※この作品はR-18です。

ザナック蘇生if/アイザナ   作:アイザナ大使

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ついに祝賀会。達成感。



最後の馬鹿騒ぎ

 

パーティー前、ザナックにアインズが用意したのは青緑の半ドレス。首元は襟があり上半身はシャツ風。

腰からフィッシュテールの状に滑らかな布が伸びる。

下には短パン。ガーター付き白サイハイソックス。白いローファー。

「……」

ザナックは鏡の前で少し体を捻る。

「似合っている」

「まだ何も言ってませんよ」

「似合っている」

「誰が用意させたんですか」

「俺だ」

「そうですか」

ザナックは裾をつまむ。

「何故、ドレスなんです」

「完全なドレスではない」

ザナックはがっくりと頭を揺らした。

「そういう意味じゃ」

結局着た。

 

会場へ入ると、煌びやかな装飾とシャンデリアの飾られた豪華な空間が出迎えてくれる。

カルカは修繕中の冠は脱ぎ──いつもの白いドレス姿よりほんの僅か華やかさが増したピンク色のドレスを纏っていた。

変わらずレメディオス、ケラルトは鎧にサーコートの姿。

カスポンド、グスターボ、ネイア、パベルがいる。それに聖騎士達。蘇生された人々やその家族達も。このパーティーは受付さえ通れば途中退場も入場もできる。

カルカが咳払いすると少しざわついていた会場はピタリと静かになる。

「今日、ここに集まった私達は、一度、多くのものを失いました」

前に出る。ドレスの裾が揺れる。

「街を。家を。大切な人を」

一拍置く。

「けれど──今日、この場所にいる私達は一人も欠けていません」

蘇生者達を見る。

「それは決して当然のことではありません。……次は、ないかもしれません」

アインズとザナックを見た。

「私達だけで成し遂げたことでもありません。だからどうか、忘れないでください」

自然に胸に手を当てたカルカ。

「助けられたことを。助け合ったことを。そして──今日生きてここに立っていることを」

まるで女神のように、美しい顔で微笑んだ。

そして、果実水の入った杯を上げる。

 

「ローブル聖王国の未来に」

 

「──未来に!」

全員がそれに続いた。拍手。歓声。そして、アインズとザナックも、目を閉じて笑っていた。

 

それから、ゆったりとした静かな音楽が流れる。

だが、演奏をぶち破るがごとくレメディオスが大声を上げる。

「よーっし!! お前らぁ!!」

「……レメディオス?」

カルカが困惑する。

レメディオスは満面の笑みで樽ジョッキを大きく掲げた。

「飲め飲めーー!! 今日は好きなだけ飲め!!」

「おおおおおお!!!」

聖騎士団の男達が乾杯する。浴びるように飲み始める。

聖王国で一番武勲を挙げたのは確かにレメディオスだ。各都市をその足で駆け回って民を救ったのも。強大な亜人と対峙して民を守り、見事討ち倒したのも。

だから、何となく止めづらい。

「もう……」

カルカは、はぁとため息。

でも、眼差しは優しく、頬は緩みきっていた。

 

祝宴、一時間後。

まだこの時は比較的平和だった。

カルカは貴族と会話し、ケラルトは静かに酒を嗜む。

アインズとザナックは談笑。聖王国やネイアについて話している。

レメディオスは杯数がおかしい。まるで全てを吸い込んでいくかのようなペース。もちろん食事量もおかしい。今までの疲労のせいと言われればそれまでだが。

グスターボは横で顔を顰めている。

 

祝宴、数時間後。

崩壊が訪れる。

「──だ、団長……私は訳あって酒を控えておりまして」

レメディオスに捕まっているグスターボが顔を逸らす。

「なにぃ?」

酔ったレメディオス。

「私の酒が飲めないのかぁ?」

「そう意味では──」

ぐわしっ、と肩を組まれる。

「飲め!」

「団長……私は明朝も仕事が……!」

「明日の仕事は明日の私達がやる!」

ぐらぐらと視線が揺れたレメディオスがグスターボを揺さぶる。

「何をおっしゃってるんです!? 明日の私も私達です!」

抵抗虚しく飲まされる。

 

「止めなくて良いのでしょうか」

傍観していたケラルトが手を止める。

「今日は……いいんじゃないかしら」

カルカ。

「グスターボ殿はよくなさそうですが」

 

アインズとザナックは完全に端っこで会話していた。

「ん、このチーズパイ美味しいです」

口元を押さえ、ザナックは目を丸くする。

「そうか、ナザリックでも同じものを作らせるか」

「ありがとうございます! バイキング形式って初めてです。楽しいですね!」

「……ああ。すごく楽しい」

ザナックの頭を撫でた。

「……?」

ステーキを頬張ったザナックはアインズを見上げる。

 

「ザナックさん……アインズ様……っ!」

小さな声。

そしてまた違う端ではネイアが感涙してパスタを食べていた。

「……どこを見てるんだ?」

果実酒を飲むパベル。

 

