「あっ、お客様が目を覚ましましたよ!姉さん!」
「⋯⋯見れば分かるわよ、フェリシア。」
目を覚ました俺がまず最初に見た物はこちらの顔を覗き込んでいる2人の美少女の整った顔だった。
「私、お茶を淹れてきますね!」
「焦らないで持って来なさ⋯もう、いない。」
「はぁ⋯あの子ったら、もう、変わらないんだから。」
嵐の様な勢いで飛び出して行ったフェリシア?さん。
そんな彼女の慌ただしさにため息を付く推定フェリシア?さんのお姉さん。綺麗な水色の髪を頭の後ろで二つに結んでいる美少女だ。物憂げな横顔すら美しい。
そんな風に彼女を見つめていると、流石に彼女もこちらの視線に気付き、咳払い一つして自己紹介を始めた。
「⋯こほん。自己紹介が遅れました事をお詫び致します、お客様。私はフローラ。先程出ていった妹のフェリシアと共にここ、北の城塞にて主人の留守を預かっている者です。」
そう、挨拶するフローラさん。しかし、俺の最大の興味は、彼女の頭に乗せられた飾りと服装に向かっていた。
「メイドさん⋯⋯!?」
「⋯?はい、そうですが⋯⋯?」
「初めて見た⋯⋯!」
「そうなのですか⋯⋯。」
失礼を承知で、困惑する彼女をじろじろ見つめてみる。
美しい髪を飾る白く可憐なホワイトブリム!
黒を基調としたエプロンドレスは胸元に大きな白い花の様なフリルを咲かせ、楚々とした雰囲気を感じさせる⋯⋯!
襟の辺りは首まで白い布が覆い隠す貞淑さ。でも襟先の黒い羽先のような飾りがおしゃれでかわいい。
胸の下の辺りの切り抜かれた白いハートの模様なんか、あざとすぎるくらいあざとい!でもそれがいい!かわいいよ!
上体を起こして、下の方まで見ると結構なミニスカートの筈なのにそんな事を感じさせない純白のエプロン!お清楚で眩しい!
スカートの裾は鳥の羽毛を思わせるようなデザイン。⋯⋯一般的では無い気がするが、ふわふわして、とでもかわいいと思います!
「かわいい⋯!」
「あ、ありがとうございます⋯⋯。」
「生きてて良かった⋯⋯!」
「そこまでですか!?」
「ああ、俺はメイド服好きだったんだ⋯!俺は俺を一つ取り戻せた⋯⋯!!」
「お、おめでとうございます?」
いい加減じろじろ見られていて恥ずかしいとは思いつつも、沢山褒められて、無闇に感動されているから内心ちょっと嬉しくてじろじろ見ないで、となかなか言い出せないフローラ。
そんなじろじろ男に破壊神の天罰が下る!
「ふっふっふ〜!ここまでお茶を溢さずに持って来れましたよ、ってきゃあー!ティーセットがぁー!」
行った時と同じ勢いで紅茶を淹れて帰って来たフェリシア。
正直、ここまで来れた事が奇跡だったが、奇跡はここで見事に終わり、躓いたフェリシアは3人分のティーカップと熱々の紅茶を満載したティーポットを男に向かって発射してしまう!
男はフローラのメイド服に夢中でフェリシアが入って来た事にすら気が付いていないぞ!
結果。
ガシャガシャガシャン! ドムッ!
男の顔面にティーカップが3発当たって砕け、ティーポットは腹に直撃した!
「!?!?!?⋯⋯あっっつ!!!!」
男は突然ティーカップが3回顔に当たり砕ける衝撃で痛みと声の上げ方を一瞬忘れてしまう。幸いにして欠片が目に入る事は無かったが、正常に体が動くようになった瞬間に、膝の上に落ちていたティーポットに触ってしまい、熱さで悲鳴を上げながらティーポットをひっくり返してしまい、中に入っていた熱々の紅茶が男の脚にぶちまけられた!
