※この作品はR-18です。

ザナック蘇生if/アイザナ   作:アイザナ大使

41 / 164

アインズ視点から。
むにむにしたい



囲いたい

 

 

──怒っていた。

いや、これはもはや怒りではない。それ以上の、もっと本能的な、「奪われた」という、

おぞましくも抗えぬ、"執着"だった。

「……ザナック、君は危機感が欠如している……」

腕の中、軽い。小柄で、柔らかく、触れれば壊れてしまいそうなその体。あの男の前に、たった一人で、そんな無防備な状態で、"その顔"を見せたのか?

大げさだ、自分でも分かってるつもりだ。だが、止まらない。溢れてくる。

「危機感って、ジルクニフ殿は別に危なくな…」

──甘い。

ザナックは、相手の"好意"には、鈍い。

それは、ナザリックの者たちに囲まれた生活の中でもよく分かっていた。だからこそ、誰かが君に恋をした時、君は気づけない。きっとそのまま、無防備に笑って、優しくして、"奪われてしまう"のだ。

 

────上位転移(グレーターテレポーテーション)でナザリックの廊下へ移動する。

深紅の絨毯を踏み締めて、再び歩き出す。

「……ザナック。君は、君自身の価値を、わかっていない」

誰よりも真っ直ぐで、誰よりも優しくて。

ぽよっとしたお腹も、柔らかそうな頬も、

頑張りすぎて空回る不器用さも、それでもくじけない心も──全部、全部、俺だけのものだったのに。

思わず、腕に力が入る。ザナックの身体がぴくりと震える。

「っ……アインズ様……? 少し苦しい、かもです……」

我に返った。

「す、すまない……。力が……入ってしまった」

こんなことではいけない。俺は、至高の存在。ナザリックの統治者。魔導王、アインズ・ウール・ゴウン。それが、ザナックを前にした途端、どうして。

「……あ、アインズ様?」

覗き込まれた。瞳が、不安げに揺れている。

少し青みがかった緑色が視界の中で一番鮮明に見える。心臓が、動いた。存在しないはずの臓器が、どくん、と。

「……ザナック。少し、俺の部屋へ来てもらってもいいか?」

そう言いながら、俺は既に部屋の前に立っていた。

「……へ?」

「いや、君の健康状態が心配で……。さっき、震えていたし」

「う、あれは……その、ちょっと、その、むにむにされてたからで……」

「むにむに……?」

「あ………あー、な、なんでもないです! なんでもないですからっ!!」

ザナックは耳まで真っ赤になって、肩をぷるぷると震わせている。やはり、ジルクニフめ……どこまで、触ったんだ。どこまで、"知った"んだ。

魔法で扉をそっと閉めて、その怒りを、なんとか抑えつけながら、俺はそっと、ザナックを椅子に座らせ、肩に毛布をかけた。

「君は、もっと自分を守るべきだ。…俺が、傍にいないときも」

「……はい。よく分からないんですが、アインズ様がすごく怒ってる気がして……ごめん、なさい」

「怒ってはいない。……いや、怒っている。"君が無防備だったことに"、怒っている」

静かに、ザナックの頬に手を伸ばす。

骨の指が、そっと触れた場所。温かい。この熱は、たしかに"生"だ。

「……一度だけ、君が奪われる夢を、見たことがある、疲れて意識を失った時の夢と現実が混ざりあった…きっと俺の妄想だ。」

「……え、と?」

「だけど、誰かに、手を引かれて。君が、俺に気づかないまま……笑って行ってしまうような夢だ」

「……」

「目覚めたあと、ひどく苦しかった。こんな気持ちは……初めてだった」

ザナックは、何も言わない。

ただ、目を瞬かせていた。少し経って、目を伏せてから……ぽつりと、呟いた。

「アインズ様。……俺って、そんなに価値あるんでしょうか」……ああ。また、それを言うのか。君は、自分を低く見る。そうやって、誰にでも譲って、後ろに下がってしまう。

「前にも言ったが──俺にとって、君は"宝物"だ」

言葉にしてしまえば簡単だ。

けれど、本心だった。俺は、君の笑顔が見たい。君の安全を保証したい。君の柔らかい部分に触れたい。君の心が、俺の中でしか満たされない場所になるなら、それが理想だ。

ザナックは、顔を俯け、小さく笑った。

「……なんだか、夢みたいですね」

それは、嬉しいというよりも、信じられない、という響きだった。

だから、俺は、今度こそ正面から。

「ザナック。君を守るのは、俺だ」

「……アインズ様……」

「君を傷つける者がいれば、排除する。

 君を侮る者がいれば、見せしめにする。

 君を奪おうとする者がいれば──国家ごと、滅ぼす」

「……え? そこまで?」

頬を染めて切なげに眉を下げていたザナックが、眉間に皺を寄せて怪訝な顔をした。

「ザナック。君を手放す気はない。

 君は、俺のものだ」

そう告げたとき、

「ふえっ……!?」

ザナックは変な声を上げた。

やっぱり、可愛いなと、

俺は思った。

それ以上に、誰にも見せたくない、とも思った。

ザナック、俺は、君を──

この両腕で、永遠に囲っておきたい。

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。