※この作品はR-18です。

ザナック蘇生if/アイザナ   作:アイザナ大使

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ユリ視点。
ユリ姉可愛いですよね
小ネタ入れてるけど気付いてくれる人いるかなぁ。



プレアデスと遊ぼう!【ユリ・アルファ 果実水と盤上遊戯編】

 

「ザナックと親睦を深めて欲しい。だが、無理にとは言わない。ゆっくり自分達のペースで彼と付き合っていって欲しい」

プレアデスが集められ、アインズ様から直々にその命令は下された。

命令。確かに命令だ。けれど僕は半分はアインズ様の願いだと思っている。

『触り心地……悪くないです』

頬に触れたあの感触。すべすべで柔らかかった。

今思えば、不敬な気もする接触だ。

一度彼に会って、謝ろう。

そう決めた僕は菓子と飲み物──それと軽い遊戯のセットを用意した。

「改めてこんにちは。ユリ・アルファです」

「こんにちは、ザナックです」

呼び出された彼はやはり緊張していて、中庭で待っていた僕は思わずくすりと笑ってしまった。

それでも彼はびくりと肩を揺らす。

「申し訳ありません、つい。私は貴方を取って食ったりしませんよ。ご安心ください」

僕は跪いた。

「えっ……そ、そんな! 俺などにそのような体勢をとる必要はありません!」

「いいえ、ザナック様。貴方は特別なのです。アインズ様が大切にされているご友人だからでもあります。ですが、私にとっても貴方はとても興味深く、守りたい特別な存在なのです」

「え、あ、あの……」

眉を下げ、ぽっ、と頬を染める彼も可愛らしくて微笑んだ。

「さぁ、お席にどうぞ」

白いテーブルクロスの裾がそよ風に揺れた。

テーブルの上にはケーキスタンドの上に並べられたマカロンやカップケーキ、クッキー。そして、ナザリック特製の紅茶。

ちょこんと席に着いたザナック様は緊張で肩を強ばらせていた。

「どうぞ力を抜いて。お茶でもどうぞ」

色濃い赤が昼の光に照らされて輝く。

ザナック様は震える手でカップを取った。

(砂糖等は入れないのかな)

口を付ける。

「お、美味しいです」

こくりと一口飲んだザナック様。

だが。どこかおかしい。

体が小刻みに震え、呼吸が浅い。

まさか毒? でも、試飲までした。僕も事前に飲んだ。

「どうされたのですか? "何か入っていましたか"!?」

そう言うと、びくりと大きく肩が跳ねた。

「うっ……」

立ち上がり、背中をさする。

「す、すみません……こわ、くて」

怖い?