そして──

「カスポンド様ぁ!」

突然の大声で呼ばれたカスポンドはフォークを置いて答えた。

「な、何だい、グスターボ」

相手はグスターボだ。普段抑圧されている苦労人なので反動がすごいのか酔いやすいのかべろんべろんだった。

「踊りましょう!」

「わ、私とか!? 何故急に!?」

手を掴む。

音楽に合わせてるようでズレたダンスを踊り始める。

「グスターボ、待ってくれ! 私は踊れないんだ!」

やがてクルクルと回るだけのダンスになる。

「ちょっ、待っ! 目が回って……!」

「ふ、副団長を止めろーー!!」

酔いが軽い正気の聖騎士達が焦って全力疾走で追いかける。

 

アインズとザナックはそれを目撃。

「……陛下」

「何だ」

「カスポンド殿下とグスターボ副団長が踊っていますよ」

「何故だ」

 

元凶、レメディオスはいつの間にか机の上で大の字。

仰向けで、樽ジョッキを片手にして眠っている。

「皆さん、楽しそうですね」

ザナックが呟く。

 

そして、ザナックの元へカルカがやってくる。

「ザナック様もどうですか? 聖王国の果実酒は絶品ですよ」

アインズがすぐ答える。

「いや、彼は──」

「少しくらいなら大丈夫ですよ」

「……本当に少しだけだぞ」

「分かってます」

一杯の半分だけ。

ザナックはそれだけ飲んだ。

「飲みやすくて甘いですね……美味しい」

横に居たケラルトとカルカが嬉しそうに頷く。

「大丈夫か?」

アインズが確認すると、ザナックが眉を下げた。

「はい」

数分後。

ザナックの耳が赤い。

さらに数分。

頬も赤い。

「ザナック?」

アインズが顔を覗き込む。

「はいぃ……」

「……酔ったな?」

「酔ってまひぇん」

「酔っている」

「俺はふつうです」

エメラルドの目がとろんとしていた。

ザナックがアインズのローブを掴む。

「む? どうした、ザナック」

「アインズ様」

「なんだ」

「俺のこと好きですか」

ピシリ、とケラルトとカルカが固まった。

「……ザナック、その、何を」

「すきですか」

真っ直ぐな目。

「……好き、だ」

口を手で覆って、アインズは顔を逸らした。

「どのくらい?」

間髪入れず、ザナックは身を乗り出す。

「え、ええと……だな、このくらい」

アインズは恥を忍んで、両腕をめいっぱい大きく広げた。

ケラルトが吹き出していた。

「具体的に」

ザナックの追撃。

「えっと…………魔導国の領土より」

「ふふふ、ふふふふふふ」

満足気に笑い出すザナック。

そして、左手の薬指を見せる。

金の輪に赤い宝石。

「これ」

「ん?」

「俺のです」

「私が渡したから知っている」

ザナックは今度はアインズを指す。

「アインズ様も俺のです」

若干ニヒルなような純粋そうな笑顔。

アインズは幸せと羞恥とに塗れて感情が高ぶる。

すぐに抑圧された。

「そうだな」

冷静に答えた。

「俺のこと好きですよね」

「ああ」

アインズはもうほぼ限界だった。

「なら、キスしてください」

頭を抱える。

ケラルトは笑いを堪えるのが限界といった様子で、カルカは顔を真っ赤に染めて小刻みに震えていた。

「……はやく」

「いや、ザナック……」

「どうしてですか。俺のこときらいになってしまったんですか……?」

泣きそうな声。

アインズは思わずザナックの肩を掴んだ。

「嫌う訳ないだろう! 俺は君を愛し──」

アインズは止まる。ギギギ、と首を動かし、カルカとケラルトの方を見る。

ケラルトはニコニコ。カルカは固まっている。

「いや、これは、違っ」

「アインズ様……俺のほうを見てください……?」

「は、はい」

アインズは顔を戻す。

「キスしてください……きす! きす!」

背伸びをするザナックの腰に手を回したアインズ。

「は、や、く」

隠していたものとか、色々とどうでもよくなったアインズの中で何かが切れた。

「酔いが覚めても後悔するなよ……」

低く囁いた。

「えっ、えっ」とカルカの焦る声。

アインズはザナックを少し持ち上げ、口付けた。

「きゃ、きゃああっ」とカルカが短く叫ぶがケラルトの片手によって口を塞がれる。

二人の口付けは深い。

舌を絡め、息継ぎの暇を与えない。

「ん……ッ、ふ、……ぅ、」

一旦離れる。

離れた双方の舌から白い糸が引く。ぷつりと切れた途端、かぶりつくように再びキスをした。

「う、う……ッ、ん……は、ぁ……ふぁ…あっ…」

ザナックが足を動かすとフィッシュテールが揺れる。

ザナックの力がやがて抜け、アインズは彼を横抱きした。

「……すまない。彼は体調が優れないため、バルコニーで休んで来ても?」

カルカに話しかけたアインズ。

「……」

カルカは完全に石像になっていた。

「カルカ様」

ケラルトに横腹をつつかれ、カルカはハッとする。

「ど、どど、どうぞ! 申し訳ありません、その、お酒に弱いとは知らなくて……!」

ザナックを抱き直したアインズは背を向けていたが、振り返る。

「いや、いい。ただ、一ついいか。もう分かっていると思うが──彼と私は恋人だ。婚約している」

カルカは目を見開く。

「は、はひ」

ケラルトはなんでもなかったように果実酒を再び口にしていた。

 

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