※この作品はR-18です。

ザナック蘇生if/アイザナ   作:アイザナ大使

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ルプスレギナ視点です。
こういう頭良い女の子に弄ばれるザナック好きなんですよねぇ



プレアデスと遊ぼう!【ルプスレギナ・ベータ 狼と嘘つき遊び編】

 

「ザナック様と親睦を深める、っすかぁ」

アインズ様からのお言葉を思い返しながら、私は廊下を歩いていた。

ユリ姉はもう一度、ザナック様と二人で過ごしたらしい。お菓子を食べて、チェスをして、それなりに楽しく過ごしたと聞いている。何故か途中で紅茶が果実水に変わったらしいが、それについて尋ねるとユリ姉は少しだけ困った顔をして、「本人の許可なく話すことではありません」と答えた。

まあ、それはいい。

問題は、その後だ。

『……それと、触るのでしたら、次からは許可を取るようにと言われました』

あの時のユリ姉の真顔を思い出して、私は一人でくすくす笑った。

庭園で初めて会った時にも思ったけれど、ザナック様は面白い。アインズ様がわざわざ蘇生させた人間というから、最初はもっと大仰な人物を想像していた。英雄だとか、天才だとか、あるいは何か珍しい力を持っている人間だとか。

けれど実際に出てきたのは、小柄で、丸っこくて、妙に礼儀正しくて、ちょっと触るとすぐ顔を赤くする元王子様だった。

特に強そうにも見えない。

怖そうでもない。

むしろ。

弄ったら、かなり面白そう。

「ルプスレギナ様、お待たせしました」

声に振り返ると、廊下の向こうからザナック様が歩いてきた。

今日は魔導国で用意された服を着ている。生地そのものは上等なもの。深い黒色のベストに、きちんと整えられた透けるクラバット。その下から覗く首は少し太く、頬は相変わらず柔らかそうだった。そして、この時期には涼しそうな短パン。

私と目が合った瞬間、ザナック様はほんの僅かに身構えた。

あ。警戒してる。

「こんにちはっす、ザナック様! ルプスレギナ・ベータっす!」

私は大きく手を振った。

「こんにちは。本日はよろしくお願いします」

「そんなに固くならなくてもいいっすよぉ。私、今日は何もしないっすから」

「……今日は?」

「細かいこと気にすると禿げるっすよ」

「まだ十八なんですが」

即答された。

思わず吹き出す。

「いやぁ、いいっすねぇ。やっぱりザナック様、反応が早いっす」

「褒められている気が全くしません」

「褒めてるっすよー?」

「本当ですか?」

「半分くらい」

「やっぱり」

ザナック様は小さく息を吐いたが、庭園で初めて会った時ほど怯えてはいなかった。少なくとも、私が笑っただけで肩を跳ねさせるほどではない。

それだけでも、少し面白い。

私はザナック様を用意していた部屋へ案内した。

と言っても、何か大層なものを準備したわけではない。小さな丸テーブルと椅子が二つ。軽い菓子と、ユリ姉から「紅茶は避けてください」とだけ言われていたので、果実水も用意してある。

