アイザナ
子作りしろ
犬とハサミは使いようアニメ最終回パロ
宴もたけなわ──まさに今この瞬間がそうだった。
笑顔と歓声が飛び交い、広間は温かな熱気に包まれている。ナザリックでここまで賑やかな雰囲気になるのは、正直、滅多にない。……いや、こんなに賑やかなのはほぼ皆無と言っていいだろう。これがザナックという存在のもたらした影響か。そう考えると、やはり彼は特別な客人であり……いや、"仲間"なのだと、あらためて思う。
(……本当に、招いてよかった)
そう思いながら、ちらりと彼の様子を見ると───
ザナックが持っていたグラスの色に、既視感を覚えた。淡いルビー色。氷が溶け、ガラスの内側をわずかに曇らせる鮮やかな液体。
(あれは……シャルティアの……!?)
すぐ近くで談笑していたシャルティアが、目をぱちくりとさせながらグラスを探している。
「さっき置いたはずでありんすが……?」
ザナックが少し眉をひそめながら、手にしたグラスを見つめた。そして、気付いたように口を開く。
「この果実水……少し、辛くて……変ですね……?」
(いや、それは果実水じゃない──!!)
慌てて声をかけようとしたが、時すでに遅し。
ザナックはごくりと、ひと口──いや、二口ほど飲んでしまっていた。
シャルティアの"カクテル"。
「あ、妾の! 間接キッスでありんすよ!」
(……やばい!!)
次の瞬間だった。
「……アインズ様ぁ」
ザナックが、ふらりとこちらへ顔を向けた。
その頬が──真っ赤に染まっていた。
耳まで真っ赤で、潤んだ瞳に、とろんとしたまぶた──まさに酔っぱらいの顔だ。
(……ああ。これは……完全に酔っている……!)
"酔わせてしまった"が正しいのだが──その反省より先に、目を奪われていた。
(ぼんやりしてて可愛い、いや……まずは状態確認を……!)
彼は無言のままこちらに向かって歩いてくる。
すると、ぽふんと音を立てて俺の腕の中に入ってきた。ローブを掴み、にんまりと笑いながらこちらを見上げている。
アルベドやシャルティア、アウラの視線が一気に集まる。
「お、おい……ザナック?」
「なぁんですかぁ……?」
いつもの誠実な口調も、しゃんとした背筋もどこかへ消え──
目の前には、ぽやんとした赤い顔のザナックが、無防備にこちらを見つめていた。
その姿に、心の奥をかき混ぜられるような感情を覚える。
「ふふ……ふふふふふ」
ザナックは目を細めて、くすくすと笑い続けている。
「どうしたんだ…?」
(酒で可笑しくなったか!?)
「ふふふ……」
彼は相変わらず穏やかな笑みで、俺にくっついている。眉はへにゃんとまるでいつもの真面目さを感じられない。何かに取り憑かれたように愛らしく微笑み続けている。
「お前…ザナックだよな…?」
「はい、そうですよ…?」
ザナックは、甘くとろけたような声色で答えた。
「本当に…か?」
「そうですけど…? ひょっとして、俺のこと…忘れてしまったんですか?」
眉を下げて、まるで乙女のように泣きそうな顔で言うものだから、ものすごく悪いことをしてしまった気分にさせられる。
「いや……忘れていない、忘れていないぞ…!」
「そうですか…よかったぁ」
ほっと安堵したような声色。そして天使の微笑み。金色の髪に、純白の衣装…今の彼に実は本物の天使ですと告白されたら、信じてしまう。いや、もう信じるしかないじゃないか。
その時────ドン、と扉が勢いよく開かれる音が響いた。
俺はそちらに目を向けた。
現れたのは、息を乱し、目を見開いた少女。かつて"黄金"と讃えられた王女、そして今は我がナザリックの領域守護者の一人。ザナックの実の妹、ラナーだった。
「……ラナー?」
正直、予想外の登場だった。
「お兄様がお酒を飲んだと聞いて……居ても立ってもいられませんでしたっ!」
その声に、ザナックが「あっ」と顔を輝かせる。
「ラナーっ……会いたかったぞ……!」
彼は千鳥足でラナーへ駆け寄り、そのまま抱きついた。
「………お、お兄様、ですか?」
