アインズ様×ザナックです。
ザナック蘇生ifです。多分ザナックが愛される。
私がザナック推しなのでザナックを愛でまくります
目覚め
俺、ザナック・ヴァルレオン・イガナ・ライル・ヴァイセルフは死んだ。
アインズ・ウール・ゴウン魔導王陛下には
"痛みなく殺して貰う"と約束をしたのだが……貴族達の謀反により無念にも殺された。
剣を抜いて啖呵を切ったはいいが、俺の剣の腕や相手の数を考えれば、結果は当然だった。
──今まで俺は…臆病に生きていた。
気難しい兄を刺激しないように自分を抑えて、最期まで父上と対話できず、妹を遠ざけていた。
王国を案じていたのも、自分がかわいくてそう動いていただけに過ぎないのかもしれない。
だが、最後に信頼してくれた側近と共に戦えた。血が煮えたぎるような高揚感に包まれ、剣を握っていたあの瞬間は──俺の全てが本物だった。良い死だった……。
ああ、魔導王陛下に痛みなく殺して貰う方が傍から見ればマシだっただろう、
すました顔で妹の心配するほどの呑気さも、『死にたくない』と言う叫びに掻き消された。
最後までそんな矛盾を抱えて
俺は……死にたくなかった。愛されたかった。幸せになりたかった。
───────────
…重い…。突然、鉛のような重さが全身を押し潰して、微動だにできない。
これが金縛りと言うやつか、いや……俺は生きているのか? そう思うと、目の前に薄い光がさしてきて、豪華な天蓋が見えてくる。視線を動かすと紫色の壁、体を支える柔らかいベッド、肌触りの良い布。状況が整理出来ない、体も相変わらず動かない。
だが不思議と安心できる匂いが微かにする。何処かで嗅いだことがあるような。もしやとは思うが……俺は生き返ったのか? それともここは、天国かあの世なのか?
そもそも、死んでいるはずの俺が何故こんなに思考できているんだ……。そんな疑問が頭に浮かぶ。発声しようとすると、喉からヒュウッと音が漏れた。
「ぁ……あぁー……」
掠れ声は広い部屋に溶け込むように消えていく。
「よかっ、た…しゃべれる……あ、あれ…」
(はぁ……!? なんでだよ………!?)
体も動かない、呂律が回らず声も上手く出ない。
混乱して情けなくなり、泣きそうになったその時──、聞いた事のある低い声が響いた。
「起きたか……。蘇生直後だ、安静にしていろ」
そこには、恐らく"転移魔法"で現れた、骸骨のアンデッド……魔導王陛下、アインズ・ウール・ゴウンが佇んでいた。間違いない、開戦前、話をした仲だ。
「ま、まどうおうへいか…?」
陛下は、呂律の回らない覚めたばかりの俺を一瞥し、目を細めた……。いや、正確には、瞳の赤い光が細くなり、揺れたように見えた。一瞬、部屋の空気が静まったように感じた。
「……私のことは、アインズと呼べ。」
謎に少し間が空いて、骸骨の彼は口を開いた。
「あ、あいんずさま……わたしは、なぜ……」
先程、蘇生と言っていたよな。
生きているのか、俺は。けれど身体が重く、指一本すら動かせない。
喋ろうとすると、陛下……"アインズ様"の長い指がゆっくりと俺の唇に触れた。骨だ。冷たい……けれど、どこか優しい。アインズ様は、興味深い物を観察するように頭を傾けて、俺の頬をしばらくふにふにと揉みながら、何か考えているようだった。
「喋るな。」
「……っ!」
彼の声は思いのほか穏やかだったが相変わらず平坦で、必死にこくこくと頷くと満足そうに、気のせいか、骸骨である顔も笑顔に見えた。
「…いいな」
ふっ、と小さく笑みを漏らすような声が聞こえた。
いい? 命令に従ったことに対してか?
彼の骨である顔はいくら見つめたって表情が読めない。というか俺の頬を揉んでいるのはどうしてだ、何が『いい』んだ?
(疑問が……尽きない。)
「待っていろ。」
彼は、どこか嬉しそうにしながら…というか骸骨なので声色からの勝手な憶測の感情だが。俺に背中を向けて転移して消えてしまう。初めて見た転移魔法を目に焼き付けてから、一旦状況を整理する。
俺は、死んだ。そして、魔導王陛下によって蘇らされ、今……自分の体の五倍ほどの大きさのベッドに横たわっている。
(デカい……それに、この低反発。くせになる。)
そういや、陛下は、「待っていろ」と言ったよな。
待つ?? 何を待っていれば……。ところで今は何時なんだろう………部屋は薄暗いがもし、カーテンを開けられれば大体の時間帯は分かる。
全力で手に神経を集中させる。あ、ピクリと指先が動いた気がする。今度は腕も動かしてみようとするが…。
「う、ぐ……っ」
重い。まるで自分の体じゃないようだ。
「はぁ……はーっ…………。」
視線を動かすと、視界の端の腕は、全く位置が変わっていなかった。無駄に力んだせいで、頭に血が上って……ぼーっとする。───カーテンは、体が動かないため断念した。まぁ時には諦めも肝心だ。
ん………? というかこんな状態では何も出来ないではないか。魔導王、いや……アインズ様のお役に立てるような事が俺にあるのだろうか。今のこの石像のように固まる怠惰な俺に。
何故、アインズ様は俺の傍に居たのだろう。何故アインズ様は俺なんかを蘇生されたんだ? 喋るな、って言われたが……脳内で独り言くらいはいいよな?
でも、このまま独り言を繰り返してると軽く精神崩壊を起こしそうだ。
早く帰って来てくれ陛下……いやアインズ様か……慣れないな。練習しておこう。
次会った時に噛んだりして不敬にならないように。アインズ様……アインズ様……。陛下じゃなくて、アインズ様。
あ・い・ん・ず・さ・ま。
「───なんだ?」
突然、ご本人が真横に現れる。
急いで転移してきたようだ。驚きで心臓がはねる。……まったく、どこまで愉快なお方なのか。
「───ふぎゃっっ…!?」
俺もまた叫び声、いや奇天烈な鳴き声を上げてしまった。声を上げた数秒後に顔に熱が集まって来るが、これはただ、楽しくて興奮しているだけだ。
「なんだそれは、蛙の真似か?」
そんなに驚かれるとはな……とアインズ様は話しながらミニテーブルにトレーを置いた。
その上には、スープが乗っていて、甘くてクリーミーないい香りがする。
「っ……いえ……違い、ます。しつれい、しました」
正直、驚いた。考え事をしていたら……まさか丁度良くご本人が隣に現れるとは。
もしや、俺は監視されてるのでは? なら、心の声も聞かれて……? スープを軽く混ぜている骸骨の王の横顔をまじまじと見詰めながら、そんな事が頭に過ぎった。
そしてふと、彼との目線が近くなった事に、自分が上半身を起こせているのに気付く。びっくりして飛び上がるくらいは元気が戻って来たんだな、俺。
「私の名を、呼んでいただろう?」
アインズ様の声が先程より幾分か高く、明るくなる。
「練習、をしていました……次に呼ぶ時、に……噛まないように」
いつの間にか、彼の名前を声に出して呼んでいた事実に、なんだか気恥しく感じる。だが、馬鹿正直な俺の答えに、彼は嬉しそうに笑った気がして、カチリと彼の歯が小さく鳴った。
「腹が空いているだろう? スープを持ってきた。冷めないうちに食べるといい」
「はい、喜んで…頂きます」
自然と、そう返事をした。段々とハキハキ喋れるようになってきて、俺も嬉しい。しかし、人と会話ができるのがこんなにも楽しいなんて。
まぁ、彼はアンデッドで人間では無いが、とにかく……会話が久しぶりだからか、涙が出そうだ。そもそも、こんなに感情を露わにして涙を流すのはもう何年も無かった気がする。
いや、あった。
つい数日前も───。
あの日、魔導王の魔法で無数の命が奪われた光景が頭をよぎる。その日の夜には暗い部屋の中でひとり肩を震わせたことを思い出す。王族として、兵を率いる者として、泣くことは許されないと知っていた。
だが、胸に押し寄せる後悔と無力感を振り払うことができなかった。
───あの膨大な死の上に、自分の国は立っていた。
目を閉じれば、今もこびりついた血の匂いが鼻を突くような気がした。
それでも、俺は今生きている。
(考えても仕方ない)
俺は思考を放棄して、食欲を優先させることにした。
「いただきます…」
蘇生されたばかりのせいかとにかく腹が減っている。今は、体が生きることに全力なのだ。
(いい香り……)
スプーンですくって口に運ぶと、かぼちゃの甘い風味が口の中に広がる。滑らかな口当たり、素材そのままの甘みとほんの少しの塩気。それに胃に優しそうだ。
「もっとかきこんでもいいぞ、食欲がないのか?」
俺が遠慮をしているのかと思ったのか、心配そうにアインズ様は声を落として言った。
「いえ、食欲は……あります。ご心配には、及びません……」
食欲は死ぬ以前よりも増しているし、確かにガツガツといきたくなるが────城にいた頃から、王族として育った癖で、食事は自然とゆっくりとした所作になっていた。あまり無様を晒す訳にもいかないので、この癖は好都合だ。
(今更直すのも難しいしな……)
「口に合うか?」
「えぇ、こんなに美味しい食事をご用意いただき、ありがとうございます」
そういえば……この服、洗濯したての様な匂いが……する。後から着せられたんだよな。ということは蘇生後……いやその前か……? 俺のだらしない体が、彼の前に……。
落ち着け。でも、彼にとって俺は所詮下等生物。きっと、ペットとかそこらの動物と同じカテゴリだろう。見たとしても何とも思われてない……。いやいや、どう思われたとか関係ない! 俺の中の人間としての尊厳が壊れていく音が……!
うん、これ以上は止めよう、今何かを思考しても仕方が無い、それにせっかく蘇生されたのに羞恥で死ねる。
(俺よ、無になれ。)
「そうか、おお……綺麗な食べ方だな。参考にしていいか」
「……んぐ! ……アインズ様が私を、何故ですか?」
俺はスープを吹き出しそうになるのを我慢して、飲み込んでからアインズ様を横目で見て、疑問を口にした。
俺を参考だとか、変なヒトだ。綺麗な食べ方なんて、そんなふうに褒められたのは初めてだ。一瞬、スプーンを持つ手が止まり、うっと声を漏らした。
(吃驚した……。心臓に悪いな、このヒトの発言は)
「落ち着いて食べろ」
「うっ、ん゛、けほっ……大丈夫です」
口にしていたのがスープでよかった、固形物だったら喉に詰まってたな。アインズ様の視線を肌に感じながら皿とスプーンを置いて、水を飲んで深呼吸をすると、俺のその動きさえ目で追われる。
「ほう、食器を置く所作までもが優雅だな……」
(だからなんで、そんなに褒めるんだよお…!)
「……ありがとうございますアインズ様、……身に余るお言葉です」
思わず緊張で早口になってしまった。
何故、この骸骨の王はそれほどまでに褒め殺してくるのか。というかじろじろ見ないで欲しい。
でも、命を拾われて飯を出された身だ。文句を言えるはずもなく。
「謙遜するな、私は嘘を吐かない。」
(謙遜ではない、事実なんだからな……)
そもそも、俺のような人間に"優雅"は、流石に的外れな評価では? もしや、魔導王陛下は、俺を掌握して操ろうとしてるのか……?!
「ええ、陛下が嘘を吐くなどと思っていませんよ」
目を細めて微笑んだつもりだが、口角がひくついていないだろうか、ちゃんと誤魔化せているだろうか。変な汗が額に伝った。
「……そうか」
(確りと見てくださいよ、陛下。この優雅とは程遠い、まるい身なりに「…何かお気に障りましたか?」と聞かれたり、「殿下がご立腹よ…」とヒソヒソと話される程の評判の鋭い目つきを。)
このヒトは目が悪いのか? それとも何か別の大きな目的があって俺を蘇生したのか? じ、と暗い眼窩に光る赤い炎を一瞥した。
だが───何となく、だが……。
そんな性格のヒトでは……ない、気がする。
それはそれとして。こう、至れり尽くせりだとなんと言うか、居心地が悪い。面子を潰すようになったらすまないが、褒め返しさせてもらうぞ、陛下。
「陛下は、やはり優しくて親身なお方ですね。感謝しています、あたたかくて美味しいスープや、こんな上質な衣服に、さらにベッドに寝かせていただいて……」
嘘では無い。現に、このスープは毎朝の食事にしたいくらいの味だ。まぁ、俺のこれからの生活がどうなるかは知らんが。
「……ふふ、そうか……お前には、私がそんな風に見えているのだな。」
アインズ様は歯の間から息を漏らしてふっと笑う。
そして、眼窩の奥の赤い光をギラつかせた。
(ぐえっ……!?)
「えぇ……。」
(もしや、怒った、か……? しまったな、失言だ……確かに、アンデッドの王に向かって……優しいとか。威厳ある……とかの方が良かったか?)
黙々とスープを飲む。アインズ様は相変わらず俺の動きを目で追っていて、むずがゆいというか食べにくい……見られていると余計に緊張してしまうな。
(本当に、優しいと思ったから……発言したんだがな、うぅん…………撤回するべきか……?)
なんだか、普段BLとか見てない方も見てもらってるっぽいので
とても嬉しいのですが、アインズ様×ザナックのガッツリBLなので注意してください
BLなので注意してください!
この小説シリーズはBLです!
耐性が無い方はR18シーンを飛ばすことをおすすめします