いかしら。」

 

 そう呟くと彼女は最後に竜にひと鞭打ってから両(・)手(・)で(・)斧(・)を(・)構(・)え(・)た(・)。

 

 (これ以上、斧の威力と速度が上がるのかよ!?)

 

 心の中で悲鳴を上げていると、いきなり足元が跳ね上がり、俺(・)だ(・)け(・)を(・)宙(・)に(・)浮(・)か(・)せ(・)た(・)。

 

 「良い子ね、ローラ。」

 

 男に羽を裂かれ、尻尾を落とされた雌竜は、主人の敵を詰みに追い込んだ。最後に男への復讐と大いなる手柄を雌竜(ローラ)は得たのだ。

 

 (⋯⋯まだだ!)

 

 3回目の絶体絶命の状況に追い込まれた男。だが、だからこそ彼は絶対に諦めない。

 

 (確かに空中じゃ回避は出来ないし、片手で馬鹿げた威力だったカミラの一撃を、今は両手でぶち込みに来ている!)

 

 (では、どう凌ぐ?)

 

 (回避出来ない以上、受けるしかないが、受けたら飛ばされて転落死。⋯⋯そもそもまともに受けた瞬間俺の剣も防具も身体も纏めて木っ端微塵だな。)

 

 (なら、いっそカミラより早く攻撃できるか?)

 

 (無理。あちらは足場(竜)が文字通りの味方に付いている。仮に先に攻撃できたとて、さっきみたいに防御されてから反撃で殺される。⋯⋯さっきは防御すら片手でやっていたんだ。それで同じ足場で攻撃して崩せなかった、と。⋯⋯両手で戦っている今じゃ話にもならないな。攻撃を当てるなら、決定的な隙を突くのが最低条件だな。)

 

 (⋯⋯⋯なら、決まりだな。吹き飛ばされないようにカミラの攻撃を受けて、着地してからどうにかして交差撃(カウンター)を決めよう。)

 

 (カミラの攻撃は強力だからこそ、即座或いは全く同じタイミングでの反撃はあんまり想定していなさそう。)

 

 (ならばこそ、交差撃(カウンター)を決める事が出来ればその瞬間が決定的な隙が出来る。その隙を連槌(アドヒット)で追撃して倒せる!)

 

 (⋯⋯⋯⋯結局どう凌ぐかに戻ってくるのか。堂々巡りと言うヤツだな。)  

 

 (⋯⋯いつものメチャクソタイミング厳しいやり方なら、今思いつけた。)

 

 (いつも通り成功させて、勝つ!それだけだ!)

 

 俺を真っ二つにせんと横薙ぎに振るわれる死神(カミラ)の鎌(斧)。それに対して俺は、カミラの斧に垂直になるように剣を突き立てる。そして、斧が身体を裂く前に全(・)身(・)を(・)カ(・)ミ(・)ラ(・)の(・)斧(・)に(・)垂(・)直(・)に(・)立(・)て(・)ら(・)れ(・)た(・)俺(・)の(・)剣(・)に(・)乗(・)せ(・)て(・)回(・)避(・)す(・)る(・)!

 絶死の一撃をとんでもないやり方で回避されたカミラは目を丸くしている。

 

 (⋯⋯我ながら何で出来たんだ今の技。火事場のナントカか?)

 

 カミラの斧にはいつまでも乗らずに、適当なタイミングで身体を引いて降り、どうにか着地する。

 カミラは今フィニッシュブローを外し、こちらの攻撃の防御、回避などとても望めぬ死に体だ。即ち―

 

 (決定的な隙!今だ!)