「ぎぃゃああああ!!あついあついあつい!!!」
男は熱さから逃れるために、半狂乱で紅茶のついたズボンをパンツごと脱ぎ、部屋中を走り回った。
「お、お客様、落ち着い「はわわわ!急いで冷やしますね、お客様!ええぇーい!」フェリシア!?」
なんとか男を落ち着かせようとしたフローラを尻目に冷気を男にぶちかますフェリシア。
余りの暴挙にフローラは言葉を失うが、男は強烈な冷気で縮み上がり動けなくなってしまう。下半身が裸だった事もあって余計に寒さが堪え、下半身を隠すようにうずくまってしまった。
「⋯⋯やり方はどうあれ、止まってくれましたか。フェリシア、言いたい事は山の様にありますが、まずは片付けを「お茶が掛かっていたのは太ももでしたから、下半身を狙って冷やさないと⋯⋯」待ちなさい、これ以上は―」
冷気が止んで男が下半身のガードを解いた瞬間に―
「やあぁーっ!」
フェリシアが患部を集中して冷やす為に収束して溜め込んだ冷気を男に解き放つ!
それは最早冷凍ビーム。狙いは
「 」
男は大事な部分が急激に冷やされたショックで白目を剥いて気絶した。
「フェリシア!!!」
「ぎゃん!!」
すぐさま拳骨を頭に落としフェリシアを止めるフローラ。照射は止まったが、すべてが遅きに失していた。
「⋯⋯⋯お客様の手当ては私がやります。散らかった部屋の片付けはあなたがやるように。」
「言いたい事は山の様にあるけど、すべてを片付けてからにしてあげる。」
「⋯⋯⋯はい、姉さん⋯⋯。」
それから3時間後。
フローラの手厚い看護によって元気を取り戻した男は、フローラとフェリシアと一緒にお茶をしていた。
無論、フローラが淹れた紅茶と、フローラが用意したお菓子である。
(⋯⋯気まずい⋯⋯)
あの
(⋯⋯そうだ、あの話をこの2人にしないとだめだったな。)
気まずい沈黙を破り、俺は2人に言うべき事を言った。
「あの時、闘技場で俺を助けてくれて、ありがとう。」
「⋯⋯もっと早く言うべきだったのに、言うのが遅れてすいません。」
そんな俺の言葉に驚く2人。
「あれは、私達の主人からの言いつけに従ったまでです。お礼の言葉なら、どうか私達の主人に。」
「そうですよ〜!私達ならあれくらいの任務、楽勝です!」
「⋯⋯愚妹の戯言はともかく、私達はメイド。主人の意思は私達の意思。私達の手柄は主人の手柄。主人を陰から支える立場である私達が主人より先に称賛を受ける訳には⋯⋯。」
「もちろん、その人にもお礼は言うけど、貴女達にも言うべきだと思ったんだ。」
「⋯⋯カミラさん、超怖かったでしょ。」
「命令でも何でもあんな恐ろしい人から睨まれる事を承知で助けてくれたから、嬉しいんだ。」
「俺は、直接助けてくれた人に最初にお礼をさせて欲しいな。」
「⋯⋯そちらの流儀じゃ、失礼になるかもだけど。」
「⋯⋯困りましたね。そこまで言われては、断るほうが主人の名誉を損なうと言うもの。⋯⋯謹んで、お礼の言葉を受け取ります。」
「どういたしまして〜!」
(⋯⋯よく考えると、元王女とか、現序列4位とかいっていたな
(権力を使ってこの人たちに恥を掻かされた報復に来るのでは⋯⋯!?)
(あの人はそんな事しそうに無いけれど、そんな事は今日出会ったばかりの俺の根拠皆無の偏見に過ぎない⋯!)
(彼女達と話して、少しでもカミラさん周りの情報を得るんだ⋯⋯!)
