アインズと聖王国トリオ対ヤルダバオト。
本気で戦ってるのは聖王国トリオだけ。負けたら自分だって死ぬかもしれないのにアインズ様がいちゃついてます。ザナックもアインズ様が死ぬかもしれないのは分かってます。
「おおっと……。ううむ、空で剣を振ったことは無いから少し不安だな」
「そのうち慣れる」
背を向けたまま、アインズが言った。
「そのうち……か、慣れるまで足を引っ張るかもしれませんがよろしくお願いしますよ」
レメディオスが聖剣サファルリシアを抜いた。
「その心配は不要だ」
腹の底まで震わせる声が響いた。
「慣れる前に終わる」
次の瞬間、炎を纏った巨体が視界から消えた。
「姉様!」
ケラルトの叫びより早く、ヤルダバオトの巨大な拳がレメディオスへ振り抜かれる。
「──っ!」
咄嗟に聖剣サファルリシアを横に構えた。
激突。
金属同士ですらないというのに、耳を塞ぎたくなるような轟音が空に鳴る。
「ぐっ……おおおっ!」
レメディオスの身体が数十メートル後方へ弾かれた。
だが、落ちない。
空中で何度も体勢を崩しながら、それでも剣を握った。
「……なるほど。こうやって、踏ん張るのか」
追撃にヤルダバオトはレメディオスを追いかける。
「
ケラルトの声。
ヤルダバオトはノックバックに加え、衝撃により自身で後退する。
「
「
アインズとカルカがヤルダバオトへ手をかざす。
偏差で放たれた魔法。
青白い光の柱がヤルダバオトに落ちた。
「ぐ、ああっ……! ふっ……」
ヤルダバオトはアインズとカルカを巻き込み、薙ぎ払うように腕を振った。
「きゃっ……!」
アインズはカルカを自分から離すよう突き飛ばした。
次の瞬間アインズはレメディオスと同じ位置まで吹き飛ばされる。
「魔導王陛下……!」
「気にするな。まだまだ平気だ」
アインズはすぐに体勢を立て直した。
そして、無詠唱化した
『ザナック、見てるか?』
地上では。
「えっ、うわっ……アインズ様っ!?」
ネイアに背を向け、小さな声でザナックは叫んだ。
「……?」
ネイアは不思議そうにそれを見ている。
『今殴り飛ばされてな、少しやる気が起きない』
「そんなこと言ってる場合ですか!」
ザナックは真剣に叱った。
『だから君に応援してもらいたい』
空では、レメディオスやケラルトらしき影が炎の塊、ヤルダバオトに向かっていく姿が見える。
「えっ、応援してますよ……? というか戦闘は?」
『痛みで動けん』
「アインズ様!」
『応援して欲しい』
「してますって」
『そうじゃなく。"アインズ様、大好きです♡ 頑張ってください♡"と言って欲しい。あとキスも』
「なんかもう、色々と貴方恥ずかしく無いんですか!?」
真っ赤になったザナックが普通に叫んだ。
ネイアは肩を跳ねさせる。
『無い』
低く、真っ直ぐな声だった。
不覚にも格好いいと思ってしまったザナックと、
『早く。三人が危ないぞ』
「う……」
『ザナック』
ザナックは流石に折れ、肩を震わせて声を絞り出す。
「あ、あいんず、様……大好きです……♡ 頑張って、くだ、さいっ……♡」
しどろもどろにザナックは言った。
ただセリフを読み上げただけではなく、きちんと気持ちの込められたような声色だ。
最後に。ちゅっと手の甲に口付け、音を出した。
『うん。やる気が出てきた。ありがとうザナック。俺も大好きだよ』
「貴方が言わせたんでしょう……」
耳まで赤く火照ったザナックは顔を両手で覆った。
「……よし」
アインズは顔を上げ、三人の元へ飛んだ。
「動けるようになりましたか」
レメディオスが心配そうな顔から一転、アインズに対し少し表情を緩めた。
「む、傷はもう大丈夫なのですか?」
「ああ、今治癒と回復をしたのでな」
「アンデッドですから負のエネルギーですか?」
ケラルトが顎に人差し指を当てて訊いた。
「ああ、まあ……そうだ」
アインズにとっては光と善でしかないが、そんなことを今語っても困惑させるだけなので口を閉じた。
「おお、透明な地面だと思えば踏めるようになってきた」
剣を軽く振りながらレメディオスは感動している。
「はあぁっ!」
レメディオスが空中を走り、大きく周ってヤルダバオトに剣を振り下ろす。
ヤルダバオトは当然避けようとするが、それをケラルトが許さない。
「
強く眩い光がヤルダバオトに降る。
「ぐっ、う……!」
痛みに呻き、そのまま背中をレメディオスに斬られた。
「ぐあっ!」
次いでカルカも両手を上げた。
「魔法抵抗突破化、魔法二重化、|聖なる光線《ツインペネトレート・マジック・ホーリー・レイ》」
容赦なくアインズも続く。
「
ヤルダバオトに落雷。そして、光線が二つ放たれる。
「……っぐ、ううッ……!」
ヤルダバオトは耐えてみせ、真っ先にケラルトを殴り飛ばした。
「ッッ……」
「ケラルト!」
「貴様っ」
レメディオスがヤルダバオトに剣先を向ける。
「
