※この作品はR-18です。

ザナック蘇生if/アイザナ   作:アイザナ大使

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アインズ視点。
ザナックに沼る寸前
行っちまえ……




独占欲

 

 

朝食を終えた頃合いを見計らって、俺は執務室にザナックを呼んだ。理由はもちろん、昨夜ずっと考えていた「贈り物」を手渡すためだ。思春期の子供のように妙に落ち着かず夜を明かしてしまったことは、誰にも言えない。扉を開けて入ってきたザナックは、今日も礼儀正しく頭を下げた。

「お呼びとのことで、失礼します、アインズ様」

「ああ……よく来てくれたな、ザナック。実は、君に渡したいものがあってな」

俺は机の引き出しから、それを取り出した。

白地の柔らかな革に、裏地は紫、そして金糸で複雑な模様を刺繍した手袋。両の手の甲部分に、美しく輝くナザリックの紋章。

「これを、君に。……外へ出る時に、身に着けるといい」

ザナックは一瞬、目を丸くして──そして、おずおずとそれを両手で受け取った。

「……これは、俺に……? ですが、こんな高価そうな、それに……ナザリックの紋章まで……!」

「問題ない。これは、俺からの"信任"の証だ」

自分でも、少し驚くほど真っ直ぐな声が出た。

いや、これは信任などという表面的な意味だけではない。俺の中に渦巻く、もっと本能的な……もっと厄介な感情が、少しずつ形になってきている。

「そ、それでは……ありがたく、頂戴いたします。……身に余る光栄です、アインズ様」

そう言って頭を深々と下げるザナックの姿に、心の中でそっと呟いた。

(……その手で、これから誰かとまた握手するなら、せめて……俺が贈ったもので包まれていてほしい)

我ながら未熟だと思う。

けれど、その手袋をはめたザナックが外を歩けば──外交相手は確実に察するだろう。

"この男は、アインズ・ウール・ゴウンの特別だ"と。

そう思わせたくて贈ったわけでは……ない、と言い切れない自分が、確かにここにいた。

 

 

───────

 

外交の仕事を終え、ナザリックへの帰路に着く途中の時間。俺たちは小さな中庭のある館に一泊していた。風が穏やかで、空気も澄んでいる。絶好の休息日和──なのだが、俺はというと、少し離れた花壇の前に佇むザナックの姿を、石造りのベンチに座って本を読むフリをしてカモフラージュしつつじっと見つめていた。……なぜだ。彼の動きを目で追う癖が、ここ数日で染みついてしまっている。ザナックは大事そうに手袋の縁を撫でていた。俺が渡した、白地に裏は紫、金の刺繍を施した特注の品。ナザリックの紋章も入れた、世界にひとつだけのものだ。

(……うん。やはり似合っている。ザナックの短い指と、やや丸みを帯びた手に、よく馴染んで……)

考えてから、はっとする。何を"よく馴染んで"などと評価しているのだ俺は。

「……あの、アインズ様?」

声をかけられて、心臓が跳ねるような錯覚が起きた。気づけば、ザナックが俺の近くに来ていた。彼はクスリと笑ってからベンチに腰かけ、手袋を見せながら言う。

「これ、改めてよく見ると……アインズ様のお召し物の色に似ていますね。裏地に紫、それに金の刺繍。なんだか……お揃いみたいで、嬉しいです」

「お揃い……?」

「はい。俺としてはアインズ様を思い出せて、とても励みになるんです」

まっすぐな目。無邪気な笑顔。全く邪気がないからこそ、言葉がやけに刺さる。

「……そ、そうか。それは……偶然ではないが、別に深い意味はない」

自分でも何を言っているか分からない。ただ、ザナックはにこにこしたまま「それでも嬉しいです」と一言返してきた。やばい、と思った。この気持ちはなんだ。胸骨の奥が、妙にざわついている──

(……まずい。俺、どうにかなってきてる)

そしてまた、ザナックは手袋を撫でながら小さく呟いた。

「……あたたかい……」

ザナックがぽつりとつぶやいた言葉に、俺の中で何かが微かに鳴った。彼の手には、俺が贈った手袋。ナザリックの誰も身につけていない、世界に一つだけの意匠。俺の色を映したそれが、彼の指に馴染んで、嬉しそうに撫でられている。

(……そうか。嬉しいのか、俺は)

外交先で見せた、誰とでも打ち解ける笑顔。柔らかくて、思いやりがあって、相手の言葉にまっすぐ耳を傾ける姿勢──そういうもの全部が、評価されている。ザナックが誰かと握手するたびに、相手が笑顔になるたびに、俺は何故か胸のあたりがざわついて仕方なかった。けれど、こうして俺が贈ったものを抱きしめるように大事にしている姿を見ると、不思議とそのざわつきは静まる。

(……やっぱり、俺だけを見ていてほしいのか?)

そう思ってしまう自分が、滑稽だ。ナザリックの至高の存在として、もっと高みにあるべきだというのに──。

「アインズ様?」

ザナックがこちらを見上げる。いつもの、どこか困ったようなタレ目。けれど、口元には微笑が浮かんでいて。

「こんな贅沢な手袋、俺なんかがもらっていいのかなあって思ったんですが……やっぱり嬉しいですね。……次の外交も、これをつけて、精一杯やります!」

「……ああ。うむ。つけて行け。お前には……よく似合っている」

そう言うと、ザナックの目がわずかに見開かれた。頬がわずかに赤らんで見えるのは、気のせいだろうか。俺の願望が見せた幻覚か。

「……ありがとうございます」

静かに、けれどしっかりと告げられたその言葉に、俺は思わず目をそらしてしまった。

(……何でこんなに意識してるんだ)

本当に、困ったものだ。ナザリックの誰よりも、今、ザナックが一番目に留まって仕方がない。

──その無垢で純粋な手が、なるべく他人と触れ合わないように。そんなくだらない願いを、つい考えてしまうのだから。……やっぱり、もうどうにかなってきてる。

 

 

 

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