 

 思いもよらぬチャンスを前に全力で踏み込み袈裟がけに切り捨てんとした時、デジャヴ(既視感)を感じた。

 

 (あれ、前にもこんな)

 

 過去の無い彼にとって縁のないはずのデジャヴ(既視感)はその実、この世界で経験したある攻撃が来る事を悟った本能と肉体よりの警告だったが、すべてが遅過ぎた。⋯⋯いや、本人がそれを知っても無意味だったろう。

 それは逆襲の一手。力無き人形がそれでも勝利する為に放った殺意の一閃。そして今は彼の必殺技(フェイバリット)。そんな技を常勝する強者が放つ事など無いと思っていた事が彼の敗因だ。

 決め技はここぞ、というタイミングで使い、必(・)殺(・)す(・)る(・)か(・)ら(・)こ(・)そ(・)必(・)殺(・)技(・)な(・)の(・)だ(・)。知られてしまうことがどれだけ不味い事象なのか、それを知らなかった彼の負けだ。

 観察、分析、学習は真の強者であれば誰もがやって当然。心のどこかでそれが自分だけの専売特許だと勘違いしていた⋯⋯俺の敗因だ。

 

 死に体だったはずのカミラは、斧の振りと体捌きで俺の斬撃を掠り傷ひとつで回避した。そしてその勢いのまま、俺に攻撃を叩き込んだ。

 練度不足か何かは知らないが、胸の防具に当たったが、彼女にとってはあって無きが如し。防具を粉微塵に砕き、胸に大きな傷を刻んだ。

 

 何が起きたのかも理解せずに彼は落ちていく。

 落ちて、落ちて、地に堕ちた。

 

 いたいとか、もうない。

 ふわふわしたかんかくのまま、まっくらになる―――

 

 

 大怪我をした竜に乗ってゆっくりと優雅に降りてきたカミラは、地上に着くなり闘技場の杖使いを呼び出した。そして、彼の治癒を命令する。

 これしきで彼等不死召喚戦士(エインヘリャル)は存在の存続に支障など無いし、そもそも死なないのだ。治癒せずとも2時間程で起き上がれるだろう。

 だが彼女は自分がやったにも関わらず、全身が挫傷した彼を何故か見過ごせなかった。

 治癒は上手く行き、彼の身体の傷は全て治った。⋯⋯胸に刻まれた一箇所を除いて。

 

 彼が目を覚ました。何故か駆け寄りたい気持ちを完全に無視して、胸を踏みにじり、こう問いかける。

 

 「私の勝ちね?」

 

 わけが分からなくなっている彼の首筋に斧の刃を立てて再び問いかける。

 

 「私の勝ちね?貴方の負けね?」

 

 「⋯⋯⋯貴女の勝ちで、俺の負けだな。」

 

 ⋯⋯これではいけない。私個人は良いけど、観衆は納得しない。大いなる罪悪感を抱えながら、斧を首筋に少し食い込ませる。

 

 「それが、敗者の、勝者に対する、言葉遣いかしら?」

 

 死にたくない本能と、耐え難い屈辱の板挟みに遭いながら、彼は涙を溢しこう答えた。

 

 「⋯⋯貴女様の⋯完勝⋯です。お、私の⋯⋯か、か、⋯⋯完敗⋯⋯です⋯⋯⋯。」

 

 その言葉に、私はようやく彼の首筋から斧を退かすことが出来た。

 

 観衆達は、彼の敗北宣言を聞いて、大歓声を上げる。私の勝利を祝う声がほとんど、彼の敗北を嗤い嘲る声も少なからず聞こえてくる。⋯⋯もとより彼等のことなどどうでも良かったが、今日は酷く疎ましいとすら感じて仕方ない。

 

 さて、今目の前にいる彼は傷こそ治れど、指一つ動かす事は出来ない。傷を治すのに彼自身の生命力をかなり使ってしまい、再び身体が動くまで4時間はかかる。辛うじて動くのは口だけだろう。

 つまり、これから私が何をやっても彼はそれを受け入れるしか無い、という事。

 

 (私のこと綺麗、とか美女、とかいっぱい褒めてくれたから、こういうの、イヤじゃないわよね?)

