※この作品はR-18です。

ザナック蘇生if/アイザナ   作:アイザナ大使

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ザナック視点から。
ザナックに女装させてます、これからもさせます




混浴と湯あたりとフリフリと

 

 

 

湯気がもうもうと立ち込める浴場に静かな水音だけが響く。湯面に並んだふたつの肩──骸骨と人の異様な取り合わせ。俺は、小さく息をついた。今までなら誰かと並んで湯に入るなど考えられなかった。けど今は───不思議とそれが心地よかった。

あの、アインズ・ウール・ゴウン魔導王陛下に風呂の付き添いをさせるなんて、と思っていたが、彼は本気で俺を心配してくれているようだ。それでも少し申し訳なくて、緊張しながら尋ねた。

「……アインズ様も、お疲れではないでしょうか? 魔導王としてのお勤め、並大抵のものではないでしょうに、こんな俺にまで付き添っていただいて……」

ふと投げた言葉に、彼は一拍置いてからゆっくりと顔を向けてくる。骸骨に表情はない。だが、その声には妙に熱のようなものがあった。

「そういうところだぞ、君は」

彼の答えの真意を測りかねて、追いかけるように顔を寄せた。

「そういうところとは?」

「分からなくてもいい。」

顔を逸らされた。意味がわからん。やはりこの人の考えてる事は。骸骨だからとかじゃない。人間くさいと思ったら今度は隠しごとか。

「……あの、俺に気を遣う必要はありませんよ」

間。そして、一言返される。

「…………。どういう事だ?」

「何となくですが……先程からそんな気がして」

「いや、私は最低限の気遣いはしてる……が、君に言われる筋合いはない」

どこか咎めるような、だけど、怒っていると言うより不貞腐れたような……どこか親密さを含んだ声色。確かに、余計だったか。そうだな、ただ裸で一緒に風呂に入ってるだけで、アインズ様と俺は主従関係だ。この状況が変なだけだ。

「すみませんでした。……仰る通りです」

「はぁ……ザナック。そもそもだな。君のせいなんだぞ……?」

彼は低く、ため息を混ぜた唸るような声で。

「え、俺のせい……ですか?」

ばしゃりと湯を跳ねさせて、波紋を広げながらアインズ様が身を乗り出した。

「君があんなふうに顔を赤らめて、妙な雰囲気にするから……! 私にまで、その、変な気持ちがうつってしまったではないか……っ」

骸骨の彼が、困ったように肩を揺らしていた。てっきり俺は、彼には激しい感情は無いものだと思っていた。が、それは違ったようだ。泰然自若だったその態度が、今だけは妙に人間らしく見える。

「えー、いや……あれは、その」

俺が口ごもると、彼は湯船の縁に手をかけ、またその身を俺に寄せた。

「正直に答えろ。私は骸骨なんだぞ? 何に照れる必要がある?」

「………その……俺、太ってるので……裸を見られるのが正直、恥ずかしくてですね……」

俺は、自分の腹に指先を近付けた。

「……は?君は何を言っているんだ? ──むしろ、そこが最高に魅力なんだろうが……!」

アインズ様が一気にまくし立てる。

「……その丸み、ふわふわしたその体型! 柔らかそうな肌!そこが魅力なんだろうが! 世の中にはな、そこが好きだという層が確実に存在するんだよ! 俺は知っている! というか、君だからこそ魅力的なんだよ!!」

ふわふわ!? 柔らかそう!? 彼の口から出てくるものが異国語のように思えた。というか待て!? 俺だからって……!?

(ああもう意味が分からない! 分かりたくない! 駄目な気がする! 脳みそがパンクしそうだ!)

「……あ、アインズ様こそ!」

俺も思わず湯の中で身を乗り出して反論する。顔が異様に熱くなるのは湯のせいだけじゃない。言い返さなければ精神を保てない。言葉が止まらなかった。

「その堂々とした体格と気品、あと……骸骨なのに、お顔の造形がものすごくお綺麗で……! 王としての威厳があって……!」

「おい、私は本気で褒めてるんだぞ!? くっ、………き、君のちょっと照れてる顔も魅力的だしな!」

「そ、それはこっちのセリフです! アインズ様の──その、目の光がちょっと鋭くなる感じ? 俺、その怒った顔、好きですし!」

──ばしゃっ、ばしゃっ、と湯が波立つ。

褒めているはずなのに、なぜか互いに語気が強まり、ほとんど口論に近い状態にまでなっていた。

 

そのとき。

「あれ……」

───頭がぐらりと揺れた。視界の端がじわじわ滲んで、世界が少しづつ遠のいていく。

完全にのぼせた。

湯の音が遠く、こもったように響いた。

「……すみません、なんか、気分が……」

バシャッ…………!!