ザナック様はそれを見ると、ほんの少しだけ安心したように目元を緩めた。

なるほど。

ユリ姉が言わなかったことについて、何となく察する。

けれど聞かない。

今は、それより面白そうなことがある。

「今日はゲームするっす!」

「ゲーム、ですか?」

「はいっす。お互いに自分のことを三つ言って、そのうち一つだけ嘘を混ぜるんすよ。相手がどれが嘘か当てる、それだけっす」

「なるほど」

ザナック様は席に座ると、少し考えるように顎へ手を当てた。

「嘘を見抜くゲームということですか」

「そーっす。ザナック様、こういうの苦手そうっすねぇ」

「何故そう思うんです?」

「顔に出るからっす」

「……そんなに出ていますか?」

ショックを受けた顔。かわいい。

「めちゃくちゃ出てるっす」

少なくとも私には。

ザナック様は少し不満そうに眉を寄せた。

「では、ルプスレギナ様からお願いします」

「いいっすよぉ」

私は指を一本立てた。

「一つ。私、甘い物が好きっす」

二本目。

「二つ。実は虫が苦手っす」

三本目。

「三つ。姉妹の中では一番真面目っす」

「三つ目です」

「早っ!」

間髪入れず返された。

思わず身を乗り出す。

「ちょ、なんでっすか!?」

「いや……」

ザナック様は申し訳なさそうに視線を逸らした。

「その、ルプスレギナ様が一番真面目というのは、どう考えても……」

「どう考えても?」

「……違うかな、と」

「ひどくないっすか!?」

「すみません!」

謝った。

本当に謝った。

その顔があまりにも真面目なので、私は堪えきれずに笑った。

「正解っす! いやぁ、でも即答されるとは思わなかったっすねぇ」

「分かりやすすぎますよ」

「あれぇ? じゃあ次はもうちょっと難しくするっす」

「次は俺ですよね?」

「そうだったっす」

ザナック様は少し考えたあと、指を一本立てた。

「一つ。俺は甘いものが好きです」

「知ってるっす」

「……もう知られてるんですか?」

「ユリ姉から聞いたっす」

「共有されてる……」

少し遠い目をしてから、二本目。

「二つ。俺は乗馬が得意です」

三本目。

「三つ。俺は、兄上と仲が良かったです」

声の調子は、ほとんど変わらなかった。

表情も。

けれど。

私は少しだけ目を細めた。

「三つ目っすね」

ザナック様の眉が上がる。

「……何故?」

「なんとなくっす」

本当は、なんとなくではない。

三つ目だけ、言葉を選ぶまでにほんの少し間があった。声も変わらない。顔も変わらない。けれど一瞬だけ、目がこちらではなく、どこか遠くを見た。

「正解です」

「やったっす!」

「しかし、俺もそんなに分かりやすかったですか?」

「ザナック様は顔より間に出るっすねぇ」

「……なるほど」

少し悔しそうだ。

面白い。

そこから何度か続けた。

私が「料理が得意」と言えば、ザナック様は少し迷ってから嘘だと見抜いた。ザナック様が「朝に強い」と言えば、私は即座に嘘だと当てた。

「何故分かったんです?」

「今朝も眠そうな顔で廊下歩いてたからっす」

「見られてたんですか!?」

「見てたっすよぉ」

「声をかけてくださいよ……」

「眠そうで可愛かったから、そのまま見てたっす」

「えぇ!」

段々、声が大きくなってきた。

最初は一言一言を選ぶように話していたのに、今では普通に私へ突っ込んでくる。敬語は崩れない。それでも、距離は明らかに近くなっていた。

私は果実水を一口飲みながら、次は何を言おうか考えた。

少し意地悪なものがいい。

反応を見たい。

「じゃあ次はぁ……私、人間が泣いてる顔を見るの、結構好きっす」

ザナック様の表情が止まった。

「それは……三つのうちの一つですか?」

「あ、今回は一個だけっす」

「ゲームのルール変わってません?」

「まあまあ。当ててみてくださいっす。本当か嘘か」

ザナック様は私をじっと見た。

さっきまでより少し長く。

「……嘘、でしょうか」

「ぶっぶー。本当っす」

「…………」

無言になった。

目が僅かに泳ぐ。

あは。

やっぱ怖いんだ。

「引いたっす?」

「少し」

素直だ。

「怖くなったっすか?」

「まあ、はい」

これも即答だった。

私は少し意外に思う。

普通なら取り繕うと思った。ザナック様の性格的にアインズ様の配下を前にして、怖いなどと言えば機嫌を損ねる可能性くらい考えるだろう。

けれどザナック様は、困ったように笑った。

「ルプスレギナ様なら、俺を殺そうと思えば一瞬でしょうし。怖くないと言えば嘘になります」

「へぇ」

「ただ」

ザナック様はグラスを置いた。

「アインズ様が皆さんを信頼されていることは分かっています。それに、今のところ俺へ酷いことをするつもりもないのでしょう?」

「どうしてそう思うんすか?」

「本当に俺を苦しめたいなら、わざわざ一緒に遊ぼうなんて誘わないと思っただけです」

私は少し黙った。

この人。意外と。

いや思ってたよりずっと。

「変な人っすねぇ」

「何故です?」

「怖いって言いながら、信用するんすね」

「怖いことと信用できることは、……別では?」

その答えに、今度は私が黙った。

なるほど。

怖い。

けれど、信用する。

嫌いではない。

面白い考え方だ。

人間というのは、もっと単純に私達を恐れるものだと思っていた。恐怖を隠して媚びるか、恐怖に負けて逃げるか、どちらか。

けれどこの人は怖いと言った上で、普通に座っている。

逃げようともしない。

「ザナック様」

「はい?」

「ちょっとこっち向いてくださいっす」

「何でです?」

「いいからいいから」

訝しみながらこちらを向いた頬へ、指を伸ばした。

むに。

「むぐっ!?」

柔らかい。

やっぱり。

「何するんですか!」

ザナック様はすぐに頬を押さえた。

「確認っす」

「何の!?」

「ユリ姉が言ってたんすよぉ。ザナック様、すごく触り心地がいいって」