 

 彼の防具と服を剥ぎ取りながら、そう考える。

 私がやったことを考えれば、彼に怖いと思われるのはもう仕方が無いと諦めるしかない。

 でも、これから肌を重ねるのが、絶対に嫌だと思われていたら、それはとても哀しい。

 

 (どんなに殿方(不死召喚戦士)を倒しても、こんな気分にならなかったのに。)

 

 噂にだけは聞いていた、戦いの後の戦乙女(ヴァルキューレ)の発情。

 不死召喚戦士(エインヘリャル)と戦い、鍛え、仕えて慰める。そんな戦乙女(ヴァルキューレ)の役割を果たす為に肉体(器)に搭載された本能(生体仕様)。

 

 そんなものを好ましくは思えなかったし、これに振り回された私の臣下2人を辱めた男達への報復が済んでも、彼女達の心からの笑顔は戻らなかった。同じく臣下のメイドの2人を守りきれなかった私の妹と一晩中抱き合って涙を流した夜を忘れないし、悔やむ彼女の涙も忘れられる訳がない。

 どんなに私の躰を欲する身の程知らずのオトコ(不死召喚戦士)達を倒しても、心は醜い男への嫌悪感で満たされたまま。闘技場のルールでどうしても辱めを与えなければならなかった時は、靴を履いたまま汚いイチモツを踏みにじって射精させた。無論その靴はその日の内に廃棄した。

 昔はそんな事無かったのに。男への嫌悪が止まない。

 

 彼と戦う事にしたのは、10年か20年ぶりに新人が木の人形を倒し、石の人形すらも300年ぶりに倒しかねない新人がいる、と聞いていた新人を調子付く前に叩き潰すため。

 ⋯⋯⋯間の抜けた、お人好しそうで、バカな男だった。口を開けば女を口説く台詞か、挑発が出てくる癪に障る男だった。

 

 どんな好青年でも、良い男でも、男女の戦いと性交を強要されるこの世界で変質していく。

 

 だから、彼をからかって楽しかったことも、彼に口説かれてドキドキしたことも、攻撃を回避し続ける彼がスゴイ、と思ったことも、彼との駆け引きで読み負けて悔しかったことも、回避出来ないはずの私の攻撃を思いもよらぬ方法で避けてビックリしたことも、勝負だから仕方のないことは言え私の竜を沢山虐めてくれた彼にやってくれたわね、と割と本気で怒ったことも、戦っている最中の彼の気取った話し方にイラッとしながら偶にドキッとさせられて余計ムカムカしたことも、戦っていない時の彼とのおしゃべりが楽しかったことも、彼を彼自身の技の真似事で撃墜した後で全部忘れるつもりだった。

 

 観衆に勝利宣言する為に地表に降りた時、彼の方を見なければ良かった。そうだったら本当に全部忘れる事ができたのに。

 

 短い間だったけど一緒にいて楽しかった男の子に自分がやった事の結果を見なければ。

 

 傷を治癒した後に、彼に対してあらゆる感情が巻き起こると同時に、自分に無縁だった戦乙女(ヴァルキューレ)の本能(発情)が私を内から燃やした。今まで溜め込んだ全てが一度に燃えるように熱(情欲)が私を突き動かし、私は彼を使ってこの熱を鎮めることにした。⋯⋯こんなに醜い行いをすることをあっさり決断した私自身に驚き、自己嫌悪したがもう止まれなかった。

 

 「ごめんなさい。⋯⋯私、こんなことがしたいわけじゃ無かったの。⋯⋯私達、戦いになると手加減なんて、できないの。」

 

 ⋯⋯部分的にはウソ。確かに戦乙女(ヴァルキューレ)は戦いが始まれば、相手が誰であろうとも全力で戦う様にできている。⋯⋯ただ、彼を叩き潰しに来たのに、実際にそうしたら何故かこんなことをしたのを、後悔した。

