アインズ視点。
お風呂シーンあり
別荘の表庭。物干し竿に、数枚のシャツとローブ、タオルが揺れる。
「しかし、今日はよく晴れてるな…………もしかしたら、暑いかもな。」
「……ザナックが出れなくて良かった、倒れる方が心配だしな、うん」
俺は漠然と、今ザナックは何をしてるかな……と想像しながら洗濯カゴに手を伸ばす。
小さくてふわふわな布を手に取り、それを宙に掲げる。────ドロワーズ。これがあの、すべすべなお尻と太ももをいつも包んで、かつ守ってくれてるんだな……。ありがとう、ドロワーズさん。俺はドロワーズさんに頭を下げた。本当に感謝している。まず短パンタイプなのが素晴らしい。ザナックの
「よし、ザナックは意外と寂しがり屋だから……早く戻ろう」
──リビングへ戻ると、ソファに横たわったままザナックが眠っていた。近くに寄って、その丸い頬を撫でた。伏したまつ毛、金糸のような前髪、ほんのり赤らんだ頬、ぷっくりした唇は少し開いていて、よだれが垂れていた。
「天使みたい……いや、天使なんかより可愛いな…………」
彼は、小さい子供みたいな無邪気さも感じさせるのに……芯はしっかりしていて頼りがいがあって、きっとそれは。今まで頑張ってきた結果なんだろうな。
(勝手に、そう思ってるけど…………出来れば、もっと君のことが知りたい)
「ん、んーっ……とても、おいし……」
ザナックが少しのびをした。何か食べているような口で。寝言を言いながら。
「ふふ、カワイイ……」
彼は脚を擦り合わせて、
突然──シャツの胸元をガッと掴み、引っ張って脱ごうとする。
「あつ……い」
ぐいぐいとシャツを引っ張る小さな手。
「……!? お、おい、やめろザナック! 涼しくするから! お願いだ!」
それ以上前を開けると、あられもない姿に……!! いや元々、シャツに下着一枚という悩 ましげな格好をしてるが……!
俺が彼の手首を掴むと同時に、
ぱつ、ぱつんっ……。ボタンが勢いよくふたつ外れた。シャツから溢れるようにザナックの胸が現れた。
(くっふぅ……!!!)
落ち着け俺、こういう時は羊を数えるんだ!!
ん!? いや違う! 羊は寝る時の……!
じゃあなんだ!? 何を数えれば!? そうだ、パンドラズ・アクターを数えよう! パンドラがひとり、ふたり……さんにん……。脳内でパンドラズ・アクターが謎に踊り出す。俺が必死に冷却魔法を部屋に循環させていると、
「ん……」
彼の腕がこちらへ伸びる、冷却魔法を出していた左手がぎゅっと捕まえられた。
「っ……ザナック!」
そのまま胸に押し付け、抱えられる。
「ん、ふふ…………きもちい」
(あああああああ……これは、ちょっといけない)
あああ、生の
ザナックの、生の胸が……肌が……!!!