「ん? そうだぞ? お兄様だぞー! あはは。あー、俺以外に誰がお前に抱きつくってんだよ……あ、クライムか?」
──ああ、完全に酔っているな。
「お兄様……予想してた酔い方と違います! こんなの私は望んでいません……! もっと暴れてくださいっ!」
ラナーが顔を赤らめながら叫ぶ。いや、何を言っているんだこの妹は。
「ふふん、暴れるなんて……ラナーに怪我させたら嫌だもんなぁ……」
ザナックはふにゃふにゃと笑いながら、妹の背を優しくさすっている。あまりに様子が穏やかすぎて、彼女が困惑しているのがわかった。
「なっ……そんな、お兄様……失望しました……。お兄様は、もっと皮肉っぽくて、私を軽蔑していて……」
目を見開いて何か力説しているラナーを見て俺はドン引きした。どうしてそうなる? 酔って性格が変わる人間は珍しくないが、素面でこれは少し怖い。
「そ、そうですわ……ふふふ、もっと飲ませれば……! お兄様! お酒をもっとお持ちしますわ!」
やめろ。嫌な予感がする。
「飲む? うん、ラナーがついでくれるんだろ? ふふ……」
「おい、これ以上は飲ますな……!」
止める前に、ラナーは素早く酒瓶を掴み、グラスに注ぎ込む。それをザナックの唇に当て、強引に飲ませ始めた。
「ザナック、やめておけ!」
そう叫んだときには、ザナックはもう半分ほど飲み干していた。──まずい。このままでは倒れるぞ。
慌てて後ろからザナックを押さえ込み、そのままひょいと持ち上げる。
「わっ……浮いてる……ふふ、アインズ様~」
「……本当に君は」
俺は軽くため息をつき、部屋にいる他の者たちに向かって言った。
「私がザナックを休ませてくる。皆、解散だ」
皆、テキパキと片付けを始める。ラナーは仮面のような笑顔を貼り付けたまま小さく手を振っていた。
まったく……この兄妹、どちらも扱いが難しすぎる。
────
─────客室にザナックを運び、ソファにそっと下ろす。すると彼はぐでんと体を崩し、酔いが覚めるどころかむしろ回っているようだった。
「ほら、水を飲みなさい」
背中を支えながらグラスを手渡すと、彼はくすくすと笑いながらこちらを見上げてくる。
「ふふ、アインズ様がのませてください……」
……甘えているのか? あのザナックが?
予想外の反応に思考が一瞬止まった。彼が他人に依存する姿など、想像したこともなかった。
だが、その事実に──些細なことにも頼ってくれたというだけで、俺は内心でひどく動揺していた。
不意に、ソファの方へ腕を引かれた。
バランスを崩すと、彼が再び抱きしめてくる。
「ふふふ、やっぱりアインズ様はあったかいですね…」
その一言で、頭蓋の内側に強い衝撃が走った。
"あったかい"? いや、俺はアンデッドだ。温もりなどあるはずがない。──だが、そんな当たり前の指摘を返すこともできなかった。彼の腕の中に収まったまま、動けずにいた。
「ザナック、君は…酔っているんだ、だから……」
「このまま…ぎゅっとしていて、いい…ですか?」
彼の声はまるで子供のようだった。
そのまま彼がさらに身体を寄せてくる。思いがけず、何かがこちらに当たった。……やばい。やわらかい。これは……いや、全体的に彼はふわふわしている。その上、表情はどこまでも穏やかで、頬まで桃色に染まっていて……。頼む、そんな純粋な目で俺を見るな……。
「なぁ…ザナック」
「はい、なんですか…?」
胸が当たっている。いや、言う必要があるのか?男の胸だぞ? しかも小さい。だが、そんなことでここまで混乱している自分にも呆れる。これは重症だ。
「…そうですよね、俺の胸、小さいですよね……」
笑顔のまま、ザナックの瞳から涙がぽろりと零れ落ちる。まさか……声に出ていたのか、俺。
「もう18歳なのに…背もこんなに小さくて、胸まで…………こんなんじゃ、アインズ様に好かれるなんて、無理ですよね」
視線を伏せて、肩を落とす彼。
一体何をどうしたら、こんなにも自信をなくすのか。いや、それ以前に彼は俺に好かれたいのか?
