「そこでなのですが」
話が終わると、おもむろにザナックがはち切れそうな紺色のカバンを取り出す。……詰め込み過ぎだな。パッと開かれると紙の束が広がる。それは取り出され、机に乗せられる。小さな手によって広げられ、各自に配られる。俺が混乱している間。デミウルゴス、アルベド、パンドラは既に読み進めている。
「まぁ、面白いわね……確かにアインズ様の思想に基づく良い計画だわ。」
「これだけの構想を練り、文書作成に至るまで……」
「確かに、アルベドが言う通り、面白いですね。」
「三通りの形式を考えて来たのですが……俺の本命は一つなのです」
人差し指を立てて言ったザナック。可愛い。俺が文書を一通り読んでみても、ザナックの字が綺麗、という事以外何も分からん。
「……すまんが、その、説明して貰えるか?」
「……」
「……」
「……」
「かしこまりました。」
カチャ、と眼鏡を指で押し上げるデミウルゴス。
「では、僭越ながら要約させていただきます」
デミウルゴスは紙束を閉じ、恭しく一礼した。
「要するに──聖王国をあえて完全には壊さず、南部を中心に"救援が必要な状況"へ追い込みます。そこへ魔導国も被害者であるかのように振る舞い、共通の敵を持つ形を作るのです」
「そのうえで、聖王国側から自発的に援軍を求めさせる。アインズ様はその要請に応じ、救世主として現れる。ですが、ただ救うだけではいけません。救った上で、かの国も自ら立ち上がる形にするのです」
「そのために、聖王国とは従属ではなく友好という形で結ぶ。共同防衛し、交易、軍事支援を与え、恩義と実利で関係を固定する──それがこの計画の要点でございます」
デミウルゴスは薄く笑った。
「そして、その際に人間であるザナック様を同行させることで、アインズ様への恐怖を和らげ、聖王国との対話を円滑にする。お見事です。実に、アインズ様のお考えに相応しい計画かと」
「……そうか、だが……ザナックが同行するのは少々危険ではないか……?」
「ご安心ください! これでも鍛えたので、護身術くらいは心得ています! それに…………もしもの時は、アインズ様が助けてくださるでしょう?」
「いや、まぁ……そうだが。」
当然のように問われて、俺も当然のように返す。
「この計画はアインズ様のお力や技術に頼りきりなものなのでそんな事は言ってられませんが……なので、死なないように気を付けます。」
何を意気込んでいるんだ。
「……死ぬことを前提として動くのはあまり好ましくないな」
「そうよ、私の親友なんだから、簡単に死なないでよね」
アルベドがため息をつく。
「いえ、生きて帰る事を前提としています、ちゃんと用心しますから 」
ザナックは眉をつり上げてぐっと拳を握った。危なっかしい。だが、別行動しなければいい話か。
「ちなみに詳細や具体的な事は計画進行をしながら俺が考え、臨機応変に対応していく次第です」
「なるほど、分かった。その計画を進めよう」
「かしこまりました、すぐに準備を進めてまいります。」
デミウルゴスが言った。アルベドとパンドラが頷く。
「それと、しつこくて悪いのだが……もう一つだけ…………もう分かっていることだろうが……俺は、この魔導国を様々な種族が対等に暮らせる────かつてのナザリックのような賑わいのある国にしたい。」
俺が言うと、アルベドは頬を緩めた。
「承知しましたわ。アインズ様」
「分かりました父上。」
「では、新しい魔導国の方針が決まりましたね。」
「これにて、解散としよう」
────────
ザナックと共に俺の私室に転移した。
「ザナック。聖王国に旅行するにあたって、俺達も準備をしなくてはならない」
「はい……?」
ザナックが小首を傾げた。
「ネグリジェが薄いという話はしたよな? それに加えて冬服を買いに行くぞ。」
「え」
「楽しみだな。靴にズボンに上着に……」
顎に手を当てて思案する。ザナックの様々な姿が頭に浮かぶ。かわいい。フリフリ系も良いけどシンプルなのも捨て難い。