 

 「貴方は負けたから、一生、私の性奴隷よ。ここ(闘技場)のルールで決まっているもの。」

 

 大ウソ。そんなルールを強制出来る闘技場など、この領域どころかこの世界すべてを探してもありはしない。

 ただ、彼を逃がさずに、私の躰に溺れさせて、私だけの男にして、私という自我が続くかぎりは貪り(償い)続けると決めたから、本意ではある。

 

 「今、ひょっとして負けて良かった、なんて考えたかしら?」

 

 「お生憎さま、貴方が考えているような、おいしい思いなんて出来ないわよ?」

 

 「これから、貴方は大変な道を歩かされるのだから。」

 

 「私以外の誰にも負けない位、強い戦士になって貰うわよ。」

 

 「そのために、幾千幾億の戦いに挑み、勝利なさい。」

 

 「どうせ抱くなら、強い男が良いもの。」

 

 「頑張りの結果を出せば、いっぱいご褒美もあげる。」

 

 「そうなれば、他の女も貴方に尻尾を振ってくるでしょうね。」

 

 「でも、駄目。他の女は抱かせないわ。」

 

 「だって私のモノだもの。」

 

 「貴方が戦う敵の中には、貴方を倒して犯そうとする美女の戦乙女(ヴァルキューレ)も、当然いるでしょうけど、犯すのも、犯されるのも許さないわ。必ず勝ちなさい。」

 

 「これから先、万が一、いえ億が一私に貴方が勝てたら―」

 

 「―私はあなただけの女になってあげる。」

 

 「⋯⋯やる気出たかしら?ふふ、それは良かった。」

 

 「でも、これから最低1000年は貴方に勝ち続けるわ。」

 

 「⋯⋯しばらくは、私にリードさせてね?」

 

 

 

 「今までずっと、ここに来てから、未来に幸せなんて見えなかったのよ、私。」

 

 「妹達や臣下の2人が陵辱される悪夢を見ない日はほとんど無かったわ。」

 

 「私もいつか醜い男に負けて処女を奪われる未来が来るものだと思っていたわ。」

 

 「でも、今日貴方と出会えた。」

 

 「一緒に居て楽しかったわ。ドキドキしたわ。ずっと一緒に居たいと思えて、幸せで、苦しいくらい。」

 

 「貴方になら、初めてを捧げて惜しくない。」

 

 「だから、貴方の全部が欲しい。」

 

 「せめて、はじめては、やさしく」

 

 「かわいがってあげるわ。」




主人公

負けたのでLv成長無し。

追加の戦技 奥義 スキル
正反対方向変換(ベクトルチェンジ・リバース)
戦闘終了後、任意発動。
今自分がいた位置から相手の後ろに回り込み、戦闘。
この戦闘は相手の反撃を受けない。

劣化交差撃(カウンター)
カミラ習得。
技%で相手の攻撃を無効にしてから次の攻撃を必中攻撃にする。(必殺判定無し)

紹介する機会が無さそうなのでここで紹介するやつ

非戦型戦乙女
 今回出てきた闘技場の杖使いの様に、全く戦う事の出来ない戦乙女は非戦型と呼ばれ、杖を使っての社会貢献の他、店番とか経理とか経営とか介護とかいろいろやっている。
戦乙女の役割の内、戦う事と鍛える事が出来ない為、仕える事と、慰める事に特化している。
全戦乙女の約1〜2割。




ゲームでの彼女はこんなんじゃないんで、もし興味がお有りなら少々値段は張りますが、3DSソフト『ファイアーエムブレムif 暗夜王国』をお試しあれ。

ちなみに彼女のセクシーなムービーは3DSソフト『ファイアーエムブレムif 白夜王国』に。こっちはやや安いけど、カミラ様は操作出来ないので悪しからず。

 第3の道はおすすめ出来ない値段なので⋯⋯。
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