ペスとアイザナが蘇生していく話です
戦後十四日。蘇生儀式開始日。
最初の施設。施設は様々。城内であったり天幕であったり。
アインズの横にザナックは名簿を持って並んでいた。
「準備は整ってます」
「分かった」
アインズが静かに返事をして、こめかみに指を当てた。
「ペストーニャ。聞こえるか」
『はい、アインズ様』
「約束の時だ。来てくれるか。私が迎えに行く」
『もちろんでございます、わん』
転移し、ペストーニャを連れ、アインズが戻ってくる。
「おかえりなさいませ、アインズ様」
ザナックが一礼。
「お呼びいただき、ありがとうございます、アインズ様。……この日をお待ちしておりました、わん」
深く頭を下げたペストーニャ。
「ペストーニャ様。よろしくお願いいたします」
ザナックもペストーニャに対してもう一度礼をする。
「こちらこそ。ザナック様」
「では、始めよう」
────
ザナックが名簿を読む。
「次。エルネスト・ファーレン」
「確認した」
手をかざす。
「
ベッドに眠る男が白い光に包まれた。睡眠魔法を全員にかけているのでゆすらなければ起きることはない。
「アラン・ベラ」
少し離れたところでペストーニャが確認を終えて手をゆっくりかざす。
「こちらも参ります……
一人、また一人と蘇生されていく。
死亡者は血などは綺麗にされていて、簡易的なベッドなどに寝かされている。白い布がかけられ、胸元には氏名を書いた札。家族から預かった小物などが枕元にある人もいる。
ザナックはアインズに蘇生してもらった時のことを思い出す。
あの冷たい温度。頬に触れた指先。何者でもなくなった日。自由になった日。
最初は心の中心にぽっかりと穴が空いたようだった。何もかもに焦って、ずっと後悔して、遠慮して。
自分がここにいるのは奇跡なんだと。いや、奇跡なのは今も変わりない。だからこの奇跡に自分は──
「どうしたザナック。無理なら休め」
その声でハッとする。
「……いえ」
「気分が悪いのか」
「大丈夫です」
名簿を見る。
「俺も、こうして戻していただいたんですね」
アインズが少し黙る。
「ありがとうございます、アインズ様」
「……いや、違うぞザナック。別に俺は君を救ったつもりはない。俺のわがままで、傲慢で君をこの世に連れ戻した。だからお礼を言われる筋合いは──」
「……そのつもりがなかったのと、俺が嬉しいのは別じゃないですか。確かに、最初は恩を感じて、必死に返そうとしていました。けれど、俺は……嬉しいんです。貴方とこうしていれることが。貴方が俺の隣にいることに感謝しているんです」
「……」
アインズは照れている。
「ふふ」
ザナックは口元を押さえた。
「なんと尊い……」
ペストーニャも顔を覆う勢いで口元を押さえて感動していた。
「……あ、わん」
語尾を忘れていた。
ザナックが笑った。
各施設終了ごとにカルカへ
『カルカ女王。第一施設、終了した』
『……ありがとうございます、魔導王陛下』
それから、十日が経過した。
ペストーニャもアインズも、最後はギリギリまで魔力を使った。
ザナックが名簿の最後の人物を確認。
そして、蘇生。
ザナックが線を引く。総勢四百八十六人。蘇生終了。
カルカへ報告を終わらせると、アインズはペストーニャの肩に手を置いた。
「ペストーニャ、よく頑張ってくれた。もう休んでいてくれ」
「……かしこまりました。どうか、アインズ様もご自愛ください」
「ああ」
転移でペストーニャを向こうで休ませ、アインズは戻ってきた。
「俺達も少し移動するとしよう」
「はい」
手を繋ぎ、二人は普段滞在している王城の部屋の中に転移した。
視界が切り替わる。
そして、アインズの身体がぐらりと傾く。
「っ……」
「アインズ様?」
十日以上蘇生魔法や転移などで体を酷使し、さらに精神的にも王としてペストーニャより先に弱音を吐くべきではないと踏ん張っていた結果。
足元が崩れるような感覚に、アインズはザナックへ倒れそうになる。
このままでは潰してしまう、理性が何とか片手を突いた。
ドン。ザナックの顔の横に手をつく。
もう片方の腕も反射で反対側へ。
「…………」
「…………」
近い。もう少しで鼻先がつきそうなくらい。
普段のアインズなら何かしら動揺を見せたはずだが今のアインズはそれどころではない。
「すまん……少し、立っていられなくなった」
「少し?」
「……かなり」
「どうして無理をしたんですか」
ザナックの眉間に皺が寄る。
「アインズ様」
「……なんだ……」
「先程、ペストーニャ様には何とおっしゃいました?」
「休め、と」
「その口で?」
「……意地悪しないでくれ」
「毎日二施設。ペストーニャ様が限界なのに、貴方だけ平気な訳がないでしょう」
「俺はアンデッドだから疲労は──」
「魔力の話をしています。魔力枯渇にも弊害はあるでしょう。現にふらついて」
ぐうの音も出ない。
「……」
壁へ手をついているから、ザナックへ体重をかけないよう頑張ってはいた。
けれどザナックの言う通り限界だ。
額をザナックの肩へ落とす。
「……少しだけ、このままでいていいか」
「……最初からそうおっしゃってください」
ローブを掴んだ。
「俺を支えにしていいですよ」
「君は小さいから潰しそうだ」
「壁がありますから」
「ううぅん……」
頭を悩ませるアインズが可愛いと思うザナックであった。
それから少しして。
「もう回復した」
「嘘をつかないでください」
ローブを引っ張った。
「まだ駄目ですから」
「もう立てる」
「駄目です」
ぎゅっと引き止めるために抱き締めた。
「可愛いな」
「……」
「キスしていいか」
「駄目です。少し歩けるようになったらベッドに連れて行きますから」
「……はい」