「ユリ様ぁ!?」

すごく嫌そうな顔。

「頬も柔らかいっすねぇ」

「触らないでください!」

「お腹も触っていいっすか」

「え、ええっ」

「駄目っすか?」

目を潤ませて言った。

「ど、どうぞ」

ザナック様は顔を赤くした。

「なら、遠慮なく」

下側からベスト越しに揉んだ。

「うひゃっ……」

「へええ」

面白い声。

両手で揉んだ。へそをつんとつつく。

「あひゃんっ」

ザナック様は体を大きく揺らした。

「あははは!! かわいい声!」

「そんなに笑わなくてもいいでしょう!」

「もっかい触っていいっすか?」

「もう今日は閉店です!」

「一回だけ!」

「何でそこに拘るんです!?」

しばらくそんなやり取りをしているうちに、さっきまで少し残っていた重たい空気は完全に消えていた。

結局、お腹はもう触らせてもらえなかった。

残念。

ゲームはその後も続いた。

勝敗を数えてみれば、ほとんど互角だった。ザナック様は嘘そのものを見抜くというより、言葉の選び方や間、普段との違いを拾っているらしい。

政治の世界で生きてきたからだろうか。

強くはない。少なくとも戦いでは、私の足元にも及ばない。

けれど。

だからといって弱いわけでもない。

ユリ姉が少し気に入った理由も、何となく分かってきた。

「じゃ、最後っす!」

「まだやるんですか?」

「これで終わりっす。負けた方は罰ゲーム!」

「聞いてませんよ!?」

「今決めたっす!」

「横暴ですね!?」

「さあ、ザナック様からどうぞ!」

「……本当に自由ですね、貴方は」

呆れながらも、ザナック様は考え始めた。

少しして。

「一つ。俺は肉料理が好きです」

「はい」

「二つ。俺は王国にいた頃、友人が沢山いました」

「はい」

「三つ。俺は……ここへ来てから、少し楽しいと思っています」

少しだけ。

空気が変わった。

私はザナック様を見た。

彼は笑っていない。

でも、暗くもない。

「二つ目」

答えると、ザナック様は目を瞬いた。

「……正解です」

「友達、いなかったんすか?」

「いませんでした」

あっさりしている。

「一人も?」

「まあ、立場も立場でしたから」

その言葉に、ほんの少しだけ何かが引っかかった。

けれどザナック様はすぐ、いつものような困った笑顔に戻った。

「では、三つ目は本当ということになりますね」

「そうっすねぇ」

「……笑わないんですか?」

「なんでっす?」

「いや。俺がここを楽しいと言うのは、少し変かなと」

「別に変じゃないっすよ」

私は椅子の背にもたれた。

「楽しいなら、楽しいでいいじゃないっすか」

ザナック様は少しだけ目を見開いた。

それから。

「……そうですね」

小さく笑ったその顔を見たら。

なんとなく今度は弄らなくてもいい気がした。

だから。

「ちなみにザナック様、さっきの三つ目言う時だけちょっと笑ってたっすよ」

「え?」

「だからすぐ本当だって分かったっす」

「…………」

耳が赤くなった。

やっぱり弄る。

こっちの方が面白い。

結局、最後の勝負は私が勝った。

「ということで、罰ゲームっす!」

「……嫌な予感しかしません」

「大丈夫っすよぉ。簡単っす」

「何です?」

私は机越しに少し身を乗り出して。

頭を差し出した。

「撫でてくださいっす」

「…………はい?」

ザナック様が固まった。

「聞こえなかったっすか?」

「聞こえました。ただ、意味が分からなくて」

「頭、撫でるだけっす」

「俺が?」

「ザナック様が」

「ルプスレギナ様を?」

「私を」

「……何故?」

「罰ゲームだからっす」

「俺への罰になってます?」

「早く早く」

困り切った顔をしながら、ザナック様は恐る恐る手を伸ばした。

途中で一度止まる。

「本当にいいんですか?」

「いいっすよ」

指先が帽子と髪に触れた。

思っていたよりずっと慎重で、壊れ物にでも触るような手つきだった。

一度。

二度。

ゆっくりと頭を撫でられる。

「……」

あれ。

意外と。

「んー……」

「ど、どうです?」

「悪くないっすねぇ」

「そうですか……」

ザナック様は少し安心したらしい。

そのまま何度か撫でる。

優しい。

本当に。

なんというか。

妙に優しい。

「ザナック様」

「はい?」

「もうちょっと強くてもいいっすよ」

「こうですか?」

「そうそう」

「……何で俺はルプスレギナ様の頭を撫でてるんでしょう」

「細かいこと気にしちゃ駄目っす」

「やっぱり罰ゲーム……ではないですよね?」

手が離れる。

ちょっと残念。

ザナック様は立ち上がると、服の裾を整えた。

「今日はありがとうございました。思っていたより楽しかったです」

「思ってたより?」

「……正直、もっと酷い目に遭うと思っていました」

眉を下げて。

「ひどいっすねぇ!」

「人間が泣く顔が好きな人に言われたくありません!」

「あははは!」

本当に。

面白い。

庭園で見た時は、ただ柔らかくて小さい人間だと思っただけだった。

アインズ様が何故この人を特別扱いするのかも、よく分からなかった。

今だって、全部分かったわけではない。

でも。また遊びたい。

それくらい。

「ザナック様」

「はい?」

「また遊んでくださいっす」

ザナック様は少し驚いたあと。

穏やかに笑った。

「もちろん。俺でよければ」

またそれ。

俺でよければ。

どうしてこの人は、いちいち自分をそんなに低く言うのだろう。

まあ。

今はいいか。

「じゃあ次は、もうちょっと激しい遊びにするっす!」

「普通のでお願いします!」

「追いかけっことか!」

「絶対追いつけないでしょう!」

「狩る方は私っす!」

「だから嫌なんですよ!」

 

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