※この作品はR-18です。

ザナック蘇生if/アイザナ   作:アイザナ大使

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レエブン視点から。
おっさんに恋路を応援されるザナックが好きだ。




邂逅

 

 

昼下がりの廊下は、静かで、どこか懐かしい。

──否。懐かしさなど、許されるものではない。私は、すれ違うナザリックの住人たちに軽く会釈しながら歩いていた。

この身がこうして無事に在ること自体が、奇跡であり、赦しの果てだ。

そして。廊下の向こうから、あの姿が見えた。

白いシャツに黒いベストを身に纏う。

あの日、裏切るような形で、王子に背を向けた。自らの保身のために。

だが──生きていた。彼は、生きていたのだ。

幻かとも思った、だが、こちらに気づき、歩みを止めるザナック殿下の姿に、私は、思わず足を速めていた。言わなければ。この身で、彼に。

「……ザナック──殿、下……」

伸ばした手を、止めたのは。

その手が、彼に握られたからだ。

驚きに言葉を失う私に、彼はふと笑って──

「……エリアスか? ……生きて、また会えてよかった」

その言葉が、胸に突き刺さる。

温かくて、優しくて。痛いほどに。

「ザ、ザナック殿下……、私、私は……っ」

嗚咽が漏れた。情けない。膝をつき、廊下の真ん中で、二十も歳下の彼に、慰められる立場にあるとは。それでも、彼はその手を離さずにいた。

「おいおい……泣くほど俺に会いたかったのか?」

片眉を上げて、ふっと笑った彼。

皮肉めいたその言葉に、私は少し顔を伏せる。

だが、痛みを与える意図は感じなかった。

ただ、今の私を気遣うように……突き放しすぎず、優しすぎもしない。それが、ザナックという男の優しさだ。

「……あなたは、やはり強い方ですね」

私のその言葉には、答えず。

「……茶でも飲むか?」

そう言って、彼はなんでもないような顔で私を自室へと誘った。

 

───────

────

 

部屋に入ると、少し気まずい空気が流れる。

私がした事を思い出せば当然のことだった。

「……ザナック殿下」

私はそう口に出す。

すると、彼は紅茶に砂糖をドバドバ入れた。

スプーンでかき混ぜながらふっと息を吐いて、

「もう"殿下"ではないよ」

「……では、ザナック様」

「"様"付けされるほど偉い立場でもなくなったがな」

自嘲気味な笑みに、私は首を振る。

「ですが、ご自分をあまりに低く見すぎです。

蘇って、この過酷な環境で生き抜き、魔導国の信頼を得て、アインズ様の側にいる。

あなたほど、……誇るべき才と人徳を備えた人物を、私は他に知りません」

思いを込めて言った。

それが、本心だった。

すると──

「ふっ、おいおい、やめろ。男色の趣味はないぞ、俺は」

言葉の裏で、照れくささを隠しているのは明らかだった。思わず私も笑ってしまう。

「ふふ、失礼。それは存じております。……ザナック様には、アインズ様が居られますからね」

──ブフォッ。

ザナックの口から、紅茶が盛大に吹き出された。

「なに!? なっ…にゃ……。なにを言って!」

真っ赤な顔で咳き込む彼に、私はナプキンを差し出しながら微笑む。

「そんなに動揺されるとは……そこまで深い意味は込めてなかったのですが……どうやら、ザナック様は違ったようですね?」

(なるほど………)

紅茶で濡れた口元を慌てて拭きながら、ザナック様は

「違っ…! くそ、おまっ……なんだその顔!!」

と、必死で否定する。

その姿は、もはやかつての"王族"などではなく、年相応の──恋する青年のように見えた。

私はこらえきれずに、また笑った。

「いつからお好きだったんですか?」

「ち、違うって言ってんだろうがあ!!」

「陛下のどこがお好きですか」

「好きじゃ、ない! いや、嫌いという意味ではっ……王として尊敬して……」

「なるほど、陛下のカリスマ性に惹かれてるのですね」

「あ、だっ……黙れ!」

「お仕えしたいという気持ちが、愛に変わったのはいつでしょうか……?」

「うるさいっ!!!」

勢いよく立ち上がった彼が、顔を真っ赤にして指差す。

「では、恋ですね?」

「やめろ!! 帰れ!! エリアス帰れ!!!」

「ははっ……」

私は立ち上がり、扉へ向かう。

背を向けたまま、笑みを浮かべながら、

「……では、また来ますね。アインズ様のことで相談があれば」

「違う!!! 本当に違うからな!」

その怒鳴り声に笑いながら、私は部屋を後にした。廊下に出た瞬間、

思わず天を仰いで笑ってしまった。

あぁ──生きて、また彼と話ができて、

本当に、よかった。

 

 

 

 

─────────『ザナック視点』

 