もしかして、僕が威圧的に見えすぎたのだろうか。

「苦、くて……」

水滴が紅茶に落ちた。

その丸い頬を涙が伝う。

「昔から、苦味が苦手で……毒が、恐ろしくて……」

「っ……申し訳ございません! 僕が、知らなかったばかりに」

「いえ……こ、こんな、ことに、なったのは……初めて、で」

がたがたと震える口も肩も抑えて、ザナック様は安心させようと僕の腕を撫でた。

「ユリ様のせいではありません、へへ」

さらに柔らかく笑ってみせた。

その笑顔が、かえって胸に刺さった。

こんなにも震えているのに。

涙まで流しているのに。

それでも彼は、僕を安心させようとしている。

「……少々、お待ちください」

「え?」

僕はすぐに紅茶のカップを取り上げた。

「こちらはもう飲まなくて結構です」

「で、でも……せっかく用意していただいたのに」

「いいえ」

少しだけ強い口調になってしまった。

ザナック様がまた肩を揺らす。

「あ……申し訳ありません。怒っているわけではありません」

僕は声を落とした。

「無理をしてまで飲んでいただきたいものではありませんから」

「……」

「他のお飲み物をご用意いたします。甘いものの方がお好きですか?」

ザナック様は少し迷ったあと、小さく頷いた。

「……果実水、が」

「果実水ですね。かしこまりました」

すぐに控えていたメイドへ声をかける。

しばらくして運ばれてきたのは、透明なグラスに注がれた淡い橙色の果実水だった。

薄く切られた果実が浮かび、冷たい雫が表面を伝っている。

ザナック様はそれを見て。

ほんの少しだけ、表情を緩めた。

「あ……」

その小さな変化を、僕は見逃さなかった。

「こちらなら大丈夫そうですか?」

「はい」

両手でグラスを持つ。

慎重に一口。

こくり。

もう一口。

先ほどまでの震えが、少しずつ収まっていく。

「……美味しいです」

今度は、本当にそう思っている顔だった。

よかった。

思わず胸を撫で下ろした。

「それなら安心いたしました」

「すみません。本当に……」

「謝らないでください」

「でも」

「知らなかった僕にも責任があります」

「いや、知らないのは当然で……」

「では、お互いに謝るのはやめましょう」

「え?」

「僕は知らなかった。ザナック様も、こうなるとは思っていなかった。それで終わりです」

ザナック様はぽかんと僕を見た。

やがて。

「……はい」

小さく笑った。

先ほどより自然な笑顔だった。

「その方が、助かります」

よかった。

本当に。

僕は少し迷ってから、隣の椅子へ腰を下ろした。

「……もし差し支えなければ」

「はい」

「紅茶が苦手なのは、苦味だけが理由ではないのですね」

ザナック様の指が止まった。

しまった、踏み込みすぎただろうか。

「話したくなければ、もちろん」

「……昔」

彼は、ゆっくりと口を開いた。

「兄に、紅茶へ変なものを入れられたことがあって」

「……」

「毒ではなかったんです。ただの悪戯でした。けれど、王族という立場上……毒殺の話なんて嫌でも耳に入りますから」

果実水の表面が、小さく揺れた。

「それから、少し」

なるほど。

苦味そのものではない。

苦味と一緒に、恐怖まで思い出してしまうのだ。

「教えてくださってありがとうございます」

「こんな話、面白くもないでしょう」

「いいえ」

即答した。

ザナック様が目を丸くする。

「ザナック様のことを知れるのなら、僕にとっては大切なことです」

「……そういうことを、真顔で言うのですね」

「変でしたか?」

「いえ……その」

彼は少し俯いた。

耳まで赤くなっている。

「慣れていないだけです」

何に。

そう聞こうとして。やめた。

今はまだ、聞かなくていい。

代わりに、僕はテーブルの端に置いていた箱を手元へ寄せた。

「では、気分転換にこちらはいかがでしょう」

「これは?」

蓋を開く。

中には小さな盤と、二色に分けられた駒。

「チェスです。ルールはご存じですか?」

ザナック様は盤を覗き込んだ。

「ああ。王国にもありました」

「それはよかったです」

「……ユリ様、お強いですか?」

「それなりには」

「それなり」

「はい」

「……その言い方をする人は大体強いんですよね」

思わず笑ってしまった。

「では、試してみますか?」

「お願いします」

向かい合い、駒を並べる。

最初の数手。

ザナック様は慎重だった。

派手な手は打たない。

危険な位置へ無理に駒を進めることもしない。

けれど。

「……なるほど」

「何ですか?」

「いえ。とても堅実な打ち方をなさるな、と」

「……褒められてます?」

「もちろんです」

ザナック様は疑わしそうに目を細めた。

「本当に?」

「本当です」

「なんだか、地味だと言われているような」

「派手であることと、強いことは別です」

その言葉に。

ザナック様が一瞬だけ、黙った。

「……そう、ですか」

何か引っかかるものがあったのだろうか。

けれど、その顔はどこか嬉しそうだった。

ゲームは思っていたより長引いた。

こちらが攻めれば、ザナック様は受ける。

こちらが隙を作れば、すぐにそこへ入り込む。

圧倒的ではない。

けれど。

しぶとい。

とにかく、しぶとい。

「……なかなか終わりませんね」

「負けず嫌いなんです」

「なるほど」

「というより、簡単に諦めると後から後悔するので」

その言葉に。

少しだけ。

僕は彼を見る目を変えた。

やがて。

「……参りました」

ザナック様が両手を上げた。

「負けました」

「良い勝負でした」

「途中から完全に遊ばれていた気がします」

「そんなことは」

「本当は?」

「どうでしょう」

思わず、二人で笑った。

先ほどまで震えていたことが嘘のように。

ザナック様も声を立てて笑っている。

その顔を見ていたら。

ふと。

三日前のことを思い出した。

庭園で。あの柔らかそうな頬に触れて。

それからお腹にも。

「……ザナック様」

「はい?」

「その」

今度は僕が言い淀んだ。

「先日は、大変失礼いたしました」

「先日?」

「……庭園で」

「庭園」

「お身体に触れてしまったことです」

「…………」

ザナック様の表情が固まる。

「ああ」

思い出したらしい。

「いや、そのことですか」

「はい」

「別に気にしてませんよ」

「しかし」

「痛くもなかったですし」

「ですが、許可もなく」

「ユリ様」

「はい」

「本当に、大丈夫です」

そう言って。

ザナック様は、ぽん、と自分のお腹を叩いた。

その瞬間。

僕の視線がほんの一瞬。

そこへ落ちた。

「……」

「……」

沈黙。

「今、見ました?」

「いいえ」

「見ましたよね」

「見ておりません」

「いや、絶対見た」

「……」

「ユリ様」

「……申し訳ございません」

ザナック様は口元を引きつらせた。

「そんなに珍しいですか、俺の腹」

「珍しいというわけでは」

「では何です?」

「……」

言っていいのだろうか。

いや。

もう誤魔化す方が失礼な気がする。

「……触り心地が」

「はい」

「非常に」

「はい」

「……よろしかったので」

「…………」

ザナック様が無言になった。

顔が赤い。

「それ、褒めてます?」

「最大限に」

「最大限!?」

「はい」

「もっと他にあるでしょう!」

「頬も大変柔らかかったです」

「そういう話じゃない!」

また笑ってしまった。

ザナック様も、困ったような顔をしながら。

最後には笑った。

風が吹く。

白いテーブルクロスが揺れた。

果実水の中の氷が、からりとグラスに当たる。

彼は、チェスにおいて弱かった訳ではない。ただたまたま僕が今日勝っただけだ。あの動揺も大きかったかもしれない。だから、次は彼が勝つだろう。そう、次は。

だから。

「……ザナック様」

「はい」

「また、こうしてお相手していただけますか?」

彼は少しだけ驚いた顔をした。

「俺でよければ」

「ありがとうございます」

「こちらこそ」

ザナック様が立ち上がる。

数歩進んで。

ふと振り返った。

「……でも、次は腹を触る時は一言言ってくださいね」

「善処いたします」

「善処!?」

僕は笑った。

 

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