「アルベド様やシャルティア様のようなお綺麗でナイスバディな方のほうが…アインズ様にお似合いですし!」
……なるほど。誤解している。
ザナックは俺が"巨乳好き"だと信じているのか? それで泣いているのか? これは泣かせている俺が悪いのか?
「アインズ様だって……大きい方がいいですよね…?」
「あ、いや……」
「…やっぱり」
即答できなかった自分を、物理的に頭蓋骨ごと叩きたくなった。
「…その、なんだな。小さい方がすばしっこくて良いよな。小回りがきいて…」
……馬鹿か俺は。
一体どんな褒め言葉だ? 酔っているのはザナックのはずなのに、完全にこちらも酔ったように思考が暴走している。そのとき、彼の瞳がわずかに揺れた。
「えっ…」
「胸は、大きい小さいじゃないと…私は思う」
言ってから、まるで名言を残したかのように静かに締めてしまった。なんだこの語録……!
「ありがとうございます!! それって…それって……プロポーズということですか!?」
──……。
本能的に叫びそうになった声を喉の奥でどうにか押しとどめた。一度深呼吸をして、冷静になれ、と自分に命じる。落ち着けアインズ・ウール・ゴウン。
"プロポーズ"──それは結婚を申し込むという行為。……つまり俺は今、ザナックに求婚した、ということになるのか。いやいや、冷静になれ。
してない! 俺はしてないからな!? 一言も言ってない!
「──こんな素敵な結婚式ができるなんて…」
ぼそりと呟いたザナックが、どこか遠くを見つめている。け、結婚式……? なんで急に式の話になったんだ!? 何が始まっちゃったの!?
「お前の目には……いったい何が見えているんだ!」
──────ザナック視点の幻覚─────
リーンゴーン……。
晴れ渡る空の下、教会の鐘が響き渡り、祝福の声が満ちていた。
「おふたりの門出を、祝福いたします」
神父役のエクレアが真面目な顔でそんなことを言っている。周囲にはナザリックのNPCたちや、ザナックの実家ヴァイセルフ家の面々まで揃っていた。
『ご結婚おめでとうございます!!』
──なんという盛大な幻覚だ。
─────現実・アインズ視点─────
「ありがとうございます! みなさん!」
ザナックが立ち上がり、空間のどこかに向かって誇らしげに、丁寧に頭を下げていた。
「みなさん……? 誰がいるっていうんだ!?」
「もう、パンドラ様ったら……おとうさまだなんて。とても嬉しいです」
パ、パンドラ……!?
いや待て、待てザナック、俺の息子が、君の……!? それはつまり君が俺の───!? やめろ!! その思考は俺にダメージが大きすぎる!!
「…そーれっ!」
突如、ザナックが何かを後ろへ投げた。
何も持っていないはずなのに、華やかに腕を振って。これは……ブーケトス!? しかも、新婦側!?
ザナック、今ドレスを着てるつもりなのか!?
(ウエディングドレス姿のザナック!? うーん、それはそれで……)
「こんなに祝福してくださって……俺たち、幸せにならないと罰が当たりますよね。ね? ……旦那様?」
くふぅっ……っ!! 落ち着け、俺! お、お、落ち着けザナック! これは幻覚だ。夢だ。そうに違いない。ああ、現実がこんなはずが──
「ザナックっ……!?」
気がつくと、ザナックの顔が至近距離に迫っていた。彼の唇が、まっすぐこちらへ──
反射的に手を挟んで、間一髪で阻止。
「んう……」
あっぶなかった……。セーフ……だがギリギリだ。
いやいや、そもそもこの子は年下の多分十代だし、男だし、俺にとっては友人で──
「フフフ……」
ザナックが小さくイタズラっぽく笑って、俺の手のひらにそっと唇を寄せた。ちゅ、と小さな音がした。たかが手への口づけ──のはずなのに、なぜか脳内で警報が鳴っている。嘘だろ。童貞拗らせ過ぎか。俺だって、一度だけ、彼を蘇生した時に励ますつもりで頬にキスしたことはある。それだけのことだ。あれは深い意味は無かった。でも今は──とにかく、この状況が、全部まずすぎる。俺の脳内に、ざわつきと警戒と、どこかくすぐったいような何かが広がっていく。ザナックは、夢の中で幸せそうに微笑んでいて、きっと俺の声なんて届いていない。
お願いだから、そろそろ目を覚ましてくれ。
本気で俺の理性が持たなくなる……!