「⋯⋯ところで、主人さんとやらは大丈夫ですか?」
「俺はよく分からないけど、序列4位?の獲物を掻っ攫わせて、その後大変な事になったんじゃ⋯⋯」
俺が探りを入れると、フェリシアはきょとんとした顔を見せ、フローラさんは俺の聞こうとしている事を理解したのか、真面目な顔になって『その後』を教えてくれた。
「⋯⋯カミラ様は情がとても深く、寛大なお方です。戦いとなれば無慈悲に敵を蹂躙しますが、平素のあの方は穏やかで、お優しいのです。しかし⋯⋯」
「カミラ様が打ち負かした男の人を自分から積極的に犯すなんて、今までに無い事ですからねぇ〜。私もびっくりですよ〜。」
「そんな執着をしていた貴方を本格的に貪る直前で私達に攫われたのです。⋯⋯情の深さはそのまま怒りの強さに変わりました。」
「そして、私達のご主人様に怒りをぶつけに行かれました。」
「
「だぁ~いじょうぶですよ!私達のご主人様はとても強いんですから!」
「ええ、ご主人様はカミラ様をものの数分で制圧しました。」
「⋯⋯!?
俺との戦いで消耗していたとしても、そんな簡単に倒せる訳が無い。俺は彼女達の言葉を俄には信じられなかった。
「なんたって私達のご主人様は白黒領域の
「
「お客様、逆な気が致します⋯。」
「いや、なんだか凄そうな肩書の大軍が押し寄せて来て頭の処理が追いつかなくて⋯⋯」
「難しく考えなくても、今日の所はカムイ様が凄い方であることだけ覚えて頂ければ大丈夫です!」
「急に大ざっぱだなぁ。」
「えぇと、察するにこの地域?の領主様ってコトであってますか?」
「はい!」
「あ、合ってた。じゃあ、序列1位ってことは⋯⋯序列1位!?最強者!?」
「そうなんですよ!カムイ様は最強で最高です!」
「だからカミラさんに勝てたのか⋯⋯」
ようやくカムイ様がカミラさんに勝った事実に納得が出来たが、次は意味の分からない肩書達の解読に挑む事に。
「元・王様は分かるけど、二つの国の第二王女っていうのがわからん。」
「それは⋯⋯」
「申し訳ありませんがお客様、その肩書には複雑な事情があるのです。願わくば、ご主人様に直接聞いて頂きたく⋯⋯。」
「貴女達の口から言ったらまずい事なんです?」
「⋯⋯ご主人様の名誉に関わるやもしれませんので⋯⋯」
そう言ってうっかり口を滑らせたフェリシアを睨むフローラさん。
目を逸らして気まずそうなフェリシア。
「まあまあ、フローラさん。フェリシアに悪気は無かったみたいですし⋯⋯。」
「⋯⋯⋯⋯話が逸れましたね。カミラ様はカムイ様に訴えられました。」
「どうしてこの世界の法で許された勝者が敗者を
「⋯⋯たびたび遮ってごめんなさい。何故俺は闘技場で戦わされて、負けたらレイプされたんですか!?」
「しかも、あんな、どう考えても致命傷だったのに今生きているし⋯⋯!?」
「この世界の事、全部分かりません!ついでに俺自身の事も!」
「⋯⋯ひとまず、カムイ様とカミラ様の会話についてを話し終えたら、私達が知り得る範囲でお教えいたします。⋯⋯よろしいですか?」
「はい、すみませんが、お願いします!」
「では、続きを。カムイ様はその訴えに対して、有望な人材をここで潰される訳には行かない、カムイ様ご自身の権限と地位を全力で振り翳してでも保護される御意思を表明されました。」
「⋯⋯それから、その、いろいろありましたが、貴方様が、カムイ様の庇護下に入る事にカミラ様は了承されました。」
⋯⋯いろいろの中身は気にならないでもないが、聞かないでおこう。
「以上が事の顛末になります。⋯⋯心配して頂かなくとも、カムイ様も、お客様も、私達もカミラ様の報復などされませんよ。大丈夫、です。」
彼女はそう言って俺が恐れていた
頭を深々と下げて礼をしてから、別題に入る。
「では、この世界の話についてですが、なるべく、最初の最初からお願いします。」
