聖王国旅行編、終了です!
前々からXで私の呟きやイラストや小説にいいねをくださった方、コメントをくださった方、ありがとうございました!m(_ _)m
聖王国のみんなお疲れ様でした!
ナザリック地下大墳墓。
ザナックの私室。
祝賀会も終わり、帰ってきたザナックを部屋まで送るアインズ。
「本当に大丈夫か?」
「はい、少しふらつきますが、酔いも覚めてきましたし、寝るだけですから」
「なら……おやすみ」
「おやすみなさい、アインズ様」
扉が閉まる寸前まで二人は手を振っていた。
静かな部屋で一人になったザナックは息を吐く。
「……ふう」
白い外交用の手袋を外す。
紺色のローブを脱ぐ。
クローゼットから着替えを取り出す。
パーティー用の衣装も順に脱ぎ、ベッドに腰掛けた。
白いネグリジェ頭から被る。
「んっ、と」
すとんと落とす。立ち上がってシワを伸ばしながら足首まで裾が落ちるのを見届け、またベッドに座った。
「疲れた」
疲れていない。
正確には、疲労を感じることができない。
首から下げているマジックアイテム。
金色に光るネックレス。
聖王国にいる間、今までずっとつけていた。
装着中、疲労感を感じなくするアイテム。
もちろん、疲労そのものが消える訳ではない。
ネグリジェの中に手を入れる。
チェーンを引き出す。
「……」
この二ヶ月半ぶんの、疲労が溜まっている。
戦争、負傷。救助、復興作業。
「……外したくないな」
でも、これはもう必要では無い。そろそろ外して寝た方がいい。
深呼吸。
「……よし」
首から外した。
一秒。
「…………あ」
視界が真っ暗になる。
ドサッ。
──────
────柔らかい。
最初に感じたのはそれだった。
頭の左右に違う感覚。
「……ん……」
瞼を開く。
黒髪をまとめた眼鏡の美女と赤髪を編んだ褐色の美女が顔を覗き込んでいた。
「…………?」
ザナックはまだ寝ぼけていた。しばらく見つめ合う。
そして両手に違和感。
右手。
明るい金髪を縦巻きしたハイライトの無い目の美女がこちらを見る。晒された谷間が眩しい。
左手。
紫の妙につやめいた髪を二つの団子にまとめた仮面のように整った顔の美少女が身を乗り出す。
両手を握られている。
「ザナック様、起きた」
無表情で赤金髪の迷彩服の美少女がザナックの頬に触れた。
「……」
プレアデス達だ。
膝枕しているのはユリ、ルプスレギナ。両手を握るのはソリュシャン、エントマ。頬を触ったのはシズ。
理解したザナックは顔を真っ赤に染める。
カチャリと扉が開く。
果実水とポーションを乗せた盆を持った黒髪ポニーテールの美女が入ってくる。
目が合う。
「……猫!」
眉根を寄せて叫んだのはナーベラルだった。
盆を置き、駆け寄る。
「大丈夫ですよ」
安心させるように笑ったザナックは起き上がろうとする。
「駄目です」
ユリに肩を押される。
「寝ててくださぁい。倒れた人に発言権はないっすよぉ」
「ええ……?」
ザナックは苦笑い。
「猫は横になってなさい」
心配そうに顔を顰めたナーベラルが言う。
「目が覚めてよかったです」
ソリュシャンが手を握ったまま。
エントマはぽんぽんとザナックに毛布をかけて優しく腹のあたりを叩く。
「でも、寝るですぅ」
ユリがザナックの前髪を撫でる。
「随分無理をされたようですね」
「そんなことは……」
六人がじっとこちらを見る。
「……少しだけは」
「絶対嘘っすねぇ」
ルプスレギナはけらけら笑う。
シズもむくれる。
「大嘘」
ナーベラルは腕を組む。
「愚かな猫です」
上体を起こし、ザナックはユリとルプスレギナの胸を枕のようにして──させられていた。
ナーベラルが持って来た果実水とポーション。
「少し飲みましょう」
ユリが言う。
「じ、自分で飲みます」
茹だったように赤くなるザナック。
少し動くとふらつく。
「おっと」
ユリが即座に支える。
「すみません……」
「ほらぁ」
ルプスレギナが頬をつつく。
──結局飲ませてもらうことに。
「ありがとうございます」
ポーションを飲む。
「うっ……苦っ」
顔を顰めるザナックにくすりと笑う姉妹達。
コップを唇に当てられる。
ゆっくり口に果実水が入ってくる。
ザナックは今すぐ逃げ出したかった。けれど心地よいのも果実水が美味しいのも事実だった。
六人に囲まれ柔らかな身体に包まれ、喉も潤したザナックは眠気に襲われていた。
頭を撫でられ、手を握られている。
昔だったなら、恐怖しかなかった。
でも今は、暖かい。
「もう……大丈夫です、から」
ユリが目を細めて答える。
「はい」
「だから……皆様も、お仕事……」
「はい」
「俺の……ことは、気に……せず……」
かくり。頭が落ちる。
後頭部が胸に沈む。
とろりとしていた目が閉じた。
「寝たっすねえ」
小声。
「ええ」
ユリは頭を撫で続けている。
「かわいい」
シズが言う。
「こうして眠っていると、随分幼く見えますわ」
ソリュシャン。
「弟みたいですぅ」
エントマが少し近付く。
「あ、それっす!」
「弟、ですか」
ザナックの髪を撫でながら。
「……悪くありませんね」
「先に私が弟にした」
シズが頬を膨らませる。
「みんなの弟ということで」
ソリュシャンが笑う。
「む……」
シズが引く。
最初に庭園で六人に囲まれたザナックは恐怖していた。
殺されるのではないか。何をされるのか分からない。
六人全員が怖かった。
同じ六人に囲まれ、ザナックは無防備に眠り、幼子のような寝顔を見せている。
六人の姉達に囲まれたまま、ザナックは帰ってきた家で、深く眠りに落ちた。
ちなみに、七話はまだ続きます。
ジル陛下とカルカ様がお茶する話を書きたい。