「ハネムーンはハワイって、前から決めてたんです…!」
ザナックが椅子に座り直し、手にドリンクらしきものを持ちながら空を見上げている。ここって……ビーチなのか?
「ハワイ……? いやいや、数分前まで結婚式やってただろうが」
それに、"ハワイ"って言葉、お前ついこの間覚えたばっかりだろ!? 書庫でアウラとマーレと本を読んでるところ、ちゃんと見てたからな俺! なんかちょっとドキドキしてたのに、唐突にボケ始めるなよ!
「お似合いのカップルですって! 少し恥ずかしいです…!」
な、なに!? 誰が言ったそんなこと!?
誰と話してるんだザナック! キャラ変わり過ぎだろ!? どうした!? いい加減、正気に戻ってくれ……!
「綺麗……これが
俺が差し出した、ただの水のグラスを両手で持つザナック。どうやら南国風ドリンクと勘違いして、一口飲んだ。
「はぁ……?」
「永遠の愛……今の俺たちにぴったりな名前ですね……」
いや、もうツッコミ入れるのも疲れてきた。
「ほんと……夢みたいです。綺麗な海と、夕日……」
ここ、ナザリックだぞ?
しかも今は深夜。海も夕日もないから!!
「俺……幸せすぎて、ちょっと怖いです……」
──そのセリフは、ずるいだろ。
「ふふ、アインズ様……競走ですよ!」
突如、ザナックが立ち上がり、少し開いていた扉を押して廊下へ飛び出した。
「お、おいっ……待て!」
「こっちですよー! アインズ様!」
そう言って振り返った彼は、今この世で一番幸せそうな顔をしていて──悔しいが……めちゃくちゃ可愛い。酔っ払いが、深夜に廊下で全力ダッシュしてるっていう状況じゃなければ、俺だってもう抱きしめてた。頼むから、まずはハワイから戻ってきてくれ。蘇生してから一週間と少し。軽く訓練もしていたらしい──明らかにザナックの足は速くなっていた。追いつけないわけじゃない。けど、なんだろうな。追いかけながら、ちょっとだけ……この夢が続いてもいいかもって、思ってしまった。ザナックが急に立ち止まり、笑顔で部屋を指差す。
「ここが俺たちの新居ですよ〜!」
────そこは俺の私室だった。
「……いや、そこ私の部屋だな。」
ハネムーンはハワイだったよな……今度は新居か。
そろそろ夢の時間も終わってほしい。ザナックに導かれるまま私室へ入り、椅子に座らされる。彼は妙にそわそわしていた。
「あの……貴方に聞きたいことがあるんです」
「……なんだ?」
「子供部屋の壁紙、何色がいいと思いますか?」
「……は?」
思わず素の声が出た。
子供部屋?
ザナックに子供がいたのか?
いや、この流れ的に"これから作る"前提なのか……?
「な〜に〜い〜ろぉ?」
なぜか眉間に皺を寄せて詰め寄ってくるザナック。
「い、色……? 何色でもいいぞ、君の好きな色で……」
とにかくこの危ない会話を終わらせたくて無難な言葉を選んだ。
「ちゃんと答えてください!」
むくれるザナック。なんか……可愛い。
「じゃ、じゃあ……白で」
答えると、彼の機嫌はさらに悪化した。
「白? 俺は淡いグリーンがいいと思ってたんですよ。これは徹底的に話し合いましょう!」
まずはこの状況を徹底的に話し合いたいがな。
「あ、淡いグリーンがいいなら……そっちでいいから……」
「そんな適当に決めないでください! 大事な子供の部屋ですよ!?」
だいぶ理不尽な嫁さんだな。可愛いけど。
ぷんすか怒りながら、人差し指を振り回してくる。
「ちょ、ちょっと待て、ザナック。君は酔ってるんだ。だからこんな……」
そもそも子供まだ居ないし、つくるとしても男同士だし種族差とか体格差で色々無理だろ!!