「⋯⋯成り立ちからですね。かしこまりました。」
「この世界は最初に一柱の神、神竜が開かれました。」
「竜は、何も無かったこの世界に力を注ぎこみ、豊かな大地を作りあげます。」
「次に竜は、他の世界から受難の民を呼び寄せ、ここを理想郷として与える代わりに長き繁栄と己への信仰を命じました。」
「こうして竜に感謝した民は二百年の繁栄を果たします。しかし⋯⋯」
「ある日、突然別の世界から邪竜が攻めて来ました。」
「平和に暮らしていた民は鏖殺され、神竜自身も地の果てまで追い込まれます。」
「神竜は逃げ隠れ、雌伏しながら反撃の研究を続けます。」
「決して死なず、自分を一人にさせない兵士の研究を。」
「神竜は、完成した不老不死の器に異世界の死した英雄達の魂を呼び入れて戦力とし、邪竜と争います。」
「究極の肉体に至高の魂。邪竜の下僕たちは敵うはずも無く次々と打ち倒されていきます。」
「この究極と至高を併せ持った戦士達こそが今の
「しかし、敵は恐るべき早さで強くなり、
「最初から完成されている故にこれ以上は強くなれない
「熾烈な戦いの末、たくさんの
「しかし、邪竜は滅ぼしきれず封印に留まり、ほとんどの
「いずれ復活する邪竜を滅ぼす為に
「こうして新たなる
「それどころか、世代を重ねる事に
「器の完成度が低ければ呼び入れる事の出来る英雄達の魂は必然、第一世代のそれより格下の魂だけ。」
「
「こんな事ではいずれ復活する邪竜に自分の世界を乗っ取られてしまう。」
「そんな焦りがより劣化を加速させていき、終いには
「⋯⋯理由は、老いでした。」
「彼の神竜は同胞の数倍の早さで生き急ぎ、恐るべき早さで劣化していったのです。」
「衰える自分を自覚した時は既に手遅れ。」
「先人たちのように、己の全てを世界に還す時はすぐそこに。」
「しかし、竜は最期の試みを始めます。」
「それは、己の全てを戦乙女を作り続ける
「更に、今まで雌である己を基準に作った器に魂宿す戦乙女ではないまったく新しい
「望外の幸運に恵まれ両方が完成しました。」
「前者は作る器の精度こそ安定しないものの、上振れれば第二世代相当の器を作れるようになり、ある意味で劣化を克服したと言えるでしょう。」
「そして後者は、冒険と苦難に挑み続ける男の
「これらを最期に成した神竜は、生き残った第一世代の戦乙女に後を託し完全に摂理に成りました。」
「⋯⋯少し長く成りましたが、以上がこの世界の成り立ちになります。」
「はえ〜。思っていた以上に壮大な話だなぁ。」
「⋯⋯じゃあ、俺に記憶が無いのは、魂の複写とやらの影響か?」
「⋯⋯いえ、それはおかしいのです。」
「複写する魂は十代から二十代の若い男性の魂。」
「彼らは別に今まで生きた記憶は失われていません。」
「あの人達に記憶が無かったらこの世界にスマホやインターネット、Feou Tube、FeXなんて作られなかったと思いますよ。」
「そんなのもあるのか。」
「はい。ですから、貴方に記憶が無いのは別の理由では無いかと。⋯⋯少なくとも私は、貴方のような前例を知りません。」
「⋯⋯貴女が言うのであれば、きっとそうなんだろうな。じゃあ、俺の失われた記憶と失われた理由を探すのも、この世界で俺のやるべき事に追加だな。」
「では、続きをお話させて頂きますね。」
「⋯⋯あ、ちょっと待って下さい。」
「いかがされましたか?」
「トイレ休憩。紅茶飲み過ぎた⋯⋯。」
「もう、お客様〜。私、止めたじゃないですか〜!」
「ごめん、フェリシア。冷めていくのが勿体なくて⋯」
「それに、フローラさんも少しは休ませたいなって。」
「15分くらい。それくらいでどうかな?」
「畏まりました。ではその様に致しましょう。」
「お手洗いをご案内致しますね〜!」
「⋯⋯
「
原作から、これくらいのドジはするんですよ。
⋯⋯
誰が、感想で教えてくださ〜い(感想乞食)