アインズ視点。
お風呂上がりにキスしてます
「ザナック……少し触れるぞ」
「……ん」
どこか遠くを見たような目。力無く返事をするザナックの体を、大きなバスタオルでふわりと包む。真っ白なタオルから頭だけ出た様子がなんだか……
(おにぎりみたい……)
「んー……」
もう一枚用意したタオルをザナックの頭から被せて、湿った金髪から水分を拭き取っていく。
(タオルドライ後に魔法を使って仕上げよう)ふとザナックを見ると、彼の前髪が乱れて、普段隠れていたおでこがあった。何となく。そう。特に意味は無いが、その白いおでこにほんの少し歯を当てた。離れると、ザナックは目を何度も瞬かせていた。それでもまだ寝惚けたような瞳で俺を見上げる。すると彼が、ちょいちょいと手招きをする。不思議に思いながらも顔を近づけた。
「……ン? どうした」
ちうっ。そんな可愛らしい音がして、俺の口……骸骨の歯にやわいものが触れた。
「は……………?」
彼はぎゅっと目を細めて豪快に笑う。
「フフ、あは、ふははっ………!」
したり顔で見上げてくる彼に愛しさが込み上げてくる。
「……………やられたな。」
機嫌良く足をパタパタ動かすザナックに、頭の中で存分にニヤケていると。彼は突然、タオルに包まりながらベッドから下りた。ふらふらのまま、右手を伸ばして俺のクローゼットに向かって歩いていく。
「えっ、ザナック……?」
案の定ごつん、と額をぶつけていた。
「うぐ…………」
ザナックは額を両手で押さえて背中を丸めている。
「おっと…………大丈夫か? ほら……見せて」
彼の左手をしっかりと握り、支えた上で額を確認。少し赤くなってる、が……治癒魔法を使う程ではないか。ザナックは右手でクローゼットを開けた。眉を上げてにこにこしながら、中身を指さす。
「……くだ、さい。しゃつ。しゃつ……」
彼は未だに半分寝たようなとろんとした瞳で、掠れた声で呟いた。そしてゲホゲホと咳き込む。
「う、けほっごほっ……」
……散々啼かせたもんなぁ。
「無理しなくていい。シャツが欲しいのか?
どれ……」
俺は適当に白いシャツを引っ張り出した。
そして、彼に渡す。
「ふへ…………へへ……」
すると、まるで大切なものを愛でるように抱きしめた。小さな声で喜んでいる。
「これで満足か……? ほら、着替えをするからおいで……」
シャツを胸に抱えたザナックを持ち上げ、ベッドに座らせる。彼の部屋から持ってきた服の中から、とりあえず下半身を隠さなければとパンツを探していると、背中をちょんちょんと指で押される。
「ン……?」
「これ…………きます………!」
蚊の鳴くような声が聞こえたかと思えば、ザナックが俺のシャツを一生懸命掲げている。
(かわいい……)
「俺のシャツが着たいのか? 多分、大きいんじゃないのか?」
それでも、ザナックはエメラルドグリーンの瞳を輝かせていて、しばらく俺と見つめ合う。
「仕方ない……。だが、パンツは履こうな?」
ザナックは目を逸らし、数秒考えてから、こくりと頷いた。
(何の迷い?)