って、そもそも俺たちそんな関係じゃないだろ。
"まだ"居ないってなんだ! つくろうとするな! 俺!
あー、もう。俺も可笑しくなってるな?! コレ!!
「俺は真剣なんですよ!? 酷いです! 俺がどれだけ家族のことを思ってるかっ……全然わかってくれないんですね……!」
今にも泣きそうな顔で、ザナックは小さく呟く。
「……俺のこと、本当に大事に思ってるんですか……?」
そんなの……めちゃくちゃ大事に決まってるだろ。俺は君のことを………………
ことを………
(やめろやめろ。考えるな。)
───沈黙。ザナックはしばらく深呼吸をした後、ぽつりと。
「怒ったら、ちょっと疲れちゃいました。……休みませんか?」
「そ、そうだな……」
ようやく終わった。そう安堵した、その時だった。
「じゃあ……"一緒に寝ましょう"か」
にっこりと笑って、ベッドへと俺を誘導してくる。
俺はアンデッドだから睡眠が不要だ。なのでこのベッドは基本使わない。だから俺は寝る必要なんてないのだ。最後に使ったのは……この間、ザナックと添い寝したとき。何もなかった。いや、起こす気もなかったぞ!? あの時は!! あー!?……"あの時は"ってなんなんだよ俺。今は起こす気があるのかよ!?
何を起こす気だよ!?
(いやいやいや。これはまずいだろう)
彼は穏やかな笑顔のまま、じりじりと距離を詰めてくる。近い。とても近い。そして……いい匂いがする。あぁやばい。淡くて甘い香りが。どうしても嗅いでしまう。これは不可抗力だ。気付けば、俺はベッドの縁に追い詰められ、自然に倒れ込む形に。
「ふわぁ……なんだか眠くなってきました……」
やわくて、小さな手が、俺の手首を押さえる。
そして、この体勢は完全に押し倒されて──っ押し倒されるなよ俺! いや、まぁ、俺が抵抗したらこんなに小さくてふにふにしてる彼を傷付けてしまうかもしれないからそれは仕方ないか……。うん仕方ない。
「なんか……変な気分です……ふわふわして……」
全く……ふわふわしてるのは酔ってるからだ。
あああああ……腰辺りに、ザナックの太ももが……柔らかい。柔らかい。確かに、確かに、ふわふわだ!
頼む、冷静になれアインズ・ウール・ゴウン……いや、鈴木悟! 年下の、しかも男の、酔っ払いに……手を出すなんて絶対ダメだ!
「こう……喉の奥からせり上がってくるような感覚があって……これが恋心ってやつですか?」
──あ、それはひょっとして……
「もうだめです……来そうです……身体の奥から熱い何かが……!」
「や、やめろザナック! 今だけは我慢しろ! そうしたら俺が……!」
「我慢、できません……! これは、俺の燃える想いです……! アインズ様に向かって……"吐き出して"もいいですか!?」
「やめろ、それは"想い"じゃない!!」
俺がもがくと、上に跨るザナックが揺らされてそれが彼の体に刺激になったのか、
「もう手遅れです……だめです……でちゃいます……」
「…………ザナックーーーッ!」
───
────彼は、見事なフォームで吐いた。
ローブが一瞬悲惨なことになったが、すぐに物をトイレへ転移させ、ローブとザナックの服は魔法で洗浄。彼はそのまま眠ってしまったので慎重に口をゆすいであげた。ザナックは俺のベッドの真ん中で、スヤスヤと爆睡している。
そして俺は……彼のせいでその夜、心も身体も休まることはなかった───。