※この作品はR-18です。

ザナック蘇生if/アイザナ   作:アイザナ大使

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二次戦闘と亀裂

 

止められた時の中、眼窩の赤い光が動いた。

時間操作対策をしていたアインズだけはこの時の中では動ける。

そして、ヤルダバオトが口角を上げた。

「あの人間達があそこまでやれるとは……」

「見直したか?」

「ううむ、アインズ様ほどではありませんが……人間にしては強い方でしょう」

「そうか、彼女達でもお前に致命傷を与えられるということか?」

「それはまだ分かりません。が、ここから私は本気を出しますよ」

そう言いながらヤルダバオト──憤怒の魔将は一気に後方へ飛んだ。

上空へ距離をとった。

アインズは三人の前に立つ。

そして、途切れていた音が繋がる。

 

「──え?」

カルカが目を瞬かせた。

先程まで目の前にいたはずのヤルダバオトがいない。

代わりに、アインズが三人の前へ立っていた。

「魔導王陛下?」

「来るぞ。先程までと同じつもりで戦うな」

「何を──」

上空。

赤い光。

カルカが顔を上げた。

遥か頭上に移動していたヤルダバオトが、両腕を広げている。

「隕石落下(メテオフォール)」

空が、赤く染まった。

「なっ……!」

突如現れた巨大な岩塊が、炎を纏ってこちらへ落下してくる。

「散れ!」

アインズが叫んだ。

レメディオスは咄嗟に横へ飛ぶ。

カルカとケラルトもそれぞれ左右へ離れた。

隕石が空中で爆ぜた。

「きゃああっ!」

「カルカ様!」

爆風。熱。

無数の細かな岩片。

ケラルトの身体が木の葉のように吹き飛ばされた。

「ぐっ……!」

防御の姿勢を取る暇もない。

「ケラルト!」

レメディオスが手を伸ばす。

だが。

「よそ見か?」

「っ!」

目の前。

いつ接近したのか、ヤルダバオトの巨大な顔。

拳。

「要塞!」

聖剣を盾のように構える。

激突。

「ぐ、うううっ……!」

先程は受け止めた。

だが。

今度は違う。

「な──」

剣ごと腕を押し込まれた。

鈍い音。

「ぐあっ!」

レメディオスの身体がくの字に折れ、そのまま後方へ弾き飛ばされた。

空中で一度。

二度。

回転する。

「姉様!」

ケラルトの叫び。

レメディオスは何とか姿勢を戻そうと足をばたつかせた。

だが間に合わない。

建物の尖塔へ背中から激突した。

石壁が砕ける。

「がっ……!」

瓦礫と共に屋根を転がった。

聖剣サファルリシアだけは離さない。

「……っ、は……」

肺から空気が抜けた。

脇腹が焼けるように痛む。

左肩もまともに上がらない。

「まだ……だ……」

震える腕で身体を起こす。

「姉様!」

ケラルトが降下しようとする。

「行くな!」

アインズが制した。

「奴の狙いだ!」

「──!」

ヤルダバオトは既にケラルトの背後にいた。

「遅い」

巨大な腕が横薙ぎに振るわれる。

「っ!」

ケラルトは両手をかざす。

だが、衝撃で魔法は発動されない。

「う、ああっ!」

後方へ飛ばされる。

遠くの家屋の壁へ激突する直前。

「上位転移(グレーター・テレポーテーション)」

アインズが現れた。

ケラルトの背中を片腕で受け止める。

だが勢いは殺し切れない。

二人まとめて石壁へ叩きつけられた。

「ぐっ……」

「魔導王、陛下……」

「喋るな」

アインズが壁から離れる。

ローブの肩口が大きく裂けていた。

ケラルトは口元を押さえた。

指の間から赤い血が滲む。

「大治癒(ヒール)……」

自分自身へ魔法を使う。

白い光。

痛みが幾分か引いた。

「姉様にも……」

「先に自分を治せ」

「ですが──」

「彼女はまだ動ける」

アインズが視線を向ける。

その先。

砕けた尖塔からレメディオスが飛び出した。

「おおおおおっ!」

「本当に、無茶を……!」

ケラルトが顔を引きつらせた。

「悪くない」

アインズは呟いた。

レメディオスがヤルダバオトへ肉薄する。

「聖撃!」

聖剣サファルリシアが青白く輝く。

横薙ぎ。

ヤルダバオトは腕で受けた。

「ぬっ……!」

皮膚が裂ける。

だが。

ヤルダバオトはその腕で剣ごとレメディオスを捕らえた。

「しまっ──」

「捕まえたぞ」

「離せ!」

レメディオスが暴れる。

「姉様!」

ケラルトが手を伸ばす。

「聖なる光線(ホーリー・レイ)!」

光線。

ヤルダバオトの肩に突き刺さる。