 

昼の廊下は、妙に眩しかった。

ナザリックの内部に太陽などないというのに、そこはやたら明るく、静かで、ひどく落ち着かない。俺は、少しだけ用事を済ませに外に出た帰り道だった。

(昼寝日和だな)

廊下の先に、見覚えのある長身の人影が見える。

(……エリアス)

彼は、目を見張って、こちらを凝視していた。一瞬だけ、逃げようかと思った。

だがそれは──彼も同じだったのかもしれない。足が止まり、互いに距離が縮まっていく。

見えたその顔は、以前より明るく見えるが相変わらず痩せていた。

思わず俺は、手を伸ばしかけた彼の手を、逆に握ってしまっていた。

「……エリアスか? ……生きて、また会えてよかった」

それは、心からの本音だった。

皮肉も怒りも、何も浮かんでこなかった。この人もまた、生きるために選んだのだ。まぁ、それを少し寂しく感じてしまうのも、それもまた仕方ないことだ。

「ザ、ザナック殿下……っ、わ、私は……」

目を潤ませ、必死に言葉を繋ごうとする彼の姿に、俺はふと気が抜けた。

「おいおい……泣くほど俺に会いたかったのか?」

意地悪く言ってやったつもりだった。

けど──その声に、自分でも驚くほど、優しさが混ざっていた。

(演技、なまったかなぁ……)

エリアスは、涙を拭いながら微笑み、震える声で言った。

「……あなたは、やはり強い方ですね」

俺は、その言葉に返事をしないまま、口を開いた。

「……茶でも飲むか?」

ほんの、数年ぶりに心の底から誰かを誘いたいと思った。それが、彼だった。

 

 

───────

 

「ですが、ご自分をあまりに低く見すぎです。蘇って、この過酷な環境で生き抜き、魔導国の信頼を得て、アインズ様の側にいる。あなたほど、誇るべき才と人徳を備えた人物を、私は他に知りません」

まったく、褒め殺してきやがった。

「ふっ、おいおい、やめろ。男色の趣味はないぞ、俺は」

咄嗟に茶化してしまったが、顔が熱い。

エリアスはにこりと笑い──

「ふふ、失礼。それは存じております。……ザナック様にはアインズ様が居られますからね」

盛大に、紅茶を吹いた。

「なに!? なっ…にゃ……。なにを言って!」

声にならない悲鳴をあげ、俺はテーブルの上で口を押さえる。

「そんなに動揺されるとは……そこまで深い意味は込めてなかったのですが……どうやら、ザナック様は違ったようですね?」

「違っ……くそっ、おまっ、なんだその顔!!」

エリアスの笑顔が、妙に優しくて、どこか"分かってる"顔で、なぜか俺は、王族でも貴族でもない「ただのザナック」に戻された気がした。

「いつからお好きだったんですか?」

「ち、違うって言ってんだろうがあ!!」

「お仕えしたいという気持ちが、愛に変わったのはいつでしょうか……?」

「うるさいっ!!!」

立ち上がり、真っ赤な顔で指差す。

「では、恋ですね?」

「やめろ!! 帰れ!! エリアス帰れ!!!」

「……では、また来ますね。アインズ様のことで相談があれば」

「違う!!! 本当に違うからな!」

ニコニコと出ていくエリアスの背を見送り、

俺は全力でドアを閉めた。

──ばたんっ。

部屋にひとりになって、テーブルに突っ伏す。

(……くっそ……死ぬほど恥ずかしい……)

本当に違う。本当に違う、はずなのに。

──俺は、アインズ様を"尊敬"してるんだ。

だって、あの人はナザリックの皆のために日々努力をして……弱音も吐かずここまでやってきて、常に油断することなく行動出来て。

俺も、ああなりたい。強い魔法詠唱者になりたい、という意味ではなく……あんなふうに自然と人が集まるような。それだけじゃない、あの人の為ならなんでもしたい。支えたい。

 

それは─────俺があの人のことが、

ことが………………

(が、なんだ………?!)

違う、これは敬慕だ。そして忠誠心だ!

だからその、エリアスが言うようなそういう"好き"とか"愛"とか"恋"とかとは全く違う!!

だから…………頭を撫でてほしい、って思うのは違うよな。抱きしめてほしい、って思うのも別に好きとかじゃないよな、大丈夫だ。

ちょっとだけ……アインズ様に父性を感じてるだけだ。…………それすら不敬だが。

(……俺が恋とかおかしな話だよ。)

ラナーだって失笑しそうだ。

だけど頭に浮かぶのは、あの骸骨の姿と、俺のお腹をふにふに揉まれて、恍惚とするアインズ様の顔────じゃなくて!

「……っ、ちが……ッ!!!」

どうしようもない自分の心に、顔から火が出る勢いで叫んだ。

 

 

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