やわらかい。
(確かに女の子の胸とは違う……)
だが格別柔らかくて、存在感がある。さらに、吸い付くように肌がきめ細やかで、色が白いから赤くなると分かりやすい。
「──あいんず様……すき、です…………」
寝惚けながら、ザナックはそう言った。
小動物のように、俺の手の甲に頬を寄せてすりすりしてる。
(ハムスケに似てる……いや、それはザナックに失礼か)
「…………すき、すき、」
「……………ザナック」
「あいんずさま………………置いて、行かないで、くださ………………俺、を……見て」
彼は眠っているけど、安心させたくてフッと笑った。そして、柔らかい声で続ける
「ここに居るよ。置いて行ったりなんかしない。」
左手で、彼の頬を撫でた。彼の目尻に光る涙が、骨の指先に染みた。
「ザナック……ずっと、永遠に一緒だ」
───額を軽くくっつけて、丸くて小さな小指と、俺のゴツい小指を絡ませた。
後悔はさせないから、今だけはこの骸骨の腕に捕われていてくれ。
彼の頬に触れるだけのキスをして、俺はリビングを後にした。
──────────
かぽん。肩を流した桶をシャワー横に置いた。
ザナックも寝てることだし、ゆっくりできるタイミングだと思い、俺は風呂場で湯船に浸かっていた。
「ああぁーー………やっぱり、最高だな」
しばらくスライム風呂に入れてなかったから心に沁みる……。
「ありがとなー……三吉君」
風呂は良い………。頭の中を整理することができる、余計な物が無い空間で、リラックスして思考ができる。それにしても………俺が、恋人とか結婚とか夢みたいだな。
「一応お嫁さんではあるし、そう呼ばせて貰ってるけど…………まだ婚約者の段階なんだよなぁ……」
うーん、でも別に急いで結婚しなくたっていいのか。彼はまだ18だしな。それに、まだこの"初めてのお付き合い"の感じを味わってたいな……。俺も経験なんてないけど……ザナックもザナックでそれ以上に初々しい。ほんと可愛いよなぁ。頭に浮かぶのは、赤面し、耳まで真っ赤になったザナックの姿。普段は凛々しく上げた眉も、しおらしくなって……。体もめちゃくちゃ柔らかかったな。男の子の胸とか、おしりとか、初めて触った。まさかあんなにやわらかいものだったとは。"アレ"もちっちゃくてフニフニだったな…………。でもたぶん、本人に言ったら落ち込むだろうから言わないでおこう。俺の昨日の触り方……合っていたんだろうか? 自家発電を思い出しながら、反応を見て探り探りやってみたんだが。少し……調子に乗ってた節もあったかもしれない。
(彼は気持ち良くなれてたのか? そもそも痛くなかったかな…………ザナックはどう思ってるんだろう……!?)
もしかしたら全然気持ち良くなんてなくて、無理をしていたとしたら……? 俺、骨だし。痛かったかもしれない。
………ひとりで考えていたって答えが出るわけじゃない。よし、本人に聞こう。話し合うって約束したもんな。俺は湯船から勢いよく立ち上がった。ビシャビシャッと骨からお湯が滴る。
「ふう………」
脱衣場。風呂から上がると、タオルを適当に手に取る。頭蓋を軽く拭って、次は首の後ろをぽんぽんと叩く。肩や背中、肋骨の表面を丁寧に拭いていると。
ガララッ……と脱衣場の扉が開いて、ザナックが飛び出した。
「アインズ様……っ」
目に膜を張ったザナックに涙声でそんなふうに呼ばれて、胸が張り裂けそうになる。
ああーー! ああぁ……!! ごめんな……! ひとりにして! 今すぐ抱き締めたい!!
「ザナック……。すまない、寂しかったか?」
ザナックが懸命にこくこくと頷いて涙を拭い、俺を見詰める。……数秒後、何故か顔を真っ赤にして固まった。
────ぼたぼたぼたっ!
「………!?」
ザナックの鼻から吹き出した血が、彼の着ている白いシャツを染めていく。
「す、みまへ………」
彼は溢れ出る血をぐっと押さえ込んで、少し後退ってからぱたぱたと逃げ去ってしまった。
(照れた……? もしかして俺の体を見て? 俺、骨だが??)
