※この作品はR-18です。

ザナック蘇生if/アイザナ   作:アイザナ大使

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お花とザナックは親和性高め




プレアデスの洗礼

 

 

 

ナザリック地下大墳墓。

その荘厳で圧倒的な建造物の中にありながら、奇跡のように存在する庭園。石造りの回廊を抜け、陽光を模した魔法の光が降り注ぐその場所は、まるで別世界だった。緑が香り、花が揺れ、小さな水のせせらぎが優しく響く。王城にいた頃、こんな静謐な時間を味わえる余裕などなかった。

「……なんだか、夢みたいだな」

アインズ様から直々に許可を得て、水やりという極めて重要な任務(?)を任された俺は、ぎこちなくじょうろを抱え、花々の間を歩く。

「お水の量は少なめでいい、って言ってたよな……あと、踏んじゃダメ、絶対……」

自然と慎重になってしまう。ナザリックのものを壊したら、罵倒で済む話じゃない。絶対転ばないようにしなければ。最悪、床に転がるのは俺の頭かもしれない。そんな昼下がりだった。

「いたいた〜、ザナックく〜ん!」

突如、背後から元気な声が響いた。足音も軽やかに近づいてくる。

(あっ……)

振り返る間もなく、その気配は一気に数を増していく。気づけば、背中を取られ、左右を取られ、前方にも人影が──

───か……囲まれた。

直感が告げる。この状況は危険だ、と。

「今朝のがっちがちに緊張した顔、見たっすよ〜! 可愛い子じゃないっすか〜!」

ルプスレギナ様がにっこにこで飛びつくように俺に近づいてくる。あの明るい笑顔には、何か裏があるとしか思えない。

「うふふ……凄く美味しそ…じゃなくて、誠実そうな瞳ですね」

ソリュシャン様は意味深な笑みを浮かべながら、冷たい目でこちらを見下ろしている。

(美味しそうって言いかけたよな!? そこまで言ったなら誤魔化しきれないぞ!?)

言い直された言葉の裏に、背筋が凍るような恐怖が走る。口元だけは優雅に笑っているが、あの人が本気を出せば、俺など一瞬で物理的に溶かされる。

「ずっと我慢してた…ふにふに…」

シズ様はわきわきと手を動かしながら、意味不明な言葉を呟いて近づいてくる。その無表情さが、余計に怖い。一方で、エントマ様は沈黙のまま、じっと俺を見つめていた。仮面の奥からは感情が読み取れないが、全身から何かこう……"圧"が伝わってくる。

「ま、待っ──うわっ、ちょっ……!」

言葉が終わるよりも早く、俺の頬に冷たい感触が襲ってくる。シズ様の手が、慣れた動きで俺の頬をぷにぷにと押し込んできた。

「やわらかい…ぷに……」

エントマ様もおずおずと、けれど明確な意志を持って手を伸ばしてくる。

「……ぷにぃっ」

(く、くすぐったい……! それに恥ずかしい……!)

「うぐっ……ひゃめへくらはい…シズさま」

声が変になってる。というか、もう喋れてない。

だが、それすら終わりの始まりに過ぎなかった。

ついにルプスレギナ様の手が、お腹に伸びてきた。

「お腹も気になるっす〜」

「まっ…ふはっ…! そこは…!」

思わず声を上げてしまう。柔らかな掌が俺の腹を軽く押し、揉むように動かす。うまく力が入らず、へなへなと腰が砕けそうになる。

「ふにふにしてる……人間ってすごい」

ナーベラル様がポツリとつぶやいて俺の頬を引っ張っている。痛い。

冷静だったはずのユリ様までもが、興味深げに近づいてきた。彼女の手が頬にそっと触れる。

「触り心地……悪くないです」

──完全に囲まれている。

左右から、前後から、好き放題にされている。

美しい女性たちに囲まれ、にこにこされながら、頬もお腹もぷにぷにされるという状況に、俺の心臓はとうに限界だ。

(これは……なんの罰だ!? いや、試練なのか!? とにかく、アインズ様に任せられた仕事を……!)