即座に詠唱し、ケラルトに追撃がいかないよう前に立つアインズ。
「魔法二重化、
親友を案じ、苦しげな顔のカルカ。
レメディオスは後ろを気にしてしまい、隙を作る。
ドン!と大きくまた剛腕に飛ばされ、カストディオ姉妹は一旦戦線離脱した。
「
カルカの魔法により、無数の威光の主天使達がヤルダバオトに襲いかかる。
「ちっ……」
鬱陶しそうに天使を投げるヤルダバオト。けれど次々にヤルダバオトを覆うように集まる天使達。
カストディオ姉妹がアインズの横に並ぶ。
ケラルトが自分と姉を癒し、ため息を吐いた。
「
アインズが三人にバフをかけた。
「これで先程よりはマシになっただろう」
「感謝する」
「ありがとうございます」
「感謝いたします」
「では、もう一度行くぞ!」
レメディオスが聖剣を構えた。
先程までとは違う。空中での足運びにも、もうほとんど迷いがない。
「姉様、右からです!」
「分かっている!」
ヤルダバオトの拳を身体を沈ませて避ける。
そのまま透明な足場を蹴るように踏み込み、一気に間合いを詰めた。
「はあああっ!」
聖剣サファルリシアが炎の翼を切り裂いた。
「ぐっ……!」
炎が散る。
けれど完全に翼を落とすには至らない。
ヤルダバオトが振り返る。
だが、その視線の先にレメディオスはもういなかった。
「こちらだ!」
頭上。
「っ!」
振り下ろされた剣を腕で受け止める。
皮膚が裂け、血が飛び散った。
「姉様! そのまま!」
ケラルトが片手を突き出す。
「
光が走った。
至近距離でそれを受けたヤルダバオトの身体が大きく揺れる。
「ぐ、うう……っ!」
「魔法二重化、
続いてカルカ。
二本の光線がヤルダバオトの胸を焼いた。
「小癪な……!」
怒りを露わにし、ヤルダバオトは腕を振り回す。
レメディオスが咄嗟に距離を取った。
「
アインズが静かに手を向ける。
夜空から落ちた巨大な雷がヤルダバオトを貫いた。
「があああああっ!」
今までで最も大きな叫び。
雷に包まれた巨体が僅かに高度を落とす。
「効いている!」
レメディオスが声を上げた。
「続けろ」
アインズは淡々と答えた。
「はい!」
カルカも頷く。
「もう一度…… 魔法抵抗突破化、
光。雷。聖剣。
休む暇もなく攻撃が重なる。
ヤルダバオトの身体に傷が増えていった。
炎に包まれていた翼も一部が欠け、片腕からは溶岩のような血が滴っている。
「姉様!」
「おお!」
ケラルトの声に合わせ、レメディオスが踏み込む。
ヤルダバオトが拳を放つ。
だが。
「要塞!」
レメディオスは剣を構え、真正面から受け止めた。
「ぐ……っ、おおおおっ!」
身体が後ろへ押される。
それでも、止まった。
「っ……!」
ヤルダバオトの目が僅かに見開かれた。
「今だ!」
レメディオスは拳を剣で弾き上げた。
「カルカ様!」
「ええ!」
カルカが両手を前に出す。
「
青白い光柱。
それがヤルダバオトを空中から地面近くまで叩き落とした。
ドォン、と都市全体が震えるほどの音。
「やった……?」
ケラルトが息を呑む。
瓦礫が舞う。
炎の中にヤルダバオトの巨体が沈んでいた。
「油断するな」
アインズだけが動きを止めなかった。
「まだ生きている」
「……そうでしょうね」
レメディオスは息を整えながら剣を握り直す。
瓦礫の山から。
ぎしり。
音がした。
「…………」
カルカが目を細める。
ゆっくりと。
ヤルダバオトが立ち上がった。
身体中に無数の傷。
片方の翼は大きく裂けている。
胸も、腕も、脚も。
至るところから血を流している。
だが。
笑っていた。
「……ク」
低い声。
「ク、ハハ……」
「何がおかしい」
レメディオスが剣先を向ける。
「いや……実に、良い」
ヤルダバオトの炎が揺らめく。
それまでよりも。
赤く。
強く。
「なるほど……この程度ではないということか」
アインズが呟いた。
「魔導王陛下?」
カルカが振り返る。
アインズはヤルダバオトを見つめたままだった。
「先程から、奴の力が上がっている」
「……上がっている?」
ケラルトが眉を寄せた。
「攻撃を受ければ受けるほど……いや、我々から敵意を向けられるほど、と言った方が近いか」
「厄介だな」
レメディオスは短く言った。
けれど聖剣を下ろさない。
「なら、その前に倒せばいい」
「姉様、そういう簡単な問題では……」
「ふん」
ヤルダバオトが鼻で笑う。
炎が一気に膨れ上がった。
夜空が赤く染まる。
「楽しませてもらったぞ」
その声が。
先程までより、遥かに低い。
「だが……貴様らは少々、目障りだ」
「来るぞ!」
アインズが叫ぶ。
レメディオスが剣を構える。
ケラルトが手を掲げる。
カルカが魔法を唱えようと息を吸った。
ヤルダバオトは笑った。
「少し、静かにしてもらおう」
そして。
「
世界から、音が消えた。
ルビがなんかできなくて諦めてます
( ◜ᴗ◝)