「ぐっ……!」

僅かに力が緩んだ。

その瞬間。

「善なる極撃(ホーリー・スマイト)!」

カルカ。

青白い光柱が横からヤルダバオトを貫いた。

「ぐああっ!」

レメディオスが解放される。

「カルカ様!」

「早く離れて!」

「はい!」

レメディオスが飛び退く。

「万雷の撃滅(コール・グレーター・サンダー)」

雷鳴。

巨大な雷が再びヤルダバオトへ落ちた。

「ぐ、おおおおっ!」

炎が弾ける。

だが落ちない。

むしろヤルダバオトは笑っていた。

「クハハハ……!」

「……しぶといな」

アインズが呟く。

「それはこちらの台詞……だ」

ヤルダバオトの指先から炎が散る。

「獄炎(ヘルフレイム)!」

黒い炎。

「カルカ様!」

レメディオスが叫ぶ。

「っ!」

カルカが回避しようとする。

ケラルトが手を引こうと伸ばした。

その隙。

「二人まとめてとは好都合だ」

ヤルダバオト。

「下がれ!」

アインズが二人の前へ割り込んだ。

拳。

打撃を真正面から受ける。

「ぐっ……!」

骨の腕で止める。

だがヤルダバオトはもう一方の腕を振り上げていた。

「魔導王陛下!」

レメディオス。

拳が腹部に突き刺さる。

「──っ!」

アインズの巨体が折れるように後ろに。

そのまま地面へ。

「魔導王陛下!」

カルカが叫ぶ。

アインズは都市の中央広場へ落下した。

ドォン!

石畳が陥没する。

土煙が立ち込める。

「アインズ様!」

遠く。

地上から小さな声。

ザナックだった。

「っ……!」

アインズの眼窩の赤光が揺れる。

骨の指を石畳へ。

ゆっくりと上体を起こす。

「……痛いな」

ぽつり。

立ち上がった。

上空では。

「貴様っ!」

レメディオスがヤルダバオトへ突進する。

「うおおおおおお! 流水加速!」

ヤルダバオトは体を傾けた。

「魔法抵抗突破化、聖なる光線(ペネトレート・マジック・ホーリー・レイ)!」

避けられた代わりにカルカの魔法攻撃が当たる。

「ぐあっ……!」

「連鎖する龍雷(チェイン・ドラゴン・ライトニング)」

龍の形をした雷撃がヤルダバオトの身体を駆け巡る。

上がって来たアインズが両手を下ろす。

ヤルダバオトは一度大きく体勢を崩した。

効いている。そう判断したレメディオスがヤルダバオトに再び接近した。

ケラルトは猪突猛進していく姉に大治癒(ヒール)を飛ばし援護。

カルカも両手をかざした。

「魔法抵抗突破化、魔法二重化、|聖なる光線《ツインペネトレート・マジック・ホーリー・レイ》」

身体中が裂け、雷の焦げ跡もあるにも関わらずヤルダバオトは立っていた。

ゆっくりと炎の翼が羽ばたく。

「ここまで叩き込んでもまだか」

アインズが警戒を強めた。

「……上位転移(グレーター・テレポーテーション)」

ヤルダバオトが詠唱する。カルカを厄介な後衛と認識したのか、一気に目前に現れる。

「っ!」

レメディオスが駆け付けようとするが少し遠い。アインズも消耗していて反応が遅れた。

──ガンッ!!

両腕をクロスさせてカルカは防御した。が、大きく吹き飛ばされる。風圧で近くまで来ていたレメディオスの髪が揺れた。

「カルカ様ぁぁっ!!!」

 

「大丈夫……ではないけど、生きてるわ、安心してレメディオス」

両腕をだらりと下ろしたカルカ。

「体も痛いし、腕がものすごく痛いけれど、折れてるかしら」

それでも立っていた。鎧の力でもあり、魔法で盾を張ったおかげでもある。

「大治癒(ヒール)!」

すぐにケラルトから治癒魔法が飛んで来る。

「ありがとう」

ふと、カルカは頭の違和感に気付く。兜が無くなっている。地面に落ちたか衝撃で破壊されたか。

問題はそこではなかった。その下につけていた、マジックアイテムである冠。

「ひ、ヒビがぁ……」

壊してしまった!?とカルカは軽くショックを受ける。

亀裂。

その隙間からはほんの僅かに白銀の光が漏れている。

「カルカ様……その冠……」

ケラルトが気付く。レメディオスも振り返る。

アインズも見た。そこに確かに大きな魔力が込められていることを察する。

カルカは考える。

ヤルダバオトの本気とも渡り合えるようになってきた。

この四人の連携にも一体感が出てきた。

だが通常の戦闘では限界がありそうだ。

「カルカ女王、それはなんだ」

カルカは指先でそれをなぞる。

「……これは」

 

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