「おねが……します…………」
ザナックにシャツを渡された。
着せろ、ということだろう。
律儀に頭を下げててかわいい。
シャツを広げると、やっぱり彼の体と比べると……だいぶデカイ。それを彼の肩にかけ、右手から腕に通す。
「はい、反対も……左腕通すぞ」
ザナックは薄目。ほぼ寝ている状態。それでも腕は動かしてるので起きてるんだろう。
「うーん、とりあえずパンツ履いてからボタンしめような」
俺は床に膝をつき、置いてあったドロワーズを手に取った。
(ふわふわ……へえ、こんな小さいのか……。)
顔の前に掲げてじっくり観察をする。
彼の顔を見ると、いつの間にかほんのり赤くなって、困ったように照れていた。
「ごめん……」
ザナックは顔を赤くしたままにこりと微笑んだ。気を取り直して、ドロワーズを彼の足先から通していく。
(足もちっちゃいな……それに、ふくふくしてる)
ドロワーズを上げていくと、ザナックが俺の頭を両手のひらで挟んだ。
「ざな、っく……!?」
何をしてるんだ?と聞く前に、俺の額に柔らかいキスが降った。ちゅうっ……と水っぽい音。
「な、こらっ……! やめ、ザナックっ……動くなって……」
ちゅっ、ちゅっ。何度も何度も、頭にキス。その度に感情抑制されて、でも、追いつかない。
ぶ厚くて、温かい唇。湿った感触。それが、俺を幾度も興奮させる。
「あはは……」
いたずらに、楽しそうに笑う声。
「──くっ、絶対し返すからな! これ履かせたら覚悟しておけよ……?!」
そう叫びながら、ザナックを立たせてドロワーズを腰まで上げた。その途中で、おしりに手が当たる。限界に近かった俺は、揉んでやろうかとも考えた。だが冷静に。ザナックを再びベッドに座らせる。下から、丁寧に。だが、性急にボタンをとめていく。最後の四つをとめる前に、ザナックが俺の腕を強く引く。
「あいんず様……」
普段より高く、掠れた甘ったるい声で呼ばれて
「はぁ…………」
俺はため息を吐いて、ベッドに上がった。
ギシッ、と木板が大きな音を鳴らす。向かい合って、イラつきと興奮が止まない俺はザナックを睨む。だが、彼はにっこにこのまま、迷わず俺の口にキスをした。
「んっ、ん……」
俺が引こうとするも、彼は顔を追いかけて唇を重ねる。骸骨の歯を唇で挟んで、不器用に舌で舐めてくる。
「っ……有言実行だ。」
俺は、ザナックの後頭部を手で支えた。
金色の髪がくしゃりとたわんで、彼は目を瞑った。彼が唇を押し付けた度に、軽く歯で挟んだ。色んな感情がぐちゃぐちゃになって、もう訳が分からない。なんで、この子はこんなにも煽るんだ。危ないだろう、普通に考えて。アンデッドだぞ? 骸骨だぞ? 冷たくて、硬くて…………君より大きくて。自己否定とかではなく、普通に危機感を持って欲しい。キスするってことは、そういう対象としてちゃんと見てくれてるんだよな? 俺以外が相手なら、酷くされてしまうかもしれないぞ。いやまぁ、そんな例は許さないし、俺は絶対に酷くなんてしないがな……!
「あいんず、さま……す、き……れふ…………」
また、そんな声で。
「……俺もだ」
舌を捕まえて、歯でそっと撫でたり、甘噛みすると、彼は嬉しそうにくすぐったそうに笑う。
「ん、ふふ……んんッ………は、んう」
ザナックは、俺の歯列を舌でなぞり、ちゅうちゅう吸っている。
「ンっ……あう、ざなっ、く………」
「ふ、んぅ……あ、あいんずさま……んん……すき、すき……はんっ、んっ」
ザナックはこんなにもアプローチしてくれてるのに、俺は彼の舌を食むくらいしか出来ることがない。
(あー、俺にも舌があったらもっとキスのバリエーションが増えたのになぁ。)
そんなことを馬鹿みたいに真剣に考えていると、ザナックが唇を離した。俺の歯と、彼の舌の間に唾液の銀糸が伸びる。俺は呼吸をしないので息も上がらず。対して、ザナックは、はぁはぁ……と肩で息をしている。
「ザナック…………そろそろ寝ようか。」
彼はムッと頬を膨らませた。
「…………や、です」
両拳を膝で握っている。我儘。子供か? かわいいなホントもう。
「俺と一緒寝るの、嫌か?」
と聞くと、ザナックはぶんぶんと首を振った。
枕を整えると、ザナックがぱたんっと、シーツに倒れた。
「ふっ、」
真顔で綺麗に倒れ込む様子が少し可笑しくて、笑ってしまった。俺もベッドに寝転がると、ザナックが控えめに抱きついてきた。いつものやつだ。そして、深い眠りつく頃には、脚まで絡めてがっちりくっついてるという。
「おやすみ、ザナック。」
そう言うと、返事のつもりなのか、鎖骨に頭をぐりぐりと押し付けられた。