「や、やめてくださいっ! 俺は水やりをっ……!」

必死に叫ぶも、聞いてもらえる気配はない。

「へぇ〜、怒った顔も可愛い〜っすね〜」

ルプスレギナ様はますます楽しげに、脇腹へと手を滑らせてくる。

「いや、怒っては…ちょっ…ひ、ううっ」

敏感な場所をつつかれ、思わず声が裏返る。恥ずかしい、けれど、止めてくれとは言い切れない自分が情けない。

「これはいじり甲斐がありますね……ふふふ」

ソリュシャン様が愉快そうに微笑む。どこかで、戦場の方がまだ気楽だったのではと思ってしまう自分がいる。

「ザナック…やわらかい…すごくいい」

シズ様の無邪気な一言に、俺はそっと目を閉じた。

(こ、これが……ナザリックの真の恐怖……!)

頬もお腹も、まるで粘土のように捏ねられながら、俺は震える手でじょうろをぎゅっと握りしめた。

──この戦いに、退路などない。

 

約十分後──俺は、ようやく解放された。

衣服はそこまで乱れていない。けれど、精神的な疲労は計り知れない。体のどこかが痛いわけでもないのに、魂だけがすり減ったような気がした。

「……ぜぇ、ぜぇ……」

へたり込みそうになる膝をなんとか支えながら、俺はぎこちない動きでじょうろを所定の位置に戻す。先ほどまで優雅に咲き誇っていた花々が、今は妙に静かに見える。まるで、「お疲れさま」とでも言いたげな視線を送ってくるようだった。

(今のも、仕事……なのか?)

苦笑ともため息ともつかない息を吐いていると、不意に背後から声がかけられた。

「───ザナック」

その瞬間、全身がビクリと跳ね上がる。

「うっ、わあぁぁぁ! もう勘弁してください…!」

反射的に叫んで、身をすくめる。また来たのかと、身体が条件反射で警戒するようになっていた。もうぷにられるのはごめんだ。俺の頬と腹筋は限界を迎えている。だが、静かな足音。威圧感はないのに、どこか空気が変わったような気配。おそるおそる振り返ると、そこには──漆黒のローブをまとった骸骨の王が立っていた。

「アインズ様……でしたか」

安堵の息が漏れる。思わず腰が抜けそうになったが、かろうじて堪えた。

「てっきり、またあの方々かと……」

途中まで口にして、俺は慌てて言葉を呑み込む。失礼があってはならない。気を取り直して背筋を伸ばし、礼を取ろうとする。

「……だいぶ、トラウマになっているようだな」

アインズ様はそう言って、どこか申し訳なさそうに──それでも、ほんの少しだけ楽しげに──眼窩の奥の光を細めた。

「彼女たちに、悪気は……その、少しくらいしか無かったはずだ」

(少しくらいは、あったんだな……)

俺はその微妙な表現に内心突っ込みながらも、見られていたことにようやく気づいて背筋を凍らせる。

「み、見ていたんですか!? そんな……た、助けてくださっても、良かったんですよ……っ?」

訴えるように目を向けた俺に、アインズ様は少しだけ目を逸らして──まさか、照れているようにさえ見えた。

「あー、その……君が、あの猛攻に頑張って耐えている顔が、可愛くてな……見てたかったというか」

(なっ……!?)

目が点になるとはこのことかもしれない。俺は固まったまま、何も言えずにアインズ様を見つめた。

「俺としては……笑えないです、その冗談!」

ようやく振り絞った抗議の声は、情けないほど震えていた。

「………冗談では無いんだがな」

アインズ様の静かな声に、心臓がまた一段と跳ね上がる。

「……はい!?」

意味を理解しきれないまま、俺は再び赤くなった頬を片手で押さえた。

 

 

 

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