目の前で色んなことが起こり過ぎて理解が追いつかないが、俺は壁にかけておいたバスローブを羽織って、ザナックの後を追いかけた。
────────
「ザナック。私は特に気にしていないから、戻っておいで」
と言いつつも、ザナックの足が止まる気配が無いので、行き止まりの自室前まで追いかけるフリをしながら誘導する。
「うぐえッ……?!」
突き当たったザナックが変な声を出して、振り返る。彼は鼻血をだばだば垂らしたままに、扉に背をつけた。そして、まるで産まれたての子鹿みたいに脚をがくがくさせて、ストンと床にへたりこむ。
「ほら、早く止血をしないと貧血になるぞ」
俺も膝をついて、ザナックの体を抱きすくめながら扉に押し付けた。
「……なさい……ごめんなさい……っ
汚してしまって………ごめんなさい……」
ヒック、ヒックとしゃくりあげながら、
鼻血と涙でぐしゃぐしゃの顔で見上げられて。何だか、"何かに目覚めそう"になる。
「鼻血出してしゅみませんん……っ!
俺は、変態ですッッ………!!」
胸の前に手をやって、涙目で体をぷるぷる震わせている。それが俺の中の嗜虐心をものすごく煽る。
可愛い───。
いやいやコレを可愛いって思うのは俺の方がどうしようもない変態じゃないのか?
「ザナック、落ち着け。鼻血は別に出していいぞ。だが、止血はしないとな?」
「はい………っ」
ぎゅっと目を瞑って、顎を上げたザナック。俺はアイテムボックスから濡らしたタオルを出して、彼の鼻血を丁寧に拭っていく。
「痛くないか?」
「ないれす……」
大人しく鼻を拭かれながらぽつりと返した彼が、小さな子供みたいで。いつもより脆く見えた。
「よし、……
ザナックは何か言いたげに唇をはくはくと動かしている。
「ワイシャツは、魔法で浄化すればいい。だからそんなに気負う必要はない。」
むしろ、君の体液がついたってだけで嬉しいって言ったら引かれるだろうから、それは自重して……。
「鼻血なんて、初めて出しました……」
だろうな。一応王子様だったし、安全に健康に過ごしていたら鼻血なんて滅多に出すことないよな。
「ザナック、そろそろ立てるか?」
小さな手をとる。
ザナックは立ち上がるが、筋肉痛と貧血で体が限界を迎えていたようで、
「あ………っ……」
倒れる前に支えたが、ぐったりしていて顔が青白い。
即座に彼を横抱きして、扉の向こうに進む。
「すまない、俺のせいで無駄に動かしてしまって……………俺の部屋で安静にしてような。一緒に。」
照明を軽くつけて、
彼をベッドにそっと横たえると、
「……アインズ様のせいではないですよ……。
俺、アインズ様に……抱きかかえられるの……好きですし……」
「心配していただけると、嬉しいんです……」
ぽそりとそう言い残して、ザナックは目を閉じる。
「ザナック……!?」
肩を叩いても起きない。
(まさか────)
吃驚して、胸に頭をつけて音を聞く。
……どくん、どくん。
(気絶したのか…………)
「あぁ………俺の心臓が止まる……。いや、無いけどさ………。……はぁぁ……」
いつ起きるかと心配しながら数分ほどそばに居たのに、少し目を離した隙に寝息を立てていて。
「よかった………。顔色も良い、体温も戻ってきてる……」
骨の指で頬をそっと撫でると、
「んむ……っ」
食まれた。
ちゅぷ。ザナックの柔らかい口内に骨の指が包まれる。
「ざざざ、ザナック……っ!?」
「ばっちい……く、はないが、良くないぞッ……?」
れろっ
「どぅおあっ!? コラ、舐めるな……!」
ちっちゃな舌が指の関節まで丁寧に舐めあげる。めちゃくちゃちゅーちゅー吸われてるんだが、やっぱり、俺……ダシが出てるのか? 彼の口内は温かくて、柔らかい舌と唾液の滑りが合わさり、だいぶムラッとくるものがある。
「ザナック……そろそろ骨がふやけるぞ」
指を抜こうとすると、噛まれた。舐める姿も官能的に見えてくる………。
(子猫だ。子猫に毛繕いされてると思って、精神を統一しろ……)
「スーー、ハァー…………。」
なんだかザナックの一挙手一投足に振り回されてるような気がする。だけど、それがどこか心地良い。