次の瞬間、身体が沈み──温もりに包まれながら何かに支えられていた。

「大丈夫か……!? 意識はあるか?」

目の前が滲んで焦点が合わなくなる。だけど、今までの彼とは違う、焦ったような低い声が頭に反響した。

「アインズ様……ほら、やっぱり……こんな俺にもやさしくて、かっこいいじゃないですか……」

だから、そんなわけない。ありえない。俺が、誰かに褒められるなんて。貴方にそんなことを言われたなんて。だって、最初から釣り合うはずがないのだから。

 

 

「君、阿呆か。この状況でそんなことを………襲って欲しいと言ってるようなものだぞ……」

 

湯気に包まれた浴場の静寂の中で、その声だけが異様に鮮明に──そして、やけに優しく耳に残った。

 

 

──ふわりとした感触が肌に触れる。

目を開けると、そこは明るい部屋だった。

やけに肌寒くて

ふと自分の格好を見下ろすと───

「……な、なんでネグリジェ……!?」

薄い布地がまとわりつく体。ふわふわのフリルに淡い紫色、そしてレース。完全に女性物。動揺して立ち上がろうとすると、聞き慣れた声が背後から飛んできた。

「動くな、ザナック。もう少しでリボンを結び終わるからな」

「結ばなくていいですから!? というか、誰が着せたんですかこれ!!」

「私だが?」

即答。なぜか堂々としているアインズ様。鏡越しに目が合った。

「その……ザナック、君は自分の魅力をわかっていない。こうして布一枚変えるだけで、全然違う印象になるんだぞ」

「いや、俺、男なんですが!? しかも、恥ずかしすぎて死にそうなんですけど!?」

「死なれては困るな。君は貴重な癒やし要素だ。……見ろ、姿見に映った君を。まるでぬいぐるみのようじゃないか。ふふ」

恐る恐る鏡を覗き込む。

そこにいたのは、フリフリのネグリジェに包まれた自分だった。

……丸い体。赤らんだ頬。視線を逸らすように下を向いて、しおらしくなっている。照れるな。気色の悪い。

「……いや、これは……どう見ても変ですよ……」

「かわいいだろう?」

「いやいやいや!」

反射的に否定する。アインズ様は真顔だった。だが──骸骨のはずなのに、何故かその言葉に本気が滲んでいるのが伝わってくる。口調には確信と、どこか甘い温度があった。

「君が恥じることはない。自分を否定するな。うん、太っているのがなんだ。柔らかく、安心感があって、思わず触れたくなる……君は、そういう存在なんだ」

「……俺、玩具ですか……?」

自嘲気味に訊ねた。

「違う。宝物だ」

その言葉に、息が詰まった。

納得なんてできない。けれど、アインズ様の眼窩の奥──見えるはずのない目に、確かに優しさがあった。

「……自覚、ないですよね。そういうの、ずるいです」

「何がだ?」

「……いえ、なんでも」

自分でも、上手く言葉に出来なかった。

なのにどうしようもなく心が揺れていた。

ふわりとリボンが結ばれる感触。相変わらずネグリジェは恥ずかしいけれど───逃げ出したいとか、嫌だとは思わなかった。

(もしかして……俺、無意識にそういう(女装)願望が…?)

少しのあいだ、アインズ様の手が背中に添えられたまま、動かない。その温もりのような存在感に、不思議と落ち着いてしまう自分がいた。

「私が、元々着せていた衣服と変わらないシルエットだろう? よく似合っているし、問題ないはずだ」

言いたいことは分かるが。

「も、……問題ありですよ、明らか女装じゃないですか、コレ……!」

俺にこんな服着せたって、目に毒だろ……。

「ふむ、違うな。コレは君の為に私が特注で作らせた寝間着だ。君は男だろう? よってコレは男性用だ。」

たぶん俺は顔を顰めてしまった。

「な、何なんです!? その理論!」

返す言葉に詰まる。でもその横顔は、どこまでも真剣で──どこまでも優しくて。だから俺は、文句を言いながらもやはりその場を離れようとは、思えなかった。

 

 

 

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