ザナック視点から。
オリジナル魔法注意です
布団に潜ると、アインズ様が横に身を入れて来る。そして、俺を抱き締めた。
「ひゃあ!?」
「っ、すまん。嫌だったか? これで安心出来るかなと」
眼窩の奥の優しい光が柔らかく揺れている。
「嫌では、無いです……ですが、しばらくドキドキします」
すると、こつんと額を寄せられた。
「君は可愛いな…………」
「……かわいくは……、アインズ様の方が格好良いですよ」
「嬉しい」
キスで口を塞がれた。ぐっ、ぐっ、と歯が押し付けられる。
「んんう」
(ああ、あ……アインズ様、好き……もっと)
「アインズ様…………愛してます……」
「俺もだ」
舌が絡む。吸われ、甘噛みされ、快感でじわじわと涙が出てくる。
「はぁ……」
離れると、強引に顔を戻されて再び深く口付けられた。角度を変えて何度も。
「アインズ様、ちょっ……んむ」
「ん、すまん……」
やっと解放された。と思っていたら、頭に重みが乗る。骨の指が髪を梳く。冷たくて、暖かい。
「……」
息が整ってくると、視界がぼやける。脱力して、シーツとアインズ様の胸に身を任せる。瞼が重い。
(まだ……キス欲しい……のに)
「おやすみ、俺のザナック」
アインズ様の優しい囁き声を最後に意識がふっ、と溶けた。
────────『アインズ視点』
「寝たな……フフ、寝顔も気持ちよさそうだ。良かった」
すやすやと子供のように眠るザナックの頭を撫でる。
「俺は……君の過去を知るに値する人物なのだろうか…………なんて、今更だな。怖気付いた訳では無いのだが…………君は、本当に俺で良かったのか?」
『愛してます』
ザナックの声が頭蓋内にリフレインする。
「俺もだ……俺も、君だけを愛している。何があっても、永遠に」
その小さな手に誓って口付けた。
「君の為なら俺は……世界征服でも何でもやってみせよう」
再び、彼の金の髪を撫でる。額に手のひらを当てた。そのまま詠唱する。
「精神回帰《マインド・リコレクション》」
瞬間。ザナックと俺は、エメラルドグリーンの穏やかな光に包まれた。そして、彼の体温が上がる。
「成功したな……」
しばらくして、光が収まると。
「父上…………」
あどけない顔。苦しげに、だが同時に縋るようにザナックが呟いた。以前から、ザナックは無意識下で同じように呟くことがあった。彼の実父──ランポッサ三世との間に何があったのか、俺は知りたい。知らなければならない。
「ザナック、俺がここに居る」
背を伏せて、聞こえるかも分からないが囁いた。すると。ギュウッと突然抱き締められ、耳元で「父上……」と。
「ザナック、俺だ……」
ランポッサ三世と間違えられるのは多少俺の心に不快感を残した。だが、ザナックは悪くない。
(ランポッサ三世……貴様は何をしたんだ。ザナックに……)
もう死んでいるランポッサ三世に向かって悪態をつく。その体は不本意ながら保管してあり、いつでも蘇生可能だ。だが、それはザナックにはまだ言わない。彼の精神面に良くない。それに、ランポッサをもし蘇生させるとするなら、ザナックと結婚後と決めてある。
実の娘に殺されたのは哀れだが、ザナックにこれほどまでに大きな記憶の傷を残した本人であることにも間違いないだろう。だから、腹いせにではあるが形式的な結婚報告をしてやろうと思う。流石にショック死はしないだろうが、一応ペストーニャあたりを控えさせておくか。腰を抜かして勝手に怪我をするかもしれないし。
「……父上……」
くい、とローブを引っ張られる。
「ザナック……俺は君の父上じゃ……」
すん、すん、とザナックは啜り泣く。
「な、!?」
こうして密着されるのは悪い気はしないが、やはり、ランポッサ三世と間違われたままなのがどうも気に食わない。
背中を一定のリズムで叩いてやると、ザナックは泣き止んでくれた。
(まるで、子供だな)
「ザナック……」
また、額を寄せた。安心して欲しくて。分かって欲しくて。
「俺がここに、いるから…………ずっと……」
不思議だ。随分と懐かしい感覚。眠気。アンデッドである俺に、そんなものは、ない……はずなのに。視界が黒に染まっていく。
─────────
光だ。温かくて、小さくて。
でも、一生懸命に輝いている、光。
吸い寄せられるように、俺はそれに縋った。真っ暗闇の中で、それだけが俺の頼りだった。その光があるから、俺は努力